赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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イセリアの過去話です。
捏造設定過多なので注意!
戦ヴァルは1しかやったことないので詳しい設定を知らないです。


イセリアの昔話

おっす。おっすおっす。おら、イセリア。14歳。穏やかな心を持ちながら激しい怒りによって目覚めた伝説のヴァルキュリア人だ。

 

失礼、真面目にする。私の名前はイセリア・ヴァルキュリア。

なんでかは解らないが戦場のヴァルキュリアっぽい世界に転生した、元日本人である。

とは言っても5歳頃から徐々に夢のような感覚で思い出したので、なんだか実感が薄いといえば薄いけど。

けど心はまさに軟弱な日本人だ。槍で突き合うとか痛くて痛くて、本当は止めたいもん。

 

あと、なんで”っぽい世界”っていうと、時代が違うのである。

それなのに、何で戦場のヴァルキュリアの世界かと思ったかと言うと、私達”ヴァルキュリア人”が存在しているからだ。

ヴァルキュリア人が純血だからなのかは知らないが、普通の人よりずっと寿命が長いとか、死ぬまで若いままとか戦場のヴァルキュリアとは違った謎の生態をしているので本当にここが戦ヴァルの世界とは言い切れないのだけれど。

 

 

 

ヨーロッパの北の海に浮かぶ謎の巨島。大量のラグナイトで全体的に青っぽい島に住む私達、戦闘民族ヴァルキュリア人。おっと失礼、戦闘民族は私の悪口だ。一族の規模は600人程度。私はそのヴァルキュリア人の女王の娘として誕生してしまったのだ。

 

日本人の記憶を夢で思い出す様になってから、ヴァルキュリアとしての生活に違和感を覚えていた私だが、そんな事を気にする余裕が無いほど鬼母上によって戦闘訓練をさせられ、命の危機に瀕しまくっているうちに違和感など気にすることも無くなっていた。

ヴァルキュリア人にとって戦闘力の高さは大きな意味を持つ。強い=偉いなのである。そんなわけで、女王の娘が弱くて良い訳が無いと扱かれているうちに私も強さ最優先、最強を目指す一人のヴァルキュリアとならざるを得なかったわけである。

 

前世の記憶については物心がついてから徐々に思い出したのだが、その記憶は非常にあやふやで偏っていて、自分がどんな人間だったかも覚えていない。

友人の顔も家族の顔も覚えていないのに、何故かサッカーをやったとか、ピアノをやったとか、道徳の授業を受けたとか、そういったことだけを覚えているのだ。

はっきり言って物凄くホラーな記憶で、初めて思い出したときは母上に泣きついて慰めてもらおうとしたのに、そのまま戦闘訓練を開始されてしまうという酷い思い出もあるほどだ。

 

 

ヴァルキュリア人は、男性の出生率が年々下がっているせいで女性が圧倒的に多い。私の世代なんて男が生まれなかったほどである。

もし男に生まれていたら、アホみたいに美しいヴァルキュリア人の嫁を確実にゲットしていたわけだ。まさにリア充展開。

私の前の記憶には子供を育てた経験はなかったから、すぐに子供を作れる男に生まれなかったのはちょっと残念。この島の男は殆どが既婚者で、私には夫になってくれそうな男がいないのだ。

 

まあ、私の子育て願望は置いておいて、その女ばかりしか生まれないという事により私達ヴァルキュリア人は絶滅の危機に瀕していた。

一夫多妻じゃないのかって? ヴァルキュリア人の女達は嫉妬深い。一夫多妻なんぞしようものならば殺し合いが始まって島が焼け野原になってしまう。

 

というわけで、私達ヴァルキュリア人は夫を求めて島ごと南下を始めたのである。この島は浮き島でラグナイトのスクリューが着いてるから何処へでもいけるのだ。

 

「母上、父上はどちらなのですか?」

「……あの人は、…先に偵察に向かっています…フフッ、フフフ」

 

何故かは解らないが、目のハイライトが消えている。

無駄に白くてまぶしい上に、ラグナイトをこれまた無駄に大量に使った謁見の間で、島の操作用ラグナイト結晶を操りながらヤンデレっぽい表情をしたこの人こそ、ヴァルキュリア人の女王、私の母スグルドである。ちなみに母と私はそっくりだ。胸は私の方が小さいが、髪型を母上のように肩の下から三つ編みにすれば区別がつかないのではないだろうか?

