明日に波動拳   作:路傍の案山子

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お待たせいたしました。

どうにもまだ感覚が戻っていないらしく、文字数の割に時間がかかってしまいました。これがブランクというやつなのでしょうか?ダンの台詞とかだけは異様にスラスラ書けたんですけどねぇ...

それではどうぞ。


15話 サディスティックに穿風車

『よお!元気にしてるか!俺は今韓国でいつもどーりに伝説のサイキョーロードを爆走中だぜ!具体的にいうとだな、まず━(中略)━とまあ俺様にかかればちょ~余裕だったぜ!お陰で助けた女を諦めさせるのが一苦労だったぜ!それから━(中略)━そこで俺はこう言ったのさ!『パンが無いならその辺の喰える植物を集めて来てやろうか?』ってな!そしたら━(中略)━ちぎっては投げ━(中略)━俺を称える民衆━(中略)━最強ぉ!━(中略)━てな感じだ!んでよ、ここからが本題なんだが旅先で見所のある奴を俺の観察眼がバビっ!と見抜いたんだけどよ?どうも最強過ぎる俺様に遠慮してんのか素直にサイキョー流にはいるのが恥ずかしいみたいでな!そこでサイキョー流本部の弟子筆頭であるお前らに白歯の矢がたったってわけだ!お前らに負けたら素直にサイキョー流に入ってくれると約束してくれたぜ!....という訳で、今からちょっくらサクラと二人で韓国まで来てくれねーか?確か日本じゃそろそろ学生は春休みだろ?なっ!頼むからよー!んじゃ、○○って街の□□って所でまってるぜ!

 

お前らの尊敬すべき世界最強の師匠、火引弾大先生より』

 

 

 

「......はぁ。久しぶりに手紙が来たと思ったら韓国でなにしてんだダン(あの人)

 

 本当に久しぶりに来たダンからのエアメールを見ながら、最近また多くなった気がする溜息をつく。手紙の8割が本当かどうか怪しい自慢話で占められてるし、白羽の矢の『白羽』の字が間違ってるし、何が『という訳で』なのか唐突過ぎて理解出来ない。なんで俺かサクラが韓国で誰かと闘う事になってんの?いや、確かに今は学生は春休みだから行けないことはないけど、そういう問題じゃないだろ。あと韓国まで来てくれって書いてあるけどチケットとかはもちろんどこにも見当たらない。自腹で韓国まで来いって事ですね。まあ、この世界の交通費は安いから、学生のお小遣いでも行けないことはないけどさぁ......ねぇ?

 

 あ、どうも。日向涼、英名だとアルトリウス・E・ヒューガーです。現在は小学校を無事に卒業しまして、中学校入学前の休みです。厳密にいうと俺とサクラは今は学生じゃないですね。ケンに会いに行ったあのアメリカ旅行からは修行の量が増えた以外はそれなりに平和に過ごしていました。修行の内容以外はね!

 

 確かに自分からもう少し修行を増やそうとは言ったけどさぁ......誰が三途の川が見えるほどに増やせと言ったよ?お陰でこの前なんて川原にいたお婆さん(奪衣婆)に「あんた最近よく来るけど大丈夫かい?まあ、こっちは目の保養になっていいけどね」って言われたんだぞ!組手なんて今までの内容に更に「~~~は使っては駄目」って感じで技の縛りまでされるようになったしね。波動拳とか波動壁を禁じられるとそれだけでも凄くやりにくいし、酷いときは“手技”や“足技”を使っちゃ駄目とか鬼畜過ぎる。なのに相変わらず俺との組手の時にはサクラや甚八朗おじいちゃんに“遠慮”や“容赦”といものは存在しないんだ。

タスケテ。

 

