赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス! オラ作者!
先週投稿できなくて、ごめんなさい。
しかも、今日も間に合わなくて日曜日になっちゃった。てへぺろ


あのー不死鳥のやつは食中毒で死んだんじゃ

喫茶マウンテンキング。

少し前までは同じ商店街の人間しか来ない寂れた雰囲気の店だったが、現在では客足の途絶えることの無い人気店となっていた。

喫茶店の玄関には私の使い魔、ポルコが忠犬の様に座り道行く人から可愛がられ、マスコットとして客を呼び寄せる。さらに、最近では魔法少女協会も協力してくれるチラシ配り、インターネットを通して宣伝をしているお蔭であっという間に人気店となったのだ。

これも最近雇われた3人組みの御蔭だろう。今も一生懸命に接客をこなしている。私のお給料も上がったし人数が増えて前より楽だしと、凄く助かっている。

 

「良し、出来たっ」

 

お蔭でこうやって1人厨房に篭り、美味しいケーキを焼く事が出来た。まあ、今はピークを過ぎてお客も殆どいなくなってるし、店長の許可も得てる。

ケーキは普通のイチゴのショートケーキで、拘った点はホイップクリームだ。動物性と植物性の2つを使い、ホイップには入念に気をつけた。お蔭でお店のケーキみたいに出来たと思う。スポンジも勿論ふわふわだ。

作ったケーキは2つ。1つはお店のみんな用。1つは、部活のみんなで食べるためだ。

見た目も雪みたいにふんわりとしてるし、これなら最近元気の無かった部長も喜ぶだろう。最近は歌の練習中も何処か憂鬱そうだったし、これでニコニコしてくれるといいんだが。

 

「出来た、じゃ無いわよ! 何時までサボってるのよ!!」

 

口うるさい奴がプンプンしながらやって来た。ナース服姿のレイナーレだ。

今日私は、本当はオフで3人の様子を見に来ただけなんだけど、今まで手伝わされていたんだから、これくらい許してくれても良いのに相変わらず怒りっぽい奴である。

ちなみに、何でレイナーレがナース服かと言うと、変装して堕天使だとばれないようにするためらしい。店長も許可してしまったけど、正直バレバレだと思うんだが。

 

「大体、何で甲冑なんて着てるのよ! 真面目に接客する気あるの?!」

「カッコイイダロー。スーザンさんに借りたんだ」

 

せっかくのコスプレなので、私はスーザンさんの着ていた甲冑に身を包んでいる。兜と面で少々息苦しいし、胸の辺りがちょっときついのが難点だ。

 

「馬鹿かアンタ! お蔭でホラーハウスに成ってるでしょうが! アンタがその姿で出てくると、客が逃げんのよ! さっさと着替えなさい!」

「もしかして、レイナーレも着たいのか? はい」

「そんな訳あるかぁ!! このあんぽんたんが!!」

 

ケーキ作りのために外していた篭手を渡すと怒鳴られた。相変わらず沸点の低い奴である。

大体、喫茶店で働くナース服の堕天使もどうかと思うんだけど。

 

「レイナーレ姉さま~レジお願いします!!」

「私が行こう」

「そのまま行くな!! せめて兜を寄越しなさい!」

 

兜を寄越せとは…。やはり興味があったんだな。

レイナーレに兜を渡し、ミッテルトの代わりにレジについた。

 

「おつりの122円と、此方がレシートです」

「お、おつり、あ、あありがとねっ!!」

「? またのご来店、お待ちしています」

 

なんだか妙にハイテンションになった客におつりを渡しつつ、ミッテルトとアーシアの様子を伺えば、2人とも笑顔で楽しそうだ。

特にアーシアは英語禁止令がでて、片言な日本語ではあるものの注文をとる様子はなかなか様になっている。最近では少しずつながら喋れるようにもなってきているし、ミッテルトとレイナーレがついてるからまあ、安心できる。

