赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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一週間に一回くらい更新できたらいいなぁ。
暇つぶしくらいの軽い気持ちで見てね。


あ、悪魔たん・・・

なん…だと…!!?

 

「あ、あの、兵藤君、わ、私と付き合ってくださいっ!」

 

夕暮れの歩道橋で、俺の目を見て恥ずかしがりながらも真剣に告白した美少女がいた。

天野夕麻と名乗った流れるような黒髪が素敵な女の子だ。

な、何だこれはっ?! ゆ、夢でも見ているのか?こ、こんなにかわいい子が、お、俺に告白だと…!!

 

現実を認められずに俺は彼女の後ろを見て、ドッキリの看板を持った人が居ないかを探す。探すが、彼女の学友らしき姿は何処にもいない。

つまりは、この告白は…本物? 

 

これは、これは来たのか、俺のモテ期!!

 

「あ、ええと」

「?」

 

首を傾げる姿も可愛いぜ!っじゃなくて。

ここでYesと答えれば、確かに俺は彼女をゲットできる。

だが、その代わりにいつか思う存分揉むと誓ったオッパイに触れなくなる!

 

イセリアは言っていた。”不倫とか浮気する男は死んだほうが良い。父上死ね”と。

漢、兵藤一誠!ここは、涙を呑んで断るぜ!!

俺はイセリアのおっぱいを揉む事をドライグとイセリアに誓ったんだ。その誓いも果たさずに他の女の子と付き合ってリア充なんて出来ない。

 

「ごめんだけど、俺、君と付き合えないんだ」

「えっ! ど、どうしてですか?!」

 

うぉう! な、涙目で見詰められるとは、な、なんという罪悪感…。

人生、初めての告白だったが、断る事がこんなにも苦しいだなんて…。

イケメンモテ男のみんな、今まで僻んでばかりで一方的に恨んでいてすまなかった。お前らも苦労してたんだな。

 

「あの」

 

っ! バカな考えはやめて、真剣に理由を告げよう。

この子は、俺のことなんかを好きだと言ってくれた。その気持ちには真剣に答えるべきなんだ。

 

「いつか手に入れるって誓った人《おっぱい》がいるんだ。だから君と付き合えないんだ。ごめん」

 

少しぼかしつつも、自分の胸のうちを素直に打ち明ける。

これが、俺に出来る精一杯だったんだが、夕麻ちゃんは俯いてしまった。

泣かせてしまったのかと思うと、胸のうちに凄まじい罪悪感が襲うが、誓いを破る事だけは出来ない。

それをしてしまえば、俺はイセリアとドライグを裏切ることになる。

 

彼女は俺の言葉を受けて暫くしてから、ゆっくりと顔を上げた。

僅かに前髪から見えるその瞳は、憎憎しげに、狂気を感じるほど濁っていた。

 

「なら、死ね」

「っ! ドライグ!!」

『おう!!Boost!』

 

ギリギリ、ギリギリだった。何とか展開の間に合ったドライグで弾くことができた。

夕麻ちゃんはその手に光り輝く槍を作り出し、俺に向かって突きだしたのだ。

彼女の曇った目を見ていなかったら、刺されてご臨終だったかもしれない!

 

イセリアは言っていた。”女は恐ろしい。特に目のハイライトの消えた奴に注意しろ、母上怖い゛と。

イセリアの忠告がなかったら危なかったぜ!

 

「まさか、もう神器を使えていたとはね」

「なんだ…お前(禁手の用意もしといてくれドライグ)」

(『了解だ。しかし、感心したぞイッセー。奴の正体に気がついていたとは』)

 

正体? 何のことなんだ? 自分のものにならないから殺すしかないって奴じゃないのか? ヤンデレ的な。

彼女の光の槍、アレが神器とは思えないが、それらしい能力で作られたものなら下手に当たるわけには行かない。

 

「まさか、人間如きがこの私の告白を断るなんて思いもしなかったわ。最後にいい思い出をあげようって思ったのに。まあいいわ。殺して、あ・げ・る」

 

そう言って投げつけられた光の槍は確かにかなりのスピードだったが、普段こんなものよりずっと速いやつと訓練している俺にとっては全く問題にならない。

光の槍の軌道を目で確りと見切り、ドライグの左腕が前になるように、右半身を後ろに下げる最小限の動きでかわす。

 

「シッ!」

 

避けられると思っていなかったのか驚いた表情の夕麻ちゃんの懐に踏み込み、ドライグを彼女の鳩尾を狙って振りぬく。

が、踏み込んだ直後に彼女の背中から生えたものに驚いて拳が甘くなってしまったせいか、それとも彼女がその黒い翼で上空へと逃れたせいか。俺の拳は彼女の服を掠めるだけで避けられてしまった。

あの黒い翼が、彼女の神器なのだろうか?

