赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス、オラ作者。
みんなが忘れた頃に更新すっぞ。

それより、今日のドラゴンボール見ました?
やっぱりDBは面白いですね。

ちなみに、今回はこのSS初の名前つきの死人が…でません。



じゃあ 学校いってきます!!

早朝。

朝の訓練を終えた俺達は部屋で学校に行く準備をしていた。

夏場であり、さらに軽くシャワーを浴びたあと。つまり、イセリアの防御力が最も低下するこの時。俺の一番好きな時間だ。そして今日のイセリアの姿はなんと、ワイシャツとタイトスカートだ! スカートから覗く白い足が眩しいぜ!

ああ、学校よ。始業時間を遅らせてくれ…!

 

「今日は授業参観の日だな」

「そうだけど、イセリアには関係ないんじゃないか?」

「どうかな~」

 

笑顔のまま、視線を明後日の方向へ向けるイセリア。

なんだか嫌な予感がプンプンする…!

 

駒王学園の授業参観とはすなわち、”公開授業”。中等部の生徒が見学してもいいというフリーダムさなのだ。

…まさか、イセリアの奴。俺の授業参観へ来るつもりなのでは…!? 珍しい格好をしているのは、まさかこの為か…!

いかん、いかんぞ! 絶対、桐生とかにからかわれるし、変態坊主と変態メガネの格好の的だ! あんな危険地帯に家の子を連れていけんぞおおお!!

 

「…イセリア」

「な、なあに?」

「まさか、来るって言うんじゃないだろうな?」

「な、なななな、何のことかな?」

 

決して視線を合わせず後ずさるイセリア。そんなイセリアをジト目で追い詰める俺。

 

「わっ!」

 

しかし、この狭い部屋の中。逃げれるスペースは殆ど無く、遂にイセリアは俺のベッドに転がってしまい、イセリアの長い銀髪が扇子の様に俺のベッドに広がる。

それでもイセリアは往生際悪く転がって逃げようとしたので、覆いかぶさってその動きを封じた。

 

「去年も言ったけど…絶対、ぜぇったいダメだぞ……!!」

「ちょ、ちょっとくらい良いじゃないか…!」

「ダぁメぇだっ! あんな変態の巣窟にホイホイやってきたら”ズキュウウウン!!”で”ピーー!!!”されちゃうぞ!!」

 

俺の”ピーー!!”な台詞のせいか、顔を真っ赤にして目を逸らすイセリア。必死に俺の胸板を押して何とか逃げようとする。

だが、逃してやらん! ここで俺が引いてイセリアが学校に来たら、あの変態2人組みに何をされることか…! あいつらの更衣室覗きやスカート覗きにどれだけ俺が苦労させられてきた事か…!! 何で俺まであいつ等と一緒に説教されないといけないんだ?!

 

「ま、松田君と元浜くんの事か? 大丈夫、遅れはとらないから…」

「ダメだって言ってるだろ!」

 

大体、全く解ってない!

あの変態2人組みのスケベ根性は俺に匹敵してるんだ! あいつ等は女の子の裸が見えるなら校舎の壁に張り付いてゴキブリの様に2階までよじ登って来るような奴等だぞ!! しかも、あいつ等はイセリアの存在を知ってからは凄まじいまでのフラストレーションが溜まっている、危険すぎる…!!

 

「わ、解ったから…、ちょ、ちょっと離れてくれ」

「本当だな!?」

「ほ、本当だから…!」

 

懇願するように言うイセリアに、俺もようやく落ち着いた。全く、危機管理意識が薄いっての。

 

イセリアから離れて、着る途中だった赤いシャツを着る。

そのままワイシャツを羽織ろうとすると、何故か顔を赤らめたままのイセリアが俺の胸元に視線を集中させていた。

何だ? また筋肉チェックか?

 

「どうしたんだ?」

「べ、別になんでも無い」

 

プイッと視線を逸らされた。一体どうしたんだ?

ハッ! まさか、遂に俺の肉体美に魅了されて…!!

 

「それなら幾らでも見せてやるぞぉおお! イセリアぶふっ?!」

「さっさと着る!」

 

ポワアアア!! と赤シャツを脱ぎ捨てると投げ返された。

な、なんだ。俺の肉体美に魅了されたわけじゃなかったのか…!

 

(『はぁ…。これだから相棒は…』)

(な、何だよ?)

 

渋々と投げ返されたシャツとワイシャツを着ていると、ドライグからなにやら通信が入る。ご丁寧にイセリアに聞かれないように俺にだけ声を送っているみたいだ。

 

(『何でも無い。それより、買ってきてた奴をさっさとやったらどうだ?』)

(そうだな。…よっし!)

