赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

13 / 19
オッス! オラ作者。
遅くなってすいません。昨日更新するつもりが、
お酒なんかに負けない! → やっぱりアルコールには勝てなかったよ…
となってました。



とっくにご存知なんだろ

「つまり、あなた達は奪われた聖剣を取り戻すために来たと?」

「その通りだ」

 

部長の確認に、ショートカットの青い髪に緑のメッシュを入れた聖剣使いの1人ゼノヴィアが頷く。

 

あの後、タキシード仮面の活躍により捉えた教会関係者の2人を、部長のところ、オカルト研究部まで連行した。

道中は木場もタキシード仮面も本当に何があったのかの殺気が凄まじく、何時2人に襲い掛かるかとヒヤヒヤしたが何事も無く無事にたどり着くことが出来た。

部室に着いた俺達を待っていたのはオカルト研究部以外にも生徒会メンバーが居た。教会関係者の2人は生徒会メンバーに先に接触を取っていたらしく、本当に明日、部長のところに交渉に行く予定だった。俺の家に悪魔が居たこと自体が、教会関係者の2人にとって想定外だったらしい。生徒会長の取り成しで、2人は客人扱いとなった。

今はオカルト研究部部室にてオカルト研究部員だけでなく、生徒会メンバーも参加で、2人から話を聞いている。

一個だけ気になることがあるんだが、…部室の備品が増えてる。剣を垂直に、騎士の誓いの様に構えている謎の金ぴかの鎧。部活中は無かった筈なんだけど、部長は何時の間に買ったんだ?

 

「3つの教会陣営から、1本ずつエクスカリバーが盗まれた。犯人は『神の子を見張る者(グリゴリ)』。この街に潜伏している」

「堕天使の組織が盗んで、私の縄張りに? 本当に厄介ごとね…」

 

片手で頭を押さえながらため息をつく部長。すっかりあのポーズが癖になったみたいだ。

 

盗まれた聖剣はゼノヴィアとイリナが所持しているエクスカリバーと呼ばれる聖剣だった。

ゲームや御伽噺でよく出てくる伝説の剣の象徴のような剣。イセリアが中二ごっこでよく”エクス…! カリヴァアアアア!!”と叫んでいたアレである。

そのエクスカリバーは大昔の戦争で折れ、錬金術で修復されて7本になっていて、今回盗まれたのはカトリック教会から1本、プロテスタントから1本、正教会から1本で3本盗まれたみたいだ。

 

「奪った者たちの把握は出来ている。グリゴリの幹部、コカビエルだ」

「聖書にも記された、古の戦いから生き残る堕天使の幹部ですか…」

 

会長も部長も、ゼノヴィアから教えられた敵の名前に苦笑する。

俺からしたら、誰そいつ? といった感じなのだが、生徒会メンバーやオカ研メンバーからしたら相当ビッグネームのようで、みんなの間に緊張感が漂った。

 

「私達の依頼は、今回の聖剣奪取に君達悪魔が…な、何だ?!」

 

ゼノヴィアが喋っている途中、外から天へと伸びる光が差し込む。

この方角は、何時も訓練で使っている公園か?!

 

『相棒、あの辺りにイセリアの反応があるぞ』

「何?! …カウント!」

『既にしていた。どうせお前のことだからな』

「マジで?! よっしゃ!」

 

流石は俺の相棒! 俺のことを本当によく解ってるぜ!

 

『Welsh Dragon Balance Breaker!!!』

「ちょ!? ドラレッド、待ちなさい!!」

 

赤い閃光が俺を包み、鎧を形成する。これが俺の禁手、赤龍帝の鎧(ブーステッド・ギア・スケイルメイル)! 

まさに小型の人型ドラゴンになった俺は、早速飛び出そうと窓を開けるが、部長に引き止められてしまう。だが、俺はもう止められない、止まらない!

 

「部長! 行きます!! あそこに俺のおっぱ…イセリアが居るんです!!」

 

ヒャア! もう我慢できねえ!! 2週間ぶりじゃぁあああ!!

