明日に波動拳   作:路傍の案山子

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大変遅くなって申し訳ありませんでした。

リアルの事情により執筆時間がとれず、ようやく書けたと思った文章がネット回線の不調か何かで保存ができずに全て消えてしまって心が折れそうだったぜ...。皆もこまめにセーブしようぜ!でないと朝の五時くらいに絶望で死にたくなったりするからね!

それではどうぞ!


14話 燃えるぜ昇龍...拳?その3

――マスターズ本社内トレーニングフロア:試合場

 

「よしっ!準備出来たみたいだな!それじゃあ始めようぜ!」

「はい!お待たせいたしました!よろしくお願いします!」

 

 どうも、アルトリウス・E・ヒューガー、日本名だと日向涼です。なぜか色々と騒がしくなってしまったティータイムの後、トレーニングフロアにある試合場に移動してきました。動きやすい服装に着替えて、現在ケンと向かい合っています。

 ちなみに動きやすい服装というのは道着を少しアレンジしたような服装になります。あれだ、某最強の弟子で主人公が着てる戦闘服?みたいな感じです。道着の袖はノースリーブではなく普通に半袖くらいはあるし、下は半ズボンが少し長いくらいの丈だけどね。実はウル父さんのおさがりだったりするのでサイズはちょっと大きいし所々ボロボロだが、丈夫な素材なのかいまだに普通に着れる一品である。......あの甚八朗おじいちゃんの修行を経てまだ現役なあたり、本当になんの素材で出来ているのか謎な道着である。

 本当は掴まれて投げられたりしないようにピッタリした服か、もうむしろ上半身は裸でもいいんじゃないかと俺は考えていたんだけどね?何故か全力で周囲から反対されまして。何故だろうね?(※半裸の絶壁美少女に見えるからです)

 ダンからもサイキョー流Tシャツとやらをもらったのだが、あまり丈夫そうじゃなかったし色がピンクだったので着ていません。なぜピンクにしたし。

 

「お二人とも準備は整ったようですわね?この試合の審判は私がつとめさせていただきますわ!勝敗条件はどちらかの戦闘不能またはギブアップするまでといたしますわ!また、私が危険、もしくは勝負がついたと判断した場合もそこで試合終了とさせていただきますわ!よろしいですわね?」

「おう!」

「はい!」

「ならば両者とも位置につきなさい!」

 

 カリンに促されリングの中央で俺はケンと向かい合った。ケンの表情はこれからの手合わせが楽しみだといわんばかりに明るく、そして余裕もみてとれる。対して俺はきっとガチガチに緊張している"ように"見えているだろう。実際に緊張はしているので間違いではないが、正解という訳ではない。少し演技入ってます。最初にケンと闘うのに志願したのも含めて、これも『全力』を出すための下準備の一つだ。

 ここで重要になってくるのがケンの格闘スタイル...ゲーム中での性能だ。前にもいったがケンは初期の頃こそリュウとほぼ同性能だが、シリーズが進むにつれて違いが顕著になったキャラクターだ。例えば波動拳の性能はリュウに劣るが、昇龍拳の性能ではケンが勝るといった感じに。他にも色々違いがあるが簡単にいってしまえば『攻めのケンに守りのリュウ』といった感じに差別化されていったのだ。

 シリーズを通してリュウよりもラッシュ力が高く、攻めに回った時に真価を発揮するキャラである。まあ、リュウよりは劣るというだけで波動拳は飛び道具だし、通常技、特に蹴りは高性能なものが多い。それに無敵時間のある対空技の昇龍拳があるので防御が極端に悪いという訳ではないしね。初心者の方にもお薦め出来るキャラクターである。

 長くなってしまったが要するにケンは、対戦する際には『ペースを掴ませてはいけない』キャラクターなのだ。まあ、あくまでも『ゲームでの性能』では、だけどね。原作知識ってあんまりアテには出来ないし、しないようにしていたんだけど......今回は別だ。

 

「へへっ!そう緊張するなよな!リラックス!リラックス!楽しんでいこうぜ!」

「...ええ。お互い楽しんでいきましょう」

 

 ケンは俺が緊張していると思ってくれているようだ。なら『予定通り』に行かせてもらう!