 

ドライグとの通信を終えると、俺は机の上に置きっ放しになっていたプレゼントを手に取る。

プレゼントの中身は指輪……ではなく、髪紐だ。

 

「い、イセリア、これやるよ」

「?」

 

不思議そうに顔を傾げるイセリアの目の前に髪紐を差し出す。

部長達のお蔭で髪の毛が伸びたイセリアは、運動する時や料理の時に髪をしばっていた。俺の母さんと一緒の髪型だ。でも、しばっているものは母さんの持っていたゴムの余りだ。

そのことに気が付いたドライグとエルシャさんが指摘してくれ、俺にしては珍しく気が利いたプレゼントを用意したというわけだ。髪紐の色は勿論赤。イセリアの銀髪に良く映えると思って買った。

 

「最近、髪纏めてるだろ? に、似合うと思ってさ」

 

気恥ずかしくて視線を逸らしていた俺の手を、温かく柔らかい感触が包んだ。

 

「……ありがとう。一誠」

「っ!」

 

どこか、何時もとは違った呼び方。そして、包まれた手の感触に視線を戻すと、髪紐を持った俺の手ごとその両手で握っていた。愛おしそうに俺の手を包みながら微笑んでいた。

俺の名を呼ぶその声は本当に幸せそうで、その微笑みはとても綺麗で、何より凄く嬉しそうで、俺まで嬉しくなってしまっていた。

 

「そ、そうだ! さっそく結ってやるから、そ、そこに座ってくれ!」

 

…だけど、無茶苦茶恥ずかしいな、これ! 慣れない事はするもんじゃないな!

 

「うん」

 

俺の椅子にささっと座らせ、背後に回る。

…うん。で、どうすりゃいいんだ?! て、照れ隠しに言うんじゃなかった! やったことなんてねーよ!!

 

(『落ち着きなさい。まずは櫛で梳くのよ』)

(おお!? エルシャさん!)

 

思わぬところから援軍が! 歴代最強赤龍帝の1人、エルシャさんだ。

そういえばこの人、女性だったな!

 

(『…もう、助けないわよ。というか、ドライグに頼まれて起きてみれば何よこのリア充空間。みんなじゃ無くても爆発しろって言いたくなるわ』)

(ちょ! エルシャさんまで何言ってるんすか!)

(『最近ベルザードまで爆発爆発言い出して困ってるのよね…』)

(え゛? な、何故?)

(『こんなに甘酸っぱい青春を見せられたらね。私達の恋愛事情なんて、みんな殺伐としてたし』)

 

「イッセー?」

 

エルシャさんとの会話に気をとられて動きの止まった俺を不審に思ったのか、不思議そうに見上げてくるイセリア。

おっと、いかんいかん。

 

「…まず髪を梳いてからだな」

「うん」

 

机からヘアブラシを取り出し、イセリアの髪を手にとって梳いていく。イセリアの髪は本当に絹糸の様に艶やかでヘアブラシは何の抵抗も無く流れていく。

髪を持ち上げたことによって見える白い項。良く見れば、ほんの僅かだがその白い肌が赤みを帯びていた。顔に視線を向ければ、イセリアは頬を染めて目を伏せていた。

と、突撃したくなるのは人として間違っているでしょうか…?!

 

「……」

「………」

 

お互い、何となく無言になりながら時が進んでいく。

心臓の鼓動が早まるのを自覚しながら、纏めたイセリアの髪をプレゼントした赤い髪紐でリボン結びで結った。

初めてやったから随分手間取ってしまったが、赤い髪紐は銀髪に良く映えてとても似合っていた。

 

「!」

 

纏め終わったので手を離そうとした瞬間、イセリアの右手が俺の手を取る。

引っ張られた俺の右手は、イセリアの頬に添えられるように持っていかれた。

イセリアの項がより赤みを帯びているのが見えた。

 

「その……。ま、また、次も結ってもらっても、…いい?」

 

なん…だと…?!

何だ、この生き物は!? お、俺を殺す気か…!?

 

「い、幾らでも! 何時だってしてやる!」

「……うん。ありがとう…」

 

! イセリアが俺の右手にもたれる様に?!

こ、これもう、誘ってんだろ、誘ってんだろ!! こ、ここでいかねば男じゃねぇだろ!? 

ぬ、ヌオオオオ!! 兵藤一誠、いきまぁああす!!

 

―――カチャ。

いざこれからという時に開かれる扉。

 

「イッセー君。そろそろ時か…ん……。………ごめん、邪魔しちゃったね」

 

き、木場アアアア!!?