―そうして俺は、最後のガラス(部室の窓)を突き破った。

 

 

 

 

太陽が沈み、夜の訪れを告げる闇。電灯によって薄暗く照らされた公園。対峙する内の1人、コカビエルが張った結界によって無人となっていたこの場所で、堕天使たちの戦いが行われていた。

1人は上空に浮かび、10枚もある黒い翼を羽ばたかせ、光り輝く槍の雨を降らせるコカビエル。その腕には気絶したアーシアが捕らえられていた。

1人は自らの神器(セイクリッド・ギア)である紫色の篭手と光の槍で、コカビエルの光の槍を必死に防ぐレイナーレ。翼を広げてはいるが、コカビエルの強力な弾幕の前に飛ぶことすら出来ず、巻き起こる土煙と光の槍で全身と羽は土と自らの血で汚れていた。

 

「どうした、この程度か?」

「クッ! だまりなさい!」

「生意気な口はまだ直らんようだな? 何時までその態度が持つか楽しみだぞ」

 

戦闘というには、あまりにも一方的な戦い。

戦いを有利に進めるコカビエルの顔は嗜虐的に、レイナーレを見下す優越感に歪んでいた。レイナーレが未だに無事でいる理由はコカビエルが遊んでいるからに過ぎず、もしコカビエルに本気を出されれば、その瞬間に死ぬだろう。

その事実と、体の傷の痛みに苦悶の表情を浮かべるレイナーレ。篭手と自身の光の槍で弾くコカビエルの一撃一撃が、全身の筋肉に鋭い痛みを伝えてくる。

対峙する事が馬鹿馬鹿しくなってしまうほどの圧倒的な力の差。

レイナーレは未だに戦っている自分に苦笑をこぼす。以前のレイナーレならば対峙した瞬間に逃げ出していたか、もしくは、直ぐに命乞いをして何とか助かろうとしていただろう。

だが、それはもう出来ない。公園の壁に、キリストの様に光の槍で手足と翼を貫かれて縫い付けられたミッテルト。そして、未だにコカビエルの腕の中で気絶するアーシア。2人を助け出すまでは、レイナーレは逃げ出す事は出来なかった。

 

「貴様は本当に変っているな? たかが人間如きと下級堕天使如きのために命を捨てるとは。こいつ等を見捨てれば、お前だけならば見逃してやろうというに」

「黙れと言ってるのよ! このクソ野郎!」

「…本当に馬鹿な女だ、救えんなぁ、ククク…!」

 

レイナーレの罵倒に青筋を立てたコカビエルは、強力な光の槍を放つ。それまでの光の槍とは一線を画す攻撃力をおびた槍は、一直線にレイナーレの左の羽を貫いた。

放たれた光の槍に反応すら出来なかったレイナーレは、そのあまりの威力によろめくも、すぐさま持ち直して続く光の槍をさばく。だが、その動きには精彩を欠いており、防ぎきれずに幾つもの切り傷を全身に作っていく。

 

「ッア! うぁ!!」

「いいぞ、いいぞ、踊れ踊れ。そのまま悲鳴を挙げて命乞いをしろ! ソラ!!」

「っ! う、ァアアアアアア!!!」

 

レイナーレは堪らず絶叫した。両足の太ももにコカビエルの光の槍が突き刺さり、立つことも出来ずに前のめりに倒れこむ。

両足に突き刺さった光の槍は、脳の血管が破れてしまうかと思うほどの激痛をレイナーレに与える。歯が震えカチカチと耳障りな音を鳴らし、目からは涙が止まらない。

 

「クククッ。いい顔をするようになったな」

「っく…あぅ…」

 

這いつくばったレイナーレの眼前に、勝ち誇ったコカビエルが降り立つ。レイナーレは激痛を堪えながらコカビエルを睨みつけた。

全身を蝕む痛みは、未だ衰えることを知らずレイナーレの心を折ろうとする。だが、それでもレイナーレは心を折るわけにはいかなかった。怨敵であるコカビエルの腕の中にはアーシアがいる。敗北によって何もかも失ったレイナーレに唯一残ったものの片割れ。決して失えない守るべきもの。