 

どうやら父の不在で母は機嫌が相当宜しくないらしい。父はこの南下作戦を始める3月前から姿が見えなかったが、偵察任務だったとは納得だ。普段からフラフラしてる人だからあんまり気にしてなかったけど。

 

「よい婿が見つかると良いですね、イセリア」

「…はい」

 

実を言うと、私はこの作戦物凄く反対である。確かに子供は欲しいが、このままいくとよく解らん野郎と結婚させられてしまうだけではなく、恐らく現地民と戦闘になってしまう。

なんとか母上達”オカン組み”を私達若い衆”娘組み”で説得しようとしたものの、”婚期を逃すのはいけませんよ、ね”っと笑顔なのになんだか恐ろしい顔で反対意見をもみ消されてしまった。母は強いのである。

 

これから起こるのは恐らく”ダルクスの災厄”といわれるヴァルキュリア人による侵略戦争だろう。本来なら、私は未来を知る者としてこの戦争を止めなければいけないのだろうが、一族の存続が懸かっているのである(多分)。

なんだかんだいっても私は一族に愛着があるのだ。女王の娘として、一族を裏切るわけにはいかない。

 

とは言っても、母上がダルクス人を奴隷みたいに扱ったら扱いが良くなるように進言しよう。嘘でも止めさせるとか言わないのは母上が怖いからである。

母上強すぎワロタだから、私では止められんのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「イセリア様、後続部隊です。数20」

 

この冷静沈着な輝くポニーテール、部下のナルヴィさん(19)。弱い男は好かぬ。とかいって現地の人との結婚を蹴った猛者である。

穴だらけで殆ど意味を成さない塹壕からちらりと顔を出して覗けば、完全武装の母上直属の精鋭たち”鬼ママ20(私の命名)”がずらり。すっごく嫌な光景、ヴァルキュリアのラグナイトエネルギーで青い壁にすら見える。

 

「数20って、む、無理ですよ、イセリア様ぁ~全滅ですよ!! あ、謝っちゃいましょ、イセリア様、ね、ね!!??」

「落ち着けプレシア。今更謝って許されると思うか?イセリア様、御指示を」

 

涙目で慌てふためくツインテール、部下のプレシアさん(22)。男の人と話しただけで顔が真っ赤になって”結婚なんてできません! ”という叫びが、もっと闘いたいんだなと勘違いされ前線送りになった面白い人である。

情けない事を言ってるがやるときはやるし、実際の戦闘時はキリッとなるので意外と頼りになる人なのだ。

 

「ナルヴィ、プレシア、一当てして突っ切るぞ!」

「了解!」「うぅ~~、りょ、了解」

 

今現在の状況を簡単に言うと、母上の命によって侵略戦争が始まって僅か5ヶ月でヴァルキュリア人はヨーロッパの全土を手に入れた。っていうか火の海にした。

ヴァルキュリア人の数的に、少数精鋭で敵拠点を焼き払っていくのが基本戦術だった。これが100の都市、100万の人畜を焼き払ったという”ダルクスの災厄”である事は疑いようのないことだ。

 

私は、戦争中にやり過ぎないようにとか、奴隷は辞めましょうとか母上に進言しまくっていたら、母上の怒りを買ってしまい前線送りにされ、それでもヴァルキュリア族の一員として懸命に戦った。

 

