明日に波動拳   作:路傍の案山子

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 本当にお待たせいたしました。

 予定よりかなり遅れてしまいましたが、ようやく新しいパソコンを購入いたしました。活動報告の方にも書きましたが、データのサルベージに失敗して設定資料とかを作り直してたら携帯で全然話をかけませんでした。

 しかし、これ以上おまたせするのもどうかと思うので一旦途中ですが投稿いたします。ちょっと、見直しが足りないかもしれないので、何かありましたらご指摘お願いします。本当は今回で裁判パートをすべて終わらせるつもりだったんですが、NINJAすら出せませんでした。次回は絶対に格闘というか乱闘的なシーンが入りますので今しばらくお待ち下さい。

 それではどうぞ。


13.5話 三面 矛盾するガム野郎

「では係官、現場の調査をした警官を証言台にお連れしてください」

 

 裁判長が係官に次の証人となる『現場を捜査した警官』を連れて来るように指示をだす。アウチ検事はかなり自信があるようだ。......さて、何が出るかな。

 

 しばらくして係官がかなり大柄な警官を連れて戻ってきた。体格が良いというかずんぐりとした体型をしていて、どことなくバーディーのものと似た髭を生やしている。此方を、というかコーディーの方をみながらニヤニヤとした笑みを浮かべている......ガムを噛みながら。

 

 ......こいつ、エディ・Eじゃね?ファイナルファイトシリーズに出てくる悪徳警官じゃね?ファイナルファイトはやったことないので余り詳しくはないが、こいつは結構有名(主にガムの関係とかで)なので多分間違いないと思う。特徴が一致してるし。

 

 「よおぅ、英雄さん。いい様じゃねぇか。俺はいつかこうなるんじゃあないかと思ってたぜぇ?」

 

 「......よりにもよってお前かよ。相変わらずな面だなエディ・E」

 

 ああ、やっぱりエディ・Eだったようだ。確か、初代ファイナルファイトの三面辺りのボスだった筈だ。一応警官の筈なのだが、犯罪組織のマッドギア側の一員(幹部?)として出てくることからもわかるが、相当な悪人である。いつかこうなるんではないかとか言っているが、絶対こいつの方が逮捕されるべき人間である。お巡りさんこいつです。あ、こいつ、お巡りさんだった。

 

 ボスとしての強さは攻撃範囲が広かったり、迂闊に近づくと投げられたりとなかなかのものでコーディー達を苦しめるらしい......のだが、彼のことを俺が知っているのは『ガム』にまつわるネタがあるからだ。

 

 エディ・Eは戦闘開始時にガムを床に吐き捨てるのだが、なんとこのガムは回復アイテムになるのだ。しかもかなり回復量だったり、体力が満タンの時に取ると大量のボーナスポイントが得られるという本当にただのガムなのか疑わしい代物だ。だからといって床に吐き捨てられたガムを食べる(正確に言うとプレイヤーに食べさせられる訳だが)コーディー達も大概だと思う。

 

 まあ、こんな感じでインパクトのあるエピソードなので『ハイスコアガール』という、所謂レトロゲーム世代の青春を描いた漫画でネタにされたりしていたのだ。ちなみにその漫画にはストリートファイターのキャラ達も出てくる。というか、メインキャラクター並みに出てくる。特にガイルが主人公のスタンド(幽波紋)みたいになってる。

 

 「......え、ええっと。貴方が現場の調査をされた警官の方ですかな?......なんだか聞いていた印象と違うのですが。と、とりあえず証言をお願いいたしますぞ」

 

 「おう、任せときな検事さんよ!――クチャクチャ――メトロシティのエリートである警察俺様が来たからには――クチャクチャ――コーディーの有罪は間違いねえからな」

 

 「......よく言うぜ。汚職の塊みてえな癖によ」

 

 なんで貴方が焦ってるんですかアウチ検事。というか、実際に会ってないのになんであんなに自信満々だったのか。どんな話を聞いていたのか気になるところだ。後、エディ・Eは法廷でまでガムを噛むんじゃない。

 

 「それではエディ警官、証言をお願いいたします」

 

 「待ったっ!!」

 

 「なんですかな、弁護人?」

 

 「......とりあえず、証人にガムを噛むのをやめるように言ってもらえますか?ここ、法廷ですよね?」

 

 証言に入る前にこれだけはどうにかしておきたい。そもそもなんで誰も注意しないんだ。そしてサマヨイちゃんはその取り出したフーセンガムをしまおうか。いいね?

