ちょっと周辺環境が変わってしまいまして執筆時間が取れなかったり、その少ない時間をモンハンに吸い取られたりしてしまったせいもあります。
が、一番の理由はスト5のサクラのストーリーをクリアしたこと。あのエンディングで私の中の“何か”が壊れてしまいました。いや、サクラがああいた感じに成長するのはいいと思うんですが...なんというか、まあ、実際に見たときに「なんか違う」感がぬぐい切れなかったというか。別にサクラに自分勝手な幻想を抱いて訳ではなくて、いくらなんでもその会話の流れはどうかと思ったわけで。というかジミーさんの扱いもひどくね?一応その人サクラの兄弟子(ダンいわく)なんやで。とにかく執筆しようとしても思ったようにキャラが動かなくなるというガチスランプにはまってしまいまして。
しかし、他の方の作品や、感想などから少しづつモチベーションを回復することができました。さらに、時守 暦氏の『狩りゲー世界転生輪』の最新話を読んでいた時に紹介されていた、far氏の『北斗の拳メロン味~ただし人口着色料で緑色なだけ。でメロン果汁は入っておりません』にてなんとこの作品を紹介してくださっているのを発見。一気に色々なゲージがMAXになりました!このお二方の作品については前書きで紹介すると長くなりすぎるので、あとがきにて紹介させていただきたいと思います。
あ、例のごとく深夜(早朝?)仕上げなんで、見直しとか出来てないです。おかしい所あったらごめんなさい。
それでは本編をどうぞ!
前回のあらすじ
主人公「結構頑張ったんだけどなぁ」
ジュリ「アルは固くてヤりがいがある」
サクラ「おこだよ!!」
キムさん「私 が 来 た !!」
どうも、ジュリを相手に優勢に闘ったり、サクラを庇ってみたりしたのにキムさんの登場でなんだか空気だった日向涼、英名をアルトリウス・エリオット・ヒューガーです。
あの騒動の後、気絶した師範代を(ちょっと強引に)起こしてからキムさんが状況を再度確認。そして師範代をこの道場の責任者から外す事を宣言した。師範代はやはりというか、性懲りもなく異議を申し立てたのだが......本来なら前の師範が辞めた際に報告をいれなければならなかったのを故意に怠った事、ジュリを含む女子門下生への不等な扱い、サクラに対しての不意討ち(喰らったのは俺だが)等を『悪』とみなしたキムさんに文字通り一蹴され結局責任者を辞任する形となった。ちなみにあまりに往生際が悪かったため、物理的にも一蹴されて黙らされていた。
その後遅れてやってきた、というかキムが鳳凰脚ですっ飛んできたせいで置いて行かれていたらしいキムの道場の門下生たちにどこかへと連行されていった。連れて行くときの門下生たちの何かを悟ったような「かわいそうだけどあしたの朝にはハゲのチビやデブと一緒に更生させられる運命なのね」って感じの目が彼の末路を暗示しているようでとても印象に残った。自業自得すぎて同情の余地なんてまるでない筈なのに、不意打ちで蹴りを喰らった俺ですらほんの少しだけ冥福を祈りたくなったよ。まあ、別に止めたりはしないんですけどね。
で、そんな風に色々あったせいで結局俺とジュリとの再戦は行われなかった。せっかくサクラが頑張ってくれたのに、無駄になってしまったな。俺が師範代の蹴りを受けてしまったせいで条件がフェアと言えなくなってしまったのが一番の理由なので、なんとも申し訳ない気持ちになる。まあ、悩んだところで今更どうしようもないのだが。あの時はなぜか考える前に身体が勝手に反応してたんだよね。まあ、いくらサクラといっても一応は女の子だし?目の前で蹴られるのを黙ってみているわけにはいかないのですよ。ほら、俺って骨の髄からフェミニストなので。......で、再戦がなくなった俺たちが今何をしているかというと、
「さあ!遠慮せずにどんどん食べたまえ!!食べ放題コースですから食べなければ損ですよ!」
「わーい!!お肉だ~♪お肉だ~♪」
現在キムの行きつけだという焼き肉店にて食事中です。メンバーは俺、サクラ、ダン、ジュリ、キムの五人である。あとから来た門下生たちに師範代を連行させた後、キムは残っていたジュリの道場の門下生たちに一旦解散するように指示を出した。後日、今後の道場の運営などについて知らせるそうだ。あと、『男子の門下生にはあとで
その後、なぜかキムは帰ることもなく俺たちを食事に誘ってきた。俺とサクラ、ダンは道場に来る前すでに食事を済ませていたのだが。まあ、食べますけどね。サクラはさっき暴れたせいか余裕で食べられるようだし。ダンがタダ飯をのチャンスを逃すはずもなく、反対意見ゼロで焼肉店へと移動した。え?ジュリ?サクラが(腕をつかんで強制的に)連れてきましたけどなにか?