 ......まあそんな感じなので、今みたいな1人でゆっくり出来る時間は以前よりも貴重だというのにこの手紙である。ふざけた内容だけど、こんなバトルの予感がビンビンの手紙をサクラに見られでもしたら韓国行きが確定してしまう。.........よし!今のうちに処理してしま「ヤッホーー!!ほらアル見て見て!これ!じゃーん!中学校の制服が届いたんだよ!....ってなに見てるの?あっ!ヒビキさんからの手紙だ!見せて見せて!」さようなら俺の平穏こんにちは闘争。短かったなぁ、俺の平穏。いつものようにノックもせずに乱入してきた、中学校の制服を着たサクラによって手紙を強奪された俺は世の中の無情さを噛みしめたのだった。

 

「......アル!行こう!すぐ行こう!すんごいファイトの予感がするよ!最近はカリンちゃんとなかなか組手もできなかったからウズウズしてたんだ!ヒビキさんナイス!さあアル!早速チケットとって!私はアリスさんとかお母さんたちに言ってくるから!アルも服とか準備しといてね!あと皆へのお土産はやっぱりキムチと海苔でいいよね?あっ!アリスさーん!!今からアルとちょっと韓国まで行って来るねー!」

「まあ今から?折角アップルパイを焼いたのだけど。そうね、なら空港に行く途中で食べられるように包んでおくわね。アル、ちゃんとサクラちゃんを守ってあげるのよ?」

 

 ちょうど通りかかったアリス母さんに、まるで近所の公園に行くような気軽さで韓国行きを宣言するサクラ。今までにも何度かこういう事があったので、アリス母さんの対応も手慣れたものである。既にサクラと二人で海外に行くくらいならほとんど止められなくなってしまった。この世界での海外旅行がいくらお手軽とはいえ、(あと少しで)中学生の男女二人旅って普通止められると思うんだけどなぁ。

 

 ああそうそう、先程のサクラの台詞で最近カリンと組手が出来ないと言ってましたよね?実は中学はカリンとは別になりそうなんですよね。ほら、もともと庶民の生活を学ぶために俺達と同じ小学校に通っていた訳じゃないですか。だから親の...大厳十郎だっけ?中学からはエリートコースというか、上流階級の方に戻ってこいという通達があったらしい。カリンとしてはこのままサクラと一緒の学校が良かったらしいけど、さすがに現当主の意向は無視できなかったらしい。非常に名残惜しそうに違う教育機関に行くことを伝えてきた。......でも『そろそろお父様...いえ、あの男にはその席を空けていただきましょう』とか凄く物騒なことを言っていたので、意外と早く同じ学校に通うことになるやもしれませんね(戦慄)。神月グループに激震がはしる日も近いかもしれない。...原作でカリンが神月グループの当主になったのっていつだったけ?高校生になる前なのは確かだと思うんだけど、あまりはっきりと覚えてないなぁ。少し時期が早まったかもしれないけど、どっちにしろカリンさんのスペック凄すぎるよね!

 

 まあ、そんな訳で今までのようにカリンと闘えなくなったサクラは、今ファイトに飢えております。もちろん俺とは定期的に組手をしているが、やはり物足りないらしく、3日間なにも食べていない肉食獣レベルでファイトの機会を探し回っています。そんな状態のサクラの前にこのダンからの手紙である。目の前に極上の生肉を吊るされるようなものですよ。サクラまっしぐら!って感じ。見つかってしまった時点でこうなることはわかっていたから処分してしまおうとしたのに......。

 

 

 

 

 

「ワクワクするなーー!一体どんな相手なんだろうね!あ!そういえばヒビキさんとも久しぶりだよね~!そういえばアメリカに行くときに乗ったカリンちゃんの飛行機凄かったよね!今座ってる椅子と全然フカフカさとかが違うし」

「あれはファーストクラスとかでもありえないレベルだから比べるのはやめようね?ほら、スチュワーデスさんの笑顔が少し引きつって苦笑いになってるだろ。着くまで静かにしてなさい。大人しく映画でも観てなよ」

「はーい!」

 

 サクラにダンの手紙を見られてから約二時間後、俺は今韓国に向かう飛行機に乗っています。今までも何度か急に引っ張り回されることがあったので、俺の部屋には常にトラベルセット(着替え、道着、洗面道具、地蔵、暇つぶし用の本、重り等)が用意してあるので準備に時間はかからない。サクラの方はいつも俺よりかなり少ない荷物で外国だろうと何処へでも乗り込んでいくのでこちらも同様に準備に時間はほとんどかからなかった。でもさぁ...