 

 「......それもそうですな。あまりにも堂々としているので流してしまうところでした。証人、ガムを噛むのをやめるように」

 

 「......ちっ」

 

 「............。」

 

 裁判長が注意すると渋々ガムを包みに吐き捨てるエディ。一応床に吐き捨てないくらいの分別はあったようだ。あと、コーディーが物欲しそうにガムの包みを見ていた気がするが、もしかしてあれってネタじゃなくて本当に食べたりしてないよね?ないよね?

 

 「それではエディ警官、改めて証言をお願いいたします」

 

 「へへっ、覚悟するんだなぁ、え?コーディーよう。お前が犯人だっていう『決定的な証拠品 』があるんだからなぁ」

 

 『 決定的な証拠品』ねぇ。というか、弁護側に全然そういう情報入ってきてないんだけど、おかしくね?なんで検察側は知ってるのにこっちはダメなんだよ。この世界の裁判制度は一度全部見直すべきだと思うね、本気で。

 

 ~証言開始~

 

 「現場を調べれば誰が犯人かは一目でわかったぜ!そこのコーディーは間抜けなことに決定的な証拠を残してたんだからなぁ。だから俺たち(警察)はソイツを逮捕したのさ」

 

 ~証言終了~

 「......え?もう終わりですか?......えーと、それでは弁護人、尋問をどうぞ」

 

 「......わかりました」

 

 とりあえず揺さぶって情報を引き出すとしよう。まあ、その前に、

 

 「ではエディ警官、もう一度証言をお願いします」

 

 ~尋問開始~

 

 「現場「待ったっ!!」な、なんだぁ!?いきなり!?まだなんも言ってねぇぞ!?」

 

 「証人は先程決定的な証拠品があると言っていましたね」

 

 「そ、それがどうしたよ!」

 

 「どうしたよ、ではありません!さっきの証言......なにも証拠品が出て来てないじゃないですかっ!!」

 

 「お、おう!?」

 

 証拠品があるなら最初からだせやっ!なんでそう重要な部分を言わないんだよ!なんでそこまでゲーム(逆転裁判)に忠実なんだよ!

 

 「裁判長!弁護側は証人に証拠品の提示を要求します!」

 

 「そうですな。......さすがに先程の証言は私もどうかと思いましたし。エディ警官、その辺りを付け加えて証言をお願いいたします」

 

 「ちっ。はいはいわかりましたよぉ」

 

 「......なんだか私まで不安になってきましたぞ」

 

 あんたが呼んだ証人でしょうが。なんでアウチ検事が一番不安そうなんだよ。さっきの自信は何処にいった。

 

 「ねーねー、ア......ライト君。もうあの人(エディ・E)が犯人ってことでぶっ飛ばさない?絶対あの人悪者だよね」

 

 「だよな。どー見てもアイツ警官じゃねえよな。つーか、まあ悪者だわな。アイツ、マッドギアに普通にいたし。ぶっ飛ばすなら手伝うぜ?」

 

 「駄目だよサマヨイちゃん。あの人はそれなりに強いみたいだし、『一応』警官だからね。あとコーディーさんは自重してください。貴方いま暴行殺人事件の被告人ですからね?有罪確定しちゃうからね?」

 

 サマヨイちゃんのある意味でもっともな意見に同調するコーディー。ぶっ飛ばした方がいいのは確かだが、腐っても相手は三面ボスだった男だ。今の俺たちよりは強い......筈だ。まあ、コーディーが参戦すれば負けはしないだろうが。裁判には確実に負けるけどね。

 

 ~証言開始~

 

 

 「コーディーが犯人なのはさっきも言ったが一目瞭然だったぜ!なんせ......被害者の胸に凶器のナイフが刺さってたんだからなぁっ!!しかもそのナイフにはコーディーの右手の指紋がはっきり出てきたんだぜぇ。だから俺達(警察)はコーディーを逮捕したんだよ!犯人はコーディーの野郎で間違ねーぜ!」

