赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス! オラ作者。
久しぶりですな。うむ。
………。
……。

君達が怒っているのは私の責任だ。だが私は謝らない。
その怒りを克服して、必ず読者にもどっ  あいたっ、痛い、すんません、ホントごめんなさい



時間稼ぎだと? そんな必要はない きさまは死ぬ これからここで・・・

マイホーム。畳張りの茶の間。ちなみに父さんは飲み会で酔っ払って帰ってきたので既に寝てる。

イセリアとの再会から既に4時間ほど経った。悪魔と堕天使の公園でのいがみ合いが凄く長引いたのが原因だ。

何とか嗜めて我が家に来たんだけど、何時もほのぼのとした雰囲気を出す我が家は、机を挟んで座っている部長と夕麻ちゃんことレイナーレの睨み合いによって、まるで戦場の様にギスギスとした空気を出していた。いや、2人だけじゃなくてみんなギスギスしてるけど。周りの様子にアワアワとしてる金髪の女の子だけが救いだ。

 

「あ、あの~」

「何かしら?」「何よ?」

「な、なんでもないです!」

 

ギンッ!! っという音がしそうなほど睨まれた!

揉み手すり手で何とか嗜めようと声をかけると、思いっきり睨まれた。2人から同時に送られる視線は、本当に人を殺せそうな眼光だった。

怖いぞこの2人! 声が揃っちゃったのがお互い癪に障ったのか、さらに睨み合ってるし!

 

「お茶が入ったぞ?」

 

ギスギスした空間に、お盆をもったイセリアが現れた。

2週間、中国に行っていた間に何があったというのか、イセリアの後ろ髪が首の半ばからバッサリ横一文字に切られていた。俺のお気に入りだった長くて綺麗な銀髪がバッサリやられてたのだ。イセリアも髪については悲しそうにしてたし、女の髪を切るような奴は殺しても許されると俺は思うんだ。

イセリアの奴、家に帰ってきてからすぐさま居なくなったと思ったらお茶を淹れてたみたいだ。

淹れたばかりのお茶の香りがこの空気を和ませて…

 

「遅いわよイセリア。早く私のお茶をよこしなさい」

「何を言ってるのかしら? ヴァルブルーは”私達”にお茶を淹れたのよ。貴方の分なんて無いわ」

 

…くれない。

むしろお茶をダシにさらにギスギス感が強くなっちまった。

そんな2人に呆れたようにイセリアがため息をついた。

 

「全員分ちゃんとあるぞ。お茶の取り合いなんて、このいやしんぼう達め」

「「違うわよ!」」

 

相変わらず空気の読めないイセリアの発言で、さっきまでのギスギス感とはちょっと違った間抜けっぽい空気になる。

 

「……」

「ぶひぶひっ」

「こんなに大勢来るなんて初めてね~。はい、狭くてごめんなさいね」

 

追撃をかけるように、ハート柄のエプロンをつけた黒金の謎の鎧と、頭にお盆を載せた羽豚とボケ担当の母さんが現れた。

…なんだこの集団、ツッコミが足りねえ…。

 

「…はぁ、このまま睨みあっていても進まないわね…」

「…ふん」

 

ついに毒気が抜かれたのか、部長とレイナーレはお互いにため息をついた。

まあ、こいつらの前で何時までもシリアスを展開させるのは無理だと思う。殺気立っていた木場まで毒気を抜かれたようにポカンとしてるほどだ。

 

「で、何故あなた達はコカビエルと敵対していたのかしら?」

「あんな戦争狂の変態と同類に見られるのは心外ね」

 

本当に不快なのか、苦々しく吐き捨てるレイナーレ。

確かに、あのオッサンは気色悪い笑顔をしてたし無理ないかもな。俺も見られてちょっと気持ち悪かったし。

 

「レイナーレ達は私と同じ職場でアルバイトしてるんだ。職を失って放浪してたところを店長が雇った」

「こらっ! 人の恥をあっさりバラすんじゃないわよ!!」

「そうっす!! 大体誰のせいで放浪してたと思ってんすか!!」

 

マジか、堕天使ってアルバイトするのか。

イセリアの暴露にレイナーレだけじゃなくて、ゴスロリ服の堕天使ミッテルトも怒った。2人とも顔を真っ赤にして猛抗議だ。

そんな2人を見て、ニヤァっと意地悪そうな顔をするイセリア。

 