「はい、ありがたくいただきます。それにしてもキムさん、今回はわざわざ来ていただいてありがとうございました。あ、店員さーん、ここからここまで全部お願いします。ライスは特盛で」
「なに、当然のことをしたまでですよ!そこに悪があるのなら、滅ぼすのが正義の使命!むしろ知らせてくれたことにこちらが礼をいいたいくらいですよ!......いきなりそんなに頼んで大丈夫なのかね?いや、食べきれるのならいいのだが」
「食べ放題にしといてよかったなアンタ。俺やサクラも結構大食いな方だが、アルの奴こう見えてすげぇ量食うからな。前に大会で優勝して懐があったけえ時に軽い気持ちで『好きなだけ食っていいぞ』って言ったら賞金どころか生活費までもっていかれて死にそうになったからな。ぜってーこいつの胃袋にはなんか別のバケモンが住みついてんぜ」
「まあるいピンクの悪魔ですねわかります!」
失礼な。あんなに節操なしに何でも吸い込んだりしないからね?あの時はダンがあまりに調子に乗っていて、無駄使いをしそうだったから警告の意味も含めて少しだけリミッターを外しただけですぅ~。ちゃんともやしが一か月分は買えるくらい残してましたよ?まあ、さすがにちょっと食べ過ぎたと思ったからちゃんと家の食事(地獄の修行つき)に何度も招待してあげたりもしたしね。結果としてその修行のせいで空腹じゃなくて疲労で死にそうになってたのは確かに申し訳なかったが。
「つーかよ?なぁんでアタシまで一緒にメシをくわねーといけねーんだy「ねえねえ!ジュリちゃんは何にするの!!」っくぁ!?耳元でいきなり大声出すんじゃn「ほら!これとかおいしそうだよ!!」グイグイくんなお前!?ああもうっ!この辛口キムチとスンドゥブでいいから!少し離れろコラッ!」
さっきから一人だけ(サクラに無理矢理連れてこられたせいで)ふてくされたような表情でいたジュリが不満を口にしたが、サクラの押しの強さによって結局は注文をしてしまいこのまま食事に参加することが決定した。サクラはある程度(サクラ的に)親しくなるとグイグイくるようになるからな。懐に飛び込む瞬発力の高さはバトルだけじゃないんだよ、そいつ。そのペースに巻き込まれるとすごく引っ張りまわされることになるから気をつけてね!(実体験)
「ハッハッハ!いやー仲がいいのですな!さて、肉も来たようですし一旦食事に集中するとしましょう。話はそれからです!」
「「肉だァーー!!ヒャッハーー!!」」
「......はあ。もういいや。なんか馬鹿らしくなってきちまった」
無駄にさわやかに笑うキム。肉が到着したことでテンションが上がり歓声を上げるサクラとダン。そして何かを諦めたような表情でため息をつくジュリ。なんというか、このテーブルちょっとカオス過ぎない?まともなのはどうやら俺だけのようですね(キリッ)......さてせっかく肉が来たのだから俺もいただくとしましょうかね。いただきます!
──1時間後──
店員たち「「「すみません、食べ放題用の肉が全て無くなりそうなのでこのあたりでご勘弁ください!!!」」」
アル「え?」
──食事終了──
「......お前さぁ、どんだけ食ってんだよ。店長っぽい人ちょっと涙目になってたぞ」
「な?俺が言った通り、食べ放題にしといて良かっただろ?」
「...確かに。まさかあれほどの量の肉を一人で食べきってしまうとは。私の道場にもよく食べる者がいますが、まさかその体格でチャンよりもはるかに食べるとは思いもしませんでした。いやはや、人は見かけによらないものですね」
......テヘっ!ちょっと食べ過ぎちゃったかな!
