明日に波動拳   作:路傍の案山子

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 お待たせしました。

 本当は昨日の朝には投稿できていたはずだったのですが少しリアルで色々ありまして遅くなりました。

 今回は1万字くらいに抑える感じで書いてみた中編?のようなものになります。結局1万字超えましたが。

 今回も戦闘シーンはありませんが外伝なので気軽な感じでお読みいただければと思います。

 それではどうぞ。


外伝 春日野さくらの誕生会

 

 

 どうも、十年後には片腕がなくなってるかもしれない日向涼です。英名ではアルトリウス・エリオット・ヒューガーです。皆も賭け事をする時は気をつけないとダメだぞ!お兄さんとの約束だ!麻雀で血を抜かれたり、鉄骨を渡らされたり、闇のゲームでカードの中に閉じ込められたりするかもしれないからね!

 

 さて、始業式にサガットと(ついでにアドンと)遭遇してから8日が過ぎました。虎に腕を食いちぎられる悪夢を何度か見た以外は特にこれといったこともなく普段通りの生活で、現在は4月9日。そう、俺の幼なじみである春日野さくらの誕生日である。つまり―――

 

 「今ここにっ!!『春日野さくら生誕11年記念パーティーin神月邸』の開催を宣言致しますわっ!!!オーホッホッホ!!」

 

 いつもより更に高いテンションでカリンが宣言している通り、現在神月邸にてサクラの誕生会が行われています。というか、たった今始まりました。俺も既に会場に入って会が始まるのを待っていたところだ。ちなみに、本日の主役であるサクラは今俺の近くには居ない。会場にあるステージにしつらえられた豪華な主賓席に座らされているからだ。普段は絶対に着ないであろう高級そうなドレスを着せられて、先程からまるで人形のように固まってしまっている。慣れない状況に緊張しているのだろう。

 

 「それでは皆さんこの後いくつか催し物も用意していますが、それまで暫しご自由にご歓談くださいまし!!そして、本日の料理は全て神月のシェフに作らせましたわ!!存分にご賞味くださいな!!」

 

 テーブルには和洋中のみならず見たこともないような料理が所狭しと並んでいる。さながら高級ホテルのディナーバイキングのようだ。料理名などはわからないものも多いが一つだけ確かなことがある。並んでいる料理が全て高級品だということだ。

 

 「......っ!!...!!」

 

 先程からサクラが必死に俺に視線で訴えかけてくる。このステーキうめぇ。きっと料理が食べたいのだろう。このスープも素晴らしい。しかしサクラは主賓席から動くことは出来ない。こ、これはまったりとしていてそれでいて少しもしつこくない!恐らくだがカリンが用意した催し物とやらが終わるまではそのままなんじゃないかな?モキュモキュ。まあ、流石に可哀想なので後でなにか持って行ってあげよう。とりあえず今はこれのおかわりお願いします!

 

 「おいおい、お嬢ちゃんが涙目になってるじゃねぇか。食ってばかりじゃなくて持って行ってやらねぇのか?意外と薄情な奴だな」

 

 「ちゃんと後で持って行ってあげますよ、『バーディー』さん。あ!スタッフの方これのおかわりお願いします!」

 

 「......見た目の割によく食うなオメェ」

 

 今俺に話しかけてきた大男の名前は『バーディー』。そう、以前俺達の乗ったバスをジャックして失敗し、その後カリンに雇われることになったあのバーディーである。本来なら未来でシャドールの下っ端になるはずが、現在はカリンの付き人兼ボディーガード役として働いている。

 

 「モキュモキュ......ゴクン。家の母が作る料理も美味しいですけどこういった料理はあまり食べる機会がないので。......その服、前にも見ましたけど意外と似合ってますよね」

 

 「服のことは言うんじゃねぇよ。こんな窮屈な服は趣味じゃねぇんだからな。......っといけねえ、お前さんに伝言があるんだった」

 

 今のバーディーの服装は原作の姿からは想像しにくいスーツ姿である。相変わらずのモヒカンヘアーだが意外と似合っている。なんというか、アメリカの方のセレブの護衛にいそうな感じだ。なんでもバーディーは神月財閥に雇われる際に口調や服装などの改善を指導されたらしい。最初の頃は激しく抵抗していたらしいが、そのモヒカン頭を丸坊主にさせるぞという脅しに態度などを改めたそうだ。本人曰く、『この髪型だけは勘弁してくれぇ!!』とのことで髪型を変えないことを交換条件にいやいやながら従っているのだそうだ。ただ、神月財閥の人間以外と話す時は口調は戻るし、プライベートの時の服装は以前と同じくパンクな感じの服装である。