なるべくダルクス人の死者を出さないように大将っぽいのを瞬殺したり、武器だけ破壊したりして降伏を迫ったり、拠点だけ焼いたりして戦争を終わらせた。

まあこれは、捕虜を送り返すだけで兵糧攻めになるし、士気も下がるし、ヴァルキュリア人の圧倒的なまでに高い戦闘能力もあったから私の我侭も許されたというわけ。

しかし、そのお蔭で戦場の焼け野原具合と比べれば死者の数は少なく済んだはずだったのだ。

 

だが母上は生き残ったダルクス人の虐殺、奴隷としての過酷な労働を開始してしまったのだ。これに驚いた私は母上に抗議の使者を出し、母上の真意を確かめるためにヴァルキュリアの王都である故郷の島へと向かっている際に反逆者として命を狙われるようになっちゃった。ってなわけである。

 

「私が地面に撃ち込んだら突撃。私は右、お前達は左だ!」

「「了解!!」」

 

腹から張り上げるような声を出せば、渋っていたプレシアも気持ちを入れ替え気合の入った返事をする。

吐き出した声と共にラグナイトエネルギーを練り上げ、蒼い炎を体から勢いよく引き出した。

 

今思えば、侵略戦争の前に止めておくべきだったのだ。他種族の血を入れるだけならば、もっと穏便な方法があったはずなのだ。

これは母上にビビッて止められなかった罰なのだろう。

 

「はあっ!!!」

 

塹壕から飛び出し、槍から炎を鬼ママ20の眼前の地面に撃ち込む。女王の娘である私の炎は他の追随を許さない圧倒的な火力で地面を爆発させた。

 

「いくぞ!!」

「「おぉ!!」」

 

こんな情けない私についてきてくれるのは、今やナルヴィとプレシアの2人だけである。他の連中は、私と同い年の友達は男をゲットしてどこぞへと去ってしまった。連中の去り際の台詞が今でも頭から離れない。だれが、だれが…!

 

「だれが、”負け犬”だ!!」

「ぐふぁ!!」

 

舞い上がった土に紛れて、一番右端にいた知り合いのママさんに急接近。槍による横薙ぎの一撃で脇腹を強打した。盾を構えて防ごうとはしたのだろうが、力の篭っていない盾など私の一撃に簡単に弾かれた。

 

殴りつけられたママさんは槍の一撃によって回転しながら他のママさん達のほうに飛んでいったが、上半身と下半身は別れてない。ヴァルキュリア人ならあの程度で死にはしないだろう。

 

私のスピードに完全に追いつけるのは、母上と女王側近の2名のみ。だが、私のスピードに反応して槍と盾を構えたことにはヒヤリとさせられた。さすがは母上直属。

 

「はぁあああああっ!!!」

 

私が襲撃した反対側にナルヴィが切り込み、思いっきり相手の盾を弾いて体勢を大きく仰け反らした。

 

「プレシア!!」

「はいなっ!!」

 

その隙を逃さずにナルヴィの真後ろにピッタリと着いていたプレシアが鋭い突きを放って吹き飛ばす。

相変わらずいいコンビネーションだ。安心して背中を預けられる。

 

「っ!?」

 

部下のコンビネーションに見とれていたほんの僅かな時間で、鬼ママ20は攻撃態勢を完璧にしていた。

ママさん達の槍から放たれる大火力の炎は私でも受け間違えればダメージを負いかねない。

 

「放てっ!!イセリア様に集中しろっ!!」

「くっ!!」

 

高速で向かって来る蒼い炎を槍と盾で必死に防ぐ。一撃一撃、弾くたびに大気を揺るがすような重い衝撃に両腕が痺れ、無理やり後退させられ距離が開いてしまう。

 

筈かに弾き損ねた一撃が私の炎の防御を突きぬけ、右肩を抉る様に焼き切った。

 

「ぅおおおおおお!!」

 

肩の激痛を忘れるために思い切り叫ぶ。少し骨が見える程度の負傷なら1分も経たずに治るのだが、痛みは別だ。

軟弱な日本人の前世の記憶のせいで、私は痛みに弱い。

 

