明日に波動拳   作:路傍の案山子

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 大変お待たせいたしました。

 無事資格の方も習得できました。勉強の合間にちょこちょこ書いたりしてたんですけどやっぱり筆がなかなか進まなくて。

 今回は外伝長編の導入部分に当たります。色々といつもと感じが違いますが、ご了承ください。あと、今回ギャグ控えめ、格闘要素ほぼ皆無です。導入なんで。
 
 それではどうぞ。


13.5話 1ラウンド目 囚われのクリミナルアッパー

 

 

《 アメリカ とある街の市長室にて》

 

 

 

 「なんということだ......っ!」

 

スーツの上からでもわかるほどに立派な体格を誇る壮年の男性から何かを嘆くような声が零れた。彼の体格に合わせて特別にしつらえたのであろう大きな椅子に座り、しかしその体を丸めるように力無くデスクに項垂れている。その姿は普段の彼からは想像もできないほどに弱々しく、抱えている悩みの深刻さを物語っていた。

 

 「アメリカの弁護士が全滅だとっ!いくらなんでもこれは異常だ!明らかに何者かが“彼”を陥れようとしている!!」

 

 この男の嘆くのも当然だった。これでもこの男はこの街の市長なのだ。その市長が声を掛けたというのにどの弁護士事務所も“彼”の弁護を受け入れようとしない。ある事務所など、何かに怯えるような素振りまで見せていた。“彼”を救いたい男にとって、この事実は明らかに凶報だった。

 

 「......国から用意される弁護士にも確実に手が回っていると考えるべきだろう。このままでは確実に“彼"が有罪となってしまうっ!」

 

 確かに男が救おうとしている“彼”の普段の素行はお世辞にも余り良いとは言えない。ほぼ毎日ストリートファイトを繰り返し、国際路上格闘規定法に違反するかしないかのギリギリな喧嘩まがいのファイトだってしょっちゅうだった。しかし、

 

 「......暴行殺人などありえないっ!!彼は確かに粗暴だが誰よりもファイトを楽しんでいた!!相手をぶちのめし過ぎないようにする手加減だって誰よりも上手かった!共に闘った私にはわかるっ!!」

 

 この男は“彼”のことを知っている。“彼”が手加減を間違うなどということがどれだけありえないことなのかを、自身もまたファイターであり、かつて共に闘った男は痛いほどに理解していた。そして......“彼”が恋人を救う為に悪の組織に闘いを挑み、立ちふさがるものを打ち倒し見事に恋人を救い出した“英雄”と呼ぶに値する精神を持つ人物であるということも。

 

 「......どうすればいいっ!何か、私に出来ることはないのかっ......!」

 

 だからこそ男は己の無力を嘆いた。何者かに陥れられようとしているかつての仲間を救うことが出来ない自分を。“自分の娘”を救ってくれた英雄(ヒーロー)に、なにもしてやることが出来ない自分を。

 

 「何かっ!何かあるはずだっ!考えろ!考えるんだハガー!!貴様はこのメトロシティの市長ではないかっ!!」

 

 男――メトロシティ市長、マイク・ハガーは悔しさのあまりデスクに拳を叩きつける。それほど力は入れていなかったが、壊れにくいように特注された合金製のデスクは激しく軋みをあげた。その拍子にデスクから数枚の書類や備え付けられたペンなどが床へと落下した。そして、偶然なのか、あるいは必然であったのか、一枚の便箋がハガーの前へと舞い落ちた。

 

 「む。......イカンな。つい取り乱して物にあたるとは。......ん?この便箋は......っ!そうだ!(アメリカ)がダメでもまだ外がある!まだ希望は残されている!」

 

 そう叫ぶや否やハガーは部屋に備え付けられた電話へと向かい“国際”電話をかけたはじめた。先程舞い落ちてきた便箋の差出人に向かって。

 

 

 

 

 

 『おや、君からの電話とは珍しいですね。どうかしましたか?』

 

 電話の向こうからは落ち着いた雰囲気の紳士的な口調が聞こえてくる。電話に出たのが目的の人物であるとわかったハガーは開口一番その人物に助けを求めた。

 

 「すまないアルバート殿!力を貸して欲しい......っ!」

 

 『ふむ。......良いでしょう。他ならぬ君の頼みだ。話をお聞かせ願えますかな』

 

 「...!!感謝致しますっ!実は――」

 

 ハガーはその返答に一縷の希望を見出すと、今自分が抱えている悩みを電話の相手――“アルバート・S・エリオット”へと打ち明け始めたのだった。

 