 

 「モシャモシャ...ゴクン。伝言ですか?カリンさんからですか?」

 

 「ご想像の通りカリンお嬢様からだ。『この後の催し物では絶対に負けませんわ!!』だとよ」

 

 ......この後の催し物とやらは競い合うような類いのものなのか。ちょっと嫌な予感がしてきたぞ。これはもう食べなきゃやってらんないな。

 

 「あ!スタッフの方、そこの料理をお願いします。......この後の催し物って勝負事なんですか?出来れば遠慮したいんですが」

 

 「まあ、無理だろうな。相手はあのカリンお嬢様なんだぜ?お前さんはいつも通り強制参加だろうよ」

 

 ですよねー。

 

 「ま、諦めて頑張るんだな。俺は内容はしらねえが流石に誕生会でそう物騒な事はお嬢様でもしない......だろう、多分、恐らく、メイビー」

 

 「まぐまぐ......ゴクン。全然安心できないんですけど」

 

 「いい加減食うの止めやがれ。......まあいい。それじゃあ俺は戻るとするぜ。伝言も伝えたしな。ああそれと近いうちにまた俺と模擬戦だからな?逃げるんじゃねえぞ」

 

 バスジャック事件以降何度か俺とバーディーは試合をしている。最初の頃はサクラとカリンと一緒に三人がかりで対戦していたが、最近になってようやく一対一で試合ができるようになったのだ。といっても、実力差は歴然としているので完膚なきまでにボコボコにされるのだが。

 

 「ははは、お手柔らかにお願いしますよ」

 

 「最近じゃあ神月財閥の用意するトレーニング相手でも少し物足りねぇんだよ。その点お前さんはそこいらの奴らより粘るし頑丈だ。気兼ねなくぶっ飛ばせるし、なかなかいい運動になるからなぁ」

 

 バーディーからの扱いが丈夫なサンドバックな件について。いや、確かにサクラやカリンよりは俺の戦闘スタイルは防御寄りだけども。日々打たれまくってきたので打たれ強さだけは人一倍だけども。その扱いは酷いんじゃないでしょうか。

 

 「......チェーン使いませんよね?」

 

 「使うに決まってんだろ。そもそもお前さんが最初に言い出したんじゃねぇかよ」

 

 実は最近バーディーは原作同様にチェーンを使い始めたのだ。というのも、今までの力押しだけの格闘スタイルではリュウに追いつけないかもしれないと悩んでいたバーディーについ言っちゃったんだよね、『いっそ武器でも使ってみれば?もっと腕にシルバー巻くとかSA!!』って。

 

そしたら次の模擬戦の時にバーディーの腕にチェーンが巻かれてたんだよね。しかも原作と違って神月財閥が用意した鎖術の達人に教えを受けたらしく、力任せなだけではなくなんというか洗練されてて隙がなかった。鎖を避けようとすればバーディーの突進やその巨体からくるリーチの長い打撃が飛んでくるし、なんとか掻い潜って懐に入っても掴まれたらアウトという無理ゲー。勿論その模擬戦では何も出来ずにボコボコにされましたよ。サクラやカリンは難易度が上がったことを逆に喜んでいたけど。

 

 「ソウデシタネ。ガンバリマス」

 

 「まぁ、死なねえ程度に加減しといてやるからよ。んじゃあ俺はもう行くぜ。これでもボディーガードなんでな。あんまりふらふらしてると柴崎の野郎がうるせーんだよ。......あの野郎常にバリカンなんぞ持ち歩きやがって」

 

 何やらブツブツと文句をいいながらバーディーは行ってしまった。とりあえず俺もバーディーとの模擬戦のことは考えないようにして今はパーティーを楽しむことにしよう。......そのパーティーでもカリンと勝負しなければいけないらしいが。せめて格闘以外の穏便なやつだといいんだけど。

 

 

 