この戦争で解った事だが、ダルクスへの同情、戦闘での情け、相手を殺す事への忌諱感など、今の私にとって前世の記憶は枷にしかならない邪魔なものだ。

強い心がヴァルキュリアの炎をより引き出す。心の弱さは邪魔にしかならない。

 

「フゥウウッ!!」

 

獣のように息を吐き出し歯を食いしばって痛みを実感する。痛みが私の軟弱な心を吹き飛ばし怒りと相手を仕留めるという強い感情を呼び起こす。激情に反応して身に纏う炎が強くなる。

 

強くなった私の炎によって、あれだけ重かった鬼ママたちの炎が軽くなる。それでもバカバカしいほどの弾幕は薄まる気配を見せない。ナルヴィたちの方も私より数が少ないとはいえ、このままでは長くは持たないだろう。

 

普通はこれだけ撃ち込まれたら下がるのだろうが、私は盾を前面で回転させながら突撃した。此処で私が下がったら、ナルヴィたちの方がやばいし、こちらは砲門数で負けているのだから接近して連携射撃を取れないようにするのだ。

 

僅かな炎の切れ間を狙って、身を低くし、地面すれすれを滑空するように飛び込んで集中砲火を通り抜ける。低い弾道のものは高速で回転する盾で弾く。

強くなった私の炎は狙いの定まっていない弱弱しい炎など全く問題にせず掻き消してくれる。

 

「ッフ!!」

 

前面に構えられた敵の槍を、左手の盾で相手の内側から外側へと弾き飛ばす。

通常では考えられないほどの膂力を持つ私の腕から放たれた一撃は、同じヴァルキュリアでも耐えられるものはいない!とだったらいいなぁ。

 

「せいっ!」

 

盾を振り切った力に逆らわずに、そのまま独楽のように回転し遠心力の乗った槍を繰り出す。

体勢の崩れていた相手は私の槍を受け切れずに周りを巻き込みながら吹き飛ばされた。

 

「ナルヴィ! プレシア! 抜けるぞ!!」

「「了解!」」

 

私の切り込みによって出来た隙を逃さず、全員で再び地面に炎を連続で撃ち込む。

直接、鬼ママ20に撃ち込まないのは、防がれるだけで効果が薄いからだ。

 

地面に撃ち込まれた炎は大量の土砂を巻き上げ、いい具合に視界を防いでくれる。

 

「プレシア先行。ナルヴィ、私が殿だ!」

 

もう少しで母上のいる島にたどり着くのだ。

知り合いのママさんとて、容赦してやれない。

っていうか、ママさんたちの追撃の方が容赦ない。炎撃ってこないで。

 

 

 

 

 

 

 

 

「海岸から見える蒼い島。ヴァルキュリア人達の故郷である巨島は、今やヨーロッパに住む者たちにとって悪魔の巣窟として恐れられていた。

 夜でもラグナイト光によって蒼く不気味に光る様子は、勇者を待ち構える魔王の城の様だ。っとナレーションぽく解説してみる」

「何を言ってるのですか、イセリア様」

 

ナルヴィに突っ込まれるが、今更ながらあそこに突撃したくない。

だって、あそこ母上いるじゃん。私、フルボッコじゃん。魔王だよ魔王。

 

奇襲したり、崖を崩して道を塞いだり、手薄な基地を襲撃して戦略兵器”鉄槌”を奪取して打ち上げ花火に使って囮にしたり、橋を落とされて断崖絶壁に落ちたり、川に飛び込んで20分息せず身を隠したり、本当、此処まで来るのに1年ぐらい戦ってた気がするほど険しい道のりだった。

だが、今までのどの冒険より母上と相対するほうが怖い。

 

「イセリア様~、港には誰もいません。ぜ、絶対、罠ですよ。か、帰りましょうよ」

「プレシア、また情けないことを言って。年長者の自覚はないのか」

 