 

 

 ~証言終了~

 

 

  "ザワザワ"   "ザワザワ"

 

 「せ、静粛に!傍聴席は静粛にするようにっ!」

 

 「......ふっふっふ。そう!コレ!コレですぞっ!!こういうのが欲しかったのです!どうです弁護人!これはもう決定的ですぞ!!」

 

 エディ・Eの衝撃的な発言に傍聴席がにわかに騒がしくなる。そして復活するアウチ検事。さっきまでの不安そうな表情から一転、見事なドヤ顔である。この証言を引き出したのは俺だし、証言したのはエディ・Eでアンタなにもしてないだろ。

 

 「......それで?」

 

 「............は?そ、それでとは?今の状況がわかっていないのですかな!?凶器に指紋が残っているのですぞ!?決定的ではないですかっ!」

 

 「それはどうでしょうね?」

 

 「な、なんなのですかその態度はっ!?」

 

 正直どんな証言が飛び出てくるかとかなり身構えていたが『この程度』なら大丈夫そうだ。まあ、今のところあまり情報がないのでさっきの態度はほとんどハッタリなんだけどね。

 

 「それはこれからの尋問ではっきりとするでしょう。裁判長、進行をお願いします」

 

 「え、ええ。わかりました。それではこれより弁護側の尋問を開始します。エディ警官、証言をお願いします」

 

 

 ~尋問開始~

 

 

 「コーディーが犯人なのはさっきも言ったが一目瞭然だったぜ!なんせ......「待ったっ!!」うぉ!?またかよ!?」

 

 「『一目瞭然だった』とのことですが、現場写真はないのですか?弁護側は見せていただいてないのでわからないのですが」

 

 「へっ、後悔するなよ?こいつがその写真だぁっ!......いけねぇ、こっちだった」

 

 そういうとエディ・Eは懐から一枚のガムを......間違えて出して、慌ててしまってから写真を取り出した。どれだけガムが好きなんだよ。それにしても、ふーむ、これは......。

 

 「うわー、ぐっさりだね。なんだっけ、火サス?みたいだね~。犯人はきっと崖にいるね!」

 

 となりから身を乗り出したサマヨイちゃんが言ったように、火曜日に放送されるサスペンスものの定番のような感じである。仰向けで倒れた被害者の胸にナイフが根本まで深々と突き刺さっている。写真に写っている被害者の服装はフード付きのパーカーにデニムのズボン、黒いレザーの手袋となんというか、ストリート風?な感じである。

 

 あ、ちなみに俺もサマヨイちゃん(サクラ)もこういうのは割りと平気である。サクラはオバケとかは駄目なのにこういうのは大丈夫なんだよなー。なんでも『殴れそうだから』ということらしい。なのでフ○ディとかジ○イソンは大丈夫で貞◯とかは駄目らしい。ちなみに俺はオバケも割りと平気です。だって......何人か実際に会ったことあるし、地獄で。貞◯さんとか花子さんとか座敷わらしーずとか。

 

 さて、問題の現場写真だが......お!これは反撃に使えそうだ。先程からコーディーが何か言いたそうにこちらを見ている。言いたいことはなんとなくわかるが、今は我慢してもらおう。すぐにちゃんとその事について発言できるようにしますから。

 

 「さて、現場写真の確認も終わりましたし次に進めてもよろしいですかな。エディ警官、続きをお願いします」

 

 

 

~尋問再開~

 

 「なんせ......被害者の胸に凶器のナイフが刺さってたんだからなぁっ!!しかもそのナイフにはコーディーの右手の指紋がはっきり出てきたんだぜぇ「待ったっ!!」今度はなんだよ!?」

 

 「指紋はどのようについていたんですか?」

 

 「弁護人、それは重要な事なのですか?」

 

 「非常に重要な事です。証言に加えていただきたい」

 

 被害者の写真を見た時に気づいた事が正しいなら、これは非常に重要なポイントだ。

 

 「わかりました。エディ警官は指紋のつきかたを証言に加えてください」

 