「ふふん、何時ぞやの礼だ。そういえば、ミルたんさんを初めて見たとき2人して命乞いしてたな。アーシアは平気だったのに…おっと口が滑った」

「「――っ!!!!」」

「いひゃい、いひゃい」

「お、落ち着いてくださいっ」

 

ついに我慢の限界が来たのか、2人とも顔を真っ赤にしてイセリアに飛び掛った。口を左右から引っ張られて、餅みたいにほっぺたが伸びてる。そして3人を嗜める金髪の女の子アーシア。

そうか、大分前に話していた厄介な3人組ってこいつらのことだったのか。それにしても、女の子達が密着してるって、何か良いな。…良いな。

 

「へ~、放浪に命乞いね。ふ~ん」

「っ!?」

 

うわ、部長、スッゲーにやにやしてる。というか、部屋にいる悪魔の皆さんが鬼の首を取ったように良い笑顔だ。

 

「お、おのれ…!」

「ヴァルブルーが報告しなかった訳が解ったわね。取るに足らないヘタレ堕天使なんて、報告しないわけだわ!」

「ぐぬぬぬ…!!」

 

堕天使たちが悔しそうに歯を食いしばってる。

何だろうこの状況。昔俺も似たような事があった気がするぜ。

 

「はい。イッセー」

「お、あんがと。…アチッ」

「こら、急いで飲まなくても逃げないぞ」

 

久しぶりのイセリアの淹れたお茶だ。いいな、これ。ほんわか落ち着くぜ。

 

「あいてっ」

 

何故かほんわかしてる最中にジト目のイセリアにお盆ではたかれた。何故だ!?

 

「何すんだっ」

「手」

「手…? はっ!? デジャブ!!」

 

何時の間にか俺の左手がイセリアの右おっぱいを触っていた。まるでそこにあるのが正しいかのように、俺の左手はおっぱいを触っていた…!

なんて事だ。イセリアが近づくと俺の手はオートでおっぱいを揉むようになっちまってやがる!

 

「大事な話の途中にイチャつくんじゃないわよ!!」

「ドラレッド、後で好きなだけすればいいから今は落ち着きなさい」

 

怒られた。しぶしぶとおっぱいから手を放すが、気を抜くと手が勝手に動きそうだぜ。

 

「貴方達がコカビエルに狙われている理由は?」

「…この神器をコカビエルの所から盗んだからでしょうね。神器をアザゼル様に持っていくはずだったあいつは、私によって大恥をかかされたでしょうから」

 

そう言ったレイナーレの右腕に黄金の篭手が出現する。さっき見たときとは違いその篭手は小さくなっていて肘までしかないけど、黄金の篭手から放たれる輝きはドライグに迫るほどの力を感じる。

 

「おい、ドライグ。あれってまさか、赤龍帝の篭手と同じ神滅具(ロンギヌス)なんじゃ…いや、でもドラゴン関係は2つだけじゃなかったのか?」

『あの神器、少なくとも俺は知らん。だが、アレに宿っている者は並みではないな』

 

何時も自信満々の俺ってサイキョーみたいなドライグがこれほど言うってことは、相当強いドラゴンが宿ってるって事か。

俺の言葉を受けて、レイナーレはまじまじと自分の神器を見詰める。

 

「禁手しなくても金色になったのね。…でもそっちの赤龍帝の言う通り、確かに妙ね。神滅具は13種。その中にこの子みたいな神器は無かった筈なんだけど…」

『今まで我を起こせた者が居なかったが故』

 

おお!? 金色の篭手から威厳溢れる声が! どっかの誰かさんみたいなギャグキャラの声じゃねえ!

イセリアも俺も、ついつい左手を見てしまう。

 

『おい、相棒…!! おまえもか! おいイセリア、そんな目で見るな!』

 

俺の左手からドライグの悲しい叫びが。

諦めろドライグ。どう考えてもあっちの方が威厳溢れてる。大体最初の登場から結構アレだったろお前。

それにしても、ここに居るみんなはドライグの叫びを聞かず、あの黄金の篭手に集中していた。今まで居たドラゴンより新しいドラゴンの方が良いなんて、みんな酷いぜ…。

部長も興味満々なのか、冷や汗をかきながらも身を乗り出してレイナーレと篭手の会話を見詰めていた。

 

「なら、貴方は新しい神滅具ってことなの?」

『宿主よ。我はその定義を知らぬ』

「貴方、神器のことを知らないの?」

『滅びた者が造りだしたとは記憶している。我はその1つに興味を持ち、自ら封じ神器と成った故、その後の子細はわからぬ』

 

滅びた者? 自ら成った?

