赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス! オラ作者。
今回はちょっと上手く書けなかったです。
それはそうと、作者は夢が出来たんです。この世の杉を全て切り倒し、花粉症から開放される夢を…。


最終回じゃないぞよ もうちっとだけ続くんじゃ

青々と広がる澄み切った空。小さな波がキラキラと太陽の光を照り返す。

打ち寄せる波が太陽で熱くなった砂浜を濡らす。

 

「あはははは! このーつかまえちゃうぞー! つかまえたらキスしちゃうからなー!」

「ふふっ、つかまえられたらなー」

 

そんな砂浜をサクサクと軽快な足音で走る俺達。

俺の前を走るのは白いビキニとパレオを着たイセリア。胸元の赤い花がアクセントになっていて、まるで映画に出てきそうな水着姿だ。

 

「つかまえたらもっとエロエロな事しちゃうぞー!」

「あはは、やってみろー」

 

挑戦的に言いながらも、イセリアの走るスピードは何時もよりずっとゆっくりで俺でも追いつけそうなほどだ。

こいつぅー、誘ってやがるぜ!

え? 手を出さないんじゃなかったのかって? フッ…俺はイセリアを既に越えた。もはやエロ解禁したのだ。

 

朝の訓練でついにイセリアを負かした俺は、思いの丈をイセリアに伝え、それにイセリアもOKしてくれた。

まさに幸せ絶頂期。もう何時でもOK! 万事エロエロ。何してもOKなんだ!!

 

「つかまえたぞ!」

「…捕まってしまったな」

 

イセリアの手を掴んで振り向かせ、両肩に手を置きその赤い瞳を真っ直ぐ見詰めた。

足に打ち寄せる小さな波の音がやけに耳に響く。

 

「……」

 

お互い、見詰め合ったまま一言も喋らない。

両手の感触でイセリアが震えているのが解る。俺だけが緊張しているのではないと解って、少しだけ気持ちが楽になった。

ルビーの様に赤い瞳はいつものような無邪気さは影を潜め、これからする事への期待と不安で揺れ動き、僅かに潤んでいた。

俺はそんなイセリアを安心させるように優しく抱きしめる。

そうして赤い瞳は白く長い、震えるまつげの中に隠れていった。

 

「……」

 

キタコレ!! もうコレ決定だよね! バッチコイってことだよな!!

父さん、母さん! 苦節約17年、童貞と言う屈辱に耐え忍んでまいりましたが、それも今日までのようです。あなた達の息子は、今日、本当の意味で男になります!!

いざ、いかん! 大人の階段! 初キッスじゃぁああああ!!

俺も目を瞑ってイセリアの唇目掛けて自身の唇を突き出した。

 

 

「……あれ?」

 

だけど、何時までたっても返ってくるはずの柔らかい(と思われる)感触が無い。もう首を前に出しまくって首が痛いくらいなのに、当たらない。

おかしい、何故か手の平に感じていた筈の感触すらない。キツツキの如く首を高速で動かして唇を連続で突き出しても空を切るだけで感触が無い! 一体どういうことだってばよ!?

 

「…プッ! く、フフフッ、なんなのあの動き、す、凄い顔…!!」

「!? 誰だ!?」

 

イセリアでもオカルト研究部の誰かでもない、聞いた事の無い女性の声。イセリアにキスする為の動きを直ぐにやめ、目を開いて声の方向に振り向いた。

 

「っ?!」

 

目を開くと、俺の目の前にはスリットつきドレスを着た長いウェーブのかかった金髪を持ったスレンダー美人が口元を押さえながら必死に笑いを堪えていた。

見たことも無い人だし、美人な女性だから普段の俺ならそのスリッドから覗く足を凝視する筈だが、それ以上に周りの状況に驚いていた。

 

何時の間にかイセリアと一緒に走った筈の砂浜と海が消え去り、真っ白な不思議空間になっていて、さらにテーブルとイスが置いてあって、それに暗い怨念を放つ沢山の人たちが此方を見詰めているのだ。

それはそれは、この世の全てを妬んでいますと言わんばかりに俯きながらも上目使いで睨んできている。口々からよく聞き取れない言葉を発してるし。

 