何でこの3人が此処で働いているかと言うと、使い魔であるポルコをゲットした日、この3人組が私にご飯をたかりに来たのだ。この喫茶店に。

知恵ある霊長類でさえこれなのだ。野生動物に餌を与える事がどれだけいけない事かその時わかった私は、店長と交渉。

最初は渋っていたレイナーレであったが、店長の提案で住み込みOKに成ると、手の平を返して働き始めた。何でも、”あのばばあが死ねば、この店は私のもの、つまり、アンタは私の下で働くことになるのよ。せいぜい扱使ってあげるわ!”と店の所有権を狙っているらしい。その前にレイナーレは戸籍を持って居ない。というツッコミをしたけど、高笑いで聞いてくれなかったので流した。

 

「カレい…と、サンドウィッチです、ね、しょーしょー、おまち、くださいっ!」

 

メイド服姿のアーシアが一生懸命に、たどたどしい口調ながら注文をとる。そんなアーシアを見て、客がほっこりした顔になる。

凄いな。私では、あんな風に客をほっこりさせることなんて出来ない。

なんかお客さん、私が注文をとるとき”おっふっ! ……か、かかカレェッ! とサァンドォ! ウイッチィイイ! をお、お願い、し、します!”みたいなハイテンションに成るし。

私の容姿が外国人なのがいけないのかと思っていたけど違ったみたいだ。多分、アーシアみたいにほんわかした雰囲気が無いんだろう。

 

「はい、お待ちっス! ミートスパゲティとコンソメスープ。注文は以上っすね?」

 

ジャージにエプロンという謎のコスプレ? をしたミッテルトが料理を届ける。何でも、”メイド服にナースに制服? ノノノノ~ン! もう全部古いっス。これからはジャージの時代っすよ!”だそうだ。

私にはよく解らないが、そういうものなのか? イッセーは朝練の時、私のジャージに喜んでいたのだろうか?

 

「同士イセリア、交代の時間だにょ」

「ぶひぶひぃ、ぶひぃ! ぶひぃ!!」

「こんにちわ、ミルたんさん。もうこんな時間か」

 

お客さんかと思ったら、入店してきたのはミルたんさんだった。ミルたんさんの腕の中にいるポルコは抱き上げられて嬉しいのか、興奮して暴れている。

時計を見れば、確かに3時半。ちょっと長居しすぎかもしれない。

 

「ちょっと、このゴリマッチョ! あんたは世紀末の格好でもしてなさいって言ったでしょ!」

「ミルたんは魔法少女にょ。これ以外はありえないにょ。それに、堕天使レイナーレの格好もどうかと思うにょ。そのナース服姿、怪しいお店にしか見えないにょ」

「なんですって…!! 一度身の程って奴を思い知らせないといけない様ね…!! 表に出なさい!!」

 

厨房から出てきたレイナーレが、ミルたんさんに突っかかる。

ミルたんさんは、コスプレをすることになってから魔法少女の格好をずっとしていて、レイナーレはそれが気に入らないらしく、しょっちゅう喧嘩してる。

 

「ぶひ、ぶひぃ!」

「よしよし、ポルコ。そろそろ部活に行こうか」

 

レイナーレと睨みあいを始めて、腕を緩めたミルたんさんから飛び出してくるポルコ。

最近では意味の無い筈の羽がよく動くようになり、滑空して私の胸に一気に飛び込めるようになった。このままいくと、そのうち自力で飛べるようになるのかも知れない。

 

「い、イセリアさん! 2人を止めてください!」

「いつもの事だろ。それに、何か名物みたいになってるじゃないか。ほら」

 

アーシアが日本語で喋るのを忘れるくらい焦っているが、いつも通りだからなぁ。

外を見れば、2人とも仲良く殴り合っていて、周りにはいつも通りギャラリーが出来ていた。店内のお客さんも楽しそうに見ているし。

 

「やってやるっす、お姉さま!」

 

さらに、ギャラリーの中にはミッテルトが混ざり、以前の様にボンボンを取り出してレイナーレを応援している。ちなみに、店長もタバコを吹かしながら見学してる。

だめだ、この店。早く何とかしないと…。とは思うんだけど、喧嘩3回目くらいで私は諦めた。

 