よりにもよってこれからって時に!!

 

「…学校行こうか」

 

あ、はい。

イセリアは何事も無かったかのように立ち上がってドアへと向かっていく。

盛り上がっていたのは、俺だけか…。とほほ…。

 

『馬鹿、良く見ろ相棒』

「え?」

『項を見てみなさい』

 

ドライグとエルシャさんに促されてイセリアの項を見ると、その項は赤いままだった。

 

 

「にへら」

「兵藤、アンタどうしたのよ? にへら、なんて口で言ってる奴、初めて見るわ」

 

授業参観よ? なんて桐生が言ってくるが、今はそんなのどうでもいい!

頬杖したままボーっと朝の事を思い出す。

登校中もお互いあんまり喋れなかったけどスゲーいい感じだったし、もう、アレだな! 後は俺が強くなれば何時でもバッチコイだったよな! 木場は何か気まずそうだったけど。

 

「ははーん、木場といいことあったんだな、イッセー!」

「ラブラブですな!」

 

変態坊主と変態メガネがくだらない事を言ってくるが、今の俺には通用しない。

周りの女子達が腐海の胞子を出そうが、今の俺は幸せガスマスクを装着しているんだ、どうと言うことは無いわ!!

 

「…はっ」

「な、なんだよ!? その見下しきった目は…!!」

「そ、そうだ! イッセーのくせに!」

 

鼻で笑ってやると、変態坊主と変態メガネは慄きながら後退する。

あまりの無様な姿に、何処か哀れみが湧いてきたぜ。

仕方が無いので立ち上がって、優しく2人の変体の肩に手を置く。

 

「現実から目を逸らすのは、そろそろやめようぜ。独り身君たち」

「「!?」」

 

ポンポンと肩を叩いてやると、2人は力尽きるように足を折り、床に尻餅をつく。

 

「僻んでばっかりだと、女子から嫌われるぜ? あっ、元からだったか」

「「ゲハァ!!」」

「お前らも変態行動を少しはやめたらいいんじゃないか? もてる様になるかも知れないぜ? まあ、ありえねーけど」

「「がっはぁ!!」」

「彼女って良いもんだぜ、それだけで人生全てが明るくなるんだ。お前らも、早く彼女作れよ?」

「「グハァッ!!」」

「そうだ、イセリアの仕事仲間を紹介してやろうか? お前らじゃ一刀両断だろうけどいい経験だろ?」

「「オブゥっ!!??」」

「そうそう、後は…」

「もうやめて! イッセー君!」

 

変態2人組みが床の上をビクンビクンし始めたのを見かねたイリナが俺の腕に抱きついて止めようとしてくる。

 

「HA☆NA☆SE!!」

「とっくに2人のライフはゼロよ! もう勝負は着いたのよ!」

 

だが、今までの恨みを全て返し終わっていねえ。まだ俺のバトルフェイズは終了して無いZE!!

 

「まあまあ、落ち着きなって。今日は授業参観なんだし、今再起不能にするのは不味いわよ」

「むぅ…。確かに…」

 

桐生の言う通り、授業参観の日に転がしたままにするのは不味いな。

家の親は木場の授業を見に行くとはいえ、こんなゾンビ2体が転がっていたら騒ぎになるしな。

 

「い、今じゃなきゃ、いいのか…!!」

「くぅ、ちくしょ~…!! ちゅうにのくせにぃい~…!!」 

 

変態達は両目から涙をハラハラと流す。

…野朗がこの泣き方をするのはちょっとキモイな。あと、誰が中二だ。俺は高二だ。

止めを刺してやろうかと思ったけど、流石に可哀想になってきたな。…ふっ、武士の情けだ。今日は見逃してやろう。

 

「おはよう…って、何の騒ぎだ?」

 

変態達の後ろから入ってきたのはゼノヴィア。

朝っぱらからいきなりこんなのを見せられたせいか、あのゼノヴィアですら引き気味だ。

 

「兵藤に苛められたのよ。ま、こいつらの自業自得だから気にしなくていいわよ?」

「そ、そうか」

 

涙目でゼノヴィアを見上げる変態達。何処か期待が篭ったキラキラとした瞳だ。

アレだな。ゼノヴィアがいつもの様にぶっ飛んだ台詞を言って、俺が苦しむさまを見て溜息を下げたいんだろうな、この変態達は。

しかし、つぶらな瞳がキモイ。と思うのは俺だけではなかったようで、クラスメイト達は二の腕をさすっていた。

そんな気持ち悪い変態達を見下しながら、桐生とゼノヴィアが言葉の一太刀を振るった。

 

