明日に波動拳   作:路傍の案山子

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お待たせいたしました。

執筆中に感想欄をチェックしたら運営さんから削除されたものがあったようで。よく見てみるとどうもおまけのミニコーナー、勝手に勝利台詞へのリクエストを感想欄で募集した形になったのが原因のようなんですよね。自分が規約を十分に理解していなかったのが原因なので、本当に申し訳ない。

そこで当該箇所を修正、リクエスト用の活動報告を作成いたしましたので、次からはそちらにお願いいたします。マジすんません。

それでは本編をどうぞ



16話 第三種接近遭遇は突然に(導きのヨガファイヤー・1)

───遠い。

 

 

───あまりにも遠い。

 

 

 今までこんなにもこの距離を遠く感じたことはなかった。波動拳や波動壁という、()()()からの牽制に適した技も一応使える自分の中のとって、普段ならむしろ得意な間合いですらある筈だ。それに、距離を詰めるという選択肢もそれほど問題なく行えるだろう。もし、

 

「───ヨガッ!」

「くぅ!?」

 

───対峙している相手が、()()()()()()でさえなかったのなら。

 

......一体なぜこんなことになってしまったのだろう。

 

 

 

~数時間前:日本 早朝~

 

「てなわけで、ちょっくらインドまで行ってきてくんね?」

「いや、いきなりインドにいけとか意味が分からないですよ父さん。ちゃんと説明してください。あとちゃんとこっちを見て話してください」

 

 あ、どうも皆さんこんにちわ。アルトリウス・E・ヒューガー、日本名は日向涼です。あの色々と(主にキムが)濃ゆかった韓国のアレコレからどうにか無事に帰還して大体二ヶ月。最近になってジュリはこっちに引っ越して来て、組み手とかでボロボロになる頻度が上がった以外は比較的穏やかな日々をすごしていました。

 日課である朝の修行を終えての朝食中に、なぜかいきなりウルムナフ父さんにインドに行けと頼まれてるまではね。なんの脈略もない唐突な『インドへ行け』発言に理解が追い付かない。というか、なにも説明してないのに“てなわけで”もなにもないんですが。おい目を反らしてんじゃねーよ。誤魔化されないからな。そんなちょっとお使い行ってきてみたいな軽い感じで流そうとしてるけど、インドだからな?

 

「わかったよウルさん!!お土産はカレーでいいかな?そうと決まれば早速チケットとか用意しないとね、アル!」

「サクラ、ステイ」

 

 どっから湧いてきやがった妖怪バトルジャンキー。相変わらずナチュラルにウチの食卓に馴染みやがって。あと頼まれてるのは俺なのになんで君が速攻で承諾してんの?というかなんでサクラも一緒に行く気満々なの?ねえ?

 

「えぇ~~!?なんで~!?インドだよインド!?ねえアル行こうよ~~!!」

「いや行き先が()()()()()なのが一番即決しちゃいけない所だからね?」

 

 皆さんはインドといえば何を思い浮かべるだろうか?アジアの中でも広大な国土と人口を誇る大国であるインドだが、日本人がまず思い浮かべるとしたらやっぱりカレーだろうか?それともちょっと渋いところでガンジス川とかだったり?あとは健康法としてのヨガとかも有名ですよね!......()()()()()()()。前世の自分の認識もやっぱりカレーとヨガとヒンドゥー教というような感じだった。そう、『だった』のだ。つまり過去形である。

 

───この世界(ストリートファイター)のインドは───魔境である。牛や象が我が物顔で街中をうろつき、そこらじゅうに口から火を噴いたり、蛇を操ったりといった大道芸人じみた人々がいるのは当たり前。座禅を組みながら空中に静止していたり、明らかに曲がってはいけない角度まで体のあちこちを折り曲げるといった人外の領域に足を踏み入れた者も散見される。挙句の果てにはどういう原理かわからないがなぜか浮かんだまま移動したり、瞬間移動(テレポーテーション)とかしてる奴が稀にではあるが確かに確認できる...いや、できてしまうのだ。前世の世界と比較すると人々が平均して異常な身体能力を持つこの世界ではあるが、その中でもなお異端と呼べる場所、それがこの世界の人外魔境(インド)である。

 

 ......ウル父さんの知り合いがインドにもいるので俺も前に一度訪れたことがあるんだけど、カルチャーショックなどという生易しい言葉では表現できないほどの衝撃をたたきつけられて前世のインドに対して抱いていた先入観が木っ端微塵に砕け散ったからね。まあ、ウル父さんの知り合いがよりにもよって『あの人』だったのも原因の一つなのだが。『シャドーハーツ』、『漂うカレーの匂い』、『リングの塔』、『漢まつr...うっ!?頭が......っ!?