「み、ミッテルト様……」

「厨房に作ったケーキがあるから、後でみんなで食べてくれ」

 

呆然とするアーシアを置いて、私とポルコは店を後にすることにした。

冷たいかもしれないが許して欲しい。前、3回もこの2人を止めるために部活に遅刻したんだ。もう部長の説教はこりごりなんだ。

 

「死になさい!!」

「なんにょ! マジカルオルタネイティブッ!!」

「ぐっ!! ぅ、あああああ!! 舐めるなぁアアア!!!」

 

打撲音とかコンクリートが破裂した音が聞こえたような気がするけど、きっと気のせい。気のせい。

 

 

 

 

 

 

結局、あの後アーシアが泣きついてきたので逃げ切れなかった。あんな涙目+上目使いされたら断れないよ…。しかも、鎧を脱ぐのを忘れていて店に戻らないといけなかったし。

レイナーレとミルたんさんを喧嘩両成敗をし、店を出たときには既に時刻は4時18分。鎧を脱ぐのに思いのほか手間取ってしまった。

 

ナンテコッタイな心境で、ケーキが崩れないように慎重に屋根やらビルを飛び越えて部室のある旧校舎前まで来たんだけど、時刻は4時33分。

もう遅刻しません、4時半までには必ず来ますと言ったのに3分遅刻。

私、オワタ。

 

「ぶひっ?」

 

鳴き声に下を見れば、無邪気な瞳で私を見詰めるポルコ。そうだな、やってみなければわからんな。

今の私にはケーキという、賄賂、兼、言い訳がある。きっと、いける! それに、なんだか今日は人数が多い。気配が2人分増えてる。

コソッと潜入し、「え? 何時から居たの?」「? 最初から居たよ」作戦が通用するかもしれない。

 

「…し~」

「…ぶひ」

 

人差し指を口にあて、ポルコにおしゃべり禁止令をだしておく。ポルコは賢く言語を理解できるようなので、これで言う事を聞いてくれるのだ。

 

ドキドキしながら2階に上がると、これまた気配が増えた。ざっと15人ほどだ。

いったい何だろう。もしかして、今日はパーティー的なことをやる予定だったのかも。

私のケーキ…。もしや、意味無し…?

い、いや、まだ希望はある! これだけ人数が増えたのなら、きっと紛れ込んでもばれない筈!

 

「…ヒッヒフー、ヒッヒフー…」

「…ぶひ」

 

部室の扉の前で、リラックスする時にするという店長に習った特殊な呼吸法で気持ちを落ち着ける。あんまり、効果ないような気がするけど。

良し、行くぞ!

 

「……」

「………」

 

扉を開けると、濃厚なベーゼをする知らない人達が居た。なんかホストみたいな金髪の男がニーサンポーズ、両脇に女の子を2人抱えてその女の子の片方にしてた。

 

「……お邪魔しました」

「…ぶひぶひ」

 

大失敗。学校でこんなことしてる奴の方がどうかと思うけど、一応謝ってから扉を閉める。

 

「部屋を間違えたみたいだな」

「ぶひっ」

 

ポルコに確認を取ってみれば、ポルコもウンウンと頷いている。私のうっかり性もいい加減に直さないとな。あははははっ。

 

「……はぁ。間違ってないわよ。ヴァルブルー」

 

なんか、部長の声が部屋から聞こえた。

物凄く入りたくないが、部長が居るなら仕方が無い。もう一度扉を開いた。

 

「……oh」

「…ぶひ」

 

今度はさっきしていたほうと別の女の子にしている。しかも、扉を開いた私の方をガン見。キスしているほうもされてる方もだ。いや、それどころか、部屋の中の全員が私を見ている。

何これ、罰ゲーム? ドッキリ? 遅刻してきた罰?