しかし、その様子すら愉悦の対象であるかのようにコカビエルは口元を三日月の様に吊り上げた。

 

「まだ、そんな目が出来るか。ククク……! 面白い事を思いついた。おい、起きろ人間」

「……や、…め…!!」

 

気絶したアーシアの頭を掴み、光力を流した。

ただの人間にコカビエルのような堕天使の強力な光を流せば、脳が焼かれて死んでしまうかもしれないのだ。

コカビエルの暴挙にレイナーレは叫ぼうとしたが、喉がかれて声が出ず、ただ自身の無力さに絶望するしかなかった。

 

「…うぁ、 レイナーレ、様…? レイナーレ様ぁ!!」

 

痛みと絶望に意識を失いそうになっていたレイナーレの耳にアーシアの声が届く。涙に濡れた瞳でレイナーレに必死に呼びかけていた。

アーシアが生きていたことにレイナーレは安心するも、目の前にいる堕天使は悪魔よりも残酷だった。

 

「人間。この堕天使を治しても構わんぞ。だが、その代わりお前は殺す。逆に助かりたくば、こいつを無視してここから出て行くがいい。なに、止めはせんぞ?」

 

それは最悪の提案だった。

自己犠牲か自己保身か。人間の心を弄ぶ最悪の提案。

コカビエルは目の前の人間が自己保身に公園から出て行くことを期待した。そして、見捨てられて絶望したレイナーレの目の前でアーシアを消し去るのだ。

アザゼルに渡す筈であった神器を奪い、自分の顔に泥を塗った者を許す気はない。生意気な中級堕天使の心を木っ端微塵にして、奪われた神器を取り戻す。

裏切られたレイナーレの表情が、アーシアを殺された時の絶叫が。どれほど無様な姿を見せてくれるか、コカビエルは歪んだ心のまま愉悦の表情を浮かべ、次の瞬間には凍りついた。

 

コカビエルの手から解放されたアーシアは、まるでコカビエルの言葉が聞こえなかったかのように何の躊躇も無くレイナーレの傷を癒していたのだ。

コカビエルには理解が出来なかった。目の前の人間が、この世の者でないとしか思えなかった。もしくは、あまりの恐怖に気が狂ってしまったのか。

 

「何を、している…?」

「…私を殺すなら、レイナーレ様の傷が完治してからにしてください…!」

 

振り返ったアーシアの見せた瞳は、一瞬であれ聖書に記された堕天使を怯ませるほど強い瞳だった。

 

「……っ!」

 

不快。コカビエルの感情は不快感に満たされた。

自分と言う絶対的強者に立ち向かう愚かな中級堕天使。絶望的な状況でも決して屈する事の無い人間も、そして何より、人間如きに気圧された自らが不快で堪らなかった。

 

「…そんなに死にたいなら…!! 今死ぬがいい!!」

 

心のまま、自らの光の槍を右手に出現させる。激情によって強まった光の槍は、目の前の惰弱な存在たちを一瞬で貫いて消滅させる筈であった。

だが…

 

「ふざけんじゃないわよ…」

「っ!!?? な、何?! 馬鹿な、貴様如きが…?!!」

 

ありえない現象。コカビエルは目の前の現実が認められず、ただ狼狽する事しか出来かった。

光の槍を掴むのは、紫色の篭手。治りきっていない両足から血を噴出しながら、それでも力強く立ち上がったレイナーレの神器だった。

 

レイナーレはコカビエルを強く睨みつけた。

目の前の存在は、自分を今まで痛みつけてきた絶対的強者。”神の子を見張る者(グリゴリ)”の幹部にして恐るべき光力を持つ者。圧倒的に敵わない存在。

 

(だから、どうした…!)

 

穴の開いた左羽と太ももとから血が噴出す。

アーシアの神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)でも未だ治しきれて居ない箇所の痛みは、レイナーレにのた打ち回りたいほどの激痛を伝える。

 

(だから、どうした!!)