その後、パーティーに参加していたケイと話したりして過ごしていたが、オーケストラの演奏会や大掛かりなマジックショー等の催し物が行われたが勝敗を争うようなものはなかった。というか、小学生の友人の誕生会ってレベルじゃないだろう。そもそも招待客10名ちょっとなのに会場が無茶苦茶広いしスタッフの人も50人くらいいるし。まあ、神月だし、今更か。料理も二周したし、そろそろサクラにも持って行ってあげるかな。

 

 「あっ!!アル!!酷いよぅ!!さっきからずっと待ってたのにぃ!!」

 

 「まあそう怒るなって。ちゃんと取ってきてあげたからさ。ほら、ちゃんと肉多めにご飯も持ってきたぞ」

 

 「わーーい!!ありがと~~!!」

 

 チョロい。

 

 「モキュモキュ...ふぉうふぃへふぁふぁふぃふぁふぃんひゃん」

 

 「食べながらしゃべるんじゃありません。ちゃんと飲み込んでから喋ってくれ。何言ってるかわかんないよ」

 

 「......ゴクン。そういえばさっきカリンちゃんがもうすぐメインイベントがだから楽しみにしといってって言ってたよ!なんだろうね?」

 

 成程、そのメインイベントとやらが勝負事な訳か。そういえばさっきからカリンの姿が見えないが、どこに行ったんだ?そう思った時だった。

 

 「オーホッホッホ!!オーホッホッホ!!」

 

 カリンがステージの中央から高笑いを響かせながらせり上がってきた。そんな舞台装置までついてるのかよ。神月邸マジパねえ。

 

 「皆さん、パーティーは楽しんでいただけてまして?それでは本日のメインイベントを開催いたしますわ!!」

 

さて、何が出るのやら。カリンは学校のテストとか体育の時間の持久走だとか、勝敗がつけれそうなものはなんでも俺やサクラに挑んでくるからな。カリンはテストでは殆どの教科で満点を取るので大体負けるのだが、国語だけは俺の方が勝ち越している。カリンは漢字の読み書き等は完璧なのだが、「~~の時の◯◯の気持ちを答えなさい」的な問題が苦手なのである。どうも『庶民の気持ち』がまだ理解できていないみたいなのだ。解答欄に『パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない』的な答えが書き込まれているらしい。どこの女王だお前は。

 

運動では持久力や筋力が重要な競技では勝てるが、瞬発力や走力が重要な競技では負けている。たというか、この世界は女性の方が足が平均的に早いのでこれはある意味あたりまえのことなのだが。ただ、勝った時のカリンのドヤ顔がちょっとイラッとくるのでできるだけ負けないように努力はしている。ちなみにカリンが一番重要視している模擬戦では負けていないので逆にドヤ顔をしてみたら突っかかってくる頻度が増加しました。ナンテコッタイ。

 

 「本日のメインイベントは......サクラさんへのプレゼントタイムですわっ!!!」

 

 ......ん?思ってたより普通のメインイベントだ。大体の誕生会でも普通にやるしね。ちょっと警戒しすぎたかな。だとすると、このあと別に勝負する企画があるのだろうか。わざわざバーディーに伝言までさせたのだから勝負事にならないということはないだろうし。

 

 「勿論、ただプレゼントを渡すだけではありませんわよ?今回はサクラさんに貰ったプレゼントの中で何が一番嬉しかったかを決めていただきますわ!!そして、見事サクラさんに選ばれた方には豪華な賞品をご用意していますわ!!」

 

 「......ああ、そういうことか」

 

 どうやら今回の勝負は『どちらのプレゼントがサクラに喜ばれるか』を競うつもりであるらしい。そういえば会場に入るときにプレゼントは後で渡す場を設けるので預かりますって言われて預けたままだったな。でもこれってかなり気まずくならないかな?人から贈られたものに優劣をつけるわけだろ?プレゼントを渡す側が嫌な気分になるんじゃないか?