 

「お嬢様、此方の方が?」

「ええ。以前話していた、特殊な力を持つ私の客人、イセリア・ヴァルキュリアよ」

「えと、よろしくお願いします? イセリア・ヴァルキュリアです」

「ご丁寧にどうも。私はグレイフィア。グレモリー家に使えるものです。以後お見知りおきを」

 

視界に映る破廉恥な奴らは無視して、とりあえず部長と親しそうな銀髪のメイドさんに挨拶をしておく。無表情すぎて歓迎されてる雰囲気じゃないけど。

実際に戦わないと解らないが、何となく強そうな人だ。

私の前世の記憶によると、メイドとは勇者を超える最強の職業。なんかよく解らないけど、とにかく強いという記憶がある。気をつけておこう。

挨拶が終わっても、未だに私に部屋中の視線が向けられている。一体何かわからないが、正直怖いのでイッセーのそばに移動する。

 

「…イッセー、イッセー。これ何? 何事…?」

「…ふっ。どおーだ、この女たらし! これで妄想じゃねーって解っただろ!!」

 

微妙に泣き目になっていたイッセーに耳打ちしたら、肩を掴まれて金髪ホストの前に押し出された。

妄想? 一体何のことなんだ。さっぱり状況が解らない。

 

「いや、お前…。どうやって騙したんだ? いかんぞ、君。君はその男に騙されている」

「? 何が?」

 

心底心配された顔で目の前の金髪ホストに言われる。ホストを囲んでいる女達も、なんだか私を哀れむような視線を向けている。

初対面の連中にこんな目で見られるのは流石にむかつくんだけど。

 

「騙すってどういうことだ、オラァ!!」

「見たままだ。鏡って知っているか? 便利だから使ってみるといい」

「おいコラ、俺が不細工って言いたいのか?! 喧嘩なら買うぞ、焼き鳥がぁ!!」

「誰が焼き鳥だ!? アァ?! 焼き殺すぞ人間のクソガキィ!!」

「やれるモンならやってみろ、この種まき鳥がぁ!!」

 

イッセーと金髪ホストがお互いの襟を掴みながら罵り合う。

両方とも凄く低レベルな悪口を言い合っていて、状況がさっぱり解らない。

 

「彼はライザー・フェニックス。部長の婚約者だよ」

「婚約者?」

 

木場君の言葉に部長を見れば、苦々しげな表情で顔を逸らされた。

なるほど。解った。

 

「つまり、浮気ばかりする婚約者をこの場にいる全員でボコボコにして、相手をきちんと1人に絞らせると言うわけか」

「…違います。相変わらずおかしな思考回路…」

「っ?!」

 

ち、違うのか? というか、塔城さん相変わらずの毒舌。心が痛いよ、ポルコ…。慰めてくれ。え、何、”ブヒぶひぶひ?”お前が可笑しいって? ひどいぞポルコ。

 

「…部長の婚約をかけて、レーティングゲームをすることになりました」

「レーティングゲーム?」

「簡単に言うと、下僕同士をチェスに見立てて戦わせるゲームのことですわ。私達グレモリー眷属がフェニックス眷属と戦うことになります」

 

姫島さんの説明によるとこのレーティングゲームでの強さが悪魔社会での上下関係に大きく影響し、本来は成人した悪魔達が行うらしい。

まだ成人していない悪魔である部長に参加資格はないが、身内同士での争いの時等は特例として非公式にゲームできるという事だ。

そして、このレーティングゲームに負ければ、この金髪ホストフェニックスさんと部長が結婚してしまう。部長はこの金髪ホストフェニックスさんが嫌いで婚約自体に反対してるらしいが、部長の両親がそれを許さないそうだ。

だけど、このレーティングゲームに勝てば、部長は結婚しなくて済む。

 

「つまり、あのフェニックスさんを倒せば良いんだな」

「ぶひ!」

 

シンプルで解りやすいな。戦意が高まって我が使い魔であるポルコも興奮している。

 

「貴方はだめよ。というより、ドラヴァルは参加できないわよ?」

「「へ?」」

 

部長の言葉に、フェニックスさんに掴みかかっていたイッセーも、ポルコと一緒に気合を入れていた私も間抜けな声を出してしまった。

な、なん…だと、と固まる私達。

そんな私達に追い討ちをかけるように、続けてグレイフィアさんが前に出る。

 