ナルヴィさんすいません。私も帰りたいと思ってました。

プレシアの言うとおり、島へと向かう港には人っ子一人いない。

明らかに、向かって来いという母上の凄まじいプレッシャーを感じる。

 

「ナルヴィ、プレシア」

「はっ!」「撤退ですか!」

「島には私1人で行く」

「はっ! …え?」「やっぱり~…え?」

 

すっごいポカンとした顔だ。ナルヴィの呆けた顔は結構レアだ。プレシアは年中そんな顔だけど。

 

「何を言ってるんですか!! ダメです!!」「無理ですよ!! ダメです!」

「おっふ!?」

 

いきなり掴みかかってユラユラとはよっぽど興奮してるな。ハハハ、こやつらめ。…うっ揺らしすぎ、し、死ぬ。

 

「ま、まって、話を聞いて」

「…バカな命令には従えませんよ」

「そうです。命知らずはいけません」

 

2人の真剣な声色に私もふざけていた気持ちを切り替えた。

 

「私は、母上と一対一で決着をつけたいのだ」

「なら、尚のこと私たちも共に行くべきです」

「島にはきっと女王直属と側近の御2人もいますよ。こ、怖いですけど私も一緒に行きます」

 

私を心配する言葉は私の胸に染み込むように暖かい気持ちを与えてくれる。

 

よく見れば2人とも目が涙目になっていて、自分がどれだけこの2人に大切に思われているかを実感できる。そして、私もこの戦友たちが大好きだ。

だが、だからこそ2人と私は別れるべきだろう。

 

「母上なら、私との戦いに決して部下を使わない。母はヴァルキュリアの血と、自身の実力に絶対の自信を持っている。そして、自分の喉元まで切り込まれて自ら立たぬ人ではない」

「「ですがっ!」」

「あそこにいるのは、私の母だけではない。お前達の母親もいる。お前達が来れば、その2人と戦う事になる。それは私が母を倒せば要らぬことだ」

「っ!!」

 

母の側近はナルヴィとプレシアの親。この2人の親子仲は端間から見ていて羨ましいほど良好だった。そんな2人に、親を殺せなんて言えるわけが無い。親殺しは私だけで十分だ。

元々、私達親子が始めた争いなのだ。だからこそ、私の友達は去って行ったのだろう。決して男と仲良くしたいとかじゃなくて。

 

「2人は私の退路を守っていてくれ。安心しろ、話し合いで何とかしてみせるさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

幾何学的に美しい蒼い城は、無人の様相と相まって何かの遺跡のようだ。と格好良く現実逃避してみる。

 

「誰もいない、か…」

 

こうして、玉座までの道を1人で歩いていると色々な事を思い出すな。

あ、あの柱は身長を測って競ってた所だな。あのへこみは母上の槍で吹っ飛ばされた時のへこみだ。

そういえば6歳の頃、母上に炎を出せば無事に済みますよとか言われて崖に落とされたこともあったなぁ。

9歳の頃、父上がフラフラして母上が切れて、喧嘩になって、巻き込まれてぶっ飛ばされた事もあったなあ。

……碌な思い出がない。

 

「…フッ、帰りたい」

 

もう、死亡フラグを凄い勢いで突き立ててる気がする。なに昔の事思い出してるんだろう?死ぬの?私、死ぬの?

冷や汗が凄いんだけど、もう、手に持った槍がカタカタ言ってるよ。何これ、私戦えるのか?

っていうかもう目の前の扉一枚で謁見の間じゃん。この状況で本当に母上に歯向かえるのか?

 

「いや、待て。逆に考えろ」

 

今まで私は沢山の事を我慢してきた。そう、数々の虐待。戦闘訓練。このリオのカーニバルみたいな戦闘服。痴話喧嘩に巻き込まれたり、この侵略戦争を起こしたこととか、人殺しの最前線に送り込まれたり、無理やり結婚させられそうになったり、大量の魚ご飯とか、その上今では反逆者扱い。

 

そう、沢山あった。そうだ、今までの借りを返す時なのだ!!