「それにしてもキッモいわねぇ~。鳥肌が立っちゃった」

「な、なるほど。これがキモイか…。確かに気持ち悪いな、まるで性質の悪いゾンビだ…」

「「ぐああああああ!!」」

 

あっ、死んだ。

 

 

いよいよ始まる授業参観。とは言っても、俺にはあんまり関係ない。俺の両親は今年の授業参観に来ないからだ。正確には、俺のほうにはだけど。父さんも母さんも、木場の方の授業参観に行くそうだ。

木場の両親がいないことを知った父さんと母さんは涙を流しながら”お母さんと呼んでいいのよ!””そうだ、父さんが木場君、いや悠斗君の授業参観に行くからな…!!””イッセーは良いのよ! ホッといても大丈夫よ””そうそう! 平気平気!”とか言って、本当の息子は放置という事になった。…おい!! ちょっと待てよ!!

……いかんいかん、怒りが再発するところだった。

 

教室の後ろから続々と入ってくるクラスメイトの親御さん達。

授業参観のお題目授業は英語。何かやけに気合入ってるな、今日の先生は。

 

「…それでね、その時仮面ラ○ダーが…」

「怪人さんはそれで倒されたんですか?」

「いいや、実は…」

 

ん? 何だ、この聞き覚えのある声。

まさか……。イヤイヤ、まさかぁ。あれだけ念押ししたんだから来る筈ないよなぁ。

なんか、周りがザワザワとうるさいけど気のせいだよな! なんか銀髪の~とか、聞こえてるけど居ないよな!

 

ブンッ!! と一縷の望みをかけて保護者サイドを振り返る。

 

「! イッセー」

「イッセーさんっ」

 

艶やかに微笑む、スーツ姿の見覚えある銀髪ポニーテールと金髪シスター。2人とも俺に笑顔を向けながら嬉しそうに、小さく手を振ってる。

うう、可愛い…って、何で来てんだよ!? 

 

「ぐぎぎぎ…!!」

「くそう、くそう、くそう…!!」

 

うおぅ! 変態坊主と変態メガネから凄まじい殺気が!? いや、こいつらだけじゃねえ、男子のクラスメイト全員から形容しがたい嫉妬オーラが!!

 

「ほほう…アレが噂の…」

 

呟かれた声に振り向くと、俺の隣に座ってる桐生が怪しげな笑みを浮かべながらイセリアとアーシアを見ていた。

いかん! このままではイセリアとアーシアが桐生の毒牙に…!!

 

(おい! ドライグ、ドライグ! 何でイセリアとアーシアが来てんだよ!!)

(『俺が知るか。だが、…後ろを見てみろ。今入ってきた奴等だ』)

 

ドライグの言う通りにもう一度振り返ると、やばいのが増えてた!

まず先頭にミルたんがパンツタイプのスーツ姿で出現! こわっ! 明らかにソッチ系の人だよ!

続いてイセリアの勤めている店の店長、アフロ姿の婆さんがこれまたパンツタイプのスーツで出現。ミルたんと揃うとどう見てもマフィアかヤクザだ!

そして、その2人の後ろから入ってくる邪悪な笑顔を貼り付けたスーツ姿のダ天使2人組み。

 

「…(くけけけ、赤龍帝はどんなマヌケを見せてくれるかしら?)」

「…(ププッ、おっぱい魔人の前で恥かくといいっス!)」

 

こいつらかぁああああ!! こいつらが連れてきたのかぁああ!!

なんっ…て邪悪な顔だ! 俺が恥かく所を見るために来やがったんだ、間違いない!!

 

「いいですかー、今渡した紙粘土で好きな物を作ってみてください」

 

ファ?! 何だ?!

俺がダ天使達に気をとられている間に謎の長方形の物体が机の上に置かれていた。

え? 粘土? これ、英語だよね? 英語だよね?

 

「動物でも良い。人でも良い。家でも良い。自分の脳に思い描いたありのままの表現を形作ってください。そういう英会話もある」

「ねぇよ!! どういう英会話だ! 粘土はしゃべらねぇよ!!」

 

何言ってんのこの先生! 遂に緊張で頭可笑しくなったか?!

ツッコム俺に対して先生はサムズアップし…

 

「Let's try go! go!」

「アホかぁああああ!! 失敗を気にしろぉお!!」

 

あまりのウザさに紙粘土を投げた俺は悪くない。

顔面に紙粘土の直撃を受けた先生は、それでも立ち上がり俺に向かって拍手してくる。そして、その拍手を受けてクラスメイト達も何故か拍手。

って、何コイツらのこの一体感?! 何の拍手だ、コレ!!?