「何ちょっと可愛い感じでごまかそうとしてんだよ。全然ごまかしきれてねーからな。......で?飯を食い終わったわけだけど、そっちの正義の師範様はいったいこいつ等になんの話があんだよ?つーかホントにアタシがいる意味あんのかよ?なあ」
「うむ!君を連れてきてくれたのはそちらのサクラさんだが、できれば一緒に話を聞いてもらいたかったのでね。都合がよかったのでそのまま食事をとってもらたのだ。さて、本題なのだが君たち、是非とも私の道場に来てはもらえないかな!無論!そちらの都合さえよろしければだが!」
「なんだぁ!?引き抜きかテメェ!?こいつらはみんな俺様のサイキョー流に入ってんだよ!いくら焼き肉をおごってもらったからってその事実はほんちょっとしか揺らがねえからなコラァ!!」
おい少し揺らいでんじゃねーか。というか、話の流れ的に引き抜きというよりは、『一緒に修行しようぜ!』的なニュアンスだったと思うのだが。ほら、なんか修行を始める前の甚八郎おじいちゃんと同じような眼をしてるし。......ちょっと逃げたくなってきた。くっ!震えるな俺の身体!
「いえいえ!引き抜きというわけではなく、道場で共に修練をしませんかというお誘いですよ!見たところそちらのお二人はその若さにしてなかなかの修練を積んでおられるようですし、わが道場のテコンドーと触れることは必ずや良い経験となることでしょう!こちらの門下生にもいい刺激になりますしね!もちろん!テコンドーに乗り換えたいというのなら大歓迎ですがな!ハッハッハ!」
「だ、駄目だからなアルゥ!サクラァ!乗り換えは絶対ダメだからな!?お願い見捨てないでくれぇ!!」
「......で?アタシもそれに参加しろってのか?」
あっ、ちょ!?縋りついてこないで!?そんな少し泣きが入った必死な表情で弟子に懇願するみっともない
「ええ!君がこの前の大会で優勝した素晴らしいテコンドーの才能の持ち主だということは知っています。しかし!だからこそ惜しい!!あの師範代がまともに指導をしていたとはとても思えないのでね!君ならきっと更に高みを目指せるはずだ!あの道場の立て直しにはいさささか時間がかかりそうであるし、悪い話ではないとおもうのだが」
「......ふーん」
「おいジュリぃ!勝負はあんな結果になっちまったが、サイキョー流に入るよな!?な?入ってくださいお願いします!!」
「ヒビキさん必死だね」
どうやらジュリも少しは乗り気のようである。まあ、俺とサクラも韓国に来たばっかりだから時間はまだあるので参加すること自体は、観光できるチャンスが少なくなる以外は何の問題もない。サクラがもう行く気満々だからおそらくもう逃げられないと思うし。それに、キムの道場ということは『あの二人組』とかに会えるかもしれないからちょっと行ってみたいし。それにしてもダン必死だな。縋りついていた俺から離れたと思ったらジュリに即座に土下座を敢行だからな。無駄に洗練された無駄のない流れるような動きだった。...おや?どうもキムの話はまだ終わっていないみたいだ。
「それに、最近は気になることもあるのですよ」
「気になること?」
「ええ。あの『帝王』サガットの敗北後、格闘界の混乱にまぎれ実力のある格闘家の失踪が起こっているのですよ。それも一人や二人ではない!私はそこに『悪』の気配を強く感じるのです!!」
「な、なんだって!?実力のある格闘家が消えただぁ!?しかもヤバいのが絡んでるってのか?......はっ!?な、なんてこった!!俺様に危機が迫っている!?」
いや、確かにダンは強いけどさ、なんとなくだけど狙われることはないと思うな。なんとなくだけど。それに今の時期に暗躍してるってことはどうせシャドルーなんでしょ?だったらダンより先にジュリの家族とかの方に危険がおよぶとおも............あああぁぁあ!?そうだったぁ!!ジュリの家族がヤバいじゃねーか!危ねー!?原作と違ってジュリが幼いからちょっと忘れかけてた!というか、ジュリが幼いからこそ今が一番事が起こる可能性が高い時期じゃないか!しっかりしろ俺!原作でジュリの一家を襲った悲劇は忘れていいもんじゃないぞ!