「あなた方は人間です。それにあなた方はお嬢様の客人と言う立場です。ゲストを戦わせたとあってはグレモリー家の恥となります」

「そういう事よ。あなた達は見学。いいわね」

 

いや、でも、部長。明らかに数が違うんですけど。全然フェアじゃないじゃん。戦いは数だよ、部長。

 

「そういう事だ、人間のガキ。ま、お前ごときが出たところで結果は変わらんがな」

「何だとっ?!」

 

フェニックスさんに突き放されたイッセーを受け止める。突き放されてもまた掴みかかろうとするイッセー。

こんな安い挑発に乗っちゃ駄目だって言うのに、全く。

 

「こらっ、落ち着いて」

「っ!? おっぱ……!!??」

 

話が進まないので後ろから抱き着いて止めると、流石に大人しくなった。

でも、このレーティングゲームとやら。最初から部長を勝たせるつもりが無いな。

部長の親なら部長の眷属の数と能力くらい把握している筈。その上でこんな勝負をさせるんだ。最初から破談にする気なんて無いだろう。

尖った見方をすれば、わざと希望を出しておいて目の前で部長が大切にしている眷属が倒れている姿を見せて心を折る、と言ったところか? …さすがに深読みしすぎか。

どっちにしろ、禄でも無い。好きでもない男と結婚なんて私だったら絶対に嫌だ。それが、こんな父上みたいなに不誠実な男だったら尚の事。

 

「だが、リアス。たったこれだけの眷属で俺達と戦うつもりか?」

「ええ、そうよ」

「……ふぅ、あんまり舐めるなよ」

 

部長の返答に静かに怒ったフェニックスさんは前髪をかき上げながら部長を睨みつけた。その背中からは感情に呼応するかのように大きな炎が大きな羽の様に広がる。

 

「レーティングゲームは、感情だけで勝てるものじゃないぞ。それに、たったの3人の下僕で俺のかわいい下僕達を全員倒せるとでも? 笑わせるな」

「…っ!」

 

フェニックスさんは結構本気で怒っているらしい。背中から出ている炎も中々の温度だ。

生身のイッセーがこんなもの受けたら一瞬で灰にされてしまいそうなので、私の後ろに隠しておく。何か不満そうな顔されたけど知らない。悔しかったら一瞬で禁手化できるようにして欲しい。

 

「一月。…一月待とう。決着は君の下僕が揃ってからだ」

「…情けをかけているつもり?」

「いいや違う。多勢に無勢で嬲って勝利したとあってはフェニックスの名に傷がつく。それに、君自身納得できないんじゃないか?」

 

フェニックスさんの言葉にこめかみをピクピクさせる部長。

フェニックスさんなりに部長を思っての言葉かもしれないが、プライドが高い部長が負けたときに言い訳するんだろ? みたいな事を言われたらんだから、怒って当然か。

 

「…いいわ。一月で下僕を揃えて貴方を消し飛ばしてあげる」

「おお、怖い怖い。なら、消し飛ばされないうちに退散させてもらおうか」

 

おどける様にいいながらフェニックスさんが床に手の平を向けると、見たことの無い魔法陣が現れて光りだした。

そのままフェニックスさんと知らない女子達が魔方陣まで入り、なぜか視線がイッセーと私に向けられる。あからさまに見下したような視線だ。

 

「それとリアス。あまり人間達と戯れないことだ。君の家名に傷がつくぞ」

「ふざけないで。私の友人を侮辱するなら、この場で消し飛ばすわよ…!!」

「…ふっ、まあいいさ。じゃあなリアス。次に会うのは一月後だ」

 

そういいながら、フェニックスさんは女子達と一緒に魔方陣の光の中に消えていった。

最後まで気に食わない奴だ。とてもじゃないが、部長を任そうとは思えない。私だけではなく、オカルト研究部全員あいつの事が気に食わないらしくみんな険しい表情をしていた。

 

 

 

 

「……ちくしょう」

 