 

「驚いたわ。人間風情が反攻してくるなんてね。でも、”龍の手”なんてそんなショボイ神器で、これを何時まで避けられるかしらっ!!」

「…おいおい」

 

忌々しいと言わんばかりに吐き捨てる夕麻ちゃんの周りには光の槍が5本浮かんでいる。もしかして、全部投げつけるって奴?

 

「ばいばい」

 

夕麻ちゃんの広げられた両手が閉じられると同時に俺に向かって5本の光の槍が発射された。

だが、この程度!

 

「遅いっ!!」

 

1本目はドライグで弾き、2本目から3本目は後ろに1歩下がってかわす。

腹に飛んできた4本目はドライグの掌で押すように弾き、頭を狙って放たれた5本目は再びドライグ甲で殴りつけて破壊。

 

まだまだ余裕だぜ!…?! って補充されとる! しかも増えてる!

 

「さっさと死になさいよ!!」

 

今度は10本もかよ! 落ち着け、イセリアの教えを思い出せ!

全体を見て、最小限の動きでかわせ。上半身はぶれさせない。特に敵から目を離さない!

 

「ッフ!!」

「ちっ、人間風情が粘るな!!」

 

飛んできた光の槍を、右横からドライグの甲で殴りつけて弾く。

 

良し、数は増えたが捌ききれないほどじゃない!

っていうかこんだけ大きな騒ぎなのになぜ誰も寄ってこないんだ?

 

(『どうする? ジリ貧だぞ』)

 

ドライグの言う通り、確かに今の俺はジリ貧だ。

俺はまだ遠距離攻撃はアレしかないし、空を飛ぶ手段は無い。

グミ撃ちも練習してはいるんだが、敗北フラグっぽくて身が入らないんだよなぁ。

 

(空を飛ぶってずるくね? こりゃ、さっさと禁手化しないとやばいかも。他に空中への攻撃手段なんてアレしかねーし)

(『アレか。撃ってみたらどうだ。ほれ、闘気を高めろ』)

 

”アレ”ってお前、ばればれのフォーム過ぎて絶対当たらないからやめろってイセリアにも言われたじゃん。

しかも撃った後、力抜けるし、またブーストし直しだし。

 

(いや、絶対かわされるだろ。お前はなんでそんなに余裕そうなんだっての)

(『こいつが話しかけてきた時点で救援を呼んでたからな。む、もう来てしまったのか。お前がノロノロするから手柄が取られてしまうぞ』)

 

「何!?」

「うおっ!」

 

俺の目の前まで迫っていた無数の光の槍が、右から飛んできた蒼い炎に飲まれて消えていった。

これは、この蒼い炎は…

 

「待たせたな」

「イセリア!!」

 

俺の横に軽やかに降り立つイセリア。初めて会った時のように巨大な槍と盾を持ち、蒼いオーラを放つ姿は神秘的で神々しくもある。

……ウェイトレス姿じゃなければ。

 

「なんで、ウェイトレス? 突っ込み待ちか?!」

「バイト先から着替える間も無く向かってきたんだから仕方が無いだろう」

 

バイト先ではこんな服装だったのか。胸元の肌を全く見せない点はマイナスではあるが、ミニスカートにニーソックスとは分かってるじゃないか!

 

なんてけしからん格好だ! けしからん、けしからんよ全く!

いいモン見れた! ありがとうドライグ!  流石ドライグ!!

 

「ぷぎゅう! な、何故踏む!」

「やっとる場合か」

『相棒……』

 

小銭が落ちてたから拾おうとしただけよ! べ、別に下から覗こうとしたんじゃないんだからねっ! イセリアの下着の色が水色だなんて知らないんだから勘違いしないでよね!