 

 

「まあそんなに警戒すんなって。いや確かに前回のアレは色々な意味でアウトな感じだったとは思うし、トラウマになってるみたいだから悪いと思ってるけどさ!今回は違うから!ちょっと行ってアリスの知り合いに届け物をしてほしいだけだからさ!な?ア・リ・スの知り合いだから!本当に!信じてトラストミー!」

「......(疑いの眼差し)」

「な、なんだその目は!?ホントだって!おーい!アリスゥ!息子が反抗期かもしんない!?ちょっとヘルプ!ヘルプミー!」

「あらあら」

 

 その後、アリス母さんからウル父さんの発言が事実であることを確認した俺は、いや俺達は、結局魔境インドへと飛び立つことになってしまった。ああ行きたくないなぁ...。会いたい人とかはいるけど、やっぱり行きたくないなぁ。

 

「あっ!おにいさま!サクラおねーさまとおでかけになるのですか!えっと、がんばってきてください!」

「ああアナ。ちゃんといい子にしているんだよ?お土産も買ってくるから楽しみにしているといい」

「アナちゃん行ってくるねー!」

 

 現在5歳で今年6歳になる、最近なぜか俺の呼び方が『おにいちゃん』から『お兄様』へと変わった俺の妹であり我が家の大天使、いや女神であるアナスタシアの見送りでモチベーションを何とか取り戻すことができた。本当俺の妹マジ天使。...だからねサクラ、今更行かないとか言わないから腕を引っ張るのはやめアッーーー!

 

 

 

 

「それでアリスさんのお願いって誰に会えばいいの?ねえその人強いかな!?ファイトとかできたらいいなー!」

 

 数時間後、無事にインドへと降り立った開口一番にそんなことをのたまうバトルジャンキー(サクラ)。だが残念だったな。今回はアリス母さんの知り合いなのだから闘争とかとは関りが薄い人のはずなのだ。間違ってもターバンのようなものを被ったガチムチレスラーとかじゃないからな!アリス母さんの知り合い()()変な期待はしないように!そもそも...

 

「残念だけど、母さんの知り合いはママ友の女の人らしいよ。まあ、ヨガはやってるらしいけど、小さい子供がいるらしいからね。ファイトとかは難しいと思うよ?」

「そうなんだぁ。ちょっと残念だけど、なんかその辺に浮いてる人とか火を吹いてる人もいるし探したら凄い強そうな人もいそうだよね!ならはやく頼まれ事を済ませちゃおう!ダッシュでね!いっくよー!......アル!なんて人でどのあたりにいる人なの!?どっち!?」

「何もわかってないのに走りだそうとするんじゃありません。そんなに急いでもバスとかで移動するんだからそこまで変わらないからな?住んでる所はここからかなり西の方みたいだから少し時間はかかるかもね。バスとかに上手く乗れれば日が暮れる前にはつけると思うよ。ちなみに名前は『サリー』っていう人だからな。何でもつい最近、父さんとの旅行中に知り合って仲良くなった人らしいね」

 

 なんでもトラブルに巻き込まれそうだったそのサリーさんをウル父さん達が助けたのがきっかけだとか。で、子供を持つ親同士で話が弾んでアリス母さんと友達になったのだそうだ。それにしても本当にこの世界は色々とワールドワイドだよね。日本在住のイギリス人とロシア人のハーフのママ友がインド在住のインド人とか、前世の世界ではそうそう無いことだと思うな。まあ、この世界だと友人が外国人なのはわりと普通なのだが。そもそも俺からして日本とドイツとロシアとイギリスのクォーターなわけだし。

 