 

「そういえばサクラ...なんで中学の制服のままなの?着替える時間くらいあったでしょうに」

「なんかこの服すっごくしっくりくるの!身体が軽い!こんな気持ち初めて!って感じ?」

 

 おい馬鹿やめろ。というかそのネタどこで覚えた!?そんなの教えた覚えないんだけど!?...まあ、それはともかく確かに"ストリートファイターのサクラ”といえばセーラー服ですよね。今までは全然気にしていなかったが、実際に見てみると確かに凄い“しっくり“くる。中学の制服だから色々と違うところもあるけど、原作の姿にぐっと近づいたと思う。あっ!それなら今のうちに注意しておかないといけないことがあるな。

 

「なあサクラ、もしかしてそのまま闘ったりするつもりなの?」

「えっ?もちろんそのつもりだけど?」

 

 その『なんでそんな当然の事を今さら』みたいな顔やめろや。

 

「いや、えっ?じゃなくてさ、まだ新品だろその制服。しかも入学前だし。それに...ほら、あれだ......スカートじゃないか」

「...?。スカートだと何が悪いの?」

 

 いや”?“じゃなくて!見えちゃうだろっ!動きやすいからなのか知らないけどすでにかなりスカート短いし!少しは女子としての恥じらいを持ちなさいよ!くそっ!こうならないように少しずつ羞恥心を学習させてきたつもりだったというのにまだ足りなかったというのか!

 

「だから...見えちゃうじゃないか。キックとかしたらさ」

「...!もしかしてパンツ?も~アルのエッチぃ~~。あっ!もしかしてスカート履いてみたかったとか?それならそうといってくれれば「このアップルパイは没収しますね」ごめんなさいっ!!」

 

 アリス母さんが向こう(韓国)でも食べれるようにと包んでくれたアップルパイを人質?にするとすぐに謝ってきた。まったく、こっちが善意で忠告してあげたというのに。本編でのサクラは学校指定のブルマをはいていたが、それでも流石にあの格好で大開脚キックをするようになるのは幼馴染としては防ぎたいところだ。どんなキックかは『フラワーキック』で検索してみればわかると思いますよ。これでもかと言うほどプレイヤー側に丸見えになるからね。しかもカラーによっては白いブルマを履いているから余計に......昔は俺も⇒+中キックを多用していたこともゲフンゲフン。出が早くてしかも中段技(しゃがみガードできない)だからダヨ!ホントダヨ!

 

 ま、まあとにかくっ!サクラ=ブルマが丸見えみたいな図式はこの俺がいる限り諦めてもらう!残念でしたねぇ!!(ゲス顔)......あれ?俺は誰に対して言ってるんだ?

 

「とにかく、ファイトするときはちゃんと短パンくらいは下に履くようにすること!いいね?」

「...え~」

「...返事は?」

「はーい」

 

 そんなやり取りをしていたら韓国に到着した。到着するまでにはなんとかサクラにファイトの時には出来るだけ短パンみたいなのを履くことを約束させることができた。さて、今からダンと合流しなきゃいけないわけだが......すんなりといけばいいんだけど。中国なら何度かウル父さんの知り合いがいるので旅行したことがあんだけどなぁ。朱震っていうおじいちゃんなんだけど、シャドウハーツに登場する仲間キャラクターの一人で、俺のことをまるで自分の孫のように(普通に)可愛がってくれるいい人なのだ。あともう一人中国にはシャドウハーツ関係のウル父さんの知り合いがいるんだけど......まあそれはいいか。まずはダンが指定した街にいって合流しないといけないしね。すんなり合流できればいいんだけど。

