戦姫絶唱シンフォギアAA   作:マアア

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更新が遅れてしまい申し訳ありません
ちょっと提督業が忙しくて……

今回は前話の少し省略された部分、二課に行った時の話です。

追記
1万UA並びにお気に入り300人突破感謝デスッ!


幕話・Ⅰ

 

 

日曜日の早朝、始電の電車に乗って揺られて一時間ほどたったその場所、都心でそれなりに有名な観光名所のタワー、東京スカイタワーの最寄り駅に到着後、歩いて辿りつく。

人が少ないのは此処が観光の場所で、朝早い時間だからだろう。

そんな時間帯に、閑散とした駐車場に一台の黒塗りの車が止まっていた。

そして、それに寄り掛かる様に一人の男が、存在感を際立たせ立っていた。

俺が気付いているらしいその男、風鳴弦十郎は俺を見るなり腕を上げてこっちに来いと手招きした。

 

「―――おはよう、ございます」

「ああ、おはよう蓮君」

 

近づいてから社交辞令のような挨拶の言葉を交わし、促されて車の後ろへと乗る。

乗った中には茶髪のスーツを着た男が運転席に座っていた。

 

 

――――随分と平凡な男。

特徴がなく、柔和な笑みを浮かべているその姿を一目見て、何故かそう思った。

 

「初めまして、立花さん。 自分は緒川慎次と言います、これからよろしくお願いしますね」

「あ、はい。 よろしく……お願いします、緒川さん」

「車酔いは大丈夫ですか? 薬は一応常備してあるので気軽に声を掛けてください」

「わ、わかりました」

 

不思議な男だった。

自分は初対面の人には大なり小なり警戒するほうなのだが、というより親しい奴以外には基本警戒心を最低限持って接するはずなのにこの人、緒川さんは何故かそうする必要がないと思えた。

不思議に思っているうちに挨拶を済ませたことを確認した弦十郎が車の座席に入ってきて、緩やかに動き出す。

ガタガタと走る車の少ない早朝の道路を走っていく。

 

 

「―――――――――――」

「――――――――」

「蓮君―――――本当に良いのか? 家族に説明しなくて」

 

暫く、と言っても十分ほどだが立って弦十郎は少しだけためらいがちにそう尋ねてきた。

 

「君の年齢ならまだ機密保護法に関しては両親や親戚にも書類を書いてもらうことが通例だ。 そうすれば理解も得られただろう? なのに―――」

「いいんだ」

 

話を遮ってそう言った。

親父にも母さんにもお祖母ちゃんにもこれ以上負担を掛けたくないし悪くなるだろう風評を利用しようと考えている以上そう言うのは要らない。

 

「こっちにも考えがある。 俺にとってはこうした方が都合がいいからいいんだ」

「―――そうか」

 

何かを言いたそうにしながら弦十郎はしかしそう言ってこれ以上追及をしてこなかった。

少しだけ意外に思い、

 

「そう驚く様な事じゃないですよ、立花さん」

「そうなのか……」

 

ナチュラルにそう言われた言葉に無意識に気付かず返して、驚く。

バックミラーに少しだけ悪戯っぽい笑顔を浮かべた緒川さんの顔が映っていた。

 

「男がそうと決めたことなら尊重するのが男の付き合い、其処にそれ以上の理解は要らないですからね」

 

でしょう? と確信を含んだ発言に弦十郎は頷くのが見えた。

 

「―――まあ、理解できなくはないな」

 

それは世間から見ればズレた考え方かもしれないが、自身が納得できる理論である以上異論はない、むしろありがたかった。

 

「っと、そろそろ着きます。 降りる準備は良いですか?」

「ん、問題ない」

 

そんな少しの他愛のない会話の後、そう言われて持ってきた端末を一度電源を入れ、入っているメールや電話の数をみて溜息を吐いた後直ぐに切ってポケットにねじ込む。

車が止まり、降りてくださいと緒川さんに促されて降りて、場所を確認しようと前を向いて―――疑問符を浮かべた。

 