「じゃあ、バスってどれに乗るの?」

「えーと、確か...ああ、あのバス停だと思うよ。時間を確認してみよう。出来れば乗り継ぎとかも確認できればいいんだけど」

 

 確認しているとちょうど目的地方面のバスが来たのでそのまま乗り込んで揺られること1時間くらいで乗り換え予定地点に到着することができた。目的地行きのバスが来るまでかなりの時間があったので昼食をとることにした。時間もちょうどお昼時だったしね。ちなみに当たり前のようにカレーだった。

 

「ひゃあー!?かりゃい(辛い)!?ひょっとアルこりぇしゅごくかりゃいよー(ちょっとアルこれ凄く辛いよー)!?みじゅー(水ぅー)!?」

「自分が確認もせずに“本日の気まぐれカレー”とか頼むからそうなるんだよ。......ほら、こっちのチキンカレーはそんなに辛くないから取り替えてあげるよ」

「うぅ、ありふぁとう...」

 

 外国で現地の人の基準を考えずに頼むととんでもないものが出てくることがある。この世界では基本的にどの店でもメニューに日本語が書かれているのでリスクは少なくなっているが、迂闊に頼むと今のサクラのようになる。......まあ、さすがに気まぐれでカレーにハバネロが3本分も入っていたのは予想できないとは思うけどね?いったいどんな気まぐれだよ。作った奴は彼女に振られでもしたのか?ちなみに激辛カレーは俺がちゃんと完食しました。ハバネロの辛み以外は普通においしかったです。

 

「う~...まだ口がヒリヒリするぅ~...。アル、よくあんなに辛いの全部食べれたね?」

「ジュリさんとかなら喜んで食べそうな味だったよな。お土産がわりに今度再現して作ってあげるのもいいかもしれないな。さて、今乗っているバスが目的地近くの町まで行くからそこからは歩きになると思うよ。一応サリーさんの旦那さんが迎えにその町まで来てくれるらしいから、上手く合流できればいいんだけど」

 

 現在は1995年である。携帯電話がやっと最近実用化されて少しずつ出回りだしたばかりだ。比較的普及が早かった日本でそんな現状なのだ。ここインドでもまだ持っている人は少なく、サリーさんの旦那さんも持っていない。逆に固定電話の方は既に全世界に広く普及しており国際電話の料金も前世の世界と比べて非常に安かったりするので、アリス母さんとサリーさんも固定電話でやり取りをしているそうだ。今回俺たちが来ることも連絡してくれてはいるが、正確な時間を伝えることはできないので合流できるかどうかは多少運が絡んでくる。スマートフォンって本当に便利だったんだなって実感する今日この頃です。あ、ちなみにカリンとサクラに関しては神月製のオーバーテクノロジー気味の端末でメールとかも余裕で出来たりします。携帯電話の市場を神月グループが掌握するのもそう遠くないかもしれない。

 

「あっ!迎えに来てくれるんだ?旦那さんってどんな人なの?」

「......なんでも()()()()()()()姿()をしているらしいから会えばわかるって言われたんだよね」

「ふーんそうなんだ!どんな人だろうね!楽しみだなー!」

「......そうだね」

 

 ......アリス母さんからこの話を受けた時から、ちょっとした『確信』のようなものはあった。でも、あえてあまり考えないようにしていたんだ。だって、『サリー』だよ?ストリートファイター世界で、インドで、サリーだよ?あの、よく伸びる『間違ったインドの集大成』の姿がチラッチラッ頭に浮かんでくるんだ。最近日本に、しかも近所に引っ越してきたジュリにサンドバックみたいに蹴られまくってるので、今は正直お腹いっぱいなんですよねぇ...───原作キャラは。いや、会いたいか会いたくないかでいえば、かなりあってみたかった人なんだけど...俺の中のインドが完全崩壊しそうでちょっと怖いんだよね。

 

 

 

 そして、バスがたどり着いた街で、俺とサクラは───未知との遭遇を果たした。

 

 

「───もし。おぬし達はもしやサリーという女性を訪ねてこの地を訪れたのではないかな?」

「あっ!そうです!ね?アル!...アル?」

「............ア、ハイ。ええと、サリーさんの旦那さんでしょうか?」

 