 

 

 

 

「ついたー!!ねーねーこの街にヒビキさんがいるんだよね?早く探そうよー!はやく強い人とファイトがしたいよ~」

「焦るなよ。この街結構広いみたいだし、そんなにすぐには見つからないかもしれないからね?まあ、ダンさんはどちらかと言えば目立つ方だから探しやすいとは思うけど」

 

 空港からバスに乗ってダンに指定された街に無事到着。格闘家がコスチュームや道着で出歩いてるのが普通のこの世界でも、さすがにピンクの道着は珍しいからね。聞き込みをすれば結構簡単に見つかるのではないかと思っている。まあ、出来ればもう少し具体的な場所を指定してほしかったけどね。とりあえず近くの人に聞いてみよう。あのお店の人でいいかな。人の良さそうな恰幅のいい露店のおじさんに話しかけてみる。

 

「すいませーん」

「いらっしゃい!!当店名物のキムチ豚マンが欲しいのかい?お嬢ちゃん達可愛いからサービスしちゃうよ!」

「ああいえ、ちょっと人を探し「2つください!!」......はぁ。ではそのキムチ豚まんとやらを2つお願いします。あと、ちょっと聞きたいこともあるんですけどいいですか?」

 

 サクラが俺の発言を遮って勝手に注文した。確かに美味しそうな匂いがしてたけど、もう少し待ってほしかった。ちゃんと聞き込みしてから買うつもりだったし。

 

「はいよ!キムチ豚まん2つね!このごま団子はサービスだ!んで?聞きたいことってなんだい?」

「わーい!ありがと~!はむっ!おいひーー!!」

「ありがとうございます。えっと、人を探してまして。ピンク色の道着を着た日本人で火引弾って人なんですけど見かけたこととかありませんか?」

 

 さっそく豚まんにかぶりつくサクラは放っておいてダンのことを聞いてみる。あ、ごま団子ありがとうございます。

 

「ヒビキダン?うーん、そんな名前の人は知らないが......ああっ!もしかしてあの大道芸人か!!確かにピンクの道着を着ていたね!いや~あれは傑作だったな!」

「......大道芸人?」

「おう!『今からこの大岩を砕くからみてな!』って前フリから気合を入れて岩を殴ったんだけどよ、そんときは割れなくてな?『い、今のは練習!これからが本番だぜ!』とかいいながらその岩に寄りかかろうとしたらちょうどそのタイミングで岩が砕けたんだ。それでやつは見事にずっこけたのさ!いや~アレはタイミングといい表情といい完璧だったよ!思わず腹を抱えて笑っちまったね!ギャラリーも大爆笑さ!」

 

 何してんだあの人。いや、多分演武的なものを見せておひねりでも貰おうとか考えてたんだろうけどさ。結果としては成功してるみたいだけども。

 

「ちょいと遠いがあっちの方の飯屋でよく見かけるって話だぜ。地図持ってるか?......ほら、この辺りだよ。このあたりで一番大きいテコンドーの道場があるところさ」

 

 どうやら一人目にして当たりを引くことができたらしい。これは運がいいな。ダンとも早く合流できるかもしれない。余裕があればせっかく初めて韓国に来たのだし観光とかもしてみたいところだ。

 

「ありがとうございます!早速そちらに向かってみようと思います!」

「......ゴクン。豚まん美味しかったよ!...ねえアルもう一個だめ?」

「情報ももらえたし、もう1つくらいならいいよ。すみません、キムチ豚まんもう1つ...やっぱり3つお願いします」

「あいよ!毎度あり!帰るときにでもまた寄ってくれよ!」

 