もしかして、このドラゴン。自分から神器に成ったって事か?

 

『我を起したものはそなたが初めてだ。故に我、期待して』

「待って下さい。滅びた者とは一体…?」

 

今まで黙って聞いていたソーナ会長が金色の篭手の竜に待ったをかけた。

この場に居る全員が気になっていたこと。しかし、その意味を聞いてはいけない様な気がする。不思議な緊張感があった。

そして、ドラゴンは語った。

 

『滅びた者。そなた達が神と呼ぶ者。神器と呼ばれる物を生み出した者。既に死している故、滅びた者と我は呼んでいる』

「――!!」

 

マジか、神様って死んでるのか。というか、死ぬんだな。

ドラゴンの衝撃発言にみんなポカンとした表情をしている。特にゼノヴィアとイリナ、アーシアは何を言われたのか解らないといった表情だ。

俺とイセリアと豚と鎧と母さんは、そーなのかーみたいな顔(?)してるんだが。あと、変態仮面は知っていたのか全然驚きもしないな。

 

「ま、まて! 今何と言った!?」

 

数秒たってようやく我に返ったのか、必死の形相でゼノヴィアが立ち上がり、金色の篭手に向かって叫ぶ。

 

『? 既に死んでいると言った。何か可笑しいのか?』

「おかしいに決まっている!! 出鱈目だ!!」

「そうよ! 嘘に決まってるわ!」

 

鬼気迫る表情でゼノヴィアとイリナはドラゴンの言葉を否定する。2人は敬虔な信徒らしいし、神様が死んでるってのが余程信じられないらしい。

周りを見れば、ショックを受けているのは2人だけじゃない。アーシアは自分の肩を抱きしめて小さく震え、ミッテルトに慰められている。木場も少なからずショックを受けているみたいで、その表情は愕然としていた。

 

『我は確かに見たが、証明できる物は無い。あえて証拠を挙げるとすれば赤き龍の隣に居る、異界より来た娘』

「?」

 

みんなの視線がイセリアへと向かい、イセリアは何がなんだか解ってない表情で首を傾げる。

というか、あのドラゴンすげーな。一発でイセリアが違う世界の人間だって解ったのか?

 

『この世界の者たちとは異なる存在がいる。故に神とやらが死んでいる証明』

「ちょ、ちょっと待ちなさい! ヴァルブルーが異世界から来た?!」

「言って無かった?」

「聞いてないわよ!」

 

目を白黒させながら部長がイセリアにつっこんだ。

確かに母親の最後の炎で死んだと思ったら変なとこに居たとしか言ってなかったな、そういえば。俺だってそれだけだったら訳わからん。

 

「この女が異世界の人間だと、何故わか」

「イセリアビーム」

「キャ! こ、この子、め、目が光ってるわ、ゼノヴィア!!」

「う、うろたえるなイリナ! 探せばきっと目が光る人間が他にも…こっちを見るな! 怖いぞ!?」

 

ゼノヴィアの喋ってる途中に目を光らせるイセリア。ノリノリだな、おい。自分でもそれが人間じゃないって自覚あったのかよ…。

 

「だからといって…!」

『我が自ら神器に成れたのも、アレが死んでいた故。そなた達が信じられぬのならば、それも良かろう』

 

諦めたような口調で言うドラゴン。これ以上の問答は無用。そんな気配を感じ取って、イリナとゼノヴィアも黙り込んで俯いた。

俯いたイリナとゼノヴィアの肩は小さく震え、彼女達にとって凄まじいショックだったとうかがえる。

 

『2つ良いか?』

『何だ、赤き龍よ』

 

今まで黙っていた家のドラゴンが、疑問の声を挙げた。

ドライグもドライグで、神様の死亡に思うところがあったのか、感情の揺れみたいなものを感じた。

 

『お前の名と、何故それほどの力を持ちながら神器に成っているのか、だ』

『我が名は黄龍』

「中国の四神の長ですか…」

 

会長物知りだな。というか四神の長って、よく解らんけど相当すげーんじゃね? 何で神器なんかやってんの?