ベッドに横になって顔を枕に沈めるイッセー。握り締められた手が、堪えきれない怒りが現れるかのように震えている。私もベッドに腰かけ、少しでもイッセーの気分が楽になるようにその背中を摩るが、私も同じ気持ちだ。

あの後、部長の下僕に立候補した私達だったが結局下僕悪魔にはなれなかった。私としては、寿命なんてイッセーが死んだ後に自殺でもすればいいので、悪魔になっても問題無いと思ったのだけど、なれなければ意味が無い。

イッセーは部長の悪魔の駒(イービル・ピース)につり合う物が無く、私にいたっては反応すらしなかった。ドライグ曰く、イッセーは禁手化に至っている事と私達の仕込のせい、私は異世界人だから駒が反応しなかったのではないか? だそうだ。

その後、部長達は旧校舎のさらに奥に篭り作戦会議、部活は中止になった。

 

「…イッセー」

 

私の呼びかけにノロノロと此方を向くイッセー。本当に元気が無い。以前からイッセーは部長に元気が無い事をいち早く気付いて気にかけていたから、力になれないことが悔しいんだろう。私も部長を不幸にさせたくなんて無いし笑顔でいて欲しい。それくらいの友情は既に芽生えていた。

だから、このまま不貞腐れて何もしないのは私のプライドにかけて出来ない。そういうことで、不貞腐れた顔のイッセーのほっぺを引っ張る。

 

「ふゅい! ひゃ、ひゃにふんふぁ!!」

 

驚いて目を真丸とするイッセー。中々伸びる頬で面白い。

こんな時にふざけてると思ったのか、怒ったような表情になったイッセーに私は顔を近づけて、確り視線を合わせる。同時に頬を引っ張るのをやめて、今度はイッセーの顔を両手で包むように固定した。

こいつの尻を蹴るのは私の役目だからな。

 

「此処でいつまで伏せってるつもりだ」

「っ! でもなイセリア、俺達に出来る事は…」

「まだ出来る事はある。例えば、部長を攫って逃亡生活とか」

「…無理だろ」

 

ツッコミにも何時もの切れが無い。

攫うのは結構アリだと思ったんだけど、イッセー的には駄目らしい。

 

「まあ、それは最終手段だとして…、私達で部長の眷属悪魔になってくれる奴を探せばいいだろ?」

「! おおっ! そうか、その手があった!」

 

やっと元気が出たらしいイッセー。これならもう大丈夫だろう。自然と2人で笑顔になった。

イッセーの微笑んだ顔がよく見える。…今思ったんだが、この距離、結構、ち、近いな。

 

「「……」」

 

気付いてしまうと、いきなり恥ずかしくなる。なんというか、言葉が出ない。

だ、大体、イッセーまで顔を赤くしてるのが悪い。

 

『やっとる場合か』

「ぶひっ!」

「「っ!?」」

 

し、心臓が飛び出るかと思った…! 

ドライグとポルコがいることをすっかり失念していた。ドライグの声で私はイッセーの顔から手を離して急いで離れた。

さっきの行動を二人に見られていたと思うと、あと、イッセーとのさっきの雰囲気は中々恥ずかしかったので、ゴホンッゴホンッと咳払いして空気を誤魔化す。話をさっさと元の話題にせねば。

 

「んんっ! えーとだな、実は1人眷属候補がいるんだ!」

「そ、そうか! なら早速その人のところに行って交渉しようぜ!」

「そ、そうだな! あっ、そうだ、作ったケーキがあるんだ、一緒に食べよう!」

「よ、良し! た、食べるか!」

 

なんだか無駄にハイテンションになってるけど、まあ、気にしない気にしない!

 

『駄目だ、こいつら…』

「…ぶひぃ」

 

 

 

 

 

 

渡されたケーキを食べながら、ちらりとイセリアの横顔を伺うと今でも頬が薄い桜色になってる。もう少しで、初キッスだったかもしれんと言うのに、ドライグと豚さえいなければ…!

いや、いーんだけどね! だって、こんな時に不謹慎だしぃ!