 

「ナイスツッコミ!」

「ナイスツッコミ!」

「よっ! ツッコミキング!」

 

何これイジメ?! イジメ?!

おい、そこのダ天使共、カメラで録ってんじゃねええええ!! イセリアもポカンと見てないでつっこめよ!!

 

「Let's try☆」

「え? 続けんの?! コレマジなの?! 今日授業参観なんだけど?!」

 

先生からポンっと投げ返された紙粘土を受け取り呆然と呟くも、みんな何事も無かったかのように創作活動を始めていた。

え゛? 可笑しいと思うのは俺だけ?!

仕方なく席に着くが、納得できん…。どういうことだ、コレ。ドッキリか?!

仕掛け人の1人と思われる隣の桐生を見る。すると奴は紙粘土で二つのボールと、その中心に立てた棒形状のものをコネコネしてた。

 

「アウトォォオオオオ!!!! はい、アウトオオオオ!!」

「あ、何すんのよ! 兵藤!」

 

コネコネされていた棒を取り上げる!

何作ってんの?! 何てモノ作ってんの?! 

 

「ここ学校で、しかも今日は授業参観なんだけど?!」

「私は良いのよ。今日は親来てないし。それに、アンタの愛しの彼女にアンタのアレの大きさを教えてあげないと、ね?」

「ええええ!? コレ、俺?!」

 

思わず手に取ったものを見る。

………た、確かにコイツは俺のイ○○ツ。形状は未完成だが、大きさと太さが完全に再現されてやがる…!? い、一度足りとて見せたことが無いというのに…!! なんて恐ろしい…!! 桐生、恐ろしい子…!!

 

「お、おい、おっぱい魔人。あいつが赤龍帝のアレを完全に作れるって事は…」

「そ、そんな……!? い、いっせー……?」

 

慄くミッテルトの言葉に、ショックを受けたイセリアは口を両手で隠しながら涙目になっていた。

うぉい!! アレめっちゃ勘違いしてるよね?! 取り返しの付かない勘違いしてるよね?!

 

「一体ナニをしたんですかねぇ…」

「アレをしってるんだから、勿論セッ…でしょう? たまげたなぁ…」

 

こ、ここぞとばかりに松田と元浜が誤解を強めるような事を言ってきやがった! くそ、お前ら後で殺す!!

松田と元浜の言葉を聞いて、遂にイセリアが泣き出してしまった。

 

「誤解だ!! 俺はアレを見せるような真似はしてないから!! ちょ、泣くなイセリア! 違うからな?!」

「あらら、コレは参ったね。テヘペロ」

 

な、何がテヘペロじゃあああ!!??

ほわああああ、イセリア泣くなあ!! 違うんだあああ!!

 

「ほら! こんなもん俺のじゃないから! 違うから! 冤罪だから!!」

 

右手に持った憎き物体を握りつぶし、冤罪を証明する!

俺の握力によって引きちぎれたアレは床にボトリと落ちた。思わず痛みを想像して顔が青くなってしまうが、ポロポロと涙を流していたイセリアは、泣くのを止めてアレが千切れる様を目をまん丸にして見ていてくれた。

こ、コレで少しは誤解が解けたか?!

 

「ああ!? 何で握りつぶすのよ!?」

「うっさい! コレのせいで誤解されただろうが!? 何で見ても無いのにこんなもん作れんだよ!」

「フッ。私のスカウターを甘く見てもらっては困るわ…」

 

メガネをクイっとしながら決め顔をする桐生。

何やり遂げた顔してんの?! なんなのこの子!?

 

「なるほどな。イッセーのはこれ位か…。これ位なら、まだ、大丈夫か…?」

「…これがイッセー君の…?」 

 

床に落ちたアレを拾って修復するゼノヴィアとイリナ。手に持ったそれをしげしげと見つめていた。

 

「何修復してんだよ!? 何持ってんの?!」

「わ、私は別に興味なんて…ああ、主よ…いたっ」

「…いずれ私の中に入るものだから…」

「うぉい! 何言ってんの?! これ以上誤解を広めるような事を言うんじゃねええ!! ほら、保護者の皆さんの視線が凄い事なってんだろうがああ!!」

 

まるで汚物を見るかのような視線! 家の娘に近づくんじゃありませんって感じじゃないか、これ!?

 

「Attention, please!」

 

―パンパン!