 

「…このっ…!! 人間が、…人間風情がァ…!!!」

 

今見たイセリアのパンツを脳内で何度も再生して感動していると、上空から酷く苛立った声が聞こえた。

コンクリに頬を擦りながら何とか上を見てみれば、まさに憤怒の表情の夕麻ちゃん。

女の子って、あんな顔も出来だね。ちびるかと思ってしまったZE☆

 

「…私を馬鹿にするなぁ!! 死ねぇ!!」

 

うわぁ光の槍がいっぱいくる~。

ってまだ、俺の後頭部にイセリアの足があって避けらんねぇ!!

 

「ふん」

 

視界の端に映るイセリアの槍が一瞬ぶれたかと思ったら、イセリアの眼前まで来ていた光の槍が全部一片に壊れた。

 

速すぎるだろ、頭を押さえられてるせいもあるけど全然見えなかったぞ。

でも、俺の上であんまり動かないでくれ。コンクリにぐりぐりされて痛いんですけど!

 

「はぶぅ!!」

「へぶぅ!!!」

 

俺の頭がさらに強く踏まれ、地面にめり込むように押し付けられた瞬間、空を飛んでいた夕麻ちゃんの女の子がするにはちょっとどうなの? 的な悲鳴が聞こえ、次いで何かが地面に衝突する音と金属音が響いた。

何が起こったのかはなんとなく予想がつく。俺の師匠様の勝利ってことが。

 

とりあえず、めり込んだ頭をコンクリから引き抜いておく。くっきりコンクリに浮かんだデスマスクは、俺なんで生きてるんだ? ってレベルじゃね?

 

「勝ち鬨を挙げろイッセー。この戦、私達の勝利だ!」

「今度は何の漫画に影響されたんだよ…」

 

イセリアのアホな台詞に突っ込みを入れつつも立ち上がってみれば、俺の目の前には槍を天高く掲げ胸を張ってロケットおっぱいを強調させるイセリア。槍と盾も喜びを示すように高速で回転し、イセリアの顔もドヤ顔満点だ。

 

そして歩道橋の手すりにもたれかかるように白目を剥いて気絶する夕麻ちゃん。夕麻ちゃんの顔は右頬をイセリアに殴られたらしく、おたふく風邪のように腫れていた。

この酷い有様を見ていると、命を狙われたとは言え流石に可哀想になってくる。

 

「で、結局何なんだったんだ?」

「さぁ?ヤンデレ?」

 

イセリアと二人揃ってクエスチョンマークを頭に浮かべる。

特にイセリアは来たばかりで状況がより掴めていないせいか、夕麻ちゃんの腫れた頬をそのドリルのような槍の穂先で軽く触れるようにツンツンする。

頬に槍が当たるたびに激痛が走っているようで、夕麻ちゃんは白目のままビクンビクンしている。

 

こら、イセリア! 追い討ちはやめてあげて!

 

『こいつは、堕天使だ』

 

っ!? …今、ドライグが聞き捨てられない事を言った!

瞬時にイセリアとアイコンタクトをすれば、お互い言わんとすることが解った。

すぐさまイセリアと背中合わせにそれぞれカッコイイポーズをとる…!

 

「「ダーク☆エンジェル! …だと?!」」

『うぜぇ!! 真面目に聞け! 妙なポーズをするな!!』

 

すげぇ剣幕で怒られちまったぜ。こうなった時のドライグは手がつけられないので、2人揃って大人しくショボン顔で話を聞くことにする。

 

『いいか、堕天使ってのは元々神に仕えていたのが邪な感情を持って地獄へ落ちた連中だ。そして、元々地獄にいた悪魔と覇権をかけて争い、其処に神から堕天使と悪魔を滅する命を受けた天使が入って3竦みの状態と言うわけだ』

「「へぇ~」」

 

正直、オカルトは解らん。手に暗黒龍は宿ってはいるが、そういったヘンテコオカルトにはまるで興味ないのだ。

イセリアなんていかにも興味なさ気に、歩道橋の手すりにおっぱいを乗せながら夕日を眩しそうに眺めている。相変わらずいいおっぱいだぜ。

イセリアにつられて俺も夕日を見れば、太陽の綺麗なまん丸さに隣のイセリアの美乳(生)を思い出してきた。

 

あの時、始めてみたイセリアの裸体は、今まで見てきたどのエロDVDやエロ本の女性達の裸よりも、芸術的といったらいいのか、圧倒されるほど美しかったなあ…。

特におっぱい。あの夕日のように美しい曲線を描いていたぜ…。

 

『…真面目に聞けよ、ア”ァ”!?』

「「はい!」」

 

俺たちが真面目に聞いていないことが解って、ドライグはマジで切れる5秒前だった。

もうドライグの奴、完全にその辺のヤンキーになっちまいやがった…!