 「指紋のつきかただぁ?こまけえ奴だな。面倒だから自分で見やがれ。ほらよ」

 

 そういうとエディ・Eはファイルをこちらに乱雑に投げ渡してきた。確認してみればそれはナイフに関する警察の資料だった。もっとも、一般公開用なのかかなり簡略化され情報量もそう多くはなかったが。まあ、『必要な情報』は手に入ったので問題はないな。さて......では反撃といこうか。

 

 「弁護人の確認も終わったようですね。エディ警官、続きを」

 

 「まったく、どこぞの弁護人の質問でなかなか審理が進みませんなぁ。エディ警官、お手数ですがよろしくお願いしますぞ」

 

 アウチ検事がイヤミったらしくリーゼント?の先端をトントンしながらエディ・Eに続きを促す。その残り少ない希望(頭髪)を毟りとってやろうか。

 

 「すみませんね。なにぶんと情報が入ってきていないもので。検察や警察が情報を『きちんと』事前に開示していればもう少し円滑に尋問出来るのですが......どこぞの検事が情報操作とかしてるのかもしれませんね」

 

 「な、なにをいきなりっ!?いっ、い、言い掛かりはやめていただきたいですぞ!ささっ!エディ警官!証言の続きを!」

 

 おやおや、俺はどこぞの検事としか言ってないですよ何をそんなに焦ってるんでしょうねぇ(ゲス顔)......というか、その反応はなんだ。ほとんど自白してるようなもんじゃないか。本当にベテランの検事なのかこの人。

 

 

 ~尋問再開~

 

 「だから俺達(警察)はコーディーを逮捕したんだよ!犯人はコーディーの野郎で間違ねーぜ!」

 

 

 

 「 異 議 あ り っ ! ! !」

 

 

 

 「い、異議ですとっ!?」

 

 裁判所に響き渡った異議の声に狼狽えるアウチ検事。......これはかなり気持ちいいな。あ、もちろん例の動作で相手に指を突きつけるところまで再現しましたよ。

 

 「......『だから俺達はコーディーを逮捕した』。エディ警官、アナタはそう言いましたね?つまりコーディーさんを逮捕した理由は『ナイフに指紋がついていたから』、ということで間違いありませんか?」

 

 「はぁ?当たり前だろうがぁ!!胸に刺さったままの凶器に指紋がついてりゃそいつが殺ったに決まってんだろぉ!」

 

 「そもそも先程も説明しましたがコーディーさんは被害者をあしらっただけで刺してなんていませんよ。それに―――そのナイフがコーディーさんの所有物でなかったとしてもですか?」

 「ぬぐわぁっ!?」

 

 俺からの質問に奇妙な声をあげるアウチ検事。......やっぱり知ってたのかこの人。

 

 「実際に聞いてみた方が早いでしょう。コーディーさん、あのナイフは貴方の所有物でしょうか?」

 

 「いいや。あんなナイフは持ってねーよ」

 

 ようやくかといった表情で否定するコーディー。さっきから言いたそうにしてたもんな。

 

 「し、しかし被告人はナイフ術の達人だということですぞっ!持っていても不思議は「甘いなっ!!」ほぁっ!?」

 

 「......アウチ検事」

 

 「な、なんですかな?そんなにバイザーを光らせてもこのアウチ、こ、怖くなんてありませんぞ!」

 

 嘘つけ滅茶苦茶声が震えてんぞ。

 

 「『得意だから持っていても不思議ではない』、そんなものはコーディーさんを逮捕する理由にはなりませんよ?」

 

 確かにコーディーの特技は『ナイフの扱い』だが、だからといって凶器のナイフがコーディーのものだということにはならないでしょうに。子供の言い掛かりレベルだぞ、今の。ぽっちゃりした人が野球をしていたと聞いて『あ、キャッチャーだったでしょ!』とか言う感じ。理不尽である。

 

 「し、しかし......そ、そう!それならばなぜ被告人の指紋がついているのですかっ!そのナイフが被告人のものでないのなら指紋など付いているはずがありませんぞ!!だいたい被告人のものでないのなら誰のものだというのですか!」

 

 「このナイフの真の持ち主、それは......被害者のモーブ・ノーワルさんですよ!!」

 