『相棒、こんな所にどうや…っ?! エルシャか?!』

「はーい、ドライグ。久しぶりね」

 

白い空間の上の方が絵の具をぶちまけられたみたいに赤くなったと思ったらドライグが現れた。相変わらずでっけーな。そして、現れてすぐに金髪のお姉さんを見て驚くドライグ。

いや、金髪のお姉さんよりもイセリアは何処に行ったんだ? さっきまで此処にいたのに。

 

「あら? まだ寝ぼけてるのかしら、この子」

『む、相棒。気を確り持て。俺が解るか?』

「おわっ! 近いぞドライグ! いや、イセリアは何処に行ったんだ? あとちょっとで…」

 

いきなりドライグに鼻先を近づけられて吃驚しちまった。

本当に後ちょっとだったのに、もうイセリアもバッチコイだったのに…!

 

「ああ、さっきの動きはそういうことね? それ、たぶん夢よ?」

『相棒、イセリアは流石にこの中には入れん』

 

夢…? イセリアはこの中に入れない? 夢?

……… 

……

夢かよ…!! ちくしょおおおお!!!

 

「わっ! 血の涙よ、相変わらず変わった子ね」

『相棒、よく解らんが落ち着け』

 

ふっ、解っていたさ…。そんな気はしていたんだ。俺にそんな美味しい話があるわけ無いってな…! だから落ち着け俺…! 涙を拭え!

…ふう、ところで、この金髪おねーさんは一体何者だ? ついでに後ろの人たちも。

ドライグが本来の竜の姿でいるって事は、ここって多分、俺の神器、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の中だろ? 俺とドライグしか入り込めない筈の空間にどうやって入り込んだってんだ?

 

「ふふ、ここにいる私達は歴代赤龍帝なのよ。そして初めましてね、兵藤一誠君。私はエルシャ。そこにいるドライグの嘗ての相棒よ」

「は、はぁ?! え、あ、初めまして、兵藤一誠です」

 

そんな俺の疑問に気付いたのか、金髪さん、エルシャさんが答えてくれた。

歴代赤龍帝? じゃあ、この人たちは赤龍帝の篭手の所持者だった人達なのか!?

 

「正確にはその残留思念なんだけどね」

『そう、そしてエルシャは歴代でも1、2を争う強さだった』

 

マジでか。この人強いのか。

神器所有者なんだから人間なんだろうし、外見から解る筋力は明らかに俺より劣ってそうなんだけどな。

多分魔力とか、そういう方面に強かったとかか? もしくはイセリアみたいにこの見た目で怪力所有とか?

 

『…ベルザードと共にもう2度と出てこないと思っていたのだがな。それに他の者達も様子が変だな。いつもならもっと空ろな状態の筈だ。覇龍(ジャガーノート・ドライブ)なら、もっと怨念にまみれている筈だ…これは、一体…?』

「…ふふ、少し前から以前より意識がはっきりとしだしたのよ。貴方とイセリア・ヴァルキュリアの実験のおかげかしらね。まあ、こんな風になるとは思わなかったけど。耳を澄まして聞いてみたら?」

『む…あれは相棒の肉体に影響を与えるだけの筈なんだが…。…ん、こ、この囁きは…!?』

 

実験? 前に言っていた赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイル)を超える何かを見つけるって奴なのか?

ドライグがなにやら俯き気味の人たちの声を聞いたからなのか、その巨体が震えおののいた。それほどの衝撃をドライグに与えるとは、あの人たちは一体何を囁いてるんだ?

 

ちょっと近づくのは恐ろしいが、我慢して俺と一番年齢が近そうな人の傍に近づいてみる。近づいても目以外は動かさなかったんだけど、この人、というかこの人たち全員血走った目で俺を追ってきてるんだけど。ギョロギョロしてて怖いんだけど!! 

 

「リア充爆発…!! リア充爆発…!! リア充爆発…!! リア……」

「う、こ、これは…?!」

 

こ、この人たち、リア充爆発と言っている…?! 壊れた機械の様に、只それだけを呟き続けている…?!