 

『神器に成った理由、我が守護していた者たちの中に神器を宿していたものがいた。そのものはその力で多くを守った。故に我、憧憬を抱き神器になるべく試みた。成功したともいえるが失敗した。故に我、此度の宿主まで目覚めることが無かった』

『憧れて神器になったと言うのか? そんなことで体を捨てるとは理解できん』

『……』

 

馬鹿にしたようなドライグの言葉に黄龍は答えず、それっきり黙りこんでしまった。

もしかしたらあの龍、神器に成った事に後悔でもしてたのか? あと、ドライグ。お前のせいで黄龍が黙っちゃったから、レイナーレに滅茶苦茶睨まれてんだけど。

 

「……」

 

黄龍の話は教会組や悪魔、堕天使組みに相当なショッキングを与えたようで、全員沈黙した。

…沈黙が痛い…! イセリアたちの登場で軽くなった筈の空気がまた重くなりやがった…!!

ここは1つ、俺が場を暖めるしかねえようだぜ!

 

「そういえば、イセリア! お前の生まれた世界ってどんな感じだったんだ?!」

「何でそんなにハイテンション? …前も言ったけど、中世? 古代? まあ、ヨーロッパみたいな感じか?」

 

よし! みんなちょっとは興味が出たのかこっち見てる! 

俺の真意が解ったのか、アーシアを慰めてたミッテルトがノッてきた。

 

「おっぱい魔人の世界って、みんなあの謎オーラだしてるわけ?」

「炎を出せるのはヴァルキュリア人だけだぞ」

 

おっぱい魔人、おっぱい魔人て…。イセリアのおっぱいは別に奇乳じゃねーぞ! 綺麗なおっぱいだぞ!

! …そうか、ミッテルトの乳、アレはそうか、そういう事か…。ついつい温かい目で見てしまうな!

頑張れ、チッパイ!

 

「おい、隣の変態の視線がスッゲー不快なんスけど…!」

「そうか? イッセーは優しい目をしてるぞ」

「視線を追ってみやがれ! 人間の癖に馬鹿にしやがって!!」

 

赤い顔になって地団駄を踏むミッテルト。うん、みんなも暖かく見守ってるぜ。

 

「…仲間」

「…なによ! 悪魔の癖に慣れなれ…、…確かに、あんたは仲間見たいっスね…」

 

サムズアップする小猫ちゃん。そんな小猫ちゃんを見て悟りを開いたような表情になって頷くミッテルト。

チッパイ同盟がここに結成…? チッパイで繋がる絆…!

 

「あら? でも小猫ちゃんは成長するのではなくて? 堕天使と違って」

「…やっぱ敵っス!!」

「ああっ!? たたみが!!!」

 

光の槍で小猫ちゃんと自分の間に線を引くミッテルト。

家のたたみが!? 姫島先輩、空気読んで! せっかく良い感じにギスギスが取れそうだったのにまた元の鞘だよ!

 

「話が進みません。現状の最優先事項はコカビエルの脅威を取り除く事。いがみ合っている場合ではないでしょう」

 

手をパンパンと叩いて生徒会長が場を引き締めた。

相変わらずの氷のような美貌が周囲の空気を入れ替えた。黄龍の話に落ち込んでいた教会組みも、いがみ合っていた悪魔組みと堕天使組みも、生徒会長へと視線をむける。

全員の視線が集まった事を確認し、会長は続ける。

 

「コカビエルは聖書に記されるほどの力を持つ堕天使、さらにはエクスカリバー。もはやこの街だけで収まる問題ではなくなっています。リアス、私は貴方のお兄様に、魔王様の力を借りるべきだと思うわ」

「だ「冗談じゃないわ!!」め、よ…」

 

ソーナ会長の言葉に、部長が首を振って否定しようとした時、レイナーレが机を叩いて立ち上がった。

言葉を中断された部長は勿論不機嫌そうになったが、それ以上に立ち上がったレイナーレの顔は苛立っていた。

 