 

 「......豪華賞品。神月さんが『豪華』って言うくらいだからきっとすごく素敵なものに決まってるわ。......乗ったぁ!!」

 

 ケイよ、その反応は女の子としてどうかと思うよ。まあ、ケイ以外の参加者もそこまで気にしていないようでみんな結構乗り気みたいだし、まあいいのかなぁ?一位以外は優劣なしってことにすればそれほどでもないということなのだろうか。

 

 「フフフッ!皆さんからお預かりしたプレゼントが1つずつステージ上に運ばれてきますのでそこで直接サクラさんに渡してもらいますわ!その時にアピールしてもらっても結構でしてよ!運ばれてくる順番はランダムで選ばれますわ!」

 

 成程、アピールタイムもあるわけね。まあ、サクラには腹芸は通じないから本当にアピールするだけになるだろうが。それに『俺には負けない』って伝言してきたんだ。当然――

 

 「勿論この(わたくし)も参加いたしますわ!!皆さんがどのようなプレゼントを用意しているかは知りませんけれど私が参加する以上、勝利はこの神月かりんのものですわっ!!オーホッホッホ!!」

 

 カリンも参加してくるわけですよね。あ、ケイの顔が一気にあきらめムードになってる。確かにカリンは非常に強敵だろう。1人だけこのイベントがあることを知っていた訳だし、使用できる金銭も桁違いだ。小学生の財力(お小遣い)で太刀打ち出来るものではない。普通に考えれば確かに勝利はカリンのものだろう。だが、まだ絶望するのは早いぞケイよ。なにせ判定するのはあのサクラである。お金がかかっているからといってそれを選ぶとは限らないのだ。

 

 「それでは説明も終わりましたし、早速始めましょうか!それでは一つ目のプレゼントを運び入れなさい!!......ふふっ、今日こそは、今日こそは負けませんわよアルさんっ」

 

 カリンの号令とともにプレゼントが運ばれてくる。あ、プレゼント運んでるの柴崎だ。お疲れ様です。というかカリン最後の方に何か言ってなかった?効果音がうるさくて聞き取れなかったんだけど。

 

「え!?いきなり私の!?」

 

 どうやら一つ目に運ばれてきたプレゼントはケイの物だったようだ。いきなり自分からだとは思ってなかったらしくかなり動揺していた。それでもなんとか柴崎からプレゼントを受け取るとサクラの前に立った。

 

 「え、ええっと。サクラこれプレゼント。前に一緒に行った店で可愛いって思ったのなんだけど......」

 

 「わぁ!!犬のヌイグルミだぁ~~!!ケイちゃんありがとう!!」

 

 おお、これは好感触ですね。サクラって結構犬好きなんだよね。原作でも犬の散歩してるシーンとかあるし。さすがケイ。友達歴が長いだけあってサクラの好みを的確に突いてくるね。

 

 「千歳さん、アピールタイムの方はよろしいのかしら?無いようなら次に移りますけど」

 

 「え!?あぁっと......わ、私に感謝して大切にしなさいよね!!」

 

 「うん!!絶対大切にする!!」

 

 それだけ言うとケイは壇上から降りてしまった。どうやらツンデレめいた発言に素直に笑顔で返されて照れてしまったらしい。カリンがアピールタイムが終了したと判断して次のプレゼントを持ってくるように指示を出している。

 

 その後はサクラの友達のクラスメート達が運ばれてきたプレゼントをサクラに渡していった。可愛らしい手帳とかそこそこ有名なお店のクッキーだとか色々なものがあったが、どのプレゼントもサクラは喜んで受け取っていた。でも、恐らく今のところだとケイが一番反応が良かった気がするな。良かったなケイ、暫定一位だぞ。だがまだ俺とカリンのプレゼントは運ばれてきていない。カリンもプレゼントがくるたびに自分のではなかったと反応していたのでどれが運ばれてくるかは本当にランダムらしいが、最後の方まで残ってしまうとなんかこう、変に緊張する。

 

 「残りのプレゼントはあと2つですか。しかも残っているのはアルさんと私のもの。フフッ!面白い展開になってきましたわ!!さあアルさん!!勝負ですわ!!」

 

 おいケイとか他の参加者のこと忘れるなよ。しかしカリンは自分のプレゼントに余程自信があるようだ。先程からプレゼントを嬉しそうに受け取るサクラの様子を見ても全くその余裕が崩れていないからな。それにしてもこのデザート凄く美味しいな名前なんて言うんだろ。

 

 「......くっ!この状況でもデザートを食べるのをやめないですって!?まあいいですわ。その余裕が続くのも私のプレゼント見るまででしょうから!!オーホッホッホ!!さあ!柴崎!!次の物を!!」

 

 カリンの号令で次のプレゼントが柴崎が押す『台車』に乗せられて運ばれてくる。どうやら次のプレゼントはカリンの物だったようだ。というか、明らかに他のプレゼントよりデカイので一発でわかるぞ。台車の上には布で隠された大きな物体が鎮座している。これは本当に小学校の友人に渡すプレゼントなのだろうか。