「――――学校?」

 

その建物の形を見てそう呟く様に言った。

車から降りた弦十郎はそれを肯定した。

 

「ああ、此処、私立リディアン音楽院高等科が俺達の本拠地だ」

「―――――――」

 

それは、どういうことなのか? と普通に理解できなかった。

リディアン音楽院というもの自体は知っている。

少し前に未来が入ろかと検討していた女子校で、学費が安いと評判だ。

だがそこが特異災害対策機動部二課の本拠地とはどういうことなのか?

そう疑問を口に出そうとする間に弦十郎と緒川さんは歩き始め、仕方なく着いて行く。

少しだけ敷地内を歩いて職員棟らしい建物の中に入り、エレベーターに入った。

入るなり緒川さんは懐から普通の端末とは違う、黒い武骨な端末を取り出し、認証口に翳した。

 

とたんガタンと大きな音を立てて振動しながら、手すりが出てくる。

 

「あ、掴まないと危ないですよ?」

「え、っつぉあ――――――――ッ!?」

 

一度大きく揺れたと思った瞬間重力に従って急速に下へとエレベーターは加速した。

大きい振動に咄嗟に手すりを掴み、バランスを崩しかけながらもどうにか体勢を保持する。

 

「全く情けない声を上げるなぁ」

「うっせぇ、こんなの予想できるかッ! って―――――これは」

 

何も触れずに、しかし微動だにせず仁王立ちしながらからかう様に告げられた弦十郎の言葉に悪態を吐きながら前を向いて、その瞬間言葉を失った。

 

「凄いだろう? これはうちの開発主任の趣味でな―――」

 

弦十郎の得意げな声も忘れて目を見開いてそれを見る。

エレベーターの奥、透けて見える壁一面に描かれた模様に。

 

「これは―――――」

 

言葉が何かを形作ろうとする。

描かれた何かを声にして何か言い表そうとしている。

だが、

 

「―――――――っぁ」

 

声として出せない、言語として成立しない。

言葉にしようとしても何かに引き裂かれる様に粉々になって何も言えない。

ただ思うとすれば―――――。

 

その壁一面に描かれた壁画。

グルリと囲むように一面に描かれた模様に見えた紅蓮の炎と白き狂獣と黒い鋼鉄の中心に座す黄金の獣の絵に、畏怖のような、恐怖のような、敵愾心のような何かを抱いたのは間違いないという事だった。

 

「蓮君、そろそろ着くぞ、俺達の本部に」

「―――――あ、ああ。 わかった」

 

少しだけ声を震わせながら、覚えた感情に疑問を抱きながら止まろうとするエレベーターの中少しだけ身体を震わせた。

 

そして、エレベーターは止まった。

ドアが開き、歩くよう促され―――――。

 

通路、その先に一人の女性が立っていた。

ラフに白衣を着こなした独特の髪型をした女性はエレベーターが開くなり頬を軽く膨らませながら近づいてきた。

 

「おっそいわよ、弦十郎君、待ちくたびれちゃったわ。 それで―――その子が?」

「すまんな了子君、ああ。 この子が立花蓮君だ」

 

視線が交錯した。

その目は興味深そうなものを、面白いものを見つけた子供のような輝きに満ちていた。

彼女は満面の笑顔を浮かべて手を差し出した。

 

「初めまして、私は櫻井了子。 この特異災害対策機動部二課の技術開発担当の天才考古学者で出来る女よ。 よろしくね?」

「――――よろしく」

 

発言に少しだけ圧倒されながら手を出して握手を交わす。

彼女、了子さんは少しだけ苦笑しながら。

そして後ろにいる弦十郎に軽く目配せをしてから改めて此方を向いた。

 

「さて、蓮君。 突起物に入るからにはまずやってもらうことがあるわ」

 