 

「それでは......初めっ!!」

 

━━ FIGHT!!

 

「波動壁!!」

「 ! へぇ!」

 

有無をいわさず先手必勝だ!波動壁かーらーの!

 

「閃空脚ぅ!!」

「のわ!?や、やるなぁ「追っ!!」おお!?」

 

 波動壁を目眩ましにして閃空脚で一気に切り込む。そのまま身体を捻りながら追撃の蹴りを放つ。初撃は躱されてしまったが追撃の方は当てることができた。まあ、ガードはされてしまったけど初手としてはかなり理想的な形だ。

 今回の俺の戦略は単純明快である。『常にこちらのペースを押し付ける』。相手が格上でしかも相手がケンのような相手の場合は、いったん相手にペースを掴まれると昨日のコーディー達との戦闘のようにほとんど一方的にやられてしまうだろう。ならば本来の実力を発揮出来ないように乱してしまえばいいのだ。ただ、だからといって容易に実行できるような戦略ではない。そもそもの実力で劣っているのだから尚更だ。

 そこで小賢しく小細工ですよ。まず闘う順番を最初にしたことだ。これは前回のコーディー達との手合わせのように身体が温まっていて最初からゲージMAX状態を避けるためと、サクラ達と闘うことで俺の実力をある程度ケンが察してしまうのを避けるためだ。それと大変不本意だが俺の外見は相手の油断を誘いやすい...大変不本意だがね!そこに緊張しているような演技も加えればさらに有効だ。そして、どうやらそれなりに効果はあったらしい。

 

「......随分と積極的に攻めてくるんだな!意外だったがその方が面白いぜ!来なっ!」

「それでは遠慮なくっ!降魔覆滅!!」

 

 久々登場の降魔覆滅で畳み掛ける。まあ日向流は『とある理由』から技数が異様に少ないので他の技を使用する頻度が多くなるのは仕方がないんだけどね。あとなぜか日向流の技は名前に魔だの影だの禍々しい雰囲気の字が入るものが多い。降魔覆滅は蹴りからの三連撃なのだが、カリンの紅蓮拳のように途中で幾つかのバリエーションに発生する技だ。そのため初見では見切られづらいのでこちらから積極的に攻める際にはかなり有効なのだ。

 

「...つぅ!いい連撃だな!それなら...そらっ!」

「くっ!?」

 

 三連撃を受けきったケンが、お返しとばかりに上段回し蹴りを繰り出す。間一髪躱したが、顔に感じた風圧からその鋭さと威力がひしひしと伝わってくる。しかしここで怯んでいてはケンにペースをつかまれてしまう。......ならばここは臆せず攻めるのみ!

 

「――はあっ!!」

「おっ!?退かないのか!いいね!いいね!燃えてくるね!」

 

 余裕そうな顔して避けてくれますねぇっ!!こちとら必死なんですけどっ!!その余裕を消して......あ、やっぱもう少しそのまま油断してもらえると助かります。って!?まずい!?

 

「竜巻旋風脚っ!」

 

 こちらの攻撃を躱したケンが、身を反らした反動を利用する形で竜巻旋風脚を放ってきた。恐らく少々無理な形から繰り出したためか、威力はリュウの方が高そうだ。しかし、速いのだ。一発目の回し蹴りから次の回し蹴りまでの間隔がリュウの竜巻旋風脚よりも短かく連続で襲ってくる。不完全な形で繰り出したにもかかわらず恐ろしいプレッシャーである。

 

「っ!?」

 

 たまらずバックステップで距離をとってしまった。至近距離ではとてもではないが躱せるようなものじゃない。実際予備動作の時点で反応できていなければ、今頃沈められていたかもしれない。竜巻旋風脚だけならば耐えきれるとは思うが、そのあとに待ち受けるだろう連続技は耐えられる自信がない。......しかしまずいな。ケンとの距離が開いてしまった。となると、次の手は当然...!!

 

「「波動拳っ!!!」」

 

 ケンとほぼ同じタイミングで波動拳を繰り出す。...が、しかし

 

「くっ!?」

 

 お互いのちょうど真ん中くらいの位置で衝突した波動拳は相殺...されずにケンの放ったものだけがこちらに飛んできた。リュウと比べれば性能が悪いというだけでさすがは本家波動拳である。俺の波動拳では相殺する事が出来なかったのだ。...想定の範囲内だけどね!というか、この頃のケンとリュウって波動拳の性能同じだしね!

