明日に波動拳   作:路傍の案山子

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4、ファーストアタックは⇒強P

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       おぎゃあ、おぎゃあー!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「おめでとうございます。元気な......おん...男の子ですよ」

 

 ゆっくりと意識が浮上するような感覚。どうやら、無事に転生出来たようだ。しかし、生まれたばかりだからなのか、目も見えないし、聞こえてくる声もなんだかはっきりしない。救済措置はちゃんと機能しているようで、こうやって赤ん坊ではありえない思考をしていてもちゃんと身体の方は産声をあげている。

 

 「アリス!よく頑張ったな!男の子だってよ!!」

 

 「旦那さん、少し落ち着いてください。奥様は出産直後で消耗しておられるのですから」

 

 「ふふっ、狼司(ろうじ)さんたら。ああ、それにしても良かった。なんて可愛らしいのかしら」

 

 どうやら、母親がアリス、父親がロウジというらしい。声の感じからしてどちらも結構若いんじゃないかと思う。どちらも流暢な日本語だけど日本人なのか?もしかしたら俺ってハーフなのかもしれないな。ロウジはともかく、アリスは日本人より外国人に多そうだし。そんなことを考えているとどうやら母親に渡されたらしい。心の底から愛おしんでいるとわかるほど、優しく抱きあげられる。

 

 「お!こいつ抱かれた途端に泣き止んだな。もしかして母親に抱きしめられてるってわかってるのか?それにしてもアリスそっくりだな~。良かった、俺に似なくて」

 

 「あらあら。でも、目元なんか狼司さんにそっくりじゃないかしら。きっと、強くて優しい子になりますよ」

 

 微笑ましい夫婦の会話をききながら、俺の意識は優しい微睡みにおちていく。このまま眠ってしまいそう......

 

 

 

 

 

 はっ!?......俺寝てた?何か眠いなって思ったら次の瞬間には意識がなかった。恐るべし、母親パワー。どうやらかなりの時間眠っていたらしく、既に分娩台ではなく専用のベットに寝かされていた。産婦人科とか前世で行ったこと無いから、今どんな状況かわからないや。視力も殆ど無いし、身体も全然動かせない。精々、身じろぎ出来る程度だ。近くに会話をしている大人も居ないみたいだし、情報収集も出来ない。他にすることもないので、あの世生活?と生まれた時の会話とかから得た情報の整理でもしておこうかな。

 

 まず、重要なのはこの世界がどういった世界なのかを特定することだよな。もしかしたら知っている物語の世界かもしれないし。その場合は少しは日常での危険度を下げる事ができるだろう。いくら原作知識が当てにならないとはいっても、例えばラスボス等の危険人物や、重大な事件を事前に知ることができるのは大きなアドバンテージになる。まあ、実際にその人物が居たり、事件が起こるとは限らないけど、これから行動するにあたっての指針の基準にすることはできるはずだ。

 

 今わかっている情報としては、両親の口調や病院の設備の感じからして比較的前世の世界(西暦2000年位)に近い年代の世界ということ。少なくとも中世とか、ドラ◯もんがいそうな程未来ではなさそうだ。まあ、あくまで頼りない感覚からの判断なので違うかもしれないけど。

 

 それと、会話していた言語が日本語だった。両親だけならともかく、医者らしき人物も日本語を話してたし。つまり、ここが日本である可能性が高い。まだ文字は見ていないから絶対にそうだとはいえないが、少なくともヒヤリングや会話をすることは可能なわけだ。まだ赤ん坊なので、話しかけたりはできないけど。

 

 後は地獄で教えてもらった情報だが、

 

1、漫画やゲームなどの作品の世界である

 

2、しかし現実の世界であり、未来は不確定

 

3、危険度は前世の日本より高い

 

4、(生まれた時点では)世紀末な感じではない

 

これに、鬼灯さんが最後にそれとなく教えてくれた、

 

5、前世の世界には無いような特殊な「力」が存在する。そして、俺はその力を使いこなせるようになった方がいい

 

 といった感じだ。......うん、どこの世界なのか全然わからない。今居るのが日本だったとしても、異世界に召喚とかされるかもしれないし。女神転◯とかみたいにいきなり大惨事が起きる可能性もある。とにかく今は情報が少なすぎる。世界を特定できるのはまだ先になりそうだ......。そもそも、知らない物語だったらどうしようもないのだが。周りの人の会話とかから、地道に情報を集めるしかない。となると、今出来ることは......