「あいつは私達の獲物よ! 店を破壊された恨み、晴らさずいられるものか! 何より、魔王の力を借りるなんて最悪よ!! あんたらは引っ込んでろ!」

「それを言うなら、私達の方が因縁深いわ。あいつは私の根城で暴れるといったのよ。あの聖剣に因縁もあるわ。貴方達が引っ込んでなさい!」

「はっ! 何言ってるのよ、ヘッポコ悪魔じゃあいつは倒せないでしょうね! あんたらに出来るのは逃げ帰って魔王に泣きつくくらいでしょ。寧ろ邪魔よ」

「……なんですって…!!」

 

レイナーレの言葉を受けて部長も立ち上がる。2人から立ち上るオーラで家が揺れる。

…協力? 何それ美味しいの? だなこの人たち。…だめだこりゃ。

 

「なら、早い者勝ちでいいだろ?」

「「「はぁ?」」」

 

イセリアの発言に全員が振り向く。みんながポカンとしていて不思議な者を見るような表情だ。

そんなみんなの様子を気にせずイセリアは人差し指を立て、ドヤ顔で続ける。

 

「ヴァルキュリアは獲物が被った時は早い者勝ち、つまり獲物は先に仕留めた者の物。これに習って、コカビエルを倒した者が優勝でどうだ?」

「優勝って何だ?! 運動会かよ!?」

 

いかん、思わずつっこんじまった。

だが、俺のツッコミを受けたイセリアは、感心したような表情になって頷いた後さらに続ける。

 

「じゃあチーム戦で、チーム分は私とイッセーでドラヴァルチーム、オカルト研究部と生徒会で駒王チーム、レイナーレたちで喫茶店チーム、あとは教会チームでどうだ? 普段から連携取れてるほうがいいだろ?」

「…はぁ、良いわけ無いでしょ。全く、いっつも緊張感がないんだから」

 

部長がまた額を押さえてため息をついた。イセリアの発言に悪魔組みが”何言ってんのこいつ”みたいな空気になる。

が、喫茶店チーム、レイナーレは違った。嬉々とした表情で右手を握り締める。

 

「つまり、勝負という訳ね、…いいじゃない! イセリア! あの時の雪辱、ここで晴らさせてもらうわ!! 私達が勝ったら、あんたは私の言う事を一週間、”何でも”聞くのよ!」

「だにぃ!! 何でも、何でも、…だと!!」

 

レイナーレめ!! 予想外の発言だ!! 何でもだと、何でもだとぉおお!! 

一体どんな事をさせる気だ!? しかも一週間も! あんなことや、そんなことを一週間もだと?! 許せん!! このエロ堕天使め!! 

俺は怒りを込めて、真っ直ぐ右腕を天へと伸ばす! そしてハキハキ元気良く発言!

 

「ハイィイ!! 俺も優勝したら何でも言う事を聞いて欲しいです!!!」

『駄目だこいつ…早くなんとかしないと…』

 

ドライグ、うっさい! ここは誓いとかそんなの関係無しにご褒美チャンスなんだぞ!?

 

「あ、あのねドラレッド? もう少し真面目にしなさい。ふざけてる場合じゃ…」

「部長! 俺はいたって真剣です!」

「な、なんて清らかな目…。…変態なのに、一点の曇りもないです」

 

俺の真摯な瞳に部長達は言葉を失い、口をパクパクとさせる。あと、小猫ちゃん、俺は変態じゃない。俺はいたって健全な男子高校生だ!

 

「…ふっ、お前達。これは私への挑戦と受け取っていいんだな?」

 

静かにオーラを高めるイセリア。

なんて静かな闘気だ…! 激流を制するのは… とか言い出しそうな雰囲気だ! 正座してお盆を膝に乗せてるからさらにそれっぽい! …いや、それっぽいか?

だが、イセリアがいかに強いと言っても譲る気は無い! まして、今のイセリアは武器を壊している! チャンスは今だ!

 

「了承するのか、イセリア?」

「構わない。お前達が勝ったら何でも言う事を聞こう。その代わり、私が勝てばお前達にもペナルティが課せられることを忘れるなよ」

「ふん、私が勝つから問題ないわ…! あんたらは負けたときの言い訳でも考えてなさい」

 

ククク、フフフ、クケケケッと笑いあう俺達。どいつもこいつも自信満々なようだが、勝つのはこの俺だ!

 

「盛り上がっているところに水を差すようですが、既にサーゼクス様に打診しましたわ」

「「「な、なんだってー!!」」」

「朱乃!」

 

姫島先輩、仕事早っ!! 一体何時の間に連絡したんだよ!?