 

 「おや。どうやら私の番のようですわね。それではご覧頂きましょう!!これが私からサクラさんへと送る至高の一品ですわっ!!!」

 

 そう言うと同時にカリンはプレゼントに掛かっていた布を優雅な動作で取り去った。

 

「これこそがっ!!神月財閥が誇る職人によって一枚の巨大水晶より彫りだされた『1/2スケールクリスタルサクラさん』ですわ!!!」

 

 そこにはキラキラと光り輝くサクラの形をしたクリスタルがあった。細部まで作りこまれた造形や躍動感がある構図は非常に見事な出来だといえるだろう。一種の芸術品といってもいい品だが......プレゼントとしてはどうなんだろうか。会場の殆どの人が若干引いているぞ。

 

 「うわぁーーー!!すごいすごい!!これって私だよね!?本当に貰ってもいいの!?」

 

 「ええ勿論ですわ!私も同じものが欲しいくらいの会心の出来でしてよ。......ふふっ!!この勝負貰いましたわっ!!オーホッホッホ!!」

 

 ただ予想外にサクラの食いつきが非常にいい。ケイの時よりも反応がいいかもしれない。ちょっとサクラのセンスがわからなくなってきたぞ。あと、貰ったとしてどこにそれ(クリスタルサクラさん)を置くつもりだ?相当に場所をとるぞ?台座を入れると高さと横幅が1メートル位あるぞソレ。

 

 「うーん、でも置く場所どうしよう......。あ!そうだ!!アルの部屋に置いてもらおう!」

 

 ちょっと待とうかサクラさん。それは認められませんな。だっていくら幼なじみだからといって男の部屋に10歳くらいの女の子の像(しかもクリスタル製で1メートル位)があるのはおかしいだろう。

 

 「いや、ダメだからね?俺の部屋はダメだからね?」

 

 「え~~」

 

 「え~~、じゃねえよ」

 

 むしろ何故いけると思った。とにかく俺の部屋はダメだからな!今の年齢ならギリギリセーフかもしれないけど、中学校とかになったら変態扱いされてまうやろ!!

 

 「さて、残すはアルさんのプレゼントだけですわね。柴崎!アルさんのプレゼントを!!まあ?結果は見えていますけれど!オーホッホッホ!!」

 

 「......それはどうかな?」

 

 俺は自身の勝ちを確信しているカリンに対して不敵な笑みで応える。ふっ、甘いなカリン。今回のプレゼントには俺も自信があるんでね。お、どうやら運ばれてきたようだ。俺は柴崎から自分の用意したプレゼントを受け取るとサクラの前へと進み出る。

 

 「はいサクラ。誕生日おめでとう」

 

 そういって俺はカリンのものと比べると非常に小さなプレゼントをサクラに渡す。

 

 「ありがとうアル!えーと中身は......リボン?でも、私髪短いから使わないよ?」

 

 サクラが開けた袋の中から出てきたのは帯状のリボンのような白い布だった。サクラは自分の髪に一応巻いてみようとするが髪の長さが足りず上手くいかないようだ。その様子を見てカリンが声をあげる。

 

 「オーホッホッホ!!何が出てくるかと思えば!やってしまいましたわねぇアルさん!確かに可愛らしいリボンではありますがサクラさんの髪の長さでは使用するのは難しいですわっ!!この勝負!私の勝ちですわね!!」

 

 「何を言っているんだカリンさん。まだ俺のアピールタイム(ターン)は終了していないぜ!!」

 

 「なん...ですって?」

 

 サクラとカリンは勘違いをしている。そう、俺のプレゼントは『リボン』ではないのだ!

 

 「サクラ、ちょっとソレ貸してみて」

 

 「え?うん!はい!」

 

 「これはね、サクラ。こうやって使うのさ!」

 

 俺はサクラの頭を『一周するように』布を巻いていき、頭の後ろで結んだ。

 

 「はっ!?ま、まさかそれはリボンではなく!?」

 

 「そうっ!!これは......『憧れのリュウさんとお揃いの白い鉢巻(はちまき)』だっ!!」

 

 「なんですってぇーー!!?」

 

 そう、これはリボンではなく鉢巻なのだ。サクラは原作ではリュウを真似して常に白い鉢巻を巻いていたのだが、現在はリュウに会って3年程経つというのにまだ巻いていなかったのだ。その事にちょっと違和感を覚えたのでどうせならと誕生日にプレゼントすることにしたのさ!