 

「あ~、う~」

(鬼灯さんのアドバイスどおり、『力』とやらを使えるようになれるよう努力することだよな。幸い、身体は動かないが、考える時間だけは十分にあるし。基本的にこの時期はずっと救済措置でオートモードだしね)

 

 こうして、身体が動かせない間の暇な時間を修行?にあてることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 俺がこの世に生を受けて、もう5日になる。あの後、すぐに母親の病室に移された。そこで初めての授乳や、排泄とかを経験した。救済措置のおかげでまったく恥ずかしいとかは思わなかった。そもそもまだ目も見えないので、ただの食事やトイレをしているという感覚しか感じなかったのだが。しかし、一応そういう時は修行の方に集中して意識しすぎないようにしている。

 

 

 ......全然成果はないんだけどね!もうね、まるでだめ。一応努力はしてみたんだけど。

 

 例えば、初日は魔力かもしれないと心の中でそれらしい呪文を唱えてみたり、

 

 「う~、う~」

(天光満ところに我はあり、黄泉の門開くところに汝あり、出よ神の雷......これで最後だ!インディグネ◯ション!!......ダメか。メラ!ギラ!ヒャド!バキ!ディン!アギ!ブフ!テラ!ジオ!ガル!メギ◯ラオンでございます!......チンカラホイ!!......これもダメ。黄昏よりも暗き存在、血の流れよりも赤ry)

 

 

 

 2日目は超能力かもしれないと、必死に念じてみるも、ベクトルが操れるようになったり、ビリビリ電気がでたり、テレポートしたり、人の心がリモコンで操れたりはしなかった。

 

 「あいー」

(その幻想をry)

 

 

 

 3日目、チャクラ的な何かかもしれないと俺のアトモスフィアが囁いたので、ニンジツの発動が出来ないか試してみた。

 

「いあー」

(イヤーッ!イヤーッ!アイエエエ!チドリ!アブハチトラズ!カラテ!ワッショイ!ラセンガン!ガンバルゾー!タジュウカゲブンシンノジツ!ゴウランガ!)

 

 しかし、俺のようなアカチャン、つまりニュービーにはなにも起きなかった。現実(リアル)は実際ショッギョ・ムッジョ。

 

 

 

 4日目は、「J◯J◯の奇妙な冒険」の波紋の呼吸やスタンド発現が出来ないか頑張ってみた。

 

 「す~す~」

(コオオオオー!......ゲホゲホッ!無理だコレ!?それなら、『スタンドを出せて当然』と思うんだ!HBの鉛筆ry)

 

結果、惨敗。J◯J◯が好きだった俺は、自分で調べ物が出来るようになったら「壁の目」や「弓と矢」、「悪魔の手のひら」が実際にあるか真っ先に調べようと心に誓ったのだった。

 

 え?修行内容が大げさすぎるって?......はい、嘘つきました。スイませぇん...。

 

 だって、一日中ずっと母親が付きっきりなんだよ?しかも、赤ん坊の身体が睡眠を求めているらしく、夜更かしとかも出来ないし、起きている時間がそもそも短い。なので夜に目が覚めた時に夜泣きの替わりにあーうー言いながら試してみる位しか出来ませんでした......。あ、もちろんもし本当に出来ても大丈夫な感じのものしか試してませんよ?危ないじゃん。成功したけど病院ごと色々吹き飛ばしましたとか、洒落にならないでしょう。主に回復系の魔法とか、超能力なら少し浮くとか。忍術や波紋、スタンドはその力の源を感じられるかを起きている間意識していたが、何も掴むことが出来ませんでした。そんな訳で修行の方は全然成果がなかったけど、情報収集の方は少しだけ進展があった。