 

「最初に意識を取り戻し始めた人が最後まで独り身だった人みたいで、だんだんと感染していっちゃったみたいなのよね」

「いやいや、感染って…」

 

 

こ、これは酷い。歴代赤龍帝たちが全員リア充爆発を謳っているって…。

 

「正直不気味すぎて困ってるのよね、全く。この子達、まだキスすらしてないっていうのに」

「…うっ、いつかするもんね!」

「いつかって何時よ。そういう人って大体出来ずに終わっちゃうのよね」

『やめたげて! 相棒は伝説の超へたれなんだ!』

 

この人結構ズバズバ言ってくるんですけど…。あと、ドライグ。誰が超ヘタレだ…! 何か、リア充爆発って呟いていた歴代赤龍帝の人たちも俺を哀れんだ目になってるし。こいつらむかつくぜ…! 何時かはおっぱいだって揉むんだもんね!

 

「まあ、それはいいとして。あなた達にお願いがあるの」

「お願い?」

 

エルシャさんはそう言いつつ、俺の手をとった。イセリア以外の女性の手を触るのは殆ど無かったから緊張するが、どうやら真面目な話らしい。鼻の下を伸ばすわけにはいかない。

真剣な瞳で見詰められ、俺もドライグも神妙な面持ちで頷いた。

 

「偶にで良いの。あなた達に此処に来て欲しいのよ」

『…どういう事だ?』

「あなた達の影響で、私たちも変り始めている。只の無念の怨霊から変っていけるのよ。ベルザードも薄れていた意識を取り戻し始めてる。只この中で止まっていたままだった時とは変り始めているの。…亡霊にも未来は必要なのよ」

 

その悲哀に満ちた言葉に俺は何も言えなかった。

この人たちは、満足いく人生を送れなかったのだろうか? だから、こんな所にいるのか?

 

『…わかった。約束しよう。いいな、相棒』

「ああ、勿論だ」

 

ドライグと俺の言葉に微笑むエルシャさん。亡霊とは思えないほど綺麗な微笑だった。

 

「ありがとう、2人とも。…あっ! そうだったわ。早く起きたほうがいいわよ。でないと、あなたのファーストキスの相手がイセリア・ヴァルキュリアじゃなくなるわよ」

 

はい? 一体どういう事だ? 

 

『そうだった! 相棒、早く起きるぞ!』

 

エルシャさんの言葉を聞いたドライグが、いきなり俺に向けてその大きな口を開けた。

尖ったでっかい歯が俺に向かってくる! ちょ、死ぬ死ぬ死ぬぅうう!!

 

「ちょ、ドライグ、ま、おわああああ!!!」

 

 

……ドライグにパクリとされて視界が真っ暗になったと思ったらいつもの布団の感覚に包まれていた。

どうやら赤龍帝の篭手の精神世界から現実に戻ってきたらしい。

ドライグめ…。もっと普通の起し方をしろと言うに…。絶対面白いからとかそんな理由でパックンしただろ…。

とにかく、文句は後回しにしてさっさと起きるか…。

? 右手が硬い何かを掴んでる感触がする。これは一体…?

 

「やあ、起きたかい?」

 

目を開くと、視界いっぱいに広がる変態タキシードの顔、仮面に隠れた顔が…!!?? ドアップの唇?! い、息がわかるくらいの距離…?!

 

「ぎょ、ぎょええええええ!!!???」

 

 

 

 

 

 

「…全く、私は被害者だというに」

「うるせえ! 何で寝起きにお前なんぞの顔をドアップで見なきゃならんのだ!」

「まあ、まあ、落ち着いてドラレッド君」

 

朝の訓練を終えた俺達は、朝食を食べていた。

俺の目の前には変態仮面が座り、俺の隣の席には木場が座ってる。ちなみに、木場が座ってる席が普段イセリアが飯を食う席だ。

…イセリアは今、兵藤家に居ない。その代わりに変態仮面と木場が住んでるけど…。

 

「全く。な~んでイセリアちゃんの代わりにこんな変態仮面にご飯を作らなきゃならないのかしら」

「そうだな。イッセー。早くイセリアちゃんを連れ戻してこんか」

「…それが出来たら苦労しねえっつーの」

 

父さんと母さんも、娘の様に可愛がっていたイセリアがいなくなって、イケメンだけど変態仮面が暮らすのはやっぱり嫌みたいだ。俺だって嫌だ。…イセリア、カムバァアアック!!