 

『相棒が狙われた理由は、俺が相棒に宿ってるからだろう。俺は神滅具に当たるって話はしたな。だからこそ、堕天使の連中は脅威を感じて相棒を殺そうとしたわけだ。他の勢力に行かれる前にな』

「ならイッセーはこのまま狙われ続ける、と言うことか?」

『ああ、そうなるだろうな』

 

マジかよ…。本気でやばいんじゃねーのか?

今日の夕麻ちゃんみたいなのが団体さんで来るって言うのか? 

みんな空飛んで? 空中戦は不慣れだってのに。

 

「先生~、あの人たちな~に!?」「うわ~!!おっきい剣だ~! すっげぇ~本物かな!?」

「あの羽の人、倒れてるよ?」「あのお兄ちゃんの腕、かっこいい~!」

「な、なにかしらね? み、みんな見ちゃだめですよ!」

 

!?やべえ、長居しすぎた! さっきまで全然人来なかったのに、幼稚園児の団体が来やがった!

やばい! どうみても俺達変質者で、暴行罪か何かしたあとだ!

 

「イッセー! アレだ!」「!? 良し!!」

 

イセリアから飛んできた力強い声で、俺は瞬時にやるべきことを理解した。

 

イセリアと息を揃えて園児達の前で再び背中合わせにポーズ!

俺とイセリアはそれぞれ左手とその手の槍を突き出すように見せ付ける。

 

園児達は俺たちの突然の行動に驚いたのか、目をまん丸として見詰めて来る。

 

「我が手に宿るは真紅の篭手! 悪鬼羅刹を許さない、ドラレッド!!」

「我が手に宿るは蒼穹の槍! 天に代わって悪を討つ、ヴァルブルー!!」

 

「「2人そろって」」

 

瞬時に位置を入れ替わってイセリアの槍の上に左手の肘を乗せる!

 

「「蒼紅の騎士《あおべにのきし》、ドラヴァル!!」」

 

決まったな…!! 『語呂悪っ』うっさいドライグ!

 

「「「「わ~!!!」」」」

 

語呂は悪くても園児達の心は確りつかめたようだぜ! 

 

夕麻ちゃんを槍を盾にしまったイセリアが肩に担ぐ。

走りよってくる子供達に捕まらないように俺達はクールに去るぜ!

 

「「さらば!!」」

 

歩道橋から飛び降りてダッシュで逃げる! 園児達の俺たちを引き止める声が心に響くぜ!

 

上手く言ったな! と言おうと俺と並列に走るイセリアを横目でチラッと伺えば、

 

「……おい、今更恥ずかしがるなよ、イセリア。お、俺まで恥ずかしくなってくるじゃねーか」

 

イセリア、み、耳まで赤くなってやがった。今、振り返ると、俺達って、あれ、うん…。

学校の連中に今の見られてたら、俺、死ぬかも…。

 

「……あ、ああ。で、っでも、け、結構決まってたよな?」

「あ、ああ。き、決まってた」

 

俺達は昨日を振り返らない。なぜなら、俺達は悪を討つヒーローだからさ!

 

 

2人で恥ずかしがりながら走っていれば、何時の間にか俺達はいつも訓練する公園へとたどり着いていた。

太陽は沈みかけ、夜と夕方の間の紫色の時間。公園の電灯はまだついておらず、薄暗くなっている。

この公園は何時も人が少なく、寂れた雰囲気だが便利なところだ。

 

『で、そいつはどうするのだ?』

「夕麻ちゃんのことか…」

 

確かに、俺達を狙う組織の手先。どうすればいいのか判断出来そうにない。

 

「そうだな、……ちょいさー」

 

夕麻ちゃんを肩に担いでいたイセリアが、軽い掛け声と共に彼女を投げ捨てた。

ん、投げ捨てた?

 

「おいぃぃぃいいい!!! イセリアァァアア!!!?? 何してんの!!!??」

 

イセリアの余りの暴挙に開いた口が塞がらない。何ドヤ顔で良い仕事したみたいな感じになってんだよ!