うおぉおおおおおお!! 燃え上がれ私の炎!! このまま扉をぶち破ってダイナミックエントリーだ!!

 

『何時まで其処に居る気ですか、イセリア。私を討ちに来たのでしょう?早く入りなさい』

「は、はい」

 

ダメでした。声を聞いただけでラグナイトエネルギーが完全に減衰しました。

なんということでしょう。さっきまでガスバーナーの炎みたいだったのが、今ではマッチの炎です。私は蒼いマッチです。

 

「…入ります」

 

無駄にデカイ扉を丁寧に押し開けると其処には鬼ママ20がズラリ。整列して待っているよ、やったねイセリアちゃん。死んだねこれ!

母の隣には側近2人。全員が完全武装だ。

 

だが、母上は戦闘服でもなければ槍を持っていない。何時ものローブみたいな女王服で玉座に腰掛けている。

 

何のつもりなんだ? もしかして、こいつらに私を処刑とかいって集団リンチさせる気か? あのプライドの高い母上が?

だが母上を前に、こいつらに構っている余裕なんて無い。精一杯炎の勢いを上げて、何時でも戦える状態にする。

 

圧倒的な戦力差に絶望を覚えるが、私は自らの誇りにかけて怯えを見せぬよう堂々と敵中を歩き、母上の座る玉座を見上げ精一杯の勇気で涼しい顔をしている母上を睨みつけた。

 

「…母上、なぜダルクス人を虐殺したのです。もう戦いは終わっていたはずです」

「ヴァルキュリアの未来のためです」

 

母上は私の責める言葉などまるで気にもかけずに、全く揺るぎ無くそう言い放った。

まったく揺るぎの無いその瞳に、私は言いようの無い怒りが生まれた。

多分、私は心のどこかでまだやり直せると、母とまた一緒に暮らせると未練たらしく思っていたのだろ。だからこそ、悲しくて、悔しくて、胸が張り裂けそうだった。

 

「…何故です。虐殺などで、良い未来など来るはずがありません! しかも、一部のものを裏切らせ同じダルクス人の間でも憎み合うように仕向けていらっしゃる! こんな残酷なことがありますか!!」

「…怯えてばかりだったあなたも、成長しましたね」

「っ!!」

 

今まで無表情だった顔から一転して優しげな表情をされ、私はいきなりの事に怒りも忘れて困惑してしまう。

言いたかった文句は山ほどあるのに、そんな慈しむ様な顔をされたら言葉が出なくなる。

 

その優しい表情に、もしかしたら、なんていう希望が生まれるが、母上はまた直ぐに表情を変えてしまう。

 

「他種族と血を交えると決めた時より、ダルクス虐殺は必要なことです。私達のような力を持った種族には」

「…もっと穏便な方法があったはずです。元々、侵略など必要なかったはずです」

「いいえ。あなたはこの島が永遠に守られていると思っているのですか?」

 

厳しく、ピシャリと言われた言葉は確かに私も思っていたことだ。

科学の発展と共に、いずれは私達は見つけられていただろう。もしその時、私の前世の記憶にある大砲や戦闘機のようなものがあれば、今の私達は逆の立場だったかもしれない。

だが、だからと言ってそれは遠い未来。それに私達が進歩していない場合だ。

 

「異質の力を持ったものは、どう足掻こうと、蹂躙するか、されるかの二択しかないのです。

 ならば私達が奪う側に立つしかないでしょう?