 

しかし、レイナーレはもう痛みを気にする事も力の差に脅えることもしない。

何故なら目の前のいる憎き敵は、自分達がやっと手にした居場所を奪った元凶にして、自分の部下、ミッテルトを散々痛めつけ、さらにはアーシアを殺そうとした絶対に許せない者。

だからこそ、痛みに気をとられている時ではない。敵を恐れている時ではない。

目の前の敵を粉砕する時なのだ。

 

「答えなさい、神器!! 使い手の思いを汲み取るなら、私と同じように怒りに燃えるなら、今こそ、…今こそ私に力を貸せぇえええ!!」

 

―その叫びは、正しく神器に届く。

 

それは黄金の輝きだった。

レイナーレの神器からあふれ出した黄金の光は、闇夜に包まれた公園をつきぬけ、町全体に届きそうなほどの光力を生み出す。

輝く篭手に掴まれていた光の槍は、黄金の輝きの前に力なく消滅する。

 

「な…! 何だこの光は…!? っ!!??」

「これは、あんたをぶちのめす光よ!!」

 

光輝く篭手が、レイナーレの激情の込められた一撃がコカビエルの頬を捉え、思い切り吹き飛ばした。

 

黄金の輝きはやがてあるべき姿を形成していく。

レイナーレの右腕を肩から覆う、巨大な黄金の腕。レイナーレの神器の禁手(バランス・ブレイク)、黄龍の腕(シャイン・ドラゴン・プライド)の誕生だった。

 

「……すごい」

 

体を駆け巡るようにあふれる力と輝き。

まるで、もっと輝かせろと言わんばかりの黄金の輝きはレイナーレを魅了する。

右腕からあふれる力は、輝きが増すごとに増幅していく。

 

「く、くはははっ!!! たかが、たかが中級のカスが! まさか、まさか、この俺を愉しませうるとは!!」

 

神器の力に魅了されていたレイナーレは、その狂った笑い声にハッと気がついた。

レイナーレの一撃は、レイナーレの光の槍の一撃とは比べ物にならないほどの力の込められていたものだった。しかし、立ち上がったコカビエルの左頬は、確かに焼けたように焦げていたが、それでも決定打には程遠かったのだ。

 

「ククク…! 枷を外してやる! もっと俺を愉しませろ!!」

「! やめなさいっ!!」

 

立ち上がったコカビエルの光の槍の切っ先はミッテルトとアーシアに狙いを定めていた。

神器の力とはいえ、侮っていた存在が自身に傷をつけるほどの力を出したのだ。コカビエルはこの闘争をさらに愉しむために、レイナーレをさらに怒らせることを決めた。

 

「やめろぉおおおお!!!」

 

放たれた光の槍はミッテルトとアーシアに真っ直ぐ突き進む。

レイナーレは自分の後ろに居るアーシアに向かって放たれた光の槍を瞬時に防いだが、ミッテルトへ向かった光の槍までは手が届かない。

両足と羽に受けた傷さえなければ、それを防げたかもしれない。だが、レイナーレの意思に反応して巨大化した黄龍の腕ですら、その槍には届かなかった。

 

「…っ!」

 

レイナーレの防げなかった1本の光の槍は、正確にミッテルトの心臓へ飛んで行く。

見開いた目の先、絶望に染まるレイナーレの視界に”蒼”が映った。

 

「危なっかしいな。…探したぞ、レイナーレ」

「……遅いのよ、ばーか」

 

 

 

 

 

 

ミルたんさんから貰ったメモの住所に行ったが、レイナーレたちは既に居なくなっており、先に賽唐猊(さいとうげい)君に部室に行ってもらい、レイナーレたちを散々探し回った今日この頃。

いきなり立ち昇った派手な金色の光へダッシュで向かった私の眼に映ったのは、いきなりピンチのミッテルトの姿だった。裏側に回って壁を壊して光の槍に触れないようにしながらミッテルトを回収、瞬時に回避。