 

 「え!?それ本当!?誰か鏡!!鏡持ってない!?」

 

 「鏡でしたらこちらに」

 

 サクラの言葉に素早く反応した柴崎が手鏡を差し出す。そして受け取った手鏡を覗き込んだサクラの顔は誰が見てもわかるほどの喜びで染まってゆく。サクラに対してリュウさん関係のものは効果絶大なのだよ!

 

 「......!!!本当にリュウさんとお揃いだぁ!!!やったぁーー!!!ありがとうアルーーー!!!」

 

 「......くはぁっ!?し、しっかりするのよカリン!まだ負けたわけではありませんわ!!いくらお揃いとは言っても所詮は鉢巻!一点ものである私のプレゼントの方がオリジナリティーという点で優っているはず!」

 

 攻撃を喰らったわけでもないのに何故かダメージを受けたカリン。しかし、自分のプレゼントと比較して勝利の可能性を見出してなんとか持ちこたえている。......だが、悪いな。その見出した希望の芽は摘ませてもらおう。

 

 「サクラ、その鉢巻の尖端の方を見てみて」

 

 「尖端?えーっと、あ!桜の花びらの刺繍がしてある!!可愛いーー!!」

 

 「リュウさんとお揃いなだけだと唯の白い鉢巻になっちゃうからね。サクラのだから桜の花びらの刺繍を入れてみたんだ。初めてだったから少し歪かもしれないけど。あと、サクラはよく動くからちゃんと布地だって一番丈夫なのを使ってるんだよ?」

 

 そう、この鉢巻、何を隠そう俺の手作りである。布を扱っている店に行って鉢巻に使えそうなのの中で一番丈夫なものを購入して一から仕立てたのだ。まあ鉢巻なので裁断するだけだったが、桜の花びらの刺繍を入れるのはかなり手間が掛かった。刺繍をしたのは初めてだったが、今まで(主に修行で)破れた運動用の服とかを自分で直したりしていたのでそれなりに上手く仕上がったとは思う。

 

 「え!?これアルが作ってくれたの!?絶対絶対大切にする!!!......えへへ、似合ってる?」

 

 「うん。とっても似合ってるよ、サクラ」

 

 「手作り(ハンドメイド)!?......私のプレゼントは職人に『作らせた』もの。アルさんの鉢巻ははアルさんが自らの手で『作った』もの。お、オリジナリティーでも、負けた?この神月かりんが、また敗れるというの?そんな事が!?で、でもサクラさんが似合っていると言われた時の笑顔は......かはぁ!?」トサァ......

 

 あ、なんかカリンが倒れた。柴崎達が駆け寄るとフラフラしながらだが立ち上がったので多分大丈夫だろうが。というか、なんでそんなにダメージ受けてんの?1人だけ闇のゲームにでも参加してたのか?ま、とにかくこれは勝負あったかな?

 

 「お嬢様お気を確かに!......仕方ありませんね。サクラ様、勝者の発表をお願い出来ますか?どなたのプレゼントが最も嬉しかったのかをお教えくださいませ」

 

 カリンの状態を確認していた柴崎がサクラに誰のプレゼントが一番嬉しかったのかを発表するように促す。司会進行はカリンがしていたが、今はそれどころではないようだ。だからどんだけショック受けてんだよ。

 

 「えーっとね、どのプレゼントもすっごく嬉しかったよ!!でも、一番はアルがくれた『コレ』!!えっへへ!!」

 

 そう言ってサクラは自身の頭に巻いたままの鉢巻を指差す。うっし!今回は俺の勝ちみたいだ。いや~運が良かった。今回は偶々サクラの好みにどストライクなものだったけど、これほど喜ばれるものはそうそう用意できないし考えつかない。去年なんて『アルトリウス指名券(使えば俺と組手がいつでも出来る)』だったし、流石にカリンの用意したプレゼントには勝てなかっただろう。

 

 「成程。ありがとうございましたサクラ様。お聞きの通りこのプレゼントタイムの勝者は日向涼様とさせていただきます。賞品に関しましては後ほどご自宅の方に配送させていただきます。それでは皆様、引き続きパーティーをお楽しみ下さいませ」

