真剣で私に恋しなさいZ!〜Super Saiyan〜 作:泣きっ面
修正しました。ちょっと強引な感じですが
「驚れぇたな……まさかオラと同じ様な事ができるなんてな」
自身の変身とは違うが、確かにそれは似ていた。
特徴的な変わり様…気が増え威圧的になり、さらに感情が昂っている所を見るとやっぱりオラがナメック星で成った変身にそっくりだな。でも…気づいてねぇんか?
「貴様も知っていると思うが西では女より男が強い。そして覚醒した俺に敵はない!」
「そうなんか?……でもここに集まってる沢山の気の中でもそんなに強いとは思わないけどな」
石田の実力は十勇士最強で間違いない。だが今現在この場所で行われている東西交流戦において一番に強いという訳ではない。何故なら今この場所には石田以上の実力を秘めている者達がいるからだ。
川神百代を除けば…剣聖黛十一段の娘である黛由紀江だろう。彼女は川神百代と渡り合える数少ない人物の一人である。
その他にも石田に近い実力かそれ以上を持った者達が数名、この東西交流戦に参加している。
「貴様…今この俺を弱いと言ったな!」
「あぁ、それにおめぇのその奥義っちゅやつはかなり身体に無理させてるみてぇだしな」
石田は目の前にいる男の口から自身の技の弱点をすぐに見抜かれてしまった。その言葉に思わず虚を突かれた様に驚く石田の顔には焦りが見え、その瞳は揺れていた。自身の口からではなく敵対する男の口から言われたのだから当たり前だと言えるだろう。
だが、その男の言葉が石田に怒りを忘れさせ冷静にさせてしまった。
(……この男、一目見ただけでこの奥義が俺の寿命を減らしている事に気がつくとは)
(それに俺の家臣である島を一瞬で倒すとは、島は西ではそれなりの実力を持っている男だぞ)
並の使い手ならば攻撃時の動きで何をしたのかを視認し感じ取る事ができるのだが、この男は違った。闘気はおろか気に変化は無く島が倒れた後、この男の右腕だけが身体の前に突き出ていた。
拳の形でも手刀の形でもない。ただ何かに触れようとした手の形だった。まさか触れただけで倒したというのか?
色々な疑問が石田の頭に浮かぶ。この男は謎が多すぎる。下手に攻撃するよりまずはこの男についてある程度知る必要があるな。島の仇はその後に討てばいい。
「おい!貴様いくつか質問する。俺の問いに答えろ!」
石田は闘気を見せずただ目の前に立っている男に質問をぶつける。しかし、石田の鋭い目はその男の些細な動きを見逃さない様にしていた。この男が質問の最中に攻撃を仕掛けてきても迎撃できる様にするためである。
「あぁ…オラも聞きてぇ事があったんだ。いいぞ」
「……まず、一つ目。何故、そんなに傷だらけなんだ…」
当然の疑問だ。いきなり目の前に現れた男が既に満身創痍の状態で立っていた。例え赤の他人だったとしてもその経緯を聞くのは自然と言えるだろう。何より一体、誰にそこまで痛めつけられたのか気になるという所だ。
「あぁ…オラはさっきまで戦ってたんだ」
「…そうか」
なるほどな…この男の身体の傷はその戦闘でできたものか。正直…惨いな斬り傷に打撲によってできた痣、加えて身体の所々が焼かれた様な痕がある。
寧ろ、この男の身体で傷ついていない所を探したいぐらいだ。はっきり言ってそんな箇所は無いだろう。
この男の言葉をきっかけに数多くの疑問が次々と浮かんできてしまう。謎が謎を呼ぶとはこの事だろう。これでは埒が明かない。石田は次の質問をぶつけてきた。
「貴様…名は何と言う」
それはこの男の名前だった。もし武道家であればそこそこ名が通っているかもしれない。名前が分かればこの世界では大凡の見当がつくからだ。この男が着ている服は明らかに道着だと思われる。先程この男が言った戦いというやつでぼろぼろになったであろう道着。
辺りは暗く俺が放つ光でも確かな色は分からなかったが、恐らく山吹色であろうズボンにそれを縛る黒い…いや紺色の帯。こちらも僅かに残っている紺色のシャツとリストバンド。復元したらなんて度派手な道着になる事だろう。大体そんな道着を着ている武道家は俺の記憶には無い…
さらに何だあの髪型は、突っ込みどころが多い奴だな。そんな事を思いながら俺は目の前の男の返答を待った。
「そういえば、まだ名前言ってなかったな。オラの名前は…ん?」
名乗り上げようとした時、強い気が近づいてくるのを感じ取った。気で相手の位置を把握しその姿を視界に捉える超戦士。抜刀した刀を手に持ち工場の壁を垂直に駆け下りながらこちらへ向かってくる少女が一人。
「何者だッ!?」
少し遅れを取りながらも近づいてくる者に気づいた石田。しかし遅かった。
「源義経!推参ッ!」
振り向くと同時、義経を名乗る少女の一閃が石田の身体を通り抜ける。そして、その攻撃は側に居た超戦士にも襲いかかる。
「ぐッ…はぁ…」
ドサッーーー
「ふぅ…」
義経は小さく息を吐き呼吸を整えた。彼女の揺れていた前髪はまるで終わりを告げたかの様にゆっくりとその揺れを止める。
殆どが不意打ちに近い義経の一撃を受けた石田は倒れてしまった。だがこの時、義経は異変に気がついた。その異変とは倒した直後に起こる筈の音だった。時間にして3秒待ったであろうか…しかしその音は聞こえてこなかった。本来ならば先程の石田の様に……聞こえた筈なのだ……
(あ、あれ…義経は二人…斬り捨てた筈なのだが…何故一つだけしか聞こえないんだ?)