 

「ぜりゃあっ!!」

「おっと!...最初から撃ち負ける前提で特攻かよ!?おっかねえなぁ!!」

 

撃ち負けるのはわかっていたので波動拳をスレスレで避けながら再度の突撃。波動拳は基本的には軌道が真っ直ぐなのでタイミングがわかっていればそれほど難しいことではない......顔スレスレを波動拳が通るのは凄く怖いけどな!多少は俺の波動拳で威力と勢いが弱まっていだろうけどこっちから突っ込んでるわけだから速度的にはむしろ増してるしね。

 

「......意外ねぇ。あの子、おとなしそうに見えたのに。なんていうか......すごくアグレッシブなのね。まるでケンみたいだわ」

「...いつものアルさんの戦闘スタイルは、どちらかといえば”静”。あれほどまでに積極的に攻めているのは私も初めて見たかもしれませんわ。......まさか勝負を焦っている?あのアルさんが?「アルはいつもどうりみたいだよ!カリンちゃん!」...わかりますの?サクラさん」

「うん!確かに闘い方がいつもと違うけど、焦ったりはしてないと思うよ!きっと何か作戦があるんだよ!だってアルだし」

 

 おいサクラ!余計なことを言うんじゃ「余所見なんてしてていいのかい?ほらよ!」うお!?危ない!?

 サクラに意識がいってしまった瞬間にケンの蹴りが飛んできた。なんとかガードは間に合ったけど、受けなくていいダメージを受けてしまった。おのれサクラめ...。あとで覚えてろよ!お前の分のアップルパイだけ林檎じゃなくてレモンで作ってやるからな!......普通に美味しそうだな。今度作ってみよう。

 

「それにしても本当にやるなぁ!さっきの余所見は減点だけど、それまでの攻撃はちゃんとさけてたしな!いったいどんな修行してたんだ?」

 

 蹴りを防いだことで距離が開いたところでケンが話しかけてきた。やはり正式な試合ではないからかそのあたりは結構気安い感じである。

 

「幼いころから厳しい師匠に徹底的に基礎を叩き込まれましたからね。....あとは地蔵とサイキョー流を少々」

「......地蔵?サイキョーリュー?ま、まあいいや。さて!続きといこうぜ!━━━少しギアをあげるぜ!!」

 

 地蔵の部分になぜか多少の戸惑いをみせたケンだが、言い終わると先程よりも速く間合いを詰めてきた。そしてそのままの勢いで鋭い前蹴りを放ってくる。これは避けきれない!

 

「ぐっ!?」

「そんでもってこうだ!そらぁ!!」

 

 前蹴りを防いだらそのまま投げられていたでござる。これってあれかな?ケンの前蹴りからのスライド投げという凶悪コンボ技じゃね?ってこんなこと考えてる場合じゃない!次が......来るっ!

 

「オラオラオラァ!!」

「ぐうぅ!?」

 

 着地時にハンドスプリングの要領で受け身をとって体勢を立て直した瞬間に拳と蹴りのラッシュを叩き込んでくる。どこが”少しギアをあげる”なんですかねぇ!?全然少しじゃないじゃん!原作知識と同様に...いや、それ以上のラッシュ力である。......本当はもう少し俺が攻めている状況を続けたかったのだが仕方がない。次の一手だ!

 

「こいつは耐えられるかい!喰らいなぁ!龍閃脚!!」

「なんのぉ!!秘技!サイキョー流防御ぉ!!」

 

 ケンが繰り出してきた強烈な浴びせ蹴りのような技をガードすると同時に()()()()。フハハ!みたか!これぞサイキョー流秘伝の防御術!その名も『サイキョー流防御』だ!

 

「ぬお!?なんだ今の!?「隙あり!波動壁!!」おっと危ない!」

 

 ケンもまさか押し返されるとは思わなかったのだろう。攻めることも忘れて動揺していたので、すかさず波動壁を打ち込んでおく。ちっ!躱されたか!