 「被害者ですと!?」

 

 俺の発言に驚きの声をあげる裁判長。傍聴席もまたざわつきだした。消去法で考えれば選択肢はそう多くはないと思うんだけどな。

 

 「な、何故そうなるのです!もしナイフが被害者のものであるならなぜ被告人の指紋がついているのですかっ!!べ、弁護人は説明できるとでもいうのですかな?凶器のナイフに被告人の指紋がついている理由を!!」

 

 「――ええ。勿論ですよ」

 

 「な......なんですとォォーー!?」

 

 俺は不敵な笑みを浮かべてさも自信があるという態度で答える......まあ、仮面とかでほとんど見えないんだけどね。アウチ検事は動揺してくれたので良しとしよう。

 

 さて、ここでさっきエディ・Eが適当に投げてよこした資料から入手した情報が重要になってくる。

 

 「先程の資料をよくご覧下さい。資料にはこう書かれています。コーディー・トラバースの右手の指紋が『逆手に持った状態で』検出された、と」

 

 「それがどうしたってんだよ?逆手だろうがなんだろうが関係ねーだろ」

 

 エディ・Eが『なに言ってんだコイツ』みたいな感じで反論してくる。......この反応、今回の事件コイツ(エディ・E)もグルだと思っていたが違ったのか。え?じゃあ本当に偶然でこの事件の捜査の担当になったのかよ。どんな巡り合わせだ。

 

 「そうですぞ弁護人!そんな記述になんの意味が「アウチ検事」な、なんですかな?」

 

 「......貴方も本当は知っているのではありませんか?被害者のナイフにコーディーさんの指紋がどうやってついたのか」

 

 「そ、そんなことはありませんぞ」

 

 「そういえばアウチ検事、1つ確認したいことがあったんですよ。――コーディーさんが被害者とした『賭け』の内容、教えていただけますか?」

 

 そう、あの時アンタが隠したことをね!

 

 「そ、それは......い、今はそんなことは関係な「関係ないかどうかはこちらが判断します。さあ、どんな内容だったのか――お答えいただきましょうかっ!!」 のごぉ!?」

 

 俺の追及にダメージを受けたのか、叫びながら仰け反るアウチ検事。......というかなんでこの世界の人は言葉だけでダメージを受けるんだろうか。

 

 「こ、このアウチが......無名の新人ごときに......こんなことが」

 

 「ア、アウチ検事?大丈夫ですかな?顔色が悪いですぞ。大丈夫なら弁護人の質問に答えてもらえますかな?その、審理が進みませんので」

 

 「――フ――――ですぞ」

 

 先を促す裁判長の問いかけに、ぼそぼそとなにかを呟くアウチ検事。ちょっと往生際が悪いんじゃないかと思う。ほら、裁判長が自分の耳が悪くなったんじゃないかって心配しだしたじゃないか。しょうがないなぁ~、ここは1つ後押しするとしますかね(ゲス顔)

 

 「コーディーさんに聞けばどうせわかることです。さあアウチ検事っ!!大きな声で!はっきりと!お願いします!」

 

 「......ええいっ!うるさいですぞっ!......ナイフフィンガーゲームですぞ!!これでいいですかなっ!」

 

 「ないふふぃんがーげーむ?なんですかなそれは?」

 

 「ねーねー、私もわかんないよ。何それ?」

 

 どうやら裁判長とサマヨイちゃんは知らないみたいだ。まあ、俺も正式な名称なんて知らなかったけど。ファイブフィンガーフィレットとか呼び方も色々とあるみたいだし。

 

 「簡単に説明するとテーブル等に片手をついて指を広げ、その指と指の間をもう片方の手で『逆手に』持ったナイフで往復するように刺していきその早さを競うものです。ほら、西部劇とかでよくあるじゃないですか」

 

 「おおっ!それなら私にもわかりますぞ!あの観ているだけでヒヤヒヤするアレですな!」

 

 「私もこの前観たからわかるよ!金曜日に!」

 

 どうやら二人とも理解出来たみたいだ。俺も転生前にナイフの代わりにペンとか鉛筆とかでやったことがあるが、あれはミスるとペンでもかなり痛い。まあ、とにかく危ないので(特にナイフでは)良い子は真似しちゃ駄目だぞ!お兄さんとの約束だ!