 

 

 『成程、事態は概ね理解しました。君はその“彼”を助けるために、“彼を陥れた者と絶対に関わりのない弁護士”を用意して欲しい、そういうことですね?』

 

 「ええ、そのとおりです。......アメリカでは“彼”が有罪であるかのような報道がなされていて自ら受けようなどという弁護士はいなかった。依頼をしようにも既に何者かの圧力がかかっているらしく誰も応じてはくれなかった。このままでは国選弁護人が弁護を担当することになるでしょうが、まず間違いなくそこにも何者かの手が回っています。このままではどうやっても彼が有罪になってしまう......っ!せめて、まともな弁護士をつけることができればと」

 

 『ふぅむ。アメリカの弁護士が使えないとなると私がいるイギリスからになりますね。ああ、そういえば。......少し待っていただけますかな?』 

 

 「は、はぁ。構いませんが......」

 

 『それでは少しばかり確認したいことが出来ましたのでお待ち下さい。なに、すぐに済みますので電話はそのまま繋げておいて構いませんよ』

 

 アルバート・S・エリオットはイギリスの枢機卿である。それに加えてハガーよりも年齢も上であり、ハガーは格闘家としても彼の事を尊敬しているし今は無茶なことを頼んでいるのだ。待てと言われては待つしかなかった。アルバートは受話器から顔を遠ざけて何やら調べているらしいが、途切れ途切れだが少しだけアルバートの呟きが聞こえてきた。

 

 『た...か今、神月......に連れ...れ...ア.........スとサ......んが......マスターズ...会......メリカに居......したね。ふむ、......うどよい......ね。...れも......経験......ょう』

 

 聞こえてくる単語の中には“神月”や“マスターズ”といった世界的な大企業の名前があったが、それでけではハガーにはアルバートが何を考えているのかがわからなかった。

 

 『......お待たせ致しました。ちょうど今アメリカ(そちら)に私が動かせる人材が居りましたので、その者でよろしければ弁護士としてそちらに向かわせましょう。そちらでは無名の新人ということになりますが、かまいませんか?』

 

 「ああ、かまわないとも!もとよりこのままでは可能性などなかったのだ。新人であろうと助かる可能性が上がったことには変わりはない!この御恩、いつか必ず返させていただく!」

 

 『いえいえ、お気になさらず。――こちらにとってもそう悪い話ではありませんでしたからね(ボソッ)。......それでは私は今からその者に連絡すると致しましょう。その者から君の方に直接連絡をさせますから協力してあげてください。それでは私はこれで失礼しますよ』

 

 そこで電話は切られてしまったが、藁にもすがる思いであったハガーは深く感謝の念を抱いたのだった。

 

 「......これで最悪のケースだけは回避できたか。今の私ではこれが精一杯......すまない、コーディー」

 

 ハガー再びデスクの椅子に座り直すと、彼―――“コーディー・トラバース”への謝罪を口にした。一方その頃、電話の相手であったアルバートは―――

 

 「ふふっ。“彼”とやらには申し訳ありませんが、これは面白い展開になったものですね。さて、“あの子達”に連絡を入れるとしましょうか」

 

 紳士的とはいえない笑みを浮かべ、何処かへと電話を掛けるため再び電話に手をのばしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《 2日後 アメリカ、メトロシティ中央警察署留置室 》

 

 

 

 

 ――どうしてこうなった。

 

 あの日はいつもと変わらない朝だった筈だ。数日前に優勝した小さな大会の賞金で懐がそれなりに暖かったから、昼間っから酒場で遅めのランチと洒落こんだ。そこでちょいと賭け事をして、それで勝ったもんで少しばかり......それなりに酒を飲んだ。しばらくしてチンピラに絡まれたからいつも通りに喧嘩でのして、そのまま家に帰って寝た。そんなクソみたいにありふれた一日だった筈だ。それなのに。

 

 

 

 『コーディー・トラバースだな?警察だ!!貴様には暴行殺人容疑で逮捕状が出ている!署まで来てもらおうか!』

 

 

 それからはあっという間だった。態度の悪い警官に連れられてこの留置所にぶち込まれて次の日には容疑者から完全に犯人扱いだ。差し入れに頼んだ新聞を読んだ限りでは俺の判決は有罪でほぼ確定だそうだ。『いつかはやると思っていた』だとか『メトロシティの恥さらし』、『地に墜ちた英雄』だの好き放題書かれてた。世間での俺の評価は『メトロシティの英雄』から『薄汚い犯罪者』に掌を返すようにあっという間に変わっちまった。