我ながらタイミング良すぎてなんとも言えん感じだ。

 

「その髪どうしたのよ、失恋でもした訳?」

「…イメチェンだ。そっちこそ、その腕は病気か? 凄いことなってるぞ」

「…ハッ! イメチェンよ!」

 

レイナーレも服装が結構ボロボロだけど、まだ冗談を言えるくらいには余裕があるみたいだ。

アーシアによって傷も癒されたみたいだし。

 

「…新手か。ククク、いいぞ。戦争だ。もっと殺しあうぞ!!」

 

狂ったように笑っているのは10枚の黒い翼を生やした黒いローブの男。既に顔パンされているみたいだが、もっと殴られたいみたいだな。

何時もの私なら、奴が何かする前に顔パンする自信がある。しかし、今の私には不可能だ。

…何故なら

 

「ちょっと、イセリア。いつもの槍はどうしたのよ。何で鉄パイプなんて構えてんのよ」

「…槍は、槍は熔けた。ちなみに盾もトロトロ」

「はぁ?!」

 

…レイナーレ、そんな何言ってんのこいつ、みたいな顔しないでくれ。

中国で最後に放った炎。確かに過去最高の火力を発揮してくれたのだが…。なんと槍の方が私の炎に耐えられなかった。残ったのは見事にトロけた槍と盾。

何で私が平気なのにラグナイト製の装備が熔けてるの? 馬鹿なの? 死ぬの? そんな装備で大丈夫なの?

お陰さまで今の私の装備はその辺で拾った鉄パイプ。私の炎を強化してくれるラグナイト製の武器がない時点でやばい。パワーアップしたけど、その分装備が無くなって差し引き0みたいな感じだ。

 

「と言うわけだから、何とか1人で頑張ってくれ」

「何しに来たのよ、あんたはぁああ!!」

「てへ」

「真顔で言ってんじゃない!!」

 

飛んで来る光の槍をかわしつつ、レイナーレにツッコミをいれられつつ、アーシアを回収。

右肩に気絶したミッテルト。左手にアーシア。鉄パイプは光の槍一回防いだだけで折れ曲がったので置いてきた。やっぱり鉄パイプじゃ駄目だったよ…。

 

「アーシア、ミッテルトの回復を」

「はいっ!」

 

アーシアの手から放たれた緑の光がミッテルトを癒す。直接手を当てなくても治せるようになってきたみたいだ。そういえば、最近この神器を使いこなす練習してるとか言ってたか。

 

レイナーレの方も中々戦えている。あの10枚羽の男、結構強いみたいだが、レイナーレも負けていない。

レイナーレの右腕を覆う神器。ドライグのような龍の力を感じるあの神器がレイナーレを相当強化しているみたいだ。そして、あの腕は光の槍を防ぐたびに輝きを増していく。そして、レイナーレの力もどんどん増していっている。

 

「貴様、堕天使だというのにその羽は何だ!!」

「何を訳の解らない事を!」

 

イッセーとドライグの赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)みたいに力を倍増していくタイプみたいだな。腕だけじゃなくてレイナーレの髪と羽まで金色に光りだしてる。

レイナーレはどうやら超サイヤ人だったみたいだ。本人は気がついて無いみたいだけど。

 

「死んんねぇえええええええ!!!」

「おっと」

 

凄い気迫で後ろから切りかかって来た謎の男。

私達は横に跳んでかわしたが、男の剣は易々とコンクリートを二つに割った。

その男の髪は白髪。だけど、私の髪を切った奴とは違う顔だった。

 

「見つけたぜぇええ! クソアマがぁあああ!!!」

 

よく解らないが凄く怒っているらしく、顔芸決めながら切りかかってくる。

剣速は中々速く、ミッテルトとアーシアを抱えながら避け続けるのはちょっと辛い。反撃したくとも両手が塞がっている状態ではどうしようもない。

それにしても何故この白髪の男は私に切りかかってくるのだろうか? 持っている剣も特殊な剣みたいで、切っ先がブレたと思ったら剣速が上がる謎の剣だ。白髪は特殊な剣を持っている戦闘集団の証なんだろうか?