義経自身もその疑問が頭から離れなかった。その答えは後ろを振り向けば分かるだろう。彼女もそう考え後ろを向こうとした。その時、彼女の行動より早くその答えは返ってきた。
「おめぇ〜ひどい奴だな…いきなり後ろから襲うなんてよ」
「なッ…なんで…ッ!」
そう…その男は立っていた。重傷の身体をこちらに向けその視線は義経を捉えていたがその瞳は敵意に満ちてはいなかった。その手には折れた刀の刀身が掴まれていた。それが一体誰の物なのか義経は理解した。
刀の柄から鍔に視線を送るそしてその視線は刀の反りで止まってしまった。否そこで終わっていたのだ。義経の刀は反りから上が無くなっていたのだ。
「そ…そんな…薄緑が折られるなんて」
「あッ!すッすまねぇな。やっぱりオラ力がつきすぎちまったみてぇなんだ。これ返すぞ」
この時……ただ一つだけ理解できたのはこれ以上この男に刃を向けるのは危険だという事を本能的に察知してしまったという事だ。
「クリスティアーネ・フリードリヒ!!推参、敵大将!覚悟ッ!………あれ?」
遅れて敵大将の場所までやって来たクリス。その後から風間ファミリー達、さらに後方からはS組が来た。ヒーローは遅れてやって来るというが遅かったようだ。既に壊滅状態と言ってもよい西軍。副将である島と大将である石田は気を失い地面に倒れていた。
「やッ大和!これはどういう事なのだ!既に倒されているではないか!」
「お、俺に当たるなよ!これでも速く探した方なんだぞ」
大和の服を掴み喰ってかかるクリス。少し暴れ足りなかったのかその顔には苛立が見える。それもその筈、殆どの敵は京にワン子、そしてS組に所属するマルギッテや忍足あずみが片付けてしまったのだから。
「いいい、一体これはどういう事なのでしょうか」
まゆっちの学年は俺達と違い一つ下の一年生。どうやらまゆっちの方は早く終わり急いで駆けつけて来てくれた。後輩に先を越されるとは先輩として少し情けない話だ。しかし闘いが終わったばかりのまゆっちに負担は掛けさせたくない。とりあえず、まゆっちには俺達の大将である委員長の護衛を頼んでいた。
『クリ吉ィ〜おめぇは良いよなぁ闘ってたしよ!途中から来たオラとまゆっちなんてカカシみたいにただ立ってるだけだったんだぜ!えぇッおぉう!こらぁ!』
ちなみに今、喋ってたのがまゆっちの相棒であり我がファミリーのマスコット的な存在になりつつある松風と呼ばれる手作りストラップだ。まゆっちの設定としては、寂しいまゆっちの元に九十九神が現れストラップに命を宿し、それから自分の相談相手として活躍するというシチュエーションらしい。そういう設定なのね、と納得すると設定じゃないと珍しく言い返してくるのだがどう見ても腹話術。それもかなりレベルの高い域まで達している。いつか松風が彼女にとってお役ご免となる日が来るのを祈るばかりだ。
……というよりこれ程感情がむき出しになっているところを見るとやはり相当ストレスが溜まっていたのだろう。いつもより迫力があるな。それに交流戦の途中からまゆっちの様子が明らかに変だったし明日ぐらいに聞いてみるか、今はやめといた方が良いだろうし。
(ていうか、本当に怖いな今日の松風は…)
(きょ、今日はなんか怖いな…)
と大和とクリスは心の中で同じ様な事を考えていた。
「ところで大和…一体、誰が倒したのかな?」
突然、内輪揉めの最中に京が当然の疑問を皆にぶつけてきた。確かに一番の疑問である。俺達がここに着いたのはついさっきだ…それにこうやって皆揃って来たんだ。俺たちの中で敵大将を倒せる筈が無いのだ。
「確かに、ここに来たのは今さっきだしな。俺たちが闘っている最中に他の誰かが倒したのかもと考えるのが普通だよな…念のために聞くけどS組が倒したのか?」
大和はS組のメンバーに問いかけたが返って来た答えは予想していた答えと一緒だった。