真剣な表情でそう言われる。

よほど真面目な話なのだろうと少し心を構えて、

 

「――――服を脱いで頂戴」

 

その日、その瞬間。

初めて貞操の危機という言葉とその意味を知った気がした。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

「バイタルデータ確認、ついで血液サンプルの解析結果も判定しゅーりょー。 そしてレントゲンも取り終えたので蓮君についての報告会と行きましょー」

 

わー! と一人テンションを上げて彼女、了子はさんはそう言った。

 

「服脱げじゃなくて検査受けろって言えよ……」

 

若干愚痴りながら数刻前の出来事の回答、検査服に着替えるために服を脱げと言う発言の省略についての記憶に蓋をする。

悪い夢だった、あれは忘れようと自己暗示を掛けて、改めて用意された椅子に座る。

同時に、目の前に紙コップに注がれたコーヒーが置かれた。

 

「はい、あったかいものどうぞ」

「あ、あったかいものどうも」

 

渡してくれた人に会釈交じりにそう告げ、コーヒーを啜る。

 

「……にが」

「まだまだお子ちゃまねぇ……と、変なことは言ってないでじゃあ始めるわよー」

 

子供を見るような目で、事実ガキの俺を見て若干笑いつつも直ぐにそう切り替えて了子さんはそう近くにいた弦十郎に呼びかける。

弦十郎が頷いた所でではと了子さんは区切り、モニターを壁に映した。

 

「まず順番に行くわねー。 これが蓮君のバイタルデータと同年代の子たちの平均的なバイタルデータよ」

 

映し出されたのは俺を象った白い人型が二つ。 頭や体の要所要所から矢印を引っ張られ、その先に数値が書き込まれている。

 

「因みにいうと黄色が警告、赤が異常のラインね―――」

「……何もないな」

「うんそうなのよ。 至って平凡ね」

 

弦十郎の呟きに返された了子さんの言葉通りそこには異常な数値はなかった。

どれもが白文字で表示されているし、どこも可笑しくはない。

じゃあ次と了子さんは画面を切り替えた。

 

「これは血液検査の結果ねー。 自己申告の血液型とあと中に含まれてる物の平均量よ」

「――――これも普通だな」

「うんそうなの。 普通すぎてつまんないわよねぇ……ここまでは」

 

次が問題であると暗に言いながら、了子さんは画面を切り替えた。

言わずともわかるレントゲンの写真、自身の内部が、骨格が全て見えるソレ。

 

「これが……レントゲン写真?」

 

 

 

そこには何も映っていなかった。

映るべき骨も何もかも映っておらず、ただ人型のサーモグラフィーのように虹色で映っているだけだった。

 

「因みにいうとこれは私特性の聖遺物から発せられるアウフヴァッフェン波形っていう専用のパターンとフォニックゲインっていうエネルギーの流動が見れるレントゲンなんだけど――――見事よねぇ。 右ひじから先はもう普通にエネルギーの塊よん。 その他の部位も最低でもシンフォギアの最低稼働ラインレベルのエネルギーが流動しているわ」

「ふむ――――それはつまりどういうことなんだ? 了子君」

「弦十郎君にもわかりやすく簡潔に簡単に述べるとこの子、蓮君はシンフォギアと同じでノイズの位相差障壁を無効化して最悪拳で倒せるでしょうね」

 

そう了子さんは言い切った。

 

「シンフォギアが元々ノイズという存在に対抗できるのは位相差障壁と炭素転換能力に対抗できるというのが前提条件よね? ならどうしてそれが出来ているのかというとそれはフォニックゲインという名前のエネルギーの音波をノイズに当ててそれで相手を無理矢理形作って倒すっていう事、そして音波の障壁を皮膚の上に纏うことで炭素転換を直接喰らうことが無い様になっているから戦えるわけ。 蓮君の体は常時そのフォニックゲインをノイズを倒せるレベルで発生させているのよね」