 

「ははは、彼女の思い立ったら即行動の精神は本当に素晴らしいな」

「ある意味、貴方のせいですよ」

「ぶひ」

 

変態仮面の台詞に木場がツッコミを入れる。本当にな。

 

イセリアがいなくなって丁度1週間。使い魔のポルコすら置いて、イセリアは旅立ってしまった。部長の眷属を探す旅だ。

 

俺の目の前で目玉焼きに醤油をかけて美味そうに食ってるこの変態仮面は、結局部長の眷属になる事を拒否した。理由すら語らず、絶対に眷属にならないと言ったのだ。部長も部長で、流石に仲間になる意思も無く、はぐれ悪魔で変態を仲間にすることには難色を示した。

変態仮面を仲間にすることを諦めたイセリアは、次の候補者を探すべく情報収集を開始。そんな中、変態仮面がポツリと言った京都の妖怪の情報に、すぐさま京都へと旅立ってしまった。

”イッセー。私がいなくてもちゃんとご飯を食べて運動して、睡眠時間は沢山とるんだぞ。じゃあ、行って来る。……あっ!………私より強い奴に会いに行く”という台詞を残して。…最後の一言、何の影響なんだ?

 

「部長も頭を抱えてたよね。今度からブレスレットに召還機能を付けようかって言ってたよ」

『全くだな。あのイノシシ娘には首輪がいる』

 

苦笑しながら言う木場。ドライグといいオカルト研究部のみんなからは中々に酷い言われようをされてたなイセリア。部長は自分のためにって、ちょっと嬉しそうに頬染めてけど。

木場が何で家にいるかと言うと、変態タキシード仮面を押さえられる人物で、かつ被害にあわない奴。と言うことで男の木場が家に派遣されてきたのだ。…しかし、この変態仮面が本気出したら俺も木場もあんまり役に立ちそうに無いけど。

 

「ん、なんだね。私の顔に見惚れたか?」

「キモイ事言うな。顔に醤油ついてんぞ」

「む、これは失礼」

 

ハンカチで顔を拭いてる変体仮面。実力はマジで強かった。

早朝訓練。イセリアの代わりにこいつと組み手をやってるんだが攻撃が全く決まらない。決まったと思っても受け流されていたり、そのまま俺の力を利用して投げられたりする。これが禁手化使っても結果は同じなんだから笑えん。しかも、木場と2人掛りでも逆にこっちがやられちまうし。

能力なんて使わなくても、その技量は圧倒的に俺より上だった。攻撃力と防御力だったら俺の勝ちなんだけどな。とにかくこの変態は戦い方が上手い。イセリア以外との訓練が出来て、しかも相手は一級品の腕の持ち主。お蔭で俺のレベルアップにかなり貢献してくれている。こいつが部長の眷属に入ってくれたら、あの種まき焼き鳥なんて楽勝だったろうに。

しかしこの変態。実は何処かの会社に就職してサラリーマンやってるらしい。面接で面接官に術かけて合格したそうだ。

 

「そういや、何で働いてんだよ。悪魔だろあんた」

「ふむ、まあ一週間君達と共に過ごしたし、君達の人となりは大体わかった。君達なら言っても問題なかろう。…実はな」

 

真剣な表情で話し始める変態仮面。何故か何時も外さなかった仮面すら外して話し始める。思ったよりずっとイケメンだった。…イケメン死ね。

 

「私は、恋をしているのだ」

「「恋?!」」

 

食卓にいる全員の素っ頓狂な声が木霊した。

いや、この変態が恋って絶対実らないでしょ。っていうか、そんなキャラかこの変態。

 

「…彼女はシスター、いや、元シスターでな。今は喫茶店で働いているのだ。長い金髪に美しい碧眼。そして何より、清らかな心。近くにいるだけで浄化されてしまいそうだった…」

「いや、あのタキシード仮面さん。あなた悪魔でしょう?」

 

木場の言う通りだ。シスターさんとこの変態が付き合えるわけねーし。というか、その煩悩ごと浄化されちまえよ。

 