 

 この4日間、毎日仕事をしているのか心配になるくらいの頻度で部屋に入り浸る父親と母親の会話からそれなりに情報を得ることが出来のだ。......まあ、話の八割が惚気話だったのは辟易したが。それに、2日目と3日目には両親の親、つまり俺にとっての祖父や祖母が2組とも訪ねてきた。それによって幾つか重大なことも判明した。重要なキーワードがでた会話はこんな感じだった。

  

 2日目:おそらく昼頃

 

 「『アリス』、具合はどうだ?」

 

 「ええ、大丈夫よ『ウル』。赤ちゃんもとっても元気みたいだってお医者様が仰っていたわ。というか、朝も同じことを聞かなかったかしら?それより名前の件はどうなったの?」

 

 「ああ、それなんだけどよ。さっき『公衆電話』かけたら、やっぱり親父達が『もう一つ』の方を考えるんだってさ。生まれたのが男の子だってわかった昨日から、徹夜で考えてるらしいぜ」

 

 「そうなの。じゃあ、私達の方の名前も、明日お義父さん達に伝えましょうか。来られるんでしょう?」

 

 「ああ。親父達は今日、実家の方から飛んでくるらしい。『空港』についたら迎えに行かなきゃなんねえ。オッサン達も、同じくらいのタイミングでコッチに着くらしいから、『車』に一緒に乗せてくるぜ」

 

 「う~」

 

 「あら?お腹が空いたのかしら?よしよし」

 

 「結構おとなしいんだな。もっと赤ん坊ってギャーギャー泣いてるイメージがあるんだけど。それにしてもやっぱりアリスに似てんぜ。この可愛さ、反則的だろマジで。きっと悪魔だって一撃KO間違いなしだな」

 

 「もう、ウルったら。さあ、ご飯さんですよ、たくさん飲んでね」

 

 「......羨ましいなあ、おい。俺もアリスの母乳なら飲んでみた「ウル?」嘘!冗談だって!だからそんな目でみないで!?」

 

 とまあ、両親の会話はこんな感じ。この後は父親が祖父達を迎えに行くまで延々と惚気まくっていた。しかも情報もほとんどなかったし。

 

 この会話で重要なのが『』の中の言葉だ。

 

まず、空港があるってことは飛行機が存在している。それも旅客機だ。自家用車もあるみたいなので、やはりこの世界の時代は前世のものに近いようだ。公衆電話が普及しているみたいだし、少なくとも20世紀後半くらいだと思う。

 

 次に、『もう一つ』の名前ってどういうことなのだろうか?候補を考えるのではなく、俺に2つの名前が付けられるみたいな感じに聞こえる。やはり、少し前世の世界とは違う点があるのかもしれない。

 

 最後、恐らくこれがこの会話で一番重要。母親が父親を『ウル』と呼んだことだ。昨日の会話では確かロウジと呼んでいたが、二人っきりの時はウルと呼んでいるみたいだ。看護師さんとかが居るときはロウジさんって呼んでたし。問題は母の名前が『アリス』で父が『ウル』だということだ。

 

 この名前の組み合わせに俺は心当たりがあった。前世で大好きだったゲーム、『シャドウハーツ』の主人公とヒロインの名前がウルムナフ・ボルテ・ヒューガ-こと『ウル』と、アリス・エリオットつまり『アリス』なのだ。

 