俺の顔面が蒼白になっていると、英語の先生が突然手を叩いて注目を集めた。

 

「いい感じに緊張が解れたところで、授業を始めましょう!」

 

てめえ、このオッサン! 最初から真面目にやれやあああ!! 何ニッコリ微笑んでんの?! 何サムズアップしてんの?! 

何か周りからクスクス聞こえんだけど?! お前等やっぱグルかよ!! 何俺ピエロ?!

 

 

「つ、疲れた……」

「あらら、お疲れ様ね兵藤」

「お前等のせいだろうが…」

 

あの後、授業後に必死こいてイセリアに説明し、やっと誤解は解けた。

ちなみに、英語の授業はそれまでが嘘の様にしっかりした授業を行い、保護者達は満足そうな顔で帰っていった。何か、俺に対して同情の視線を送りながら。

 

「まあまあ、私もイセリアさんの誤解を解く手伝いをしてあげたでしょう?」

「アレは只のセクハラだろ…」

 

桐生の奴、自分が俺のアレを見ていないことの証明のために、その辺の男子のサイズを片っ端から言っていきやがった。男子全員涙目だ。

勿論、そんなもん聞かされたイセリアも、そしてアーシアも顔が真赤だった。そしてその時の桐生の顔。明らかにいい獲物を発見したといった表情だったぞ。やっぱりこいつとなるべく接触させないようにせねば…!!

 

「というか、お前も保護者の前で良くあんな事出来るな」

「いやあ、兵藤がいると安心してボケられるからね~。先生も安心して紙粘土配ってたでしょ?」

「確信犯かよ!! というか、俺の評判が地に落ちてそうなんだけど?!」

「大丈夫。みんな解ってるわ。兵藤はいじると面白いって!」

 

何それヒドイ! 桐生が俺を苛める…! いや、良く見たらクラスの女子達がクスクス笑って見てる! 同意見ってことか?! せんせぇええ! このクラスはイジメが発生してますよおお!

 

「ところで桐生、先ほどの件だが…」

「うん、ゼノヴィアっち。大丈夫、ちゃんと作るから」

 

何だ? ゼノヴィアが桐生に紙粘土を渡してる。

…いやな予感がする。何をしているのか問い詰めねば…!!

 

「あー! イッセー君! お弁当にしよう!」

 

問い詰めようとした瞬間、いきなり割り込んでくるイリナ。

しかし、俺の眼はその瞬間をしっかり捉えていた。割り込みながらも自分の紙粘土を後ろ手で桐生に渡す瞬間を。

 

「おい、何を渡した。何をしようとしてる…!」

「な、何のこと?」

 

明後日の方向へ視線を向けるイリナ。

怪しすぎるわ! 何を企んでやがる!

 

「おい桐生、お前まさかまた…」

「アー、オナカヘッタワネー。ゼノヴィアッチ、イリナ。ゴハンニシマショー」

「ソウダネー」

「ソレガイイナー」

 

明後日の方向を向いて棒読みで喋りだす3人。

 

「おい! 急に棒読みやめろ! その紙粘土を渡…」

「大変だ! イッセー君!!」

「木場?!」

 

紙粘土を取り上げようとした時、木場が叫びながら教室の扉を乱暴に開け放った。

タイミング! タイミング! お前朝といい、最近狙ったようなタイミングで現れてないか?

 

「魔法少女が体育館で暴れてるらしい!」

「魔法…、少女…?」

 

顔面蒼白になりながら言った木場の言葉に、俺の頭の中を電流が駆け巡る。

魔法少女……授業参観……スーツ……ミルたん…っうう…頭が!

 

「…ぐふっ! お、俺はもうダメだ…! 後は、任せたぜ…木場…!!」

 

お腹を抑えて蹲り、これからの事を頼れる親友に託す。

木場ならきっと、この難局を乗り切ってくれるはずだぜ!

しかし木場は期待を裏切り、蹲る俺を捕獲。そのまま教室の外へと連れて行こうとする。

 

「イッセー君! 一緒にいこう! 君と僕なら…!!」

「は、離せ…!! 勝てるわけない、あいつは魔法少女のコスプレをしたターミネーターなんだぞ…!!」

「不貞腐れてる場合じゃないよ! この学園の危機なんだ!」

 

木場め…! くっ…だ…駄目だぁ…貴様には解らないのか…!? 俺達が言ったところで犬死だと言う事に…!

 

「何でそんなにヘタレているのかは解らないが、私も共に行こう」

「全く、イッセー君ったら急にへタレちゃって。…ま、幼馴染の私が一緒に行ってあげるから安心しなさい!」

 

うぉ! ゼノヴィア、イリナ! 両手を取るな! 引っ張るな!