 せっかくなのでダンの分も購入しておく。もう1つ?俺のおかわり用ですか何か?はむっ。む!フカフカの生地にぴりりとしたキムチの辛味がマッチした豚肉の旨味が絡み合う!これはなかなかに美味しい!帰りに購入することも考えとこう。

 

 

 

 

「えーと、教えてもらったのってこの辺りだよね。ごはん屋さんだっけ?あっ!アレじゃないかな!行こうアル!」

「確かに教えてもらったのはあのお店だろうけど、ダンさんが今いるって決まったわけじゃないんだからそんなに急ぐ必要はないから手を引っ張アッーーーーー!?」

 

 露店のおじさんから教えてもらったお店を見つけたサクラが俺の腕を掴んで突撃していく。ほんとこの癖なおらないなぁ...。そのままの勢いよく店の扉を開けたせいで他のお客さんや店員さんの視線が痛いです。今は昼食時なのでお客さんも多いせいで余計に恥ずかしい。それに見た感じダンもいないし。

 

「えー、お客様、2名様でよろしいでしょうか?」

「あー、お騒がせしてすいません。はい、2名でお願いします」

 

 とりあえずここで食事をとってダンを待ってみよう。もしかしたら食べてる間に来るかもしれないし、来なかったら会計時にでも聞いてみればいいし。

 

「やったー!ごはん!ごはん!」

「はぁ...あ、店員さん注文お願いします」

 

 さっき豚まん食べたばっかでしょうに、まったく。あっ、店員さんこれとこれとあれとそれとこれも全部大盛りで、それと食後にこれとこれをお願いします。ん?なんか周りがざわざわしてるけどなんでだろうか?店員さんもなんか表情が引きつってるけどどうしたのだろう。

 

「ごちそうさまでしたー!はーっ!美味しかったね!」

「そうだね。でも結局ダンさんは現れなかったけどね。ちょっと店員さんに聞いてみようか」

 

 なんだか『おいあの娘全部食べきったぞ!?』とか『馬鹿な!明らかに食べた分量がお腹の膨らみを遥かに超えている!』とか周囲は騒がしいけど、結局ダンは食事中にはあらわれなかったな。仕方なく俺が店員さんにダンのことを訪ねようとしたその時だった。

 

「んだーからぁっ!!ちゃんとあとで払うからつけとっいてくれって言ってんだろ!!」

「うちの店ではツケはしないって言ってるでしょう!あんた大道芸人なんだからちょっと外で稼いできたらいいじゃないですか!」

「だから俺は格闘家だって何度言えばわかんだよ!?確かにあのときは手持ちが心もとなかったからありがたくおひねりはいただいた。いただいたが、そもそも本来は俺の格闘家としてのプライドがだな」

「格闘家のプライド(笑)」

「よーし喧嘩売ってんだなァ!?買ってやっから表にで...おおっ!!そこにいるのはアルとサクラじゃねーか!ちょうどいい!ちょっくら前回ここに来た時の支払いを立て替えてくれ!この店員あとで払うってのに信じてくれねーんだ!......ちょ、おい!こっち向けよ!向いてください!お願いだから今他人のフリするのはやめてぇ!?」

 

 探してた人物が向こうからやってきたので喜ぶべきところなはずなのに、今は全力で他人のふりをしたい。いや、泣きそうになってるのでしょうがないから話しかけるけどね。

 

「いや~助かったぜ!出来るだけ同じ店に通ったほうがいいと思ってよ。それでこの店に通ってたんだけどちょうど昨日手持ちが尽きちまってなぁ。でも今更店を変えるわけにもいかねーだろ?だから今日もこの店に来たってわけだ。......なんだよその目は!実際今お前らと会えてるんだから無駄じゃなかっただろ!?だからそんな目で見るのやめろよ!」