というより、ここまで恨まれる覚えが……。あっ!

 

「ふざっけんなクソがぁああああああ!! 死ね! 細切れになって死ね!! 細切れの世界記録だして死んじゃえよ、このクソアマがぁああ!!」

 

こいつ確か、レイナーレが私に襲い掛かってきたときに、一番最初に金的くらわせた奴だ。たしか先頭で銃をぺろぺろしてた奴。

捕まって刑務所的なところに送られたんじゃなかったのか?

 

「んぁ! 何事?! 何これ、凄い顔の人間?! あっ!! おっぱい魔人!!!」

「ミッテルト様!」

 

やっと目覚めたらしいミッテルト。久しぶりに会ったのに私に対してまだおっぱい魔人呼ばわりなのは許すが、起きて早々暴れないで欲しい。回避に支障をきたしてしまう。

 

「とったぁああああ!!」

「とってない」

 

白髪の放とうとした上段切りを足で白髪の手首を蹴り上げることで防ぐ。

白髪はそれでも怯まず、一歩後ろに下がって今度は突きを放ってくる。避けきれない速度じゃないので問題ないが、正直まずい。

横目でレイナーレの様子を伺えば、段々と押され始めている。自力の差、覚醒仕立ての神器を扱いきれてないことが大きいのだろう。

手早くこの白髪を片付けて援護に行きたいが、両手が塞がっている現状ではどうしようもない。

 

「ミッテルト、起きたのなら自分で私につかまっ」

「お、おっぱい魔人、も、もうちょっとゆっくり避けて…は、吐く」

「へ?」

 

ちらっと横目で見上げれば青い顔で口を押さえたミッテルト。

避ける速度は落とせない→ミッテルト吐く→頭からゲロを被る私→視界が塞がる+くさい→切られる→オワタ!

だ、大ピンチ。これ、詰んだ?

いや、まだだ! 吐しゃ物を頭から被っても、目を見開いてかわし続ければ良い!

が、頑張れ私! ゲロに負けるな私! 

 

「クソアマぁあああ!! 玉の仇とらせもらうざんす! この聖剣で犯しまくってアヘアへにして切り刻んでやるぅああああ!!」

「う、うわぁ、キッショ」

 

汚い英語すぎて何を言ってるのかは解らないが、ミッテルトの反応から禄でも無いことだとは解る。

というより、白髪の言葉のせいでミッテルトの吐き気ゲージが限界近くまで引き上げられてしまったようだ。

…ふっ、ゲロよ。来るなら来い。私は既に覚悟を決めた。たとえ頭からゲロを被ろうとも、私は生きる!

 

「ごらぁああああああ!! 家のイセリアになにしてんだぁあああ!!!」

「ごあ!! あじゃぱぁあ~!!」

 

彗星の様に赤い何かが走りぬけ、目の前の白髪を殴り飛ばした。見事な車田飛びだった。

あの赤い鎧。間違いない、私が間違える筈もない。アレは、イッセーだ!

 

「イセリア!! 髪が…、くっ、他は無事か?! 怪我は無いか?!」

「ちょ、あっ、やっ、こら、何処触って」

 

私に掴みかかるように向かってきたイッセーが、怪我の確認のために私の体をペタペタと触る。

どう考えてもセクハラなんだが、赤龍帝の鎧の兜の部分を解除しているイッセーの表情は真剣そのもの。本気で心配してるから、注意できないし、ミッテルトたちを持ったままだから身を捩ることしか出来ない。

 

「うち等のおっぱい魔人にセクハラすんじゃない! こら!」

「公共の場で淫行はいけません!」

「おわっ! 誰だ君達!?」

 

今2人に気付いたのか。まったく。

というか、右手が私の胸を掴んだままなんだけど。う、動いてるんだけど…。右手だけ器用に篭手を解除してるし…。こ、こんな公共の場で…。

 