 

 「そう、そのゲームでコーディーさんは被害者と賭けをした。当然、そうなると......」

 

 「ああっ!被告人の指紋がナイフにつきますな!しかも、凶器についていたのと同じく逆手に!」

 

 状況を理解した裁判長が説明してくれる。あの時アウチ検事が賭けの内容を誤魔化したのがずっと気になっていて、現場写真のナイフのグリップ(片側に指をかけやすいようにした形)の向きが被害者の頭の方に向いているのを見た時にピンときたのだ。逆転裁判風に言うなら『ロジックが繋がった』といったところだろうか。そしてナイフの資料を見た時に案の定指紋が逆手についていたと書かれていたので、実はあまり自信はなかったがハッタリを効かせて問い詰めてみたら意外といけてしまいました。本当にこの国の司法が心配になった。

 

 「お、お待ちくだされ裁判長っ!そもそもそのナイフが本当に被害者のもので、弁護人が言ったように賭けに使用されたならば被害者の指紋がついていなければおかしいですぞ!」

 

 「......残念ですがアウチ検事、その主張は無意味ですっ!これを見てください!」

 

 そして俺はアウチ検事の主張にある証拠品を『つきつける』。

 

 「それは......現場写真ですかな?そ、それがどうかしたのですかな?」

 

 「その写真に写っている被害者の服装をみれば一目瞭然です。被害者は手袋をしています!被害者の指紋がついていなくても何も不思議ではありませんっ!!コーディーさん、被害者とゲームをした時どちらが先にしましたか?」

 

 「奴の方からだな。自信がありそうだったのにてんで普通だったからガッカリしたんだよ。他の客に聞けばわかると思うぜ?ギャラリーも少しはいたしな」

 

 「ぐ、ぐぬぬぅ......」

 

 悔しそうに唸ってるけどアウチ検事よ、もう少し写真とかの情報みようぜ?それとも此方が気づかないとでと思ったのか?まあ、どっちだったにしろとりあえず ......ざまぁwww

 

 「ふむ、そうなると......ナイフだけでは被告人を逮捕する理由としては不十分なように思えますな」

 

 「お、おいおい冗談はよしてくれよ裁判長さんよぉー!?確かにそっちの弁護士さんが言うようなら逮捕したのはアレだったかもしれねーがよ、賭けのこととかその場でわかるわけねーだろ!それにぱっと見どー考えてもコーディーの野郎が一番怪しいじゃねーか。ガイシャは死んでるしよぉ。つまりはだ......俺は別に何も悪くないよな?なっ!!本官は職務をちゃんと遂行しだけだぜ!ということで後は任せたぜ検事さんよ!」

 

 このままでは自身が責められると思ったのか、捲し立てるように言い訳を並べると証言台から法廷の隅へと引っ込んでいくエディ・E。事件を捜査した警官なので法廷から出ていくことは出来ないが、さも『もう自分の役は全部終わった』という表情で存在を消そうとしている。流石はマッドギアが壊滅したのにしれっと警官を続けている男だ。すっとぼけ方がなんというか堂に入っている、誉められたことではないが。

 

 さて、これで大分不利な状況を崩せた筈「......ふっふっふ、いやぁまさかこのアウチにここまで食い下がるとは思いませんでしたぞ。......しかし、それもここまでですねぇ」......どうやらまだ何かあるみたいだ。アウチ検事が気持ち悪いほどニヤついている。おいその表情やめろ、コーディーとサマヨイちゃんがイラついてるから。二人ともムカつくのはわかったから一旦その握った拳を開こうか、ね?