そんな姫島先輩に声を荒げて詰め寄る部長。

 

「リアス。堕天使の幹部が来ているのよ。あなた個人で解決できるレベルじゃないわ。サーゼクス様に迷惑をおかけしたくないのはわかるけど、魔王の力を借りるべきよ」

 

静かに部長を見据えて話す姫島先輩。タメ口だし、リアスって2人の時は呼んでんだな。

そんな姫島先輩に、やがて部長はため息をつき、静かに頷いた。

だけど、この場には納得していない者がいる。

 

「なんて事してくれてんのよ!?」

「姫島先輩、俺のご褒美はどうなっちゃうんですか?!」

 

レイナーレと、俺だ!

 

「あら? 堕天使の方はこの町から出ていったらどうですの?」 

「アァ?!」

 

いい笑顔で挑発する姫島先輩にビキビキと額に血管を浮かせてキレるレイナーレ。

篭手が肩まで覆って、髪と羽がまた金色になってんですけど…。怒りでもスーパー化するのかよ…。

というか、俺は! 俺はどうなるの?!

 

「うふふ、ドラレッド君には私からご褒美をあげましょうか?」

「え? いたたたっ!」

 

両手を広げる姫島先輩。ついそのリミットブレイクに釘付けになってしまったら、隣のイセリアに耳を引っ張られた。

頬を膨らませてジト目で睨んでくるイセリアに、姫島先輩はニコニコ。レイナーレの怒りの形相を受けてさらにニコニコになる姫島先輩。

…愉しんでる! めっちゃ愉悦って感じだよこの人!

 

と、そんな時だった。

 

「な、何だ!?」

「これは、光力? こんな強力な…!?」

 

街全体を襲う振動が、地震の様に俺の家を襲いかかる。誰もが立ち上がれないほどの振動。お茶が零れて畳を濡らした。

やがて収まった振動に全員がほっと一息ついた。何時の間にか消えて、ちゃぶ台の下から見えるお尻はイセリアのお尻。例え建物に押し潰されても傷1つ付かないだろうに何故か地震が苦手だからな。…うむ、良い尻だ。

 

「お、収まった、か?」

「な、何してるのかしら? ヴァルブルー」

「こ、ここに、ご、五百円が…」

 

部長、触れないであげて。誰だって苦手なものはあるんだよっ。アーシアだってちゃっかり隣に座ってた変体仮面に思わず抱きついちゃったみたいだし。

ってやばいぞ、変態仮面やべえ! 凄い鼻血だ!? 変態仮面の魔力が、…消えた? あれ、死んでね?! 凄い良い笑顔で死んでね?! 変態仮面の股間の辺りが焼けとる! 十字架だ! アーシアの首から提げた十字架が変態仮面の股間を浄化している?!

 

「どうやら学園のようですね」

「学園って、コカビエルですか?! そんな、明日じゃ!?」

 

股間を焼かれている変態仮面から目を逸らしつつ、状況把握に努めるソーナ会長と匙。そんな会長達に習って部屋から外に出るみんな。酷い、誰か助けてやってよ!

まあ、俺も外に出るけど。あっ、ミッテルトがアーシアを引き離した。けど、変態仮面は固まったままだ。

それと、教会の聖剣使い2人組みは俯いて畳を眺めたまま動かなかった。この事態にも動かないとは、本当にショックが大きいらしい。今はそっとしておいたほうが良いな。

 

「くっ! 堕天使の言う事など信じるべきではなかったわ…!」

 

悔しそうに駒王学園の方向を睨みつけながら言う部長。駒王学園から立ち上る光は、悪魔が持っている魔力とは逆の力、つまり光力を感じる。

? チョイチョイと裾を引かれた。何かと思って振り向けばイセリアが目覚まし時計を持っていた。時計の針は深夜12時。12時だ。

………。

……。

 

「旅行を待ちきれないガキかよ!!?? 確かに”明日” だな?!!」

「! …そういわれると、気持ちが解らんでもないなっ」

 

納得するなよ、イセリア! しかも、秒針の進みから察するに、あの堕天使野郎は12時になった途端に何かしやがったな!?