「あぁ?それがアタシに何のかんけーがあるってんだよ?」
「消えているのは実力のある格闘家だけではない。様々な格闘技の才能あふれる若手も同時に失踪しているんだよ。なんとも許しがたいことにね!!」
「ふぅん?つまりアタシとか、そっちの二人もあぶねーって言いたい訳?はっ!自分の身ぐれー自分で守るさ。もし来たなら蹴り潰してやるよ」
「...確かに君たちはその年にしては、というか並みの格闘家と比較しても劣るものではないかもしれない。しかし!忘れてはいけない!『プロの中でも実力のある』格闘家すら消えているのだ。詳細は判明していないとはいえ決して楽観視できるようなものじゃあない!」
シャドルーは勧誘・買収・脅迫・誘拐・洗脳なんでもござれですからね!いや、マジでどうしよう。原作での出来事が必ず起こるとは限らないこの世界だが、大筋の流れに関することだと起こる可能性はかなり高い。サガットがリュウに負けたり、ケンが全米格闘王になったりだとかだ。原作キャラであるジュリにシャドルーの魔の手が伸びないと楽観視することは、キムが言っている通りできはしない。というかキムさん俺のように原作知識で知っている訳でもないのにジュリに危機が迫っているのを本能で感じ取ってるぽい。キムさんの悪人レーダーに反応ありとか本格的にヤバいような...
「......ちっ。ウチのパパみたいなこと言いやがって。最近忙しいくせにアタシの心配ばっかしやがる。ドクロがどーの、シャなんたらがどーのってぶつくさ言ってるし、疲れてんのはアンタの方だろってんだ」
ジュリちゃぁあん!??フラグ!それフラグだから!?しかもたったらアカン系のやつぅ!!ヤバいこれ予想以上に猶予無いくさいぞ!?
「親御さんの心配ももっともですね。まだ表沙汰になっているものは少ないですが、出ていないわけではないのです。きっと君のお父様も何らかの事件を耳にされたのかもしれない。親が子供の心配をするのは当然のことですからね!」
「確かにパパは検事だけど、ちょっと心配し過ぎだと思うんだけど」
「愛されてるね!ジュリちゃん!」
「はぁ!?い、いきなりなり言ってんだ!!そ、そんなんじゃねーよ!!ただ心配性なだけだろ!テキトーなことぬかしてんじゃぬえっ!!」
あ、今ジュリちゃん動揺してちょっと噛んだ。
「とにかく、そういった事件が起きていることは心にとめておいてほしい。私の道場での修練も、そういった事態に遭遇してしまった時の助けとなるだろう!無論、遭遇しないことが一番だが、そうでなくとも強くなっておくにこしたことはないさ!」
すこし頬を赤くしながら言い訳するジュリという、かなりレアっぽい姿を見ることができたが、正直それを気にしている場合ではない。このままキムの道場に行くのはいいとして、ジュリの原作鬱フラグに対して何かできることがないかを全力で思考する。なにか手をうたなければ下手をするとキムの道場で修行中に両親が謎の失踪とか普通にあり得るだろこれ。
......キムに事情を話して見張ってもらうか?...いや、実力は申し分ないが、相手は国際的犯罪組織である。いくらキムが悪人絶対許さないマンだったとしても、ジュリの一家に襲い掛かる、
できればシャドルーのことをある程度知っているのが望ましいし、その動きをなにかしら掴むことができる諜報力も欲しいところだ。さらには実際に発生したときに撃退できるだけの実力は必須だし、大規模な動きに対応できる組織的な力もあった方が良いだろう。これらすべての条件を満たしていて、そのうえで快く協力してくれるような都合のいい存在なんてそうそういるわけ...いるわけ............あれ?