全然安心できないから! 今すぐお家に帰りたいから!

 

「よ、よせ…! 見てはならないものを見ることになるぞ…!!?」

「いってらっしゃ~い」

「ま、待て! 桐生助けてくれ…!!」

「頑張れ、兵藤っ!」

 

手をふってる場合じゃねえ! マジやばいって! ぬわあああ!

 

 

体育館にたどり着くと、カメラを持った野郎共によって人垣が出来ていた。一心不乱に写真をとるその姿に俺達は引き気味だ。

 

「魔法少女レヴィアたんが来たからには、ソーナちゃんの学校でこれ以上好きにさせないぞ☆」

「……こ、こんなふざけきった奴に…!!」

 

だが、その人だかりの向こうから聞き覚えのある苦しげな声と気配がしてきた。

これは…!

 

「退いた退いた!! こんなとこで何してんだ! 今日は授業参観なんだぞ!」

 

と、生徒会長の犬、匙がそんなことを言いながら現れた。野次馬達は匙の剣幕に恐れを成したのか、蜘蛛の子を散らすように去っていく。

そうして、人の壁が取り払われて現れたのは、肩で息をし膝を着くレイナーレとその横で目を回しながら大の字に転がるミッテルト、そしてその2人に杖を向ける魔法少女のコスプレをした美少女だった。

 

「何事?! てかあの魔法少女は誰だ?! ミルたんじゃねえ!?」

「兵藤?! 居たのか?!」

「おま、酷いぞ匙!」

 

驚いて声を上げると、今気付いたと言わんばかりの匙。

なんて奴だ! この俺を空気キャラ扱いとは…!

 

「せ、赤龍帝…?」

 

匙の声に反応して俺を見上げるレイナーレ。

何時もの傲岸不遜な態度は何処へやら、弱弱しいその姿に庇護欲が沸く。さらに、スーツ姿ではいていたパンストが所々破れ、そこはかとなくエロイ。

い、いかん! 普段あんだけ憎たらしい奴がこれって、ギャップ萌攻撃か…! 煩悩退散…心頭滅却…!!

 

「こ、この方は…!」

「ん? 木場、知ってる人なのか?」

 

煩悩退散中になにやら呟いた木場に聞く。

驚いたその表情は、この魔法少女の事を知っているからだろう。

 

「い、イッセー君。この人は…」

「にょおおおおお!!!!!」

 

木場が魔法少女の正体を言いかけたとき、野太く、強靭で、そして身の毛のよだつ様な常軌を逸脱した叫び声が体育館に響き、ついで、魔法少女の前に何者かが大砲が直撃したかのような音を立てながら着地した。

モクモクとあがる土煙。ささくれ立った体育館の床。一体何者なんだ…?! いや、俺はその正体を解っている。解っているが、解りたくない…!!

 

「魔法少女レヴィアたん!! これ以上は許さないにょ!!」

 

で、出たアアアア!!?? みみみみみミルたんだああああ!?

し、しかし、良かった。何時もの魔法少女服じゃ無くてスーツ姿…

 

「フンッ!!!!!!」

「下に着てたのかよ?!」

 

ミルたんがマッスルポーズを取ると、スーツが弾け何時もの魔法少女姿へと変貌した。

眼前の魔法少女を睨みつけ、懐から取り出した猫耳らしきものをゆっくりと頭につける。

いや、いらないでしょそれ! てか、ミルたんの着地の衝撃でレイナーレ達が吹っ飛ばされて体育館の壁に叩きつけられてんだけど?!

 

「私と同等…、いえそれ以上のミルキーパワーを秘めた魔法少女ね☆」

「同じ魔法少女といえど、堕天使レイナーレ達を虐めるのは許さないにょ」

 

お互い視線で火花を散らす魔法少女? 達。

なぁにこれ。

 

「い、イッセー。な、何者なんだ?」

「い、いいい、イッセー君の知り合い?」

「み、ミルたん…!! ととと止めよう、いいイッセー君」

 

ゼノヴィアとイリナ、木場が上ずった声を上げる。その姿で逆に俺は落ち着いた。

自分より混乱した人間を見ると、冷静になるって本当みたいだ。

 

「落ち着けお前達。まずはゆっくり回れ右だ。そして、体育館から出て次の授業の準備をしよう」

「ちょ、ちょっと待てええ!! し、知り合いなら止めていけぇええええ……!!」

「離せぇ……!!!」

 

折角の脱出の機会を潰す愚かな男、匙。奴の指が俺の肩に食い込んで動きを封じようとする。

やっと木場たちが無謀を理解して帰ろうとしていたというのにお前という奴は…!!