 この『サイキョー流防御』、ダンが使っていたものを習得したのだが、サイキョー流とは思えないほどの高性能な技なのだ。防御すると同時に謎の力で相手を押し返すので、先程のように攻め込まれているときに使えば窮地を脱する事ができるのだ。相手が怯んでくれたなら追撃までできてしまう。......どういう原理なのかはいまだにわからないのだが。

 だって本家であるはずのダンが「なんかこう...気合的なアレでどうにかするんだよ!実際にできてるから問題ねーだろ!...アドバンシングガード?なんだそりゃ?これはサイキョー流の完全オリジナル技だぜ!使ってる奴がいたら教えろよな!使用料請求すっから!」と原理をまるで理解していないのだ。しかもなんか真似してるうちに俺もできるようになってしまったし。まあ、性能がいいので確かに問題はないんだけど。

 

「さっきからどうにもやり辛いぜ...。だけどイライザが見てる前でいつまでも情けない姿は見せられないからな!───いくぜ?」

 

 ケンの纏う雰囲気が変わった。先程まであった、実戦ではない手合わせ故の気安さのようなものが一瞬で霧散した。どうやら勝負を決めに来るつもりのようだ。さっきまでのでも結構一杯一杯だったのだけど、どうやら本当の正念場はここかららしい。ならばこちらもみせてやろうではないか!コーディー達相手に10分も耐えた......俺のしつこさをね!

 

「......ああ、いつものアルさんの戦闘スタイルに戻りましたわね。マスターズの御曹司は勝負を決めにいくつもりのようですけど、そう簡単にはいきませんわよ」

「アルは凄くしぶといもんね!『台所の油汚れによく似てる』ってヒビキさんも言ってたし!」

 

 なんだかサクラに凄く失礼な事を言われている気がするが、今はそんなことを気にしている暇はない。一瞬でもさっきみたいに気を抜けば、そこで終わってしまう確信がある。それほどまでに勝負を決めに来たケンの攻勢は苛烈だった。

 

「うらうらうらァ!!もう一丁!」

「くぅ!?ぐぁ!?...まだまだぁ!!」

 

 あれから何度の攻防を凌いだだろうか。あまりににも余裕が無いので正確な回数は覚えていないが避けられる攻撃は回避しているし、避けきれないものはガードすることが出来ている。今の所はまともに直撃は受けてはいないのではないだろうか。しかし、それでも俺の体力はゴリゴリと削られていく。

 ゲームでは必殺技ではない通常攻撃はガードすることが出来ればノーダメージだったがここは現実である。たとえ通常攻撃であっても、防げば当然痛いし衝撃だってある。いわゆる『削りダメージ』を受けてしまうのだ。同じ部位でガードし続ければそこを動かすときに支障が出てくるだろう。しかもケンの手数だと、たとえるならKOFのラルフのバリバリバルカンパンチをガードした時のような状態だ。つまり、凄く痛いです。

 サイキョー流防御を織り交ぜて押し返してみても、既に慣れてしまったのか一瞬で元の間合いまでつめられてしまい状況は変わらない。むしろサイキョー流防御は使うときに気力がいるので若干状況が悪化する始末である。このままでは俺に勝機はないだろう。......このままならば。

 

「...くぅ!硬いなぁ、おい!なんだか師匠と闘った時を思い出すぜ!」

 

 先程までのように軽口をたたくケンだが、その口調からは確かな焦燥がみてとれる。試合を決めにいったのに決めきれない。それも本来ならばとっくに倒せていてもおかしくない実力の相手であるにも関わらずだ。恋人であるイライザが観ていることも拍車をかけているのかもしれない。これならば作戦通りにいく可能性があるかもしれない。そう、ケンが()()()を使って来る可能性が。自身の最も得意とする技であり、決め技としてもふさわしい威力を持つ一撃、すなわち━━━『昇龍拳』だ。さて、仕込みはこんなところだろう。ならば!