 マジでヤバイ。シャドウハーツシリーズは、主人公達や無駄に濃いモブキャラのちょっとお馬鹿な言動で忘れ去られがちだが、結構ホラーな要素が入ったRPGなのだ。シリーズに出てくるザコ敵とかも、かなりグロテスクなモンスターがウヨウヨ出てくる。特にとある隠しダンジョンには、RPG界でも一二を争うほどの凶悪な見た目のモンスターが出てくる。まさに悪夢(ナイトメア)、お食事中の人は絶対に検索しちゃダメ。

 

 ストーリーも、世界がヤバイレベルの事件が1度や2度ではないし、ボスの中には本物の悪魔とかが普通に存在する。というか、出てくる敵が雑魚も含めて大体が悪魔か妖怪だし。正直、シャドウハーツの世界のストーリーにまともに関わって生きて帰れる気がしない。

 

 しかし、幸いにもまだこの世界がシャドウハーツの世界ではない可能性がある。作中ではウルとアリスに子供が生まれるところまでは描かれていない。そもそもシャドウハーツは1913から1915年位の話だったとはずだし、続編のフロム・ザ・ニュー・ワールドでも1930年頃だ。さっき推測した年代と食い違う。それに、ウルの両親は物語が始まる前にどちらも死んでいたが、どうやらここでは生きているみたいだし。

 

 そんな感じで『もしかしたらシャドウハーツの世界かもしれない』という不安を募らせていた俺だが、その不安は父親が迎えに行っていた祖父達が到着したことで氷解した。

 

 「アリス~、親父達連れてき「アリスゥゥーー!!大丈夫でしたか!?おおっ!!なんと愛らしい赤ん坊なのだろう!アリスにそっくりではないですか!!」......あの、アルバートのオッサン俺の足踏んでるんだけど。痛いんすけど」

 

 「......ああ、なんだ。ウルムナフ君ではないですか。居たんですか」

 

 「ずっと居たよ!?てか車でここまで乗せてきたのも病室まで案内したのも俺だったでしょ!?」

 

 「......私から最愛の一人娘を奪った君を、私はまだ許した覚えはありませんよ?」

 

 ドアを開けた父親(ウル)を押しのけるようにして部屋に入ってきたらしい祖父が母親(アリス)に声をかける。どうやら相当に一人娘を奪われた事を根に持っているみたいだ。

 

 ......ん?今、アルバートって言わなかった?

 

 「つーか、親父やアンヌおばさん達は放ったらかしかよ。嬉しいのはわかるけど、ちょっと年甲斐もなくはしゃぎ過ぎなんじゃねーの?」

 

 「うるさいですね。愛する娘に子供が生まれたのですよ!?これが落ち着いていられましょうか!どれ、アリスよ、少し孫を抱かせてもらっても大丈夫かな?」

 

 「もう...パパたら。まだ生まれたばかりだから、優しくお願いね?」

 

 「もちろんだとも!!このアルバート・S(サイモン)・エリオット、枢機卿の名に誓って丁重に扱う!これでもアリスの父親だったのですから赤子の抱き方くらい心得ています!」

 

 「だったらもうちょっと落ち着けっての、オッサン」

 

 そんなやりとりの間に俺はどうやら祖父に渡されたらしい。まあ、そんな事はこの際どうでもいいんだ。

 

 祖父の名前、エリオットはアリス(母親)の苗字だから問題ない。しかし、アルバート・サイモンの部分が問題だ。......ラスボスやないかいっ!!シャドーハーツ1のラスボスやないかいっ!!ガチで世界滅ぼそうとしてた人だよ!!根はそこまで悪くない奴だけど、やっぱりラスボスじゃねーか!!つーか、おかしいだろ!?なんで祖父!?ヒロインの父親は別の人だったはずなんですけど!?