 

 「......俺はやってねぇ」

 

 酒に酔って加減を間違えるほど腕は錆びちゃいねぇ。そもそもそこまで酒に弱くねぇ。こっちとら年中ストリートファイトや喧嘩をやってんだ。どれくらい殴ったらヤバイかは医者よりも正確にわかる自信があるぜ。だから確信をもって言える、あの夜にぶちのめした奴は絶対に死んじゃいないと。次の日には普通に動き回れただろうし、悪くても風邪をひくくらいのものだろう。

 

 「......ジェシカ」

 

 昨日面会に来てくれた恋人の名前を無意識に呟いてしまった。昔、『俺は普通には生きられねぇ。それでもよけりゃあついてきな』そう言った事があったけな。流石にこんなことになるとは俺も思っていなかったけどよ。皮肉なもんだぜ、こんなことになってからハイスクールのガキどもみたいにお前(ジェシカ)に会いたくなるなんてな。彼女の父親――ハガーのオッサンが俺を助けようと手を尽くしていると言っていたが、恐らく望み薄だ。世間はもう“出来上がって”いる。コイツを覆すには、ちょっとやそっとのレベルではない逆転劇が必要だ。いくらハガーがこの街(メトロシティ)の市長だとしても限界ってもんがある。

 

 「おいっ!!コーディー・トラバース!!貴様に面会だ!!さっさとこっちに来い!!どうやら『英雄様』を庇ってくださる弁護士様の登場だぜぇ。精々その汚いケツでも使って媚を売るこったな!ひゃぁーはっは!!」

 

 ......もしここから出られたらこの看守は絶対にぶっ飛ばす。絶対にだ。

 

 「なんだぁ?その反抗的な目は!?本官に逆らうのかァ?ん?明日の裁判を待たずして有罪になりたいのか?ま、どうせ明日には有罪になるんだろうからそんなに変わりはねぇだろうがよ!あの脳筋市長がなにやら頑張っているらしいが、無駄なことしてると思わねえか?ええ?」

 

 「......テメェ」

 

 「どうした?ほら、殴れよ?この腰抜け野郎が!!どこが英雄だ?こんな男に昨日面会に来た女は勿体ねえなぁ?なんなら俺が貰っ「待ったっ!!......そこまでにしていただきましょうか。こちらは先程から待たされているんだが?」......あぁ?ッチ!弁護士か」

 

 大きな声が看守の不快な声を遮ったと思ったら、誰かがコッチに向かってくる足音がした。看守の呟きか察するにどうやら俺の弁護人らしい。

 

 「弁護士?......アンタが?」

 

 思わず聞き返しちまった俺は悪くねぇと思う。入ってきた二人はとにかく怪しかった。看守の声を遮った方は身長は多分170くらいか、青色のスーツに真っ赤なネクタイという服装だ。髪型は銀髪をオールバックにしているんだが、なんか後の方が妙にギザギザとしていやがるし、余った髪を束ねてスーツの首元から服の中に入れて隠してる。無理矢理ロングヘアーを今の髪型にセットしたような違和感が拭えねえ。まあ、ここまでは別にいい。いや、正直趣味はよくねーとは思うがどうでもいいんだ。問題は顔だ。いや、すんげぇブサイクとかそういうんじゃなくて、顔が見えねぇんだよ、物理的に。

 

 「ああ、このバイザー付きの仮面は気にしないでください。目の病気でコレがないといまいちよく見えないんですよ。あと、このマスクは少しばかり風邪気味でして。ご容赦願いたい」

 

 金属製の赤い三本のバイザーがある仮面を被ってるし、口元をマスクで隠していやがる。肌の色がわからないほどに顔面が隠れている。首は見えてるから肌の色が白いってことはわかるが、それ以上に首の細さが目立つ。あと、全体的に身体つきがひょろっちい。そのくせ声はくぐもってはいるが確かに男の声だった。どうにも胡散くささが拭えねえ。......こんなのが本当に俺の弁護人なのか?冗談きついぜハガーのオッサン。

 

「おい!貴様!弁護士だかなんだか知らんが誰の許可を得てここに入ってきた!?ここの担当責任者は俺様だぞ!わかってんのか!?ああん!?」

 

「......ねえ、アr......じゃなかった、ライト君。このオジサン本当に警官なの?何か悪者っぽいからぶっ飛ばしていい?」

 