「種族や職業など関係ない。好きになれば彼女の神への祈りすら愛せる」

 

本当に幸せそうに語るタキシード仮面。

…確かに、好きになればそんなもの関係無いな。まさか、この変態と共感してしまうとは思いもよらなかったぜ。

 

「人間の女性というのは、男の甲斐性に惚れるものだと聞く。つまり、立派な職に就き高収入を得ればきっと私の事が好きになるはずだ」

「何かそれ、嫌なんだけど」

 

このタキシード仮面、夢も希望も無い事言いやがる。

 

「ふっ、女に逃げられたお子ちゃまには解るまい…」

「に、逃げられて無いやい!」

 

掴みかかろうとすれば綺麗に避けやがった。くっそ! イセリアはちょっと旅行に行ってるだけだもんね!

 

「ご馳走様。今日も美味しい料理でした、ご母堂。では、私は仕事に向かう」

 

食器を片付けた変態タキシード仮面はそのまま一瞬で消える。能力じゃなくて脚力で消えたんだ。

 

「本当、普段は礼儀正しい好青年なのにな」

「そうよねえ。なんで下着を見たら盗まずにはいられないのよ…」

 

わからなくて当然だと思うぜ、父さん、母さん。それが変態の変態たる由縁だからな…。

 

 

 

 

最近、木場とのカップリングが本格的に信憑性を増しているとの噂のイッセーです…。

朝は一緒に登校。同じ部活のため放課後も一緒。帰りも一緒に帰る。…うん、俺でもホモかと思ってしまうな…。

 

「はぁ~…イセリア帰ってこねえかなぁ…」

「はは、でももう直ぐ定時連絡の時間だよ。ほら、そんなに落ち込まないで」

 

時刻は4時。後1時間でイセリアからの連絡がドライグに入ることになってる。ドライグのペンダントが本当に便利だ。

俺と木場はイセリアからの連絡を部長たちにも聞こえるように部室に向かう。こうやって2人揃って歩くと、女子達が×算をしてるのが聞こえてくる。…もう、許してくれ…。

 

 

「こんちわー、…ッ!」

「ただいま参りました。部長、…部長?」

 

俺達が部室に到着すると、部長が既に頭を抱えていた。

普段キリリとした部長は、あのポーズをイセリアが何かした時にしか見せない筈。まさか、イセリアが何かしでかした時以上に大きな問題が起きたのか?!

 

「…ふふ、祐斗、ドラレッド漸く来たのね。…ふふふ、特にドラレッド。本当に遅かったじゃない」

「お、俺っすか?! 木場シールド!」

「ちょっ、ドラレッド君?! ど、どうしたんですか、部長、落ち着いて!!」

 

何だ?! 既にお怒りモード?! 

紅い消滅のオーラが部長から沸き立つ! どう考えてもやばいって! すまない木場、俺の盾になってくれ!

 

「…ふふふ、朱乃。アレを」

「うふふ、はい問題の映像ですわ」

「…ドラレッド先輩。ヴァルブルーさんにちゃんと首輪をつけておいてください」

 

お、思ったよりは冷静だったみたいだ。

部長にソファーを指差され、大人しく木場と一緒に座ると空中に謎のディスプレイが表示された。

その際に何故か小猫ちゃんから首輪を渡されたけど。…首輪プレイ。ご主人様プレイ…。…いいかもしれん。

 

「ふう、まだ希望があるかもしれないわね…。ドライグ、映像の前に1つ聞いておくけど…ヴァルブルーの現在位置は何処?」

『…昨日までは京都だった』

「……だった、とは?」

『…現在地は中国だ。…俺が気付いた時には海上を走っていた』

「…うぅ、やっぱり…!!」

 

ドライグの言葉に部長が頭を抱えて蹲っちまった。

っていうか、イセリア今中国だと?! ちょ、待てよ! 京都って話だったろ!!