 そして勝者であり続けることが私達を守ることに繋がるのです。

 遠い未来、私達の一族が減った時、私の行いの正しさがあなたにも解るでしょう。

 虐殺は私達に逆らうという考えを忘れさせ、やがて私達への信仰を植えつける役に立ちます」

 

絶対的に正しいと断言する言葉に、私は二の句も継げずにいた。

そして、理解もした。母上は絶対に虐殺をやめることはない。そしてその行いを後悔する事はない。

侵略戦争が始まる前の、あの頃には決して戻る事はないのだと。

 

母上の意思を受け、私もまた覚悟を決めた。

たとえ刺し違えて私がここで朽ち果てることになろうとも、母を止めなければいけないのだと。

それこそが、この人の娘である私の役目なのだと。

 

 

これ以上の会話に意味は無い。足に力を込め母上に切りかかろうとした時、

 

「まあ、建前です」

「…へ?」

 

あっけからんとそれまでのシリアスな雰囲気を粉砕するように言われた。

あまりの変わりように今度は別の意味で二の句が継げない。

 

「これを見なさい。イセリア」

 

母上が指をパチンと鳴らすと側近の人が玉座の後ろから何かを引きずり出し、槍の穂先に引っ掛けて掲げた。

鬼ママ20の方も自分の後ろの何かを同じように掲げる。何かからは『む~む~』と唸る声が聞こえその身を芋虫の様に捩じっている。

 

何かは簀巻きになった父上だった。周りを見れば、それぞれ知ってるおっさんばかり。っていうかあなた達の夫ですね。

なにこれ、笑うとこ?

 

「あの、なぜ父上たちがこの様な扱いを受けているのですか?」

「…なぜ? なぜかですって? ……ククク、フ、フフ、アハハハハ!!!」

 

急に立ち上がり額を押さえながら三段笑いを決める母上。

ラグナイトの槍を持っていないというのに、莫大なラグナイトエネルギーが母上の体から溢れ、威圧感すら与える巨大な蒼い炎を形成される。

 

私も盾と槍を前面に出し、母の圧力に負けぬように炎を形成するが体の震えが止まらない。

炎は私に接触していないというのに、母上が只其処に立っているだけで、膝を地面についてしまいそうな圧迫感。

 

これが、1人で”聖槍”や”鉄槌”に匹敵する力を持つと謳われる最強のヴァルキュリアの力なのか…?! じ、次元が、違いすぎる…!

刺し違えてもなど、自分の覚悟がいかに的外れで滑稽だった事かはっきりと解らされた。

 

 

「イセリア、この侵略戦争の本当の意図を教えてあげる。…フフフ、それはね、ダルクスの泥棒猫どもを皆殺しにするためよ」

 

「はあ?!」

 

ハートマークがついてそうな口調で、すっごい嫌なこと言われたんですけど。何それ、泥棒猫って…?

 

「この人が侵略の3ヶ月前に居なくなってたのはね、ダルクスの愛人に会いに行ってたからなの。偶にフラフラ居なくなってたのも浮気するため。侵略3ヶ月前に居なくなってた時なんかは他の男どもを連れてまで行ってたのよ? …ね? 許せる? ねぇ? 許せるの? …フフフ、許せるわけ無いわよねェ? みんな?」

「「「「殺せ! 殺せ! 殺せ!」」」」

 

こ、こわっ!!!! 何このヤンデレ空間!?

みんな目が死んでる?!

 

「フフフ、そうよね。愚問だったわ。…けれど、私はこの人の事を愛してるの。だから、此処でこの島と共に終わりを迎えることにしたの」

「ちょっ、ちょっと待ってください! 浮気が原因って、終わりってなんです!!??」

 

「イセリア。この戦争の真の目的は一族の存続の為ではないわ。泥棒猫達を永劫苦しめるためよ。そのために、各地に私達の兵器を移し、ダルクスからの裏切り者をつくり出したのよ。あとは勝手に私達に怯え、私達を信仰するようになるわ。指示も出しているしね」

 

そ、そんな理由でこの戦争起こしたのか!?

嘘、嘘だと言ってよ! 幾らなんでも最悪すぎる…!