「......はぁ。手紙にもう少し詳しく指定しておけばよかったんですよ。『何時に◯◯広場にいるぜ』みたいなかんじで。あと飯屋にする必要もなかったですよね?しかもこのお店ちょっと周りのお店よりお高いじゃないですか。あれですか?ちょっと臨時収入があったから調子乗っちゃったんですか?もっと計画的にお金は使いましょうって前から言ってましたよね?ね?」

「い、いやその、それはだな!?......すみません」

「あはは!ヒビキさん叱られてるね!でもここの料理美味しいからちょっと気持ちはわかる気はするよ!ねえアル、そのへんで許してあげなよ。それより!!ヒビキさん!強い人ってどこにいるの?どんな人?」

 

 俺としてはもう少し文句を言いたかったが、サクラに遮られてしまった。まあダンの行き当たりばったりな性格は今に始まったことではないし、すぐに治るようなものでもないからこの辺にしとくとしよう。

 

「そ、そう!それだ!今回お前らに来てもらった理由の見所のある奴のことだな!実はこの近くの道場に通ってるらしいんだが、どうにもそこでうまくいってないらしいんだよな、なんつーの?ボッチ?そんな感じらしくってよ。それならそんな道場に通うより我がサイキョー流に入門するほうが1000倍有意義だと思わねえか?アイツ強くなる、俺様モウカル。うぃんうぃんってやつだな!」

「この近くの道場ってことはテコンドー使いなんだね!!楽しみだな~~!!カリンちゃんがちょっと使うけど専門で使う人とは初めてだから凄いワクワクする!!ねえ早くその人に会いに行こうよー!」

 

 おいボッチとか言ってやるなよ失礼だろ!それに後半欲望が隠しきれてないよね?あとサクラは今すぐ外に出ようとするんじゃない。まだお会計が済んでないから。店員さんが『もしかしてダンと同じで支払いしないんじゃ......』って警戒してるから。あっ!待てって!!ああもう!!店員さーん!お会計お願いします!ダンはちゃんとあとで今回の分も払ってもらいますからね!

 

 そうして慌ただしく店を後にした俺達は現在、ダンの案内でその見所のある人が通っているという道場に向かっています。なんでもいつもならそろそろ近くの道を通る時間なんだとか。なんかそういう時間把握してるのってちょっとストーカーっぽいよね。

 

「ねぇねぇヒビキさん、その人ってどんな感じで強いの?テコンドーだからやっぱり蹴り?」

「おうよ!あの蹴りの鋭さと()()()!ありゃあ間違いなく強くなるぜ!まっ!現時点では俺様の指導を受けたお前たちのほうがつえーと俺は思うぜ!ギリギリでだけどな!あの道場で腐らせとくにゃあ勿体なすぎるってもんだぜ!」

 

 ギリギリってそんな無責任な。にしてもダンがそこまで言うのなら本当に凄い才能の持ち主なのかもしれない。ダンって意外と人を見る目はあるからね。自己評価はかなり甘いけど、他者の強さを見抜く目は確かなのだ。自身の評価は激甘だけど。

 

 そんなやり取りをしていたからだろうか。その見込みのあるテコンドー使いがすぐそこにいたことに気づかなかった。俺に向かってその鋭い蹴りが放たれるまでは。

 

「っ!?」

 

 ギリギリで身をそらすことでなんとか反応することができた。というか危ねぇ!?今の蹴り、一般人が喰らったら昏倒するレベルの威力ありそうだったぞ!?誰だよいきなり!?なんてことするんだ!だが甘かったな!その程度の不意討ちなら慣れているのさ!なぜ慣れているんだろ俺。

 

「......まさか本当に連れてくるとは思わなっかたぜオッサンよぉ?それに今のを避けるってことはあながちブラフでもねぇみてえじゃねえか」

「いきなり蹴るなんてどういうつもり!アルだったから(喰らっても大丈夫だと思うし)いいけど、普通の人だったらどうするつもりだったの!!」

「あン?んなの決まってんだろ?そのままお帰り願うだけさ。わざわざ来てもらって悪ぃけどよぉ~?アタシもそんなに暇じゃねーんだ。そこの胡散臭えオッサンの戯言になんて特にな。まあ、どうやら少しは楽しめそうだけどねぇ?」