「あの、ちょっと電話してきていいですか?その、キムさんの道場に行くとしたら滞在期間とかが少し伸びそうなので、家に一度連絡をいれておきたいのですが」
「あん?また電話ってか?さっきも電話してたよな、お前。どんだけマメなんだよ」
「いや、さっきのはキムさんにしか電話してないから。実際には親には電話してなかったから一度本当に連絡をね」
「親御さんに連絡しておくのはいいことです!遠慮せずに電話してくるといいですよ!」
話の中心になっていたキムの許しを得たので再びジュリの道場の電話のところに移動し、今まで
『......こちらの番号を使って連絡してくるということは、何かあったのかい?アルトリウス君』
「ええ。貴方が追っている
『どうやらなにかの間違いでかけたというわけではなさそうだ。...詳しく話を聞こう』
「はい。よろしくお願いします───
─── 4日後 ───
結論からいってしまうと、何とかなった。
びっくりするくらいあっけなく、原作のジュリの人生をあれほどまでに歪ませた悲劇は未然に防がれたのだった。電話で俺が伝えることが出来たのは『ジュリの父親の検事がシャドルーについてなにか知ってるぽい』、『娘を過剰に心配しているようだし、その娘がドクロとかシャなんとかというワードを口にしていたので、もしかしたら周囲にもそんな感じで情報漏れてるかもしれないから、もしかしたら近々襲われるんじゃ?』といった非常に曖昧かつ頼りない情報だけだったのだが。
そこから1日もしないうちに、本当にハン検事がシャドルーについて独自に調査をしており、そのために彼を亡き者にしようとシャドルーが襲撃を計画していることを突き止めたらしい。そして2日目にはナッシュさん自身がハン検事に接触。狙われていることを説明しこれ以上不用意にシャドルーを探らないようにと忠告したのだとか。ハン検事も最初は難色を示したようだが、自分だけではなく家族にも危機が及ぶ可能性が非常に高いことと、現役の軍人であるナッシュ達が秘密裏にではあるが捜査をしているということで最後には同意してくれたらしい。
そして既に計画されていた襲撃だが......“諜報部の凄腕”とかいう人が潜伏場所を割り出し、俺の電話からわずか3日後になぜか
さて、ジュリの鬱フラグが予想以上にあっさりと折れてしまった件に関してはこんなところですな。で、キムの道場での修行も今日で最終日なんですよね。いきなりだと思うかもしれませんが、実際4日たってますしね。
「若く、才能あふれる君たちへの指導は非常に有意義な経験になりました!もし韓国に再訪することがあればぜひまた我が道場を訪れてくれると嬉しい!いつでも歓迎しよう!」
「あ、ありがとうございます」
「うん!私もとっても楽しかったよ!あっ!チャンとチョイもまたねー!」
「お、おう。いやー寂しくなっちまうよ。なあチョイ!(まさかあの修行馬鹿に火に油を注ぐような女がいるなんて)」
「そ、そうでヤンスね!サクラのお嬢さんもお元気で!(あの咲桜拳とか波動拳とかいう技の的にされるのはもうコリゴリでヤンス!)」
いつも通りの熱いテンションで別れの挨拶を告げるキム。それにこたえるサクラについでのように声をかけられて目を泳がせながら応じている2人組。その名前からもわかるように
“チャン・コーハン”と“チョイ・ボンゲ”。キムと同じく格闘ゲーム『キングオブファイターズシリーズ』に最初期から登場する
チョイは非常に機動力に優れたキャラクターで、画面を所狭しと動き回るトリッキーな必殺技を持つ。その体格の小ささから攻撃のリーチは全体的に短いが、手に付けた爪のおかげか自身の当たり判定の割には攻撃が届いたりする。全体的に癖が強く使いこなすには慣れがいるが、とある年代の作品だととんでもない性能の崩し技や超性能の超必殺技のせいでかなり狂った性能を発揮したりできる。...見た目はちょっとアレだが。
「...アルもまたな。ホレ、餞別に俺が使ってる鉄球の予備をやるよ。これ、弁当箱にもなって意外と便利なんだぜ?」
「向こうに帰っても頑張るでヤンス。挫けちゃダメでヤンスよ!アッシからは爪のスペアを」
「え?あ、はい。あ、ありがとうございます」
そして何故かそんな二人からの好感度が高いんだけど、なぜなのでしょうか?餞別に二人の愛用武器である鉄球や鉤爪のスペアをプレゼントされるって四日程度にしては異常だと思うんだけど。優しいというか、なんというか...同じ境遇の同族を憐れむような、そんな奇妙な仲間意識のようなものを感じるのですが。なして?