 

「オオォォォ!!でやあぁっ!!!」

「 ! もらったぜ!!昇龍拳っ!!」

 

 先程までの守勢から一点、雄叫びをあげ手に気を溜めながら飛びかかる。それを迎撃するためにケンは昇龍拳を繰り出してきた。この一撃で勝負を終わらせるつもりなのだろう。炎を纏っているかと幻視してしまうような、今までの攻撃と比較しても別格の威力がありそうな一撃である。

 

「ごはぁ!!?」

 

 そしてその一撃は容赦なく俺の腹部へと突き刺さり上方へと吹き飛ばす。必殺の昇龍拳がクリーンヒットしたことでケンは自分の勝ちを確信したのではないだろうか。だが......()()()()()()()()()()()()()()

 

「━━━ここだぁ!!『鬼灯(ほおずき)ぃ』!!!」

「なに!?」

 

 上方へと吹き飛ばされる勢いをそのままに、肩甲骨のあたりから波動を後方に吹き出す事によって無理矢理に体をひねることで体勢を立て直す。そして再度の波動の噴出によって前方━━ケンの方へとその勢いを増して拳を繰り出す。肘のあたりから波動を噴出させさらに勢いをつけ、拳に波動を纏わせた状態というおまけ付きでだ。━━━そう、今までのすべてはこの一撃のためにある。現時点で俺の技の中で最も威力の高い技である、この『鬼灯』を当てるための。

 『鬼灯』は前方へと飛び上がりながら、練り上げた波動を推進力として利用することによって威力を追求した突進突きである。確かに威力は凄まじいのだが、後方から波動を噴出させるという性質上勢いがつきすぎてしまい、身体を空中で一回転分くらい捻らなければいけないという欠点がある。前方が一瞬とはいえ見えなくなる上に、そもそもの動作の隙が大きいのだ。それに気を練り上げて運用するのがとても大変である。あと突進といったけど、実際には空中から『振り下ろす』とか『叩きつける』が表現としては正しいのではないだろうか。まあ、とにかく実践では当てづらい、所謂『ロマン技』である。本来なら格上相手に使用できる技ではない。現に昇龍拳で迎撃されてるしね。

 .......確かに、昇龍拳の威力は凄まじい。しかしッ!!甚八朗おじいちゃん達の拷も...修行により鍛えられ!サクラやサクラやサクラ、時々カリンに技を打ち込まれ続けたこの俺のタフネスをもってすれば!くるとわかってさえいればギリギリなんとか紙一重で一撃ならば耐えきることができるのだっ!!......想定よりも遥かに強烈だったせいで今にも意識が持っていかれそうだけどね!

 だがっ!無理をした甲斐があって今ならば鬼灯を叩き込めるはずだ!ケンは昇龍拳がクリーンヒットした時点で少なからず勝負が決まったと思ったはずだ。つまり『相手が勝ち誇った時ッ!!ソイツは既に敗北しているッ!!』的な状況なのだ!え?全然違う?...細かいことはこの際どうでもいいんだよ!それに昇龍拳を出したばかりなのは事実だしね!今なら避けたりするのは難しい筈だ。この一撃が決まればいくらケンとはいえただでは済まないだろう!倒すとまではいかないだろうが、全力で一矢報いてやる!すなわち実質的な俺の勝利と言っても過言ではないのだ!(※過言です)!フハハー!!喰らえぃ!!

 

 

 

━Side ケン・マスターズ━

 

 ━━情けないぜ。正直言って舐めてたのは事実だ。いくら神月の嬢ちゃんの友達だからってさすがに俺が少しやる気を出せば簡単に終わるだろうって感じでな。

 それがどうだ?初っ端の勢いに面食らってペースを乱されるわ、決めるつもりで攻めたのに凌ぎきられるわで散々だったぜ。......挙句の果てが大人げないくらいに力を入れた昇龍拳をきめたはずなのに耐えきられて目の前に対戦相手━━アルの拳が迫ってきてる状況だ。

 

 全く、自分の迂闊さに情けなくて涙が出てきそうだぜ。こんな試合を師匠に見られたら、説教された後に地獄の修行と説教のフルコースが確定しちまう。アルの一撃にはそれくらいのおっかねえ威力と気迫を感じるし、喰らったらイライザにも格好悪いとこを見せちまうことになる。そんなのは嫌だし......なにより、こんなところでつまずいてたら武道一直線な”アイツ”に、『リュウ』に置いていかれちまう。だからこの一撃は受けるわけにはいかねぇな。

 

 だがどうする?昇龍拳を決めたはいいが、避けられるような距離じゃないし、今の体制だと防ぐのも難しい。だったら━━━前に出るしかねえよなぁ!!!