 『ソレ』は()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()話しかけてきた。褐色の肌に剃っているのかつるりとした頭部には何やら赤い模様が印象的だ。ほとんど上半身は裸であるが、腕には何やら金属製の輪っかのような装飾品らしきものを装着している。ドクロの首飾りはし()()()()が、恐らくあの人物で間違いないだろう。......これはあんまりルーファスのこと馬鹿にできないや。今まさに『第三種接近遭遇』って感じの心境です、俺。

 

「うむ。無事、合流できてなにより。アリス殿によく似ておられるので声をかけたが、間違いではなかったようだな。ああ、私はサリーの夫で───ダルシムという。ようこそインドへ。私の村まで案内しよう」

 

───『ダルシム』

 ストリートファイター2から登場した“原作キャラクター”である。ヨガを極めたヨガマスターであり、その()()()()()を活かしたファイティングスタイルが()()()()()()な格闘家である。闘い自体はあまり好んでおらず、自身が住んでいる村の為に闘うというストリートファイターとしては少々異端の立ち位置にいるキャラクターである。そもそもファイターではなく、本質は修行僧であるため(見た目とは逆に)非常に人間として成熟した人格者だ。そのため原作でも他のキャラクターにアドバイスをしたりその行いを諭すなど、導くような言動も多かった。そして今、俺達も現在進行形で彼の村へ導かれています。キャトルミューティレーションされているわけではないので勘違いしないように。

 

「さあ、着いたぞ。ここが私の村だ。何もないところだが雄大な大地はある。存分に寛がれるがよかろう。今、妻を呼んでまいろう」

 

 ダルシムの村はバスでついた街から1時間ほど歩いたところにある、『長閑な』という表現がしっくりくる雰囲気の村であった。さっきまでの町は非常に人通りが多く、悪くいってしまうと雑多で騒々しい印象を受けるものであっただけに、より一層そういった印象を受けた。ちなみにダルシムは寡黙な性格の為か、ここに来るまであまり会話がなかった。もっぱら興味津々で話しかけるサクラに『うむ』とか『やもしれぬ』とか『ヨーガ』といった相槌を打つだけであった。......最後は相槌なのか?あと、さっき『歩いて』といったけどダルシムはずっと浮いたまま移動していたので彼だけは歩いたりしていなかったりする。村に着いて家に入る前にやっと座禅を組んでいた足を解き、ようやく二足歩行で歩く姿を見ることができた。なぜかちょっと謎の感動を覚えてしまった。

 

「まあ!ようこそお越しくださいました!アリスさんとウルさんのお子さんと、そのお友達ね!私がダルシムの妻のサリーです。はるばる日本からここまでこられてお疲れでしょう。大したおもてなしはできませんが、どうぞ中へ」

 

 ダルシムが家の中に入って数十秒ほどで女性が姿をあらわした。今回の旅の目的であるダルシムの妻“サリー”。長い黒髪を三つ編みのようにして束ねた、褐色のお肌がまぶしいエスニックな美人さんである......若っ!?奥さんめっちゃ若っ!?知ってたけど実際に見ると衝撃半端ないなおい!?しかも凄い美人!というよりまだ美少女っていっても通用しそうな感じですよ!?た、確かダルシムと20歳くらいの年の差があるんだっけ?...今いくつくらいなんだろうか。

 

 ま、まあ、凄まじい衝撃を受けたがこのままここで立ち尽くしているわけにもいかない。促されるままにダルシムの家におじゃますることにしよう。というか、既にサクラが何の遠慮もなく突入していったので、入る以外の選択肢はないんですけどね。

 ダルシムの家はなんというか、恐らく一般的なインドの民家です。周りの家よりは大きい感じだけど、生活に必要なもの以外はないって感じで贅沢さは微塵もない質素な雰囲気ですね。......庭にペットと思わしき象がいる以外は。

 

「......道中から思っていたが、非常に生気溢れる娘であるな」

「......ええ。溢れすぎてて時々(主に俺が)溺れそうになりますけどね」

「...ふっ」

 