「最初は何も知らずにキムの旦那の特訓を受けに来た世間知らずかと思ってあんまし興味もなかったんだがなぁ
。あの拷も...げふんげふんっ!修行を最後まで逃げようともせずにやり遂げる根性はすげぇと思うぜ!......キムの奴のしごきの矛先もかなりひっかぶってくれてたしな(ボソッ)」
「その通りでヤンス!そういう姿勢にアッシらふか~く感動したでヤンス!......何も言われてないのにいきなり奇妙な地蔵を背負った時はどんだけ普段からひどい目にあっているのかと想像したら、なんだか他人とは思えなくて泣けてきたでヤンス(ボソッ)」
どうやらキムに修行をつけてもらった時の様子や、おぶさり地蔵をつい癖で背負ってそのまま修行に入ろうとしたことで、普段から俺が自分たちと同じように誰かにひどい目に遭わされていることを本能的に感じ取ったらしい。おいその憐れむような眼はやめーや。
「まっ、俺様にはちょ~余裕だったぜ!更に強くなっちまったしな!フッ、自分の才能が恐ろしいぜ!」
修行中に一番死にそうな顔してたくせによく言う。でも、あながち否定もできないんだよなぁ。だって
「あれー?泣きそうな顔で『アルゥ!助けてくれぇ!!』て喚いてたのはどこのどいっつだったけぇ?なぁおい?」
「あっ!ジュリちゃん!!私たちは先に日本に帰るけど、そう遠くないうちにジュリちゃんも日本に引っ越してくるんだよね!そしたらまた私とファイトしよう!絶対だよ!!」
「......ふん。アタシはまだ負けた訳じゃねーから別にサイキョー流に入るわけじゃねーけどな。パパが仕事の都合で韓国を離れなきゃいけなくて、たまたまその場所が日本だったてだけだ」
「おいおいそりゃないぜジュリぃ!しょうがねぇなぁこのサイキョー流Tシャツ(ロゴ入り)もつけ「いらねーよ!!」ぐはっ!?な、なにも蹴るこたねーだろ!?」
チャンの巨体の後ろからジュリがひょっこりと姿を現し、ダンに冷徹なツッコミを入れた。ジュリは結局、サイキョー流には正式には入ることはしなかったが日本に来ることになった。これはシャドルーに目をつけられたハン検事達の身の安全を考慮したナッシュさんと話し合った結果なのだそうだ。とりあえず韓国にとどまるのは危険が大きいということで、一旦海外でほとぼりが冷めるのを待つというわけだ。なぜ日本になったのかまではわからないが...サクラやダンにとっては非常にうれしい結果といえる。サクラは強いファイト相手ができるわけだし、ダンの中ではジュリはもうサイキョー流なので活動しやすくなるからね。まあ、さすがに海外への引っ越しとなるとそうそうすぐに準備が出来るわけではないので、その間はキムの道場でしばらくこのまま修行を続行するらしい。同じテコンドー使いであるキムとの修行は、彼女の実力を着実にひきだしていたのでジュリとしても望むところではないだろうか。
「まあ、負けた訳じゃねーが───勝ったとも思っちゃいないからねぇ?それに蹴りごたえのあるサンドバックじゃないと、もう物足りなくなっちまったからなぁ?日本についたら覚悟しておけよぉ?なあ
......あれ?ハン一家の悲劇を回避できたから凄い嬉しいはずなのに、俺の平穏がゴリゴリ削られてゆく気がするぞ?───どうしてこうなった!?