 

 「ここまで、とは?どういうことでしょうか?私にはむしろさっきから弁護人にやられっぱなしに見え「うおっほんっ!!とにかく裁判長!検察側は次の証人を呼ぶ準備があるのです!!」つ、次の証人ですか?それは一体どういう?」

 

 ここに来て次の証人かよ。まあ、なんだ。さっきから何回も思ってるけど絶対に弁護側に情報がきてなさぎるよね。なんで裁判の最中に新しい証拠とか証人とかがホイホイ出てくんだよ?ちゃんと申請とかしてるの?してたとしたらなんで弁護側に伝わってないの?本当に此処(弁護人席)っていじめられっ子の席なのかもしれない。

 

 「ふっふっふ……次の証人はなんとっ!この惨劇の目撃者ですぞっ!!」

 

 「な、なんですと!?目撃者がいたのですか!?」

 

 ふーん、目撃者ねぇ……は?目撃者、だと?

 

 「ええ、いたのですよそれが。被告人から襲われるのではないかという恐怖を乗り越えて、勇敢にも証言してくれると名乗りでて下すったのですっ!!ですから裁判長、証人の勇気をムダにしないためにも是非に「待ったっ!!」……何ですかな?弁護人。まさか事件の目撃者の証言は必要ないとでも?いけませんねぇ自分たちが不利になりそうだからといってそのような「……待ったって言いましたよね?聞こえませんでしたか?」ひぅ!?」

 

 ……おっと、いけないいけない。ちょっとウザ過ぎてつい気で威圧してしまった。今の俺は弁護士としてここにいるのだ。少し抑えないとな。

 

 「……なかなか良いもん持ってんじゃねえか弁護士さんよ。裁判が終わったらちょっくら遊ぼうぜ?」

 

 「あっ!それってファイトってこと?なら私も一緒にするよ!最近組手ができてなかったから拳がウズウズしてるんだ!『おもうさまにぶん殴りたい……ライト君を』って感じに!」

 

 なんか味方側の席にいるはずの二人が物騒な反応を示した。コーディーは好戦的な笑みを浮かべてこちらを見ているし、サマヨイちゃんに至ってはシュッシュッと拳を突き出してシャドーを始める始末だ。今更ながら思い至ったがこの二人、バトルジャンキーの気質があるって点が共通してましたね。……裁判が終わったらどうにか有耶無耶にしないとな。あと、サマヨイちゃんの俺をぶん殴りたい発言はなんだ。悪霊でも乗り移ったのか。まあ、とにかく今は二人のことはおいておいて裁判に集中しよう。

 

 「……別に証人を呼ぶことには異論はありませんよ。ええ、ありませんとも。ただね……事件の目撃者がいるのなら最初からそのことを伝えて欲しかったですね、アウチ検事。どうやら裁判長も知らなかったようですし、捜査情報を故意に隠匿していると判断しても?」

 

 「そ、そのようなことは断じてありませんぞ!た、ただ、先程も説明したとおり証言者は被告人から報復されることを恐れていたらしく、裁判が始まる直前にこのアウチに協力を申し出て下すったのです!別に隠していたわけではありませんぞ!本当ですぞ!」

 

 静かな口調ながら気での威圧が織り交ざった問いかけに、しどろもどろになりながらもギリギリで体面を守って返答を返してくるアウチ検事。どうやら証人が名乗りでたのは本当に裁判が始まる直前のようだ。ふーむ、直前になって突然現れた目撃者かぁ。うん、どう考えても怪しすぎるだろうソイツ。

 

 「とにかく双方ともその目撃者が証人になることには賛成のようですね。それでは係官、この事件の目撃者を証言台にお連れしてください」

 

 裁判長が係官に指示をだす。さて、前回というかさっきはこの流れでエディ・Eが出てきたんだよな。これで次の証人がソドムとかだったらもうアウチ検事を殴ってもいいよね。




 祝ストリートファイター5発売っ!!

 ……なのに原作キャラが今回の話に全然出せないという。途中で区切ったせいかコーディーもあまり目立たず、一番目立ったのがアウチ検事というね……。そしてガ◯よ、すまぬっ、すまぬっ!。パソコンのデータがあればもう少し早く投稿できたはずなのですが、いざデータを移そうと開いたらブルースクリーンというね。「あんもーたぶるぶーとぼりゅうむ」とか表示されてて素人の俺ではどうしようもなかった。ブッタよ!寝ているのですか!

 ……まあ、そんなことはともかく皆もストリートファイター5やろうぜ!






 ついでにこの小説も読んでくれる人が増えると嬉しいな。

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