 

「アレは生徒会の仕事だろぉがぁ…!! 俺達の平和な学園生活を守れよ…!!」

「あんなんどうしろって言うんだよ…!! お前、赤龍帝だろうがぁ…! 手伝っていけぇ…!!」

 

ぐぎぎと歯を食いしばりながら引っ張る匙。

匙の手に出現したトカゲの頭みたいな奴から伸びる舌が俺を拘束する。

何だこれ?! だが、こんなもんで生存本能全開の俺を止められると思うなよ…!!

体中のオーラを全開にして巻き付いた舌を引き剥がす…!

 

「ふんがぁあああ!!」

「んなっ! 俺の黒い龍脈(アブソーション・ライン)の拘束が…!!」

 

黒い龍脈? 新手の神器か?

気にはなるが構っている時間はねえ。兵藤一誠はクールに…

 

「「魔法少女はぶつかりあってこそ(にょ)!!」」

 

去れねえ!! 何だこのオーラは?!

み、ミルたんと謎の魔法少女から常軌を逸した凄まじいパワーが…!!

 

「くっ!! やめろあんた達!!」

「さ、匙?!」

 

俺を止めようとしていた匙が、方向転換して魔法少女? 達へと向かっていく!

ば、馬鹿! 死ぬ気か!?

 

「匙! 戻れええ!!」

「やめるんだ匙君!」

 

あまりの無謀さに俺と木場が吠える。

だが、匙は気合を入れるように叫びながら魔法少女? 達へ走る。

 

「よせ! 匙!!」

「匙君!? 戻ってええ!!」

 

ゼノヴィアとイリナも匙の神風特攻に叫ぶ。

それでも匙は、吹き荒れる凶悪な暴風の中心へ向かっていく。

 

「レヴィアビィィィイムッ!!」

「ミルキィィィィィ・スパイラルゥゥゥウ・ボォォオオムゥアアアア!!!」

 

そしてぶつかり合う2人の魔法少女?

謎の魔法少女の杖から発射された星型の何かと、ミルたんの拳がぶつかり合う…!

凄まじい威力が込められた2人の攻撃は、周囲へと被害を広げ、匙はその光の中へ消えていった。

 

「さ、匙ぃいいいい!!!!」

 

思わず叫ぶ俺達。

あ、アレは死んだ…! 絶対死んだ! クッ…!! 無茶しやがって馬鹿野郎…! 

お前の死、…無駄にはしないからな…!!

 

…PON☆

 

回れ右して俺達が逃げようとした瞬間、なにやらコミカルな音が響き、光の中から匙が放物線を描きながら飛び出していった。

黒焦げになった匙は気絶しているのか、このままでは頭から床に突き刺さっちまう…!

俺は赤龍帝の篭手を発動させ、強化した脚力で匙を空中でキャッチし、床に横たわらせた。

しかし、キャッチした匙の体には既に力が無かった…。

 

「おい! おい匙!! 目を開けろ!! おいっ!!?」

「こ、こんな、こんなのって…!!」

 

必死に呼びかけるも、匙は目を覚まさない。

木場とゼノヴィアは痛ましそうに目を伏せ、イリナは目に涙を溜めながら必死に治療しようとする。

…これは、手遅れか…!?

諦めかけたその時、匙の目がゆっくりと開かれる。焦点の定まっていない目だった。

 

「! 気が付いたか、匙!」

「ひょ、兵藤か…」

 

ワナワナと震える手を俺に伸ばす匙。

俺は、崩れ落ちそうなそれを握り締めた。

 

「ひょ、兵藤…、俺さ、夢が、あったんだ…」

「今は喋るな! 木場、イセリアかアーシアを呼んで来てくれ!」

「解ったよ、イッセー君!!」

 

木場がイセリアとアーシアを探しに翔ける。

 

「イセリアとアーシアならきっと治せる! だから弱気になるな、匙!」

「お、俺…、会長と……」

 

今際の際のような匙。

くっ、ミッテルトたちが居たって事は、どっかにイセリアたちが居る筈なんだ! あいつ等ならきっと治せる筈だ…!

 

「会長…、ソーナ、会長と…できちゃった…婚…した、かった……ガクッ」

「匙…? 匙? おい、……さ、匙ぃいいいいい!!?」

 

力なく項垂れる匙。

もう、その手に力が篭る事は無かった…。

 

『なんだこの茶番』

 

こらっ、確かに焦げてるだけだけど空気読もうぜドライグ!

 

 

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