 

「…とりあえず、映像を映しますわね」

 

空中のディスプレイに色がつく。

特に何も無い山々が映っていた。と、思った途端、画面端の方で小さいミサイルがいっぱい飛んで木を焼き払っていく。カメラの向きが入れ替わり、ミサイルの発射源が画面中央に移る。

時折映る、大量のミサイルを打ち落としていく蒼いレーザーみたいなのに凄く見覚えがあります…。どう考えてもイセリアです。本当にありがとうございました。

…あっ、恐らく今まで画面に映ってなかったミサイル撃ってたっぽい奴が空をとんでる。綺麗な放物線で山の方に回転しながら飛んで行ってる突起物だらけの巨漢。…イセリアが殴り飛ばしたみたいだな。

 

「……此処までは、良いのよ。まだ、許せるわ」

「…? …うわっ?!」

 

部長の言葉に気をとられた瞬間。空中ディスプレイの画面が真っ青に輝いた! 

一体なんだこれ?!

 

「次の映像ですわ。こちらは冥界のニュースです」

「ニュース?! 冥界で?!」

「悪魔にだってニュースはありますのよ」

 

姫島先輩、マジですか?! 悪魔もテレビやってんのかよ…。悪魔って…。

 

『こちら、人間界! 現在原因不明の大爆発の跡地に来ております!』

 

映像の中ではニュースキャスターっぽい悪魔の女性と、その背景には巨大なクレーターが映ってる。草の根一本も残ってないな。

人間の兵器による物ではないとか何とか説明し、そして別アングルから録られたと思われる映像が流された。

 

天へと続く極太の蒼い炎。周囲を焼き払いながら上空へと、雲すら消し飛ばして昇っていく。炎の柱から漏れた火球も周囲の木々に当たり、木は内側から爆ぜるように爆発して被害を大きくしていく。

こ、これって…!?

 

「どう考えても、ヴァルブルーの犯行よね。ねえ、ドラレッド…?」

「へ?! い、いや、きっとち、違うんじゃないかなー、なんて…?!」

 

ちょ、部長、チョー怖ぇー!! 目が、完全に殺す気だよ!? やべーって!!

俺が部長の眼光にビビッている間に、アナウンサーさんが現在の冥界の動向を説明。人間界の隠蔽工作に必死に動いてます? え? 人間達の噂の抑制や山の修復作業を急ぎます? 

 

「ふふふ、一度あなたたちとは常識と言うものについて話し合わなくてはいけないと思っていたのよ」

「あ、はっははは・・・」

 

か、乾いた笑いしかでねえ。こ、これ、超迷惑かけてるよね? え、何、小猫ちゃん、イセリアのことが他の悪魔にばれないように部長が頑張ってるって?  

 

「良いじゃないか。黒パン乙女よ。年頃の女の子はこの位の方が良い」

「出たわね変態、誰が黒パン乙女よ。大体、茶化して済むような問題じゃないわ」

「まあ、落ち着きたまえ。イセリア嬢からの報告の時に仔細は聞けば良い。あんなものを使わねばならないほどの強敵が現れたということだろう?」

 

急に部長の背後に現れる変態タキシード。

変態タキシード仮面の癖に、こういう時も冷静とは。そんな変態タキシードの御蔭か、部長も怒りのオーラを引っ込めて大人しくなった。

あんな炎を出さないといけない敵って一体なんだ? そんなに強い奴だったのか、…イセリアは、イセリアは無事なのか…?!

 

「…確かに、冷静になるべきね。…ドラレッド、貴方もイセ…ヴァルブルーが心配なのはわかるけど、落ち着きなさい。今までドライグが何も言ってない時点で、ヴァルブルーは無事なんでしょう? 少し早いけど、ドライグ。連絡を入れてくれないかしら?」

『わかった……。…何? 怒られるから出ない? 子供か、己は』

「直ぐに出るように伝えなさい」

 

イセリアの着信拒否に部長の怒りの炎が再び燃え上がったみたいだ。ドスの聞いた声に俺まで肝が冷えた。

やがて、ドライグの説得に観念したのか、赤龍帝の篭手から弱弱しい小さな声が聞こえてくる。

 

『こ、こんにちわ。げ、元気?』

「ええ。貴方のお蔭で心が張り裂けそうなくらいね…!!」

『…その、…あう、え、えと…』

「まずは、何で貴方が中国にいるのか、そこから話しなさい…!!!」

『は、はい!』

 