 

 「おぎゃあぁ!うぅ!おぎゃあ~!」

 

 「なんだと!?そんな!?私が抱いた瞬間に泣きだすなんて......。そんな馬鹿なことが」

 

 「やっぱりママのほうがいいみたいだな~。まあ、俺が抱っこした時は泣かなかったけどね。ねえ今どんな気持ち?孫を抱いたら泣かれちゃってねえ今どんな気持ち?」

 

 「ぐぬぬぅ。......アリス、お返ししします。申し訳ないが、少し失礼する」

 

 「あ!ちょっと!パパ!?どこに行くの!?......行っちゃったわ。それにしてもどうしたのかしら?ミルクはさっき飲んだばかりだし、トイレでもないみたいなのに」

 

 「知らない人に抱かれて不安だったんじゃねーの?今は泣き止んでるしよ」

 

 ごめんなさい。さすがにラスボスに抱っこされてると考えたら取り乱してしまった。身体が反応して泣き出してしまったみたいだ。ちょっと悪いことをしてしまったかもしれない。

 

 「ねえ、アリス。あの人が廊下の隅で膝を抱えて落ち込んでるんだけど、何があったの?」

 

 「あ!ママ。それが、パパが抱っこしたらこの子が泣き出しちゃって。それでショックをうけちゃったみたいなの」

 

 「ちょっと煽りすぎたかも。ごめんね、アンヌのおばさん」

 

 あれ?アンヌってウルの方の母親の名前じゃなかったっけ?今の会話の流れ的にアリスの母親みたいなんですが。

 

 「こら狼司!お前はまたアルバート殿に失礼な事を!!すみませんアンヌ殿、愚息が失礼をいたしたようで」

 

 「そのようね。申し訳ありません、アンヌさん。狼司、後で『アレ』だから覚悟しておきなさい。......まったく、親になったというのに成長しないんだから」

 

 「カレンさんも甚八郎さんもお気になさらず。あれは主人が打たれ弱いのがいけないんですから。それに、私達を置いて一人だけ抜け駆けしようとするからこんなことになるんですよ。暫く放っておけば勝手に復活しますわ」

 

 ラスボス(アルバート)以外の祖父母達が部屋に入ってきたらしい。なるほど、日向甚八郎とカレン、アルバートとアンヌがそれぞれ夫婦であるらしい。というか、さらっと出てきたけど日向甚八郎って原作ではウルの父親で敵国から『必滅を呼ぶ悪魔』と恐れられるほどの軍人だし、カレンは「シャドーハーツ2」のヒロイン的な女性だ。アンヌさんは(基本的には)ウルの回想の中にしか出てこないが、2で衝撃的な事実が明らかになったので印象に残っている。しかし、なんでまたラスボス(アルバート)と夫婦なうえにその子供がアリスなんだ?どっちも原作ではアリスと血の繋がりはないはずの人物なのだが。

 

 ......まあ、ここまで露骨に原作と違う人間関係だと、この世界がシャドウハーツの世界ではある可能性は低くなったと思う。流石にここからだと原作のストーリーに展開する可能性は無いだろう、無いと思いたい。油断は出来ないが、一安心といったところだろうか。

 

 そこで安心したのが不味かったのか、そのまま俺は眠ってしまっていた。次に起きた時には、祖父母達は帰った後のようで、母親と父親の二人しか周囲に居ないようだった。俺が目覚めた事に気づいた両親が愛おしそうに俺の名前を呼びかけてきた。もちろん両親は俺が理解してるとは思ってないだろうが、生まれてきた子供に「今日からお前は◯◯だぞ~」とかっていうアレだ。ちなみに、どんな名前かというと、

 

日本名が

 

『日向リョウ』(リョウがどんな漢字なのかはわからない)

 

英語?名のほうが

 

『アルトリウス・E(エリオット)・ヒューガー』

 

 この世界では親の国籍が違う子供は2つ名前がある人も多いらしく、俺もそれに当てはまるらしい。あ、因みに一連の会話の流れでここが日本であることは判明しました。 日本語ではって言ってたからね。

 