 サクラに対して皮肉っぽく返したのになんか意味ありげに微笑まれたんですけど。なんですかその『わかっておる』とでも言いたげな生暖かい目は。しかもそのまま何も言わずに家の中に入っていくし。なんだか納得できない反応ではあったが、一人取り残されるのもあれなので俺もダルシム宅へと足を踏み入れた。

 

「わー!可愛いー!ダッタ君っていうんだー!私は春日野さくら!よろしくね!」

「う、うん」

 

 ダルシム宅に入ると、サクラが3、4才くらいの男の子に目線を合わせながら元気に自己紹介をしていた。その勢いに男の子は若干引いてしまっているように見える。あれがダルシムとサリーの息子、ダッタ君だろう。将来あのガイルの娘さんとペンフレンドになるという設定を持つことになる少年である。一体どういった経緯で知り合うのかとか大変気になるところではある。恐らく今は知り合ってすらいないだろうから意味のないことなのだが。あとサクラはとりあえずもうちょっとテンションとボリュームを下げろ。

 

「今日はわざわざごめんなさいね?本当だったら私たちが日本までおじゃましようと思っていたんだけど、アリスさんに『ダッタ君はまだ小さいんだから大変でしょう』って言われてお言葉に甘えてしまったの」

「いえいえお気になさらず。俺はアリスとウルムナフの息子でアルトリウス・エリオット・ヒューガー、日本名は日向涼と申します。アルでもリョウでもお好きなように呼んでください。あっ、これがお渡しするように頼まれていたものです」

「まあ!ご丁寧にどうも!」

 

 これで今回の旅の目的は達成したな。ちなみに渡すように頼まれていたものというのは、『アリス母さんのレシピ』と『特製のお守り』である。え?わざわざ直接渡すようなものじゃないって?まあ、レシピの方は結構枚数があるみたいだから電話とかで伝えるのは難しいかもしれないが、宅配とかで大丈夫ではあるんだけど......問題は『お守り』の方なんだよね。

 実はアリス母さんの『お守り』は英国王室公認の激レアアイテムだったりするのだ。枢機卿であるアルバートおじいちゃん経由で王族の方々に渡されたそうなのだが...『暗殺者の銃弾を防いだ』、『事故の時に奇跡的に無傷だった』、『呪いの椅子にうっかり座ってしまったが椅子の方が砕けた』、『痴情の縺れで刺されたがお守りに当たってなんとかなった』、『身長が伸びて彼女が出来ました!』等といった効果を発揮したというのだ。最後のはちょっと微妙なところだが、とにかく一部の業界等では非常に価値があるものとして扱われていたりする。宅配で送ると下手をすると争奪戦が起きかねないのである。冗談とかではなく、リアルガチで。

 

「───ほう。これはまた何とも力強く、それでいて慈しみ深きオーラよ...」

「レシピの方もさっそく夕食のメニューの参考にさせてもらうわ!あっ!良かったらあなた達も食べていってね!......ねえアナタ、早速つけてみたんだけど、どうかしら?」

「......ヨーガ」

「まあ!アナタったら!照れてしまいますわ!」

 

 え?今のヨーガにどんな意味があったの!?ほとんど表情とか変わってなかったけどサリーさんにはちゃんと伝わったらしい。サリーさんの反応から察するに『よく似合っているよ』的なものだと思うのだが、さすがは夫婦といったところなのだろうか?というか、アリス母さんのお守りがあのダルシムからもお墨付きをいただいてて『本物』だということが補強されてる件。

 あっ、ちなみに今回サリーさんに送られた『お守り』は十字架とかのシンボルではなく、シンプルな銀の腕輪のような形状のものです。ちゃんとどんな宗教の人でも問題ないようなデザインになっています。事前に採寸でもしていたのかぴったりとサリーさんの腕にはまっている。ダルシムじゃないけど、凄くよく似合っていると思う。...実は俺やサクラも持ってたりするんですけどそれぞれ形が違うんですよね。アリス母さんの粋な心遣いが光る一品なのである。

 

「ほんとに!?やったー!アル!夕食を食べさせてくれるって!」

「君は少しは遠慮というものを覚えようね」

 

 原作のサクラはもう少し礼儀正しいというか、しっかりしてたような気がするんだけどなぁ。ウチのサクラはちょっと落ち着きがないというかなんというか。原作のサクラより実際まだ幼いから別に不思議な事ではないんだけど、将来がちょっと心配になってくる。ちゃんと誘導したり教育したりしてるつもりなんだけどなぁ。いまいち成果が出てないきがする。