「! 急に俯いて…イセリア! やっぱり怪我したのか?!」

「アンタがセクハラしてるからでしょ、この変態が! おっぱい魔人もこんな変態蹴り上げろ!!」

「セクハラ? 何を言ってるんだ。俺は純粋に心配して…」

 

凄く澄んだ目だ。凄く澄んだ目なんだけど…手はそのままだ。

 

「あの、…右手がイセリアさんの…」

「右手…? はっ! と、止まらない!」

「わざとだろぉおおがァアア!! この変態っ! 変態っ! 変態っ!!」

「あいて! いてっ! …くっ! この程度、俺はこの程度じゃ離さないぜ!!」

 

ミッテルトに光の槍で頭を叩かれつつも、イッセーの手は離れない。

というか、ひっぱられてちょっと胸が痛い。

 

「やっとる場合かぁあああ!! あんたらどうでもいいからこっち手伝いなさい!!」

「「「あっ!」」」

 

いかん、レイナーレのこと忘れてた!

レイナーレは体中に裂傷が出来てて、結構やばい!

 

援護に向かおうとしたとき、何を思ったのか10枚羽の堕天使は攻撃をやめ、私達の方に振り向く。

その目はイッセーを確りと睨みつけていた。

 

「その姿。既に禁手に至っていたか、赤龍帝。相変わらず忌々しい赤だ」

 

口ではそう言っているが、嬉しそうに口元を歪めていた。

とことん戦闘狂みたいだ。

 

「楽しい、実に愉しいぞ! ククク…!! 天使共と魔王共と戦う前哨戦と考えていたが、素晴らしい、素晴らしいぞお前達!! …バルパー!!」

「何だ、コカビエル。私は今、赤龍帝に聖剣がやられて最悪な気分なんだがね」

 

10枚羽の堕天使の呼び声に現れたのは初老の男性。

こっちもイッセーを睨みつける視線が厳しい。

 

「ククク…なら、さらに強化すれば良かろう。今は退くぞ。フリードを回収しろ」

「フン…もう回収している。次は聖剣こそが最強であると、見せつけてやろう」

「明日だ。明日。魔王の妹の根城で暴れてやる。戦争を止めたければ、この街を消滅させられたくなければ来るが良い!!」

 

そう言って消える堕天使たち。

いちいち面倒くさそうな連中だった。

 

「よいしょ」

「ありがとうございます。イセリアさん」

「ふん! おっぱい魔人、感謝してやらないこともないっす」

 

とりあえず、2人を降ろすが素直に礼を言ってくれるのはアーシアだけ。相変わらずミッテルトはよく解らない。これが伝説のツンデレか? 私にはツンしかないけど。

 

「おかえり、イセリア」

「…ただいま、イッセー」

 

向き合ってみると、ちょっと見ない間に、さらに男前になったかも。うん。

さっきの行動は私の脳内から抹消されました。

 

「おっぱい魔人、何? これがあんたの言ってた兵藤一誠? あんたの話、美化入りすぎでしょ。大体変態だったし」

「ミッテルト様、失礼ですよ。イセリアさんの言っていた通り素敵な人じゃないですか」

「あんたら目に変態を美形に映すフィルターでもついてるんスか? 普通に冴えない顔じゃん」

「ぐふっ!」

 

相変わらず毒舌のミッテルトに、イッセーは胸を抑えてショックを受けていた。

そんなに気にしなくてもいいって言うのに。

手をとって立ち上がらせれば、たちまち元気な顔になって何かを言おうとしているのか私に顔を近づけてくるイッセー。

何だろう、内緒話か?

 

「セクハラするなって言ったろーが!!」

「あいてっ! ちょっと待て、今、汚名を返上する機会なんだ! ここでバシッと決めるんだよ、邪魔するなって!!」

 

ペシペシッ! とミッテルトの光の槍で頭をはたかれてる。

バシッと決めるとは一体なんなんだろう?

 

ところで、レイナーレの奴は何してるんだ?