「――――俺の、体が……」

「そう、君の体からね。 でも少しだけ困ってることがあって――――」

 

今まで自信満々に話していた了子さんはそこで眉尻を始めて下げた。

打鍵を叩き、直ぐに画面に表示されたのはカウンターだった。

 

『0.0005%』と表示されているカウンターだった。

 

溜息ひとつ、再び了子さんは話し始めた。

 

「蓮君の聖遺物『ボワ・ド・ジュスティス』なんだけど本来完全聖遺物であるこれは起動した時点で完全に性能を引き出せるんだけど――――今現在の稼働率がこれぐらいなのよねぇ」

「―――少ないな」

「そうなのよッ!」

 

弦十郎の呟きに反応した了子さんがそう言いながら音を鳴らして立ち上がった。

 

「いくら完全聖遺物とはいえこれぐらいの稼働率で戦場に出すのは危ないわ。 何より蓮君もまだ戦いとかそう言う雰囲気も気分も分からないでしょ?」

「まぁ、確かに分からない……な……」

「でしょ、だからまずは改めて『ボワ・ド・ジュスティス』を正式に起動するところから始めましょうッ! これが結論だけどわかったかしら?」

「――――大体は」

 

正直な所細かい話、難しい話しはよくわからなかったがとにかく腕の聖遺物をどうにかして起動するというのはわかった。

それだけ分かれば十分だろう。

 

「ん、いい返事ね。 それじゃあちょっと端末を貸して頂戴? 聖遺物起動のための場所へのルートを送るから」

「了子君? 案内なら俺が――――」

「あら、弦十郎君は書類が溜まってるんじゃない? ここ最近あんまり机についているところ見てないんだけど?」

 

途端弦十郎は苦虫を噛み潰したような顔になった。

 

「ぐぅ……確かにそろそろ不味いな。 すまない蓮君、後は了子君に任せるから起動に成功した後の事は了子君に聞いてくれ」

「―――わかった、けど。 書類はもう少し真面目にやった方がいいんじゃないか?」

 

少ししょぼくれた様子でこの場を背にして歩いていく弦十郎の姿に今まで抱き始めていた弦十郎のイメージが崩れる音を聞いた気がした。

何とも言い難い気分になり、ここ最近癖になりかけている溜息を吐いた。

 

「――――俺、呪われてんのかね」

 

溜息と共に口から響の口癖によく似た言葉が吐き出された。

聞こえていたらしい了子さんの苦笑のような笑いが響く。

 

「まあ弦十郎君は見ての通りの脳筋だからねぇ……さて、これでヨシッと。 はい、蓮君、端末を返すわよん」

 

返された端末の画面には地図アプリのような物が起動しており、現在地と自身の位置と目的地をそれぞれ別の色の光点で表し、繋いでいた。

 

「わかってると思うけど此処の光ってる点に向かって頂戴ねん、私は管制室で指示を出すから着いたら画面のボタンを押して頂戴」

「わかった―――直ぐに向かう」

 

そう言ってから振り向き、そう遠くない画面の光点のポイントへと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

ドアが閉まる音が響き、蓮が退室したことを告げる。

それを見てから笑顔だった了子は俯き、眼鏡を外して顔を腕で覆った。

 

 

『【―――――】――――。 ―――――。 ――――――――。 ―――――――――』

 

了子の言った言葉は小さく、誰の耳にも届かず宙に解ける。

だけど、それを言った瞬間をもし誰かが見ていれば、たとえ理解できなくても何を思ったのかは分かったかもしれない。

 

『―――――、―――――――、――――――――――――――――――――』

 

掌に覆われた顔の隙間から鋭い目線と、弧を描く唇が漏れていた。

了子は呟いてから、腕を降ろし、再び眼鏡を掛けた。

 

「さぁてそれじゃ、さっさとデータを集めるわよん」

 

そのころには誰もが知っている彼女であり、今はまだ、誰も彼女の発言を知る者はいなかった。

 

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