 まあ、それは今はいいとして、そもそもダルシムとすぐに合流することができたから夕食にはまだ早い時間帯だからね?なんでお前は今すぐにでも『いただきます』しそうなテンションなんだよ。あと嬉しいのはわかったからダッタ君をいきなり抱きしめるのはやめなさい。ぬいぐるみとかじゃないんだからな?おじゃましたばかりの家の子供に馴れ馴れしすぎるだろ。

 

「あらあら、期待されてるみたいだし腕によりをかけなくっちゃね!あっ、でもちょっと時間が空いてしまうわね。どうしましょう?」

 

 サリーさんが少しだけ悩ましいといった感じでそう言った時だった。

 

「───ならば私との手合わせなどはいかがかな?」

 

 闘いをあまり好まないはずのあのダルシムがそう言って、()()()()()()()()手合わせを提案してきたのは。......え?なんでこっちを見ておられるのでしょうかダルシムさん!?そういう発言をされるとですね...

 

「えっ!?ファイトしてくれるの!?やったー!!アル、私からでいいよね!?ね!?」

 

ほらー食いついたじゃないですかー。ファイト大好き少女のサクラが見逃すわけないじゃないですかー。というかナチュラルに俺も後で闘うことにするのやめてくれませんかねサクラさんや。原作キャラであるダルシムとは俺も闘ってみたいが...()()ダルシムと闘うとなると、心の準備が必要だと思うんだよね。

 

「ならばそのように。サリー、夕食の用意を頼む。客人は私がお相手しよう」

「よーし!アルはやく外にいくよ!あっ、ダッタ君にサリーさん!ダルシムさん少し借りるね!!」

「えっ?う、うん」

「元気な娘ねぇ~」

 

 言うが早いか外へと飛び出していくサクラ。あまりの勢いにダッタ君はあっけにとられている。違うんだダッタ君、普通の女の子はファイトと聞いてもあんな風に飛びついたりしないからどうか誤解しないでほしい。サクラ(アレ)は特殊な例だから。俺の周りにはわりといるけど特殊な例だから。

 

「......はぁ。本当にサクラは。すみませんがよろしくお願いします」

「うむ。お主達、───()()()()の纏うそのオーラ。それを見極めねばならぬ。その数奇な運命(さだめ)の行く先も」

「.........はい?」

 

 なんかさらっとすごい爆弾が投下された気がするんでけど?え?なにが視えてらっしゃるんでしょうかダルシムさん?ちょっ、浮いたまま外に出ていかないで!?ダルシムさん!?説明!説明プリーズ!!プリィーズゥーーー!?

 

 




次回はダルシムとの手合わせとなります。ダルシムのゲーム中での性能などはその時になります。ちなみにサクラの戦闘シーンは大幅カット予定。ダルシムさんのあの特徴のインパクトは主人公視点から描写したいんで。


前書きにも書きましたがおまけとして書いていたミニコーナー『勝手に勝利台詞』へのリクエストは活動報告の方へお願いします。

・ちょっとした小話

この作品のダルシムはオーラ的な何かを読み取ることができるようです。一体何が視えたんでしょうね?
ヒント:地蔵(あと対になる()()とか)

サクラの言動が原作とちょっと違う感じなのは、アルという『自分のことをなんでも受け止めてくれる』と思える存在がいるからだったりします。スカート履くなら短パンを下に履けとか、もっと恥じらいを持てとか口うるさいけれど、なんだかんだで助けてくれるアルにちょっと甘えちゃってるのかもしれません。つまり原因はアル。

アリス母さんは聖遺物を量産できるレベルのガチの聖女です。元ネタのシャドーハーツからくる裏設定だったのですが、主人公達を魔境インドに旅立たせるために今回表に出してみました。タグにもあるけど、主人公より周りにチートが多いんやで、この小説。

アルのお守り「アルに対して効果がないって?いやいや、効果を発揮してこれだからな?俺超がんばってるから!こいつ厄介ごとに巻き込まれすぎぃ!」

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