 

「━━━裂破ァ!!!」

 

 ほとんど無意識のうちに、俺は着地と同時に昇龍拳を繰り出していた。だいぶ前に師匠からちらっとだけ聞いた覚えのある技名まで叫びながら。俺はその時、何かを掴めたような、そんな気がした。そして同時に気づいたんだ。

 

『あっ、手加減してない』って。

 

 

━Side out━

 

 

「━━━裂破ァ!!!」

「ガハッ!!?」

「━━━はっ!?そ、そこまでですわ!!勝者!ケン・マスタ━━━━━」

 

 ば、馬鹿なぁ!?この時期に昇龍裂破だとぉ!?ちくしょう!これだから原作知識は信用できないんだ!あっ、これは駄目なやつだ。だって顎に直撃してるもん。だんだん意識が遠くなってきてるし。カリンが試合終了とケンの勝利を告げているようだが、それも最後の方はほとんど聞き取ることができない程だ。......あーあ、敗けてしまった。しかも結果だけ見ればケンにまともに攻撃当てれてないじゃないか。もう()()()()()というのに。やはりしばらくは無理...そう...だ......

 

 そしてそこで俺の意識は暗転した。

 




日向涼(アルトリウス・E・ヒューガー)VSケン・マスターズ
勝者、ケン・マスターズ 
決まり手 昇龍裂破?

勝ち誇った時ッ!ソイツ(主人公)は既に敗北しているッ!!自分で立てたフラグを回収していくアルトリウスくんなのでした。


~おまけのミニコーナー 勝手に勝利台詞~

対 東方不敗マスターアジア(出典:機動武闘伝Gガンダム)

勝利時「えーと、『なかなかに見所がある』って言って飛んでいっちゃったけど、これって俺の勝ちでいいんでしょうか?......というか、何あのジャンプ力。普通にビルとか飛び越えてるんですけど!?やっぱり人間じゃないよあの人...」

敗北時「若い割にはなかなかのものよ......どうじゃ?儂と一度ギアナで修行をしてみんか?お主ならば(耐久力的な意味で)良いガンダムファイターになれるやも...なに?既に複数の師に師事しておる?ならば今更一人増えたとて構わぬだろう。とりあえず超級覇王電影弾あたりから...」

対 Mr.師範 (出典:MUGEN)

勝利時「え?この人が忍者だって?上半身裸の不審者なのに?さすがにそんな嘘には騙されませんよ。というか、試合開始と同時に何故か火引(ダン)さんが突っ込んできたと思ったら相手ごと爆発したんだけど?そのまま試合終了になったんですけど。......誰かこの状況を説明してください」

敗北時「......すごい漢だ!」



こぼれ話

『鬼灯』
アルがとある地獄の鬼畜...じゃなくて鬼神をイメージして作り上げた、相手を叩き潰すための威力重視の新技。だが、やはりというべきか、隙きが大きく当てにくいロマン仕様である。あと、イメージ元とはまったく関係がないはずなのに、とある反逆者(トリズナー)の技というか自慢の拳というか、ぶっちゃけシェルブリ○トで衝撃のファーストブリ○トとか撃つときの動きに凄く似てしまった。なんでだろうな~(目逸らし)

あと、作中で出て来るオリジナルのモブの名前は結構適当につけていたりします。アルの幼稚園の時の同級生はドラゴンボールのキャラを漢字に変換してます。モーブ・ノーワルは『モブの悪』、キーヨウ・シンジャーは『(マッドギアの)狂信者』です。ケンの会社のジョン・ワイズマンはアメリカ人っぽい『ジョン』と、マスターズに勤めてて案内役を任されるくらいなら賢いんだろうな~で『ワイズマン』になってます。今後出てくるオリジナルのモブとかもこんな感じのネーミングになると思います。


次回は今回のエピローグと次の話(15話)の導入になる予定です。次の話はちょっと今の状況だと更新ペースは一週間とかは無理かもしれませんが、出来るだけ早く投稿できるように頑張ります。

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