部長の怒りの声でたじたじになりながらも説明を始めるイセリア。

 

『えと、京都で九尾の狐みたいな人に仲間になって欲しいって言ってたのは覚えてる?』

「ええ」

『それで、昨日、”そんなに仲間になって欲しいなら仏の御石の鉢をもって来て下さい”って言われて、天竺を目指して…』

「待ちなさい。それは絶対仲間にならないって言われてるようなものでしょ! 何でそこで信じて天竺を目指すのよ!」

『や、やれるもんならやってみろと言う事かと思って…』

 

イセリア…。騙され易すぎだろ…。というか、天竺って何処だよ。

 

『船代が無かったから海の上を走って中国まで行って、そしたら高速で空を飛び跳ねるパンダが居て、つい捕まえようと』

「…落ち着くのよ、リアス…、つっこんだら思うつぼよ…」

 

ついに過呼吸気味になる部長。胸を押さえながら落ち着けるように自分に言い聞かせている。

俺もツッコミをしたくて仕方が無いんだけど…。俺まで胸が苦しいんですけど…。

 

『パンダが動物園の中に入ったから捕獲を諦めて、お腹がすいたからご飯にしようとお店によったら言葉が解らなくて、しかも日本円しか持って無くて。仕方が無いから山で食べられるものを探そうと山に入ったら、5体くらいのモンスターが人を襲ってたんだ』

 

おお、漸くまともな話に。お蔭で俺も部長もちょっと持ち直した。

これからあの爆発の理由が語られるわけだ。

 

『それで助太刀に入ったら結構強いっぽい人で、神器持ちだったんだ。ちょっと前世がヘラクレスだったとか言う中二病っぽい人だけど大丈夫かなと仲間に誘ったら、急に襲い掛かられて』

 

さっきの映像に映っていたミサイル出してた奴のことか?

あと、イセリア。お前に中二病云々は言えないだろ。お前も同じ症状でしょうが。

 

『結構硬かったけど動き自体はトロくさかったから殴り飛ばして終わり、と思ったんだけど仲間が現れちゃって、…え~と、その』

「どうしたのよ? ヴァルブルー」

『その、イッセーは、髪の長いほうが好き?』

「? 長いほうが好きだぜ」

 

? 急に言いよどんだと思ったら、全く別の話題を持ち出すイセリア。

部長たちも困惑気味だ。と、思ったらいきなり驚いた顔になるオカルト研究部の面々。なんだ? 何か解ったのか?

 

『…さ、3年位、中国で修行する!』

「きゅ、急にどうした?! 修行なんていいから早く帰って…むぐぅ!!」

「鈍感先輩、駄目駄目です」

 

思いの丈をイセリアに伝えようとしたら小猫ちゃんにいきなり口を押さえられる。しかも、口の中に饅頭をつっこまれて息が出来ねえ!! 

 

「ヴァルブルー。理由は解ったわ。大丈夫、納得できたわ。安心しなさい、その件は私達が確り対処してあげる」

「そうですわ。冥界の技術で確り治して差し上げます」

『ほ、本当?』

「ええ、勿論。私達に任せなさい」

 

い、息がそろそろ厳しいんですけど! イセリアに急に優しくなったのはいいけど、俺にもその優しさを分けて欲しいんですけど!

 

『でももうちょっと中国にいる。仲間になってくれそうな人? じゃないか、鎧? を見つけたんだ』

「鎧?」

『うん。きっと凄く役に立つと思う。絶対に仲間にして見せるから、朗報を待ってて』

 

鎧が仲間ってどういうことなんだ? 

小猫ちゃんがやっと口を離してくれたお蔭でやっと息が出来るがもう通信が終わってしまった。

ぐぬぬ、夜にもう一度連絡を入れて話を聞かねば…!

だけど、

 

「さて! ヴァルブルーの事情も解ったし、破壊活動の理由も解ったし、今日も修行を開始するわよ。タキシード仮面、今日も頼むわよ」

「ふ、任せたまえ。君達が強くなれるよう死力を尽くそう」

 

まずは、この変態に打ち勝つことからだな!

 

 

 

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