 いきなり物騒のことを言い出したのはさっきの弁護士と一緒に部屋に入ってきたもう一人の――ガキだった。しかも、女の。そしてこちらもさっきの弁護士に負けず劣らずへんてこな格好をしていやがる。髪型や顔はそこまで変じゃねえ。変なマスクや仮面をつけたりはしてねえし。強いて言えばロングヘアーの一部をなんてったかな?チョンマゲ?まあ、そんな感じに結んでる。女の髪のことなんて詳しくねえが、少なくとも最近の流行りじゃねえな。そしてなんといっても服だ。ジャパニーズキモノ?いや、ユカタだったか?まあとにかく白いそんな感じの服にこれまた昔のジャパニーズが来てそうな紫の上着?のようなものを着ている。まあ、なんというかあの鎧野郎(ソドム)が喜びそうな格好している。お前なら鎧野郎(ソドム)と同じ様な趣味の格好のやつをどう思う?俺は怪しいとしか思えねえな。

 

「まあまあ、ここは俺に任せておいてよサマヨイちゃん。ええっと、担当責任者さん、許可でしたっけ?貰いましたよ、勿論」

 

 「なにぃ?どこのどいつだ!?勝手なことをしやがって!!......まあいい。さっさと出ていきな。まだコイツは身体検査を今からしなきゃならないんでねぇ。面会室に戻ってもらいましょうか」

 

 どうやらコイツはまだ俺のことを虐めるつもりらしい。参ったね、男になんかモテたくないぜ、チクショウめ。コイツをぶっ飛ばすときに蹴りのフルコースも追加してやる。

 

 「おや?それはおかしいですね。......今の発言、明らかにムジュンしていますよ?」

 

 「ムジュンだとぉ!?俺は嘘なんてついちゃいねぇぞ?それともなにか?証拠でもあるってのかい?あぁん!?」

 

 「証拠ですか。......勿論ありますよ」

 

 「もちろんそんなもんあるわけ......なにぃ!?」

 

 ん?なんだ?風向きが変わりやがったな。

 

 「その証拠はコレです。くらえっ!!......カチッとな」

 

 ――『おいっ!!コーディー・トラバース!!貴様に面会だ!!さっさとこっちに来い!!どうやら“英雄様”を庇ってくださる弁護士様の登場だぜぇ』

 

 「な、な、なんだコレは!?」

 

 こいつは驚いた。さっきのクソ警官のセリフじゃねぇか。

 

 「ボイスレコーダーですよ。依頼人の証言を記録する予定だったのですが、いや~おかげさまで面白い会話が録れましたよ。ほら、ちゃんとご自分でさっさとこっちに来いって言ってるじゃないですか。あ、勿論この後の会話もバッチリ残ってますので。これ以上何か仰るようならしかるべき機関の方に提出いたしますが」

 

 「ま、待ってくれ!!いや、そのわ、わかった!!おいコーディーさっさと面会室に行け!!......これでいいんだろ!?」

 

 おお、焦ってる焦ってる。はっ!いいざまだぜ!まあ、いつかぶん殴るのには変わりはないが少しはスカッとしたぜ。

 

 「ええ。それではコーディー・トラバースさんですね。面会室の方に行きましょうか。行くよ、サマヨイちゃん」

 

 「な~んだ。ファイトはなしか~。まっ、このオジサン弱そうだからいっか」

 

 さっきは怪しいとしか思わなかったが、このガキとは少し気が合いそうだ。弁護士もどうやら見かけの割になかなかやりやがるみたいだ。さっきは少し絶望しかけたが、これなら少しは希望があるかもしれねえな。とりあえず今はついていくとしますかね。

 

 

 

 「さて、それでは自己紹介をさせていただきましょうか。私の名前は『フェニックス・ライト』。この度はメトロシティ市長のハガー様とその娘さんから依頼を受けてまいりました。元々はアメリカの弁護士ではないのでこちらでは全くの新人ということになりますが、全力で貴方の無実を証明するお手伝いをさせていただきます。そしてこっちの女の子が『綾里サマヨイ』、こちら風にいうならサマヨイ・アヤサト。まあ、私の助手のようなものです。こう見えてなかなか有能なんですよ」

 

 「え~と、アヤサトサマヨイ?...です!よろしくね!オニーサン!」

 