「いえ…私達ではありませんよ。こうして大和君達について来たのですから分かっている筈です」
「それにもし私達が先に倒していたなら既に勝鬨を上げてますよ」
S組の知将である葵冬馬が大和の質問に答えた。「それもそうだな」と大和自身も溜め息混じりで返してみせたがやはり誰が倒したのかまで分からなかったが、答えは意外な人物から聞く事ができた。
「フハハハハ!その疑問は我が解いてやろう!直江大和!」
その声の主はS組に所属するリーダー的存在で九鬼財閥の御曹司であり姉と妹を持つ九鬼英雄のものだった。周りからは超絶俺様主義者と言われている。そうだな後はとりあえず服装が派手だ…というよりやる事成す事が派手すぎる奴だ。九鬼財閥と言えば世界有数の大企業でその技術は最先端と言っても良い。何故か俺の事は一目置いている感じだ。
「おい九鬼英雄。何か知っているのか?」
「ふんッ今から説明するわ!……先程、我の方に連絡が入った『武士道プランの申し子』がこの交流戦に参加するとな。恐らく義経あたりがやったんだろうな」
「「「「武士道プラン?」」」
「「「「義経!?」」」」
工場地帯に大和達の声が揃って木霊した瞬間であった。
工場地帯から離れたとある場所
「わ、悪い事をした。義経は深く反省している…まさか交流戦と関係ない者が居たなんて…しきりに反省している。それに後ろから攻撃した事についても反省する…武士として恥ずかしい限りだ」
そこには土下座をする義経の姿とそれを見下ろす超戦士の姿があった。第三者が見たら誤解されるだろうが今は夜中で人通りもない。もし見られたら即通報されるだろう。ここに来た理由としては部外者を安全な所に避難させる為である。もちろんこれ以上義経と同じ様に敵と誤認して彼が被害に遭わない様にする為でもあった。
「いやオラも偶然あそこに居た訳だしな。さっきの奴も置いて来て悪いと思ったけどな…それにおめぇの刀を壊しちまったし。とりあえず頭を上げてくれねぇか?」
「…うぅ〜こんな格好を弁慶や与一が見たらなんて言われるか…」
暫くして落ち着きを取り戻した義経に超戦士は自分の名を伝えた。名前を聞いた義経は一瞬、時が止まったかの様に固まってしまったがすぐに正気を取り戻した。
「そ…孫悟空さんか…そ…それがあなたの名前なのか?」
「ああ…そうだぞ?」
(名前が一緒だから誰が聞いても西遊記の孫悟空と思ってしまうだろうな…義経の気のせいと思うのだが…)
「それよりも悟空さん…気になっていたのだが相当ひどい怪我をしているじゃないか。大丈夫なのか?さっきから平然としているが義経は心配だ!」
「ん…あぁ…大丈夫だ……ぞ…これ…くらい…」
義経と話たせいか緊張の糸が切れ溜まっていたダメージが一気に吹き出し膝から崩れ落ちる悟空の身体はそのまま義経に預ける様に倒れてしまった。
「さ…さっきまで平気だったんだけどな…ちょっとまずいかな…」
「全然大丈夫じゃ無いではないか!」
目の前で倒れた悟空を見てさっきまで落ち着いていた義経は再び混乱してしまった。やはり相当酷いダメージを受けている様だ。もしかしてこのまま死んでしまうんじゃないのかと義経は考えてしまった。
「ど、どうしよう!ええっとだッ誰かいないのか!助けてくれ!」
しかし、辺りには誰もおらず義経の叫びだけが空しく響き消えていった。だが、幸いにもこの近くにある大きな病院が目に入った。義経は気絶した悟空を背に乗せ急いで病院まで向かう事にした。
「よしッあの病院まで行けば!何とか…なる…お…重いな。だが義経は負けないぞッ弁慶〜与一!」
悟空を背負い目的地まで行く義経。途中で横断歩道に何度も捕まってしまい車の通りも無く急いでいた為、無視して行こうか何度も悩んでしまった事は彼女の小さな秘密である。