 日本語のほうを甚八郎お爺さんが命名し、英語(だと思う)の方を両親が考えたらしい。それにしてもアルトリウスってアーサー王の幼名だよね。随分と仰々しい名前をつけるものだと思っていたら、なんとこれアナグラム(並べ替えの暗号)らしく、並び替えると「アリスとウル」になるらしい。「恥ずかしいからこの子が大きくなったらアーサー王にあやかったて説明しよう」てな会話をしていたので判明した事実だ。人の名前でまで惚気けるんじゃねえよ、このバカップルめ。

 

 こんなかんじで自分の名前はわかったが、どうやらシャドウハーツの世界の可能性は低いようなので、この世界の『物語』の特定は結局あまり進まなかった。

 

 

 そして5日目の今に至るのだがあまり有用な情報を得ることは出来なかった。目が見えていれば少しは違うのだろうが、生憎まだ殆ど視えない。時々顔を出す祖父母達も、殆ど生まれたばかりの孫(俺)に夢中らしく、あまり情報が得られるような状況ではなかったし。因みにアルバートさんに抱かれた時に再び泣いてしまい、また廊下の隅で落ち込ませてしまった。身体がちゃんとコントロールできるようになったら少しやさしくしてあげようと思った。

 

 そして今現在、5日目の今日は「気」の練習をしています。そう、ドラゴン◯ール的なアレですよ。やっぱり男の子ならかめ○め波とかに憧れるよね。正直なぜ魔法とかスタンドより先にこれを試さなかったのか自分でもわからないよ。でも、一日の大半を精神を身体の奥底を探ることに費やしたというのに、結局何も感じることは出来なかった。最後の方に「この際、繰気弾でもいいから!」と考えたのが不味かったのだろうか?ごめんよヤ○チャ。

 

 ところがその日、深夜に目が覚めた時いつもの習慣で集中を再開したら、本当に微かながら何かを『感じた』気がしたのだ。寝ぼけていたのでどんな力を感じようとかは決めていなかったのが良かったのかもしれない。『ソレ』は身体の奥底で何かが『波打つ』ような感覚だった。微かだが、確かに感じることが出来る。この力がなんなのかはわからないが、今からはこの感覚に集中して「修行」を行うことにしよう。

 

 

 生後10日目。いつの間にか病院を退院していたらしく、(おそらく)自宅での生活に入っていた。あれからずっと『力』をはっきり認識することができるようになるために暇な時はすべて修行にあてていた。今ではだいぶはっきりと感じられるようになってきているので、それなりに順調だと思う。それに最近では少しずつだが目も視えるようになってきた。視界はまだはっきりとはしないが、輪郭などはほぼ認識できるようになってきた。予想より視力の成長が早いようなので、得ることが出来る情報がこれからどんどん増えていくだろう。

 

 この世界を特定する情報はまだ得られていない。どうやらアリス母さんはテレビをほとんど観ない人らしく、だいたい俺のそばに居た。祖父母達は一旦自宅に戻ったらしく、ここ最近姿を見ていない。ただ、父さんと母さんの会話で自分の生まれた日の正確な日時は判明した。

 

 西暦1982年の8月27日が俺の誕生日らしい。つまり、今現在は1982年の9月6日になるわけだ。道理で少し気温が高い気がしていた訳だ。それ以外にはあまり重要そうな情報は得られなかった。そんな10日目の昼頃、 来客を知らせるチャイムがなった。

 

 「ごめんくださ~い。あ、アリスちゃん無事出産おめでと~。体調は大丈夫~?」

 

 「あら、菖蒲(あやめ)さん!そちらこそ4月にお子さんが生まれたばかりで大変でしょうにわざわざ有り難うございます。おかげさまで母子ともに健康だそうです」

 

 「それは良かったわ~。お隣なんだから全然手間なんて無いわよ~。うちの子の方はもうすぐ五ヶ月になるんだけど、元気が有り余ってるみたいでご覧の通りなのよ~」

 

 「きゃっきゃ!!あいー!!」

 

 どうやら隣の家の奥さんが訪ねてきてくれたらしい。それにしても赤ちゃんテンションたけーなおい。

 

 「あら、こんにちは。確かに凄く元気そうですね。うちの子は少し大人し過ぎるくらいで、夜泣きもあんまりしないから逆に心配になってきちゃうんです。今もすぐそこの部屋のベビーベットで寝てるんですけど」

 

 「あらそうなの~?うちの子は今でも酷いもんだけど、やっぱりそういうところも親に似るのかしら~」

 

 いや、奥さんめちゃめちゃおっとりしたしゃべり方ですやん。それとも父親の方に似たのかな? 