 

「イセリア、私の送り出した者たちを振り払って此処に来たと言う事は、私と共に死ぬ覚悟だったのでしょう? 嬉しいわ。最後は家族みんな一緒なのね」

「へ?ちょっと母上、何を言ってるのですか!!」

「もちろん。此処にいる全員で”最後の炎”で果てる話よ? …フフ、可笑しな子ね」

 

聞いてない聞いてない聞いてない!

 

完全に逝っちゃった表情で話す母上に、何を言っても無駄であると言うことを悟らざるえない。

何とか自爆前に倒そうと足を動かそうとするが、母上の炎が巨大すぎて近づくことも儘ならない。そうしてる間にも周りの連中の炎も凄く大きくなっていき、母上の炎も段々と大きくなり、もはや自爆寸前。

やったねイセリアちゃん、大爆発だよ♪

 

「…一緒に、逝きましょう」

「い、いやああああ!!!」

 

光が、溢れる…!! こ、こんな死に方、嫌……!!

 

 

―イセリアの最後の瞬間、脳裏に浮かんだのは”この人と結婚するんだ♪”と言って、見せ付けるように男性と腕を組んで去っていく友の姿だった。

 蒼に染まっていく視界の中で、イセリアは後悔した。

 侵略戦争が始まった時点でこんな一族など捨てて、あの友人のように奔放にその辺の男性でも捕まえて何処かへ去れば良かったと。

 

―ヴァルキュリアの女王スグルドとその部下達の最後の炎は天高く立ち上り、島を消滅させるだけに留まらず、巨大な津波を発生させヨーロッパ各地に終末を予感させるほどの被害をもたらした。

 その被害を齎した蒼い光が収まった其処には謎の黒い歪が発生し、最後の炎によって蒸発した大地や海水が黒い雨となって振り続けた。

 その黒い世界の中に、イセリアの姿は何処にも無かった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ  簡易人物紹介

 

イセリア・ヴァルキュリア

 主人公。名前はヴァルキリープロファイルのイセリア・クイーンとレナス・ヴァルキュリアから。

 戦場のヴァルキュリアっぽい世界に転生? した人。最後の炎で消滅したと思ったら現代日本ぽい所にいた。

 元々は責任感が強い真面目な性格だったが、そのせいで酷い目にあいつづけたせいで大分ハッチャけた性格になった。

 子供っぽい遊びが好き。禁手化したイッセーの姿を見てからは変身ヒーローに嵌っている。

 兵藤一家の朝ごはんと昼ごはん作りはイセリアの仕事。

 部屋は与えられているが、何故か押入れで寝る。たまにイッセーの部屋のクローゼットでも寝る。

 

 

兵藤一誠

 もう1人の主人公。

 中学時代のもっともエロ男だったころにイセリアが来た事で、原作よりも現在のエロ度は押さえられているため、覗き等の変態行為はしていない。

 そのために松田と元浜のブレーキ役を押し付けられてしまっている。

 イセリアの影響で、ヒーローものが好きになった。

 おっぱいへの情熱も忘れているわけではなく、高1の冬にイセリアと風呂場にて全裸でばったりした時に始めて生で見た女体に興奮し初の禁手化に成功した。

 日本語を忘れていたイセリアに懸命に言葉を教えたり、ちゃんばらごっこを一緒にしたりと中2時代からイセリアと、ずっと一緒に過ごしている。

 

  

ドライグ

 一誠たちのブレーキ役。

 一誠に声が届くまで大分酷い扱いをされていた篭手に宿るドラゴン。一誠の左腕にいる。

 チャンバラごっこや中二ごっこ、ヒーローごっこでハッチャけまくる2人は、ドライグがいなければ警察に補導されていただろう。

 一誠にやがて来る戦いに向けて戦闘訓練をさせている。

 初めは一誠の才能の無さに失望気味ではあったが、一誠の自分へと何度も語りかけ強くなろうと言う姿勢がとても気に入り、歴代最強の赤龍帝に導こうとしている。

  

 

 

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