─ ちょっとした外伝 ジュリの道場のその後 ─
それは、アル達が帰国して少ししてからのこと。ジュリが通っていた道場に男子門下生が集められていた。
「さあこれから本格的に君たち男子門下生の根性を鍛えなおします!覚悟はよいですか?しかし!私も鬼ではありません!君たちにも、あのような環境の中で思う事があったのではないですか?ですから初日である今日は、まず君たちとの面談に当てたいと思います!さあ!何か話したいことがあるものは遠慮なく私に言ってごらんなさい!全て受け止めてあげましょう!」
鬼ではないの辺りで『嘘だ(でヤンス)ッ!』と聞こえた気がしたが、とにかくキムはまず、男子門下生達の悩み相談をはじめるらしい。どうでも良いがこの時のキムは鬱陶しいまでの爽やかスマイルでドヤ顔だった。
「......あ、あのっ!き、キム師範!!」
そんなキムに、勇気を振り絞るように一人の男子門下生が呼び掛ける。どうやら本当に悩みがあったようだ。
「さっそくですね!言いにくいようならあちらの別室で聞いても大丈夫で「お、俺っ!あ、あの時から!あの娘に蹴らた時から女の子に蹴られたくて蹴られたくて堪らないんです!!」......はっ?」
初手からとんでもない爆弾が飛び出し、キムの思考は一瞬停止した。ドヤ顔も崩れた。
───しかし、爆弾は一つだけではなかった。
「お、俺も!蹴られた時に見たあの白いものが忘れられないんです!!」
「何か最近、今までなんともなかったのにジュリに罵られると興奮するようになってしまったんです!!」
「他の門下生の女の子達に蔑んまれるのが気持ち良くなってきて」
「あの時の唇の感触が今もまだ残っていて...(ちらっ)」
「え?お、おいお前なんでこっち見てんの?じ、冗談はやめろよな?え?マジなの?......キム師範助けてぇ!?」
これはもしかしたらチャンやチョイよりも手強いかもしれない。キムは自身の指導者人生に試練が訪れていることを知るのだった。
ジュリちゃんが獲物(アルトリウス)をロックロンしました。やったね!アル君!君をボコボコにする要員が増えたよ!実際ジュリちゃんは前回のアルとのファイトで『実力が近い相手と闘う楽しさ』に目覚めたので、こうなるのは不可避だったのさ。
ちなみにその時に『自分より強いかもしれないヤツを蹴る悦び』にも目覚めてしまっていたりするので、最後の『アル以外のサンドバックだと満足出来ない』という発言は冗談でもなんでもないんやで?
アルの明日はどっちだ!
次話は、ちょっとこの先の展開を予告編風にまとめた短編となる予定です。予告編風なのでかなり短くなるかもしれませんので、おまけコーナーの『勝手に勝利台詞』はその時に回す予定です。ちょっと今回は気力がそこまでもたなかったので。『さくらがんばる!』の新装版が出るらしいという情報を入手したので、それでどうにか持ち直したいところです。
・アルの大食い
外伝のサクラの誕生会あたりから判明したアルの異次元胃袋。普通に食べればそれなりの量で満腹になるが、ひとたびリミッターを外すと文字通り『底抜け』に食い続けることができる。アルの生態に詳しいサクラ・カスガノ氏によると時折お腹の中から「ハァイ!」や「ポヨ!」といった声が聞こえることがあるとかないとか。真相は闇の中である。
・ハン一家の悲劇
原作だとジュリが15歳の時に、家族でのドライブ中に両親とともにシャドルーに拉致されてしまう。さらには暴行され片目を失った挙句、両親まで殺害されてしまう。父親が高名な検事であり、シャドルーに近づきすぎたことが原因だと考えられるがストリートファイターの登場キャラの中でもかなり悲惨で重い過去ですよね。一番といえないあたりにストリートファイターの闇を感じざるを得ない。なお、海外コミック版だと少し内容が違うようで、ジュリが根暗な令嬢だったり車が銃撃されたりするらしい。どっちにしろ悲惨なのは変わりはないのだが、この作品ではなんと電話一本でなかったことに。