 「お、おう。俺はコーディー・トラバースだ。まあ、あんたらも知ってはいると思うが今は容疑者ってことになってるしがない喧嘩屋さ。よろしく頼むぜ?弁護士サンよ?」

 

 「ええ、よろしくお願いしますね」

 

 面会室で自己紹介をして握手をかわす。......なんだ?こいつの手、義手かなにかなのか?嫌に硬いな。それにしちゃあ普通に動いてるみたいだが。やれやれ、どこまで胡散臭くなれば気が済むってんだ。

 

 「そういえばそこで見てる看守は信用できるのか?さっきの担当責任者様とやらは酷いもんだったが」

 

 「彼なら大丈夫ですよ。安心してください。先ほど話しに出た許可を出してくれたのも彼ですしね。先程の担当責任者なんですが、どうもここ最近『急に』責任者の地位まで昇進したらしくてですね。元々それほど優秀ではなくむしろ素行の悪い事で有名だったそうですよ。......警察も全てが腐っているわけではないということです」

 

 そうフェニックス...長えからライトでいいか。ライトの奴が目を向けると俺達の面会を監視していた看守がこちらに顔を向けて話し始めた。

 

 「......コーディー・トラバース。先程は担当者がすまなかったな。最近急にあの野郎は偉くなりやがってな。好き放題しているんで俺達も困っていたのさ。それに......俺の妹は昔『マッドギア』の奴らに酷い目に遭わされそうな所をお前さんに救われたんだ。お前は助けた覚えなんてないかもしれんがこの事実は変わらない。だから俺はお前を信じている。こんなことしかしてやれなくてすまないな。それと......妹を助けてくれてありがとう」

 

 「ということで彼は信用しても大丈夫ですよ。これも日頃の行いの賜物といったところでしょうか。『情けは人の為ならず』というやつですね」

 

 「......そうかい」

 

 なんだってんだよ。容疑者相手に看守が面と向かって礼を言ってんじゃねえよ。......なんかムズムズすんじゃねえか!

 

 「さて、もう裁判は明日です。事件の概要などを貴方の口からお聞かせ願いたいのですが、よろしいですか?」

 

 「ああ、わかったぜ。......なあ、弁護士さんよ」

 

 「はい、何かありましたか?」

 

 “堕ちた英雄”に“怪しすぎる弁護士”と“ちんちくりんな助手”。なんとも頼りない組み合わせだが、こういう危なっかしいのもなんていうか、“俺らしい”のかもしれねえ。“英雄”なんてもんには未練はねえが......賭けてみようじゃねえか。

 

 「俺は確かに暇さえあれば喧嘩まがいのストリートファイトばっかりしてるようなやつだ。だがよ......俺はやってねぇ。だから、俺の無実を証明してくれ」

 

 そして自由の身になって、ジェシカを抱きしめてとびっきりのキスをしてやるのさ。あと、あのクソ警官を合法的にぶっ飛ばす。

 

 「......ええ、勿論です。私は依頼人を信じることが弁護士において最も大切なことだと思っています。貴方が真実を語っているのなら、必ず無罪を勝ち取ることが出来るはずです」

 

 「アr......じゃなかった。ライト君はとっても頭がいいんだよ!カリンちゃんにだって国語は負けてないんだから!!泥船に乗った気でまかせればいいよ!!」

 

 「サマヨイちゃん。泥船じゃなくて大船ね。沈むから。泥船だと沈んじゃうから。コーディーさんもあまりこの子のいうことは気にしないでください。優秀なのはこういった方面ではないので。......後で国語の復習を追加しなきゃな」

 

 

 

 ......いきなり不安になってきたな。本当に大丈夫なのか、こいつら。

 





 フェニックス・ライト......いったい何トリウス・エリオット・ヒューガーなんだ。

 ということで、今回はファイナルファイト組のお話になります。コーディーとかはストリートファイターに参戦してるんですけど、出典はファイナルファイトなんで、外伝扱いとなりました。

 そして今回、なぜか逆転裁判風味です。まあ、同じカプコンなんでこういうのもありかなって。 

 次回は法廷パートです。本当は全く忍んでない『すにぃかぁ』を履いたニンジャが出せるところまで進めたいんですが、でるかどうか今のところ微妙なラインです。もしかしたら次の話でも格闘シーンがないかもしれません。最後の方にはちゃんとある予定なんで、それまで我慢してもらうことになるかも。

 そういえば、主人公視点がない話は今回が初めてですね。外伝なんで色々と試行錯誤してみた結果、主人公の霊圧が消えました。仕方ないね。

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