 

 「玄関で立ち話もなんですので、中でお茶でもいかがですか?赤ちゃんを背負ったままは辛いでしょうし、ベビーベットはかなり大きめのものを使用しているので、お子さんを寝かせても大丈夫ですし」

 

 「ならお言葉に甘えちゃおうかしら~。あ、お茶は私が入れるからアリスちゃんは座っててね~。それじゃあ、この子を寝かせてもらっていいかしら~」

 

 「ええどうぞ。こっちです」

 

 おや?どうやら俺が寝ているベットに隣の家のハイテンションな赤ちゃんが寝かされるらしい。まあ、このベットかなり大きいみたいだから、赤ん坊二人くらいなら余裕で寝れるしね。なんでも俺が生まれた日にアルバートおじいちゃんが張り切って購入してきたらしい。なんでもドヤ顔で「このくらい当然ですよ、英国紳士としてはね(キリッ)」って言ってたらしい。孫が可愛いのはわかるが、それでいいのかラスボス。

 

 「それじゃあお隣失礼するわね~。あら~♪お母さんにそっくりでとっても可愛らしい女の子ね~。この子と仲良くしてあげてね~?」

 

 「あいー!!」

 

 「よく間違われるんですけど男の子なんですよ。まだ小さいのでわかりにくいかもしれませんが。」

 

 「あら~?そうなの~?それじゃあきっと将来はイケメンさんね~」

 

 「だー!!」

 

 すぐ近くに赤ん坊が置かれたようで、テンションの高い声がすぐ近くで聞こえてくる。正直かなりうるさくてお母さん方の会話が聞き取れないレベルだ。

 

 「あら~?アリスちゃん、お茶っ葉ってどこだったかしら~?」

 

 「あ、それならそこの引き出しです。今行きますから少し待っててください」

 

 アリス母さんが部屋から出て行ったみたいだ。まあ。あの奥さんなんか危なっかしい感じがするし、行ったほうがいいと思う。

 

 「きゃっきゃ!!」

 

 ......ホントに元気だなー。普通の赤ちゃんってこんな感じなのかね?さすがに元気すぎると思うんだけど。うるさすぎて集中できないから、修行も出来そうにないし。

 

 

 

 そんなことを考えていた時だった。

 

 

 

 ラウンドワン ファイッ!

 

 

 「あいー!」 

 

 ドスッ!! 【FIRST ATTACK!!】

 

 「うきゃっ!?(あべしっ!?)」

 

 ???のバックナックル(寝返り)!!つうこんのいちげき!日向リョウは53のダメージを受けた!リョウはたおれた!

 

 「あうー、、、(み、鳩尾に、、、ガクッ)」

 

 

 

 K.O PERFECT!! YOU LOSE

 

 

 こうして俺はお隣の赤ちゃんのアンブッシュ(不意打ち)によって今世初の気絶を味わうこととなった。解せぬ。

 

 「きゃいー!」

 

 「あら?リョウったら寝ちゃったみたいね」

 

 「そうみたいね~。ホントに大人しいのね~」

 

 勝利の雄叫び?と、母親たちの脳天気な会話を聞きながら俺の意識は闇に落ちていくのだった。

 






 ???「きゃいー!!(こーんなトコだね♪)」
 
 リョウ「あうぅ、、、(あァァァんまりだァァアァ)」

 日向リョウ(負け) VS ???(勝ち)

 
 決め技:バックナックル(寝返り)

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