…それにしてもこのケーキ美味いなぁ…。お店のケーキみてーだ。そのまま感想をイセリアに話すと、ニコッと嬉しそうに笑ってくれる。

いいなぁ、これ。って、いかん。今は作戦中だった。でもこれって…。

 

「…これは一体何を待ってるんだ? スッゲー嫌な予感がするんだが」

「…ま、まあ、実力は申し分ないぞ? 多分…」

 

俺がそう話すと、目が凄まじいほどに泳ぐイセリア。これから現れる奴がどんな奴かはっきり解った。

俺達の前には洗濯物の下着が干されている。俺の部屋の窓から干されていて、月明かりに照らされる白いパンツとブラジャー。うん。間違いないよな。っていうかこんなあからさまな罠で釣れるのか…?

 

「そういえば、悪魔の駒を使えなかったときに言ってた仕込って何なんだ?」

「ん、そのことか。…でも今はあまり意味の無いものだから、気にしなくてもいいぞ?」

『そうだな。相棒にはまだ早い』

「なんだよ、それ」

 

俺だけ仲間はずれにされたみたいで何だかあんまりいい気分じゃ無い。つい膨れっ面になっても悪くないだろ? …さっそくイセリアに突かれてるけど。

 

「イッセーにとって悪いものじゃないし、まだ私たちも模索中だから期待させられないしな」

『そうだな。だがまあ、言っても問題なかろう。…相棒、簡単に言うと更なるパワーアップだ』

「パワーアップ…?!」

 

もしかして禁手化、赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)を超える何かが見つかりそうのか…?!

 

『俺も相棒とイセリアの影響で、歪められる前の純粋な想いを思い出したからな。もしかしたら、いけるかも知れんという事だ。だが、今の相棒は禁手化をさらに伸ばす事を考えろ。それが強くなる一番の近道だ』

「うん。基礎を飛ばしてしまったらそれこそ強くなれない」

 

近道はいけないと2人に念押しされる。でも、今までと比べたらずっと気合が入る。なんてたって今まで禁手化じゃイセリアに勝てないと思っていたところに更なる可能性だ! これに燃えない男はいない!

それにしても俺、いつも2人に助けられてばっかだ…。さっきもイセリアに気合を入れてもらわなかったら何時までも不貞腐れてただけだったろうし。

よしっ! 2人のためにも、もっともっと強くならなきゃな!

 

「来たっ」

「っ!?」

 

イセリアの言葉に窓へと振り向けば、やっぱり只の景色が映るだけ。だけどイセリアの眼は確り目標を定めている。間違いなく、あの時の変態だ!

 

「はやいっ!」

 

そして瞬時に消える下着! なんつースピードだ! あの下着は取りにくいように洗濯ばさみを何箇所も留めていっていうのにほぼ一瞬にして取り外した! 僅かに見えた動きを思い返せば、1つ1つの洗濯ばさみを手で一回一回外して下着を傷めないように細心の注意をはらってだ!

こんなに素早く下着を盗むなんて、想定外だ、このままじゃ作戦ミスだ! 下着を持ち逃げされちまう!

だが、イセリアは焦らずゆっくりと窓際まで向かう。そして窓を開け、大きく息を吸った。

 

「それ、店長の下着だよー!!」

 

ダヨー! ダヨー! とエコーする恐ろしい真実…!

あ、危なかった…! てっきりイセリアの下着だろうと後でかぶ、いや、触ろうとしていた…! というか、ババァ自重しろ! イセリアの下着と殆ど変わらんデザインじゃねーか!?

 

「グファァアアアアア!!! お、オノォオオオオレェエエエエエ!!!??」

 

怨嗟と苦痛の絶叫を上げながら、隣の家の屋根に血を吐いて転がる変態タキシード。宙を舞う赤く染まった下着。

どうやらあの漢、既にクンカクンカしていたらしい。

 

「確保!!」

「ぶひぃ!!」

 

飛び掛るイセリアとポルコによって、もがき苦しんでいた変態は簀巻きになった。

 

「…本当に役に立つのか?」

『…さあな。というか、何だこれは』

「…さあ」

 

と、とにかく! 眷属候補、1人ゲットだぜ!!

 

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