 

 蹴りを放った片足を降ろさずにそのまま此方を挑発するように動かしながらサクラの問いに答える()()。道場の帰りなのかテコンドーの道着に何故か素足という出で立ちである。ツインテールにしている髪が顔を動かすたびにかすかに揺れている。幼いながらも整っていて美少女といって間違いない顔にこちらを値踏みするような視線と薄笑いを浮かべている。どうやら彼女がダンの言っていた"見込みのある奴”で間違いなさそうだ。まあ、それはいいんだけどさ......テコンドー、ツインテール、女性、ストリートファイター。あれ?この娘ってもしかして

 

「フッフッフ!今日こそはサイキョー流に入ってもらうぜぇ!!───シュリぃ!」

「ジュリだっ!!ハン・ジュリだっ!しつこく勧誘してくるくせに名前間違ってんじゃねえ!!蹴り殺すぞ!」

 

 やっぱりハン・ジュリだった!?ていうかなんか若くない!?いや今まで会った人たちも全体的に少し若かったけどさ!?

 

 ハン・ジュリ。ストリートファイター4から登場した韓国出身のテコンドー使いの女性だ。まるで角のように結わえたツインテール(?)に露出度の高い衣装、非常にサディスティックかつエロティックな言動の目立つキャラクターだ。その為登場した際に韓国側から『韓国人はこんなのじゃない!』といったようなクレームが入ったとか。ちなみにCAPCOM側は『じゃあインド人は手が伸びるんですか?』と返して論破したらしい。自覚はあったんですねCAPCOMさん。

 そして、S.I.N社というシャドルーの関連会社のCEOであり4の実質的なラスボスであるセスの下に所属していた。つまり()()()()()()()()()の登場人物である。確かその時が25才くらいだったはずだから、同じ原作キャラであるサクラとは世代がちょっと違うはずなのだが...今目の前にいる彼女は俺達とそう変わらない、1つか2つ上くらいの同世代の少女に見える。

 

「ッチ!まあいい。んで?ワタシと()るんだろ?早いとこケリつけてそのオッサンのしつこい勧誘からおさらばしてーんだ」

 

 そう言って彼女は原作を彷彿させるサディスティックさを感じさせる笑みを浮かべた。ああ、これは間違いなくハン・ジュリだ。ちっちゃいけど。原作ではヴィラン側だった人物が何故か自分たちとほぼ同世代で、しかもネタキャ...ダンからの勧誘を受けている。そして今からサクラか俺が闘わなきゃいけない事になっているわけですよね?

......なにこの状況?




原作の流れをガン無視してジュリちゃん(14才)登場!ちなみに主人公たちの2つ上です。そしてそんなリアル中学生美少女にしつこく絡むピンクの道着のオッサン。どう見ても事案ですね。ジュリのゲーム中での性能などは次回の格闘シーンに入れる予定です。

── おまけのミニコーナー ─

戦闘前会話
春日野さくらVS矢吹真吾(KOFシリーズ)
「憧れの人に追いつくために頑張る!俺たちってなんだか似てると思いません?ほらハチマキ巻いてるとことか!」
「え!?うーん?そうかなー?確かに私はリュウさんに憧れてるけど...」
「やっぱあれですよね!!技の習得がうまくいかなくて悩んだりするでしょ?俺もいまだに炎が出せなくて」
「え?私3ヶ月くらいで波動拳撃てたよ?」
「......え?マジで?」
「マジで」

ラウンドワン ファイッ!!



みたいな感じですかね?

次回はVSジュリ戦。さて、一体どちらが闘うのか?そしてまだ両親が生きてるっぽいのにジュリちゃんの言動がアレなのはなぜなのか?次回をお楽しみに!

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