 

「…堕天使の幹部はヴァルブルーと同レベルなのかしら…?」

「…あの戦争好きが堪え性ないだけよ。アザゼル様たちを一緒にするんじゃないわよ」

 

部長とレイナーレが今までに見たことの無いような冷たい表情で言った。

凄い言われようである。俺達の中でコカビエルの評価が暴落した瞬間だった。元から底辺だったけど。

 

「誤解だ。私だったら確り寝て、次の日に備える。ただ、何時もより1時間早く起きる自信はあるっ」

 

イセリア、それ、あんまり変わらないって。何力強く1時間早く起きるとか言ってんだよ。

 

「ふざけている場合ではありません。コカビエルが学園で行った事を確認しなくてはいけません。口惜しいですが、援軍を待っている余裕は無いようです」

 

会長の言葉に、場の空気が引き締まる。

戦いの予感。これから戦う相手は、聖書に名前を刻まれた堕天使の幹部の1人。古くから生きる伝説だ。

 

「…学園に結界を私達シトリー眷属で張ります。コカビエルにこれ以上の力を発揮されては、この地方都市そのものが崩壊してしまいます。サーゼクス様の援軍はどれほどで到着しますか?」

「1時間ほどかかりますわ」

 

会長に答える姫島先輩。

魔王様が来るのは1時間後かよ。…だめだ、あの堪え性の無さを考えると、とてもじゃないが間に合わない…!

 

「1時間…。…その時間、私達で稼ぐわ。私達がオフェンス、結界内でコカビエルの注意を引くわ。これは死戦。けれど、死ぬ事は許さないわ! 生きてまた日常に、学園に戻るのよ!」

「「「はい!!」」」

 

部長の言葉に気合を入れて返事をする。必ず生きて帰らないとな。

そんな俺達の前に立つ、レイナーレとイセリア。何故か腰に手を当てて胸を張ってドヤ顔してる。

 

「時間を稼ぐのは構わないが…」

「別に、アレを倒してしまっても構わんのだろう?」

 

最初がレイナーレ、後がイセリア。2人揃って自信満々に言いのけた。

何故だろうか? 何故か、凄まじい死亡フラグというものを垣間見た気がするんだが…。

 

「ま、まあいいわ。…いくわよ!!」

 

部長の号令で一斉に学園へと向かう。

全員が決意を秘めた表情で、守るべきもののために…! 

行くぜ! 俺達の戦いはこれからだ!!

 

「あっ、着替え忘れてた。先に行ってて」

 

――ズシャアアア!!

 

これからと言うときに、イセリアの発言によって全員ずっこけてしまった。

ホント緊張感台無しだな!

 

「早くしなさい!! もう、ヴァルブルーは置いて先に行くわよ!!」

 

部長も流石に怒鳴っちゃうほどのボケ。部長、ツッコミ役が似合ってますねっ。

怒鳴られたイセリアはダッシュで家の中に消えていった。そんなイセリアを待たずに駆け出すみんな。

…これは、チャンス! 

イセリアより先にたどり着いて、コカビエルをぼこる→ 俺優勝! → ん? 今何でもって言ったよね? → 脱DT!

…うおぉおおお!! 輝かしい未来が見えたぜ!

 

「…ドラレッド君」

 

妄想にふけっていると、隣を併走する木場に話しかけられた。その顔は何処までも真剣で、この戦いに寄せる想いの大きさを示しているかのようだった。

 

「聖剣使いが現れたら、手を出さないで欲しいんだ。…頼むよ」

「……」

 

静かな言葉だったが、木場の目には、今まで見たことが無いほど苛烈な光が宿っていた。

理由は解らない。けれど、木場はこの戦いに、今までの全てを賭けている。そんな気がした。

 

「解った。…お前が聖剣使いとサシでやりあえるようにしてやる」

「…ドラレッド君…!」

「けど、一個だけ約束しろ」

 

俺の言葉に、喜びかけた木場の顔が強張る。みんなもそんな俺達の様子を伺っていた。

 

「絶対、生きて勝て…! 負けやがったら許さねーからな!」

「!? ……うん、勝つよ。 必ず…!」

 

男と男の約束。木場の眼をみれば解る。こいつは絶対に守る。

なら、俺のやる事は1つだ。こいつの邪魔する野郎をぶっ飛ばす。

そして、…そして、今日、俺は卒業する!! ヤルしかねえ!!

 

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