相変わらず金色に光ったままで自分の神器に何回もキスしてる。

狂喜乱舞といった様子で神器を押さえながらクルクル回ってる。

 

「うふふふ! やっぱり、やっぱりこの子は凄い神器だったのよ!! 私の思った通りだわ!!」

『やめぬか』

「やめないわ!!」

 

なんか、とても迷惑そうな爺さんみたいな声が聞こえた。多分、あの神器に宿ってる龍の声だろう。

どっかの誰かさんと違って威厳に溢れる声だった。

 

『おい、何だその目は。このイノシシ娘、今何か失礼な事を思っただろ』

「気のせい。全く、自意識過剰なドラゴンだな。ただいま、ドライグ」

『誰が自意識過剰か! …ふん、まあ、何だ……おかえり』

 

で、デレた…?

家のドラゴンが、デレを見せた、…だと…?!

こ、これが本物のツンデレか…?! 不覚にもちょっとときめいてしまった。

 

? 複数の足音。

どうやら私達の方に走ってきてるみたいだ。多分、これは部長達だな。

たった2週間程度しか離れてなかったけど、すごく懐かしい。

でも、なんだが数名ほど殺気めいたものを発してるのは、私の気のせいか?

 

「堕天使!! 覚悟!!」

 

白髪が持ってた剣と、同じような力を発している剣で切りかかってくる知らない2人組み。

狙いはミッテルトみたいだ。

さっきみたいにヒョイっとミッテルトとアーシアを抱き上げたあと、回避しようとしたがその前にイッセーが剣を弾いて逸らしてくれた。

 

「いきなり何しやがる!!」

「そちらこそ、何故堕天使を庇う!!」

「そうよイッセー君! 聖剣を奪った連中なの! どいて断罪できない!」

 

な、なんだこの子たち。完全に勘違いしてないか?

 

「勘違いしてるかもしれないが、私達の店のミッテルトにそんな大それたことが出来るわけないだろ。道に迷って警察のお世話になったくらいなんだぞ」

「なに言ってんのよ、このおっぱい魔人!! 勝手に捏造してんじゃない!!」

 

私の腕の中で暴れるミッテルト。顔が真赤になってて全く説得力が無い。だいたい実際迷ってたじゃん。

傍から見れば、わがまま言って暴れている子供のようにしか見えないミッテルトに、謎の剣を使う2人組みも困惑してる。

 

「それで、ヴァルブルー。なんで貴方が堕天使たちと一緒に居るのか。説明して貰えるのかしら…」

 

な、何と言うプレッシャー! 何時の間にか私の背後に回りこんだ部長が殺意の波動に目覚めていた。

何故怒っているかよく解らないが、必死に言い訳を考える私の前に、レイナーレが出てきた。

顔が明らかにケンカ売る時みたいに相手を馬鹿にしている顔。神器が思ったより強くて浮かれているんだろう。間違いなくこいつは問題を起す。

 

「あ~ら、今頃になって何の御用かしら? 他勢力に縄張りで好き勝手されてる無能なア・ク・マさん?」

「っ! 何と言ったのかしら? 真鍮でメッキした堕天使さん」

「っ! この黄金の輝きが解らないなんて、目が腐ってしまっているのかしらね、ヘッポコ悪魔は」

「…っ!! 何が黄金かしら。成金趣味じゃない。貴方の卑しさそのものね」

「…っ!! そっちこそ、下品な紅色がお似合いね」

 

段々と近づきながら罵り合う2人。一触即発の雰囲気。

なんというか

 

「そっくりだな。2人とも」

「「何処がよ!!」」

 

 

怒鳴られた。解せぬ。




~おまけ~
僕の考えたかっこいい神器

黄龍の腕(シャイン・ドラゴン・プライド)
中国の四神の長と言われる黄龍が封じられた神器。
能力は2つ。
・光を吸収して黄金に輝く。輝いた分だけ能力増加。
・五行説でいう土行を使う際に威力が+される。

元ネタは”ガイアが俺にもっと輝けと囁いている”というストリートスナップから
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。