 

 柴崎の宣言でこの企画は締めくくられパーティーが再開された。自宅に送られるという賞品が少し気になるが今はパーティーを楽しむとしよう。とりあえず、デザート(二周目)でも回るとしますかね。料理は二周したけどデザートはまだだったんだよな。

 

 

 そして暫くして復活してきたカリンに『来年こそは......いえ、次回の模擬戦では絶対に負けませんわ!!覚悟しておきなさい!!』と言われたり、サクラにデザートを取りに行かされたりしている内にパーティーは終了した。ちなみにパーティーが終了した時に会場の外で盛大に季節外れの花火が何発も打ち上げられた。何度もいうが絶対に小学生の友人の誕生会というレベルじゃないだろ。

 

 「今日は慣れない服とか着て緊張したけどとっても楽しかったよ!!ありがとうカリンちゃん!!」

 

 「オーホッホッホ!!楽しんでいただけたのならなによりですわ!!プレゼントの方は後日『指定の場所』に運ばせますわ。帰りの車も用意してますからどうぞお使いになって。アルさんに負けこそしましたが私も非常に楽しかったですわ!!それではお二人共!ご機嫌よう」

 

 そう言ってカリンは屋敷へと戻っていった。しかし、『指定の場所』って言う時にこっちを見て笑っていたように思うんだが、気のせいかな?......まあ、色々凄いパーティーだったけど楽しかったのは確かだな。

 

 「すっごく楽しかったね!!それに......えへへ~~!!鉢巻ありがとね!アル!!」

 

 サクラも笑顔だし、今回の誕生日会は大成功だといえるだろう。闘ったりしなくてよかったし、今回は珍しく特にトラブルもなく平和に終われたんじゃないかな?

 

 

 

 

 

 翌日。俺の家には神月から『2つ』の荷物が届いた。一つはプレゼントタイムの賞品で、内容は『超大型レジャー施設神月ランド永久フリーパス券』だった。この券を入り口で提示すれば、本人だけでなく10名までなら無料で入場できアトラクションにも乗り放題というなんとも太っ腹なものだった。神月ランドは世界でも有数の大型レジャー施設であり、その入場料は子供料金で5千円を軽く越えていく。アトラクションをフリーパスにすると更にお高くなるのでこの永久フリーパスがどれだけの価値があるかわかってもらえると思う。とりあえず、豪華賞品の名に恥じないものだった。

 

 問題は、送られてきた荷物が2つであったことだ。俺が学校から帰ってくると2つとも送られてきていたのだが、フリーパスの方はアリス母さんから普通に渡されたのだがもう一つの方は俺の部屋に直接運び込まれていたのだ。ちなみに俺の部屋に運び込まれたものを見た時の現在4歳のアナスタシア(俺の妹であり、女神)の感想は『ピカピカしてキレーなサクラおねーちゃんがいる!!』だった。そう、勘の良い人ならばもうおわかりだろう。『1/2スケールクリスタルサクラさん』です。......やりやがったなぁ!!サクラァ!!せっかく穏便にパーティーを乗り切れたと思ったのにぃ!!妙なオチをつけやがってぇ!!

 

 その後、文句を言ってやろうとサクラを探していたら、何故かウル父さんとおじいちゃん達にカレンさんまでセットで一緒に道場に居ていつもより激しい修行の末に物理的に(意識を)落とされました。解せぬ。





 今回書きたかったことは、

 サクラに鉢巻を装備させる

 バーディーの現状

 前回の話での誕生会の伏線回収

 です。

 ......なんで一万一千字になっちゃったんだろうか。

 あ、最後におじいちゃん達が道場に居たのは一日遅れでサクラの誕生日を祝うためです。アルはタイミングが悪かったんです。

 次の話は今現在の主人公の日常的な一日の様子を五千字くらいの短編?で書いて見る予定です。格闘シーンはあると思いますが、字数の関係上あっさりとしたものになると思われます。

 次話の投稿についてですが、字数が少ないので本来なら早く投稿できるはずですが、ちょっと資格的なものの勉強をしなくてはいけなくて少しばかり遅れそうです。というか、今回の話を投稿するのが遅れたのもそれが原因だったりします。そこまでおまたせすることにはならないと思いますが、ご容赦願います。多分、10日くらい...かな?

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