えらく簡単に終わったように思えるが、普通は『シャドルーを追っている現役軍人』という超ピンポイントな連絡先なんて知らないからね。実はナッシュさんの信頼度を初遭遇時に一定以上あげていなければ起こりえなかったという奇跡。つまり、一応はアルのファインプレーである。
─── 他の作者様の作品紹介 ───
・『狩りゲー世界転生輪』
時守 暦氏作の、(基本的には)3つの『狩りゲー』の世界をループしながら転生してしまう主人公の奮闘(意味深)を描いた超大作です。それぞれの世界に放り出された主人公が悪戦苦闘しながら、それこそ死んでしまったりしながらも徐々に環境や状況に適応していき前へと進んでいく。最終的に人外じみた能力を会得するまでに至るのはループ転生の王道的な面白みが満載である。あと、エロい。エロい(迫真)。どれくらいエロいのかというと、話の途中からR18に運営に移行させられるくらいエロい。最初の方は主人公は生き延びることでいっぱいいっぱいといった感じなのだが、少し余裕が出てきたあたりからはいっぱいおっぱいといった感じになっていく。で、でもエロ抜きにしても3つの世界を股にかけ、時折更に別の世界も登場したりする壮大な名作なんやで!紳士(意味深)以外の方々も、ぜひ一度読んでいただきたい。面白いからホントに!あっ、良い子(18歳未満)は見ちゃだめだぞ!大人になった時の楽しみにとっておくのだ!いいね?
氏が最近連載を開始した『私はフロム脳ではないッ!エロゲ脳だッ!!』もすっごいエロいので紳士の方々はこちらも要チェックやで!自分はソウルシリーズは全部クリアしましたが、この世界はクリアできる気が全くしない(笑)
......実は時守氏が以前、某所にて執筆していたギルティギアの小説を読んだのが自分がこの小説を書き始めるきっかけだったりするのです。様々な意味で自分にとって思い入れのある方です。
・『吾輩は〇〇である』、『それでも吾輩はネコである』、『北斗の拳メロン味~ただし人口着色料で緑色なだけでメロン果汁は入っておりません』
far氏の作品で、『吾輩は〇〇である』はヒーローアカデミアが原作のお話で本編完結済み。『それでも吾輩はネコである』はその続編でこちらも本編完結済み。実は『狩りゲー』の方で紹介される以前から気になってはいたのですが...ヘタレな自分が、主人公がヴィラン側ということで読むのをためらっていた作品なのです。しかしいざ読んでみると、確かに主人公はヴィラン側なのですが、すんなりと読む事が出来てしまって本当に驚きました。主人公が凄くいいキャラしているのがその要因だと思います。「良かれと思ってぇ!」とか、行き当たりばったりで色々とひっかきまわしたりするのに、なんだかんだで最終的にちょっとだけ『何か』が良くなっているような、そんな不思議な魅力がある作品です。個人的にこの作品のステインさんは必見。
続編はその良いキャラしてる主人公が、色々な世界でアレコレするお話。相変わらず色々やらかしますが、そこはこの主人公なのでなんだか重かったりシリアスだったりするシーンのはずがあら不思議、なんだか訳のわからない空気に!この主人公マジ天然カオス発生装置。だがそこがいい。
最新作である『北斗の拳メロン味』は北斗の拳イチゴ味を無理矢理ゲームにしたような世界にぶち込まれたモヒカンがアレコレする話。ゲーム的な選択肢や能力習得などのシーンがあるのですが、思わず「そっち!?」って突っ込みたくなるような主人公の行動に腹筋が痛くなりました。北斗キャラどころかモブキャラさえもどこかしら可笑しい事になっているので主人公も大変そうである...のだが、なんだかんだ順応してヒャッハーしてる主人公が一番ヤバいって思うんだ。あとターバンのガキはやっぱり化け物、はっきりわかんだね。
3作同時に紹介してしまったが、どの作品も共通して話のテンポが良く、結構な頻度で寄り道的なエピソードとかが挿入されたりしているのにやめられないとまらない某スナック感覚でスラスラ読めちゃいます。ちなみに自分は3作を2日くらいで読破していまた。食わず嫌いなどせずにぜひ一度読んでいただきたいです。本当に食わず嫌いで読んでなかった自分を殴りたくなるくらい面白かったので、ぜひ。是非ッ!!(ダイマ)