 

イセリアの見た目からは信じられない膂力で投げられた夕麻ちゃんは綺麗な放物線を描きながら公園の木々の中へ消えていった。

 

「殺せば私達は死体の処理が出来ないし、家につれて帰れば仲間を呼ばれるかもしれない。故に投げ捨てるのが一番だ」

『まあ、俺達に出来る最善ではあるな』

 

この2人、こんなことしても平然としてやがるっ…! お、鬼だ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは俺の部屋。俺は投げ捨てられた夕麻ちゃんの事をなるべく考えないようにしながら、マイハウスへと帰還していた。

夜のご飯は母さんが作っており、まだ時間がある。

イセリアはベッドに座り、俺は勉強机のほうに座って作戦会議中って訳だ。

 

「とりあえず、これからは学校まで私と一緒に登校するぞ」

『うむ、確かにそれがよかろう』

 

!? 何ィ…! こ、これはある意味ビックチャンス!

今までイセリアの事は誰も信じてくれず俺の妄想だと言われていた。それを見返し、俺がリア充で、って彼女とか嘘ついてたぁアアア!!

やべぇええ!! イセリアにころ、殺される…!

 

初めてマジ切れしたときのイセリアが、俺の脳裏に鮮明に蘇ってきやがる…!

 

「今からそんなに怯えていたら、これから持たないぞ、イッセー」

『うむ、この俺の相棒ともあろうものが情けないぞ』

 

純粋に心配してくれる2人の気持ちに心が痛いです…。

 

「そんなに心配なら私が秘密道具をあげよう」

 

ごそごそと戦闘状態よりずっと小さくなった盾を漁るイセリア。

あの盾にはあの巨大な槍やイセリアの戦闘服などが収納されている謎の異次元空間がついている。イセリアの七不思議のひとつだ。

 

「てってててってて~♪ ラグナイト手榴弾~!」

 

未来的青狸のようにだみ声で喋ろうとしているのは解るが、全く出来ていない。

というか、取り出したものは貰っても全く安心できねー!!

 

「使い方は簡単、ピンを抜いて相手に投げるだけ!殺傷範囲は25mと素晴らしい威力だ」

 

ドラ○もんの真似を出来たおかげか、ニコニコと嬉しそうに手榴弾を手渡してくるイセリア。

殺傷範囲の広さに愕然としてしまうし、純日本人の俺にとっては手の中の手榴弾が恐ろしくて仕方が無く、恐怖で手がプルプルと震えてしまう。

 

「要らんわ!! こんなモン怖くて持ち歩けるか!!」

 

こいつの盾に入っているものは物騒なものが多すぎなんだよ、全く!

手榴弾を突き返せば、不満そうにジト目で此方を睨みつけてきやがる。

 

「つまり、殺傷能力の無い物がいいんだな。仕方ないなぁ~の○太くんは」

「だれが○び太くんだ! 秘密道具という名の兵器は要らん!」

 

『話が進まん。続けるぞ』

 

流石にふざけすぎたのか、ドライグ先生に怒られてしまった。

イセリアも物凄く不満そうではあるものの、盾を漁るのをやめてくれた。

 

よかった、流石ドライグ先生。助かったぜ。

どう考えても次に出てくるのはスタングレネードとかそういうのだったろうし。

 

「送り迎えは私がすることにして、問題は学校の中か?」

『いや、寧ろ学校の中の方が安全だ』

「? …どういう事だ?」

 

イセリアも首を捻ってる。俺も、学校のどの辺が安全なのか解らん。

 

『学校には悪魔がいる。堕天使はそれで攻め込めまい』

 

あ、悪魔? 学校に悪魔がいるだと? 一体誰だってんだ。

 

「逆にそれは危ないのではないか? やはり手榴弾を携帯したほうが…」

『学校にいる連中は其処まで強くはない。相棒が禁手を使えば勝てる…といいなぁ』

「「希望かよ!!」」

 

そこは断言して欲しかった! お前の相棒を信じろよ!

 

『ま、まあこれ以上の対策はどちらにしろ出来んのだ。後はお前達が強くなるしかあるまい』

 

確かにドライグの言う通り、俺達に出来ることなんてお互いにカバーし合える様になるべく一緒にいるだけだ。

 

松田と元浜にイセリアが彼女だと嘘ついていた事については全く解決策も浮かばないが、美少女と登下校。なんていう素晴らしいシチュエーション。

 

自転車、自転車はないのか?! 俺の夢の1つ、一緒の自転車で登下校! ポイントは横乗り、そして背中に押し付けられるだろうおっぱいだ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イッセーの友達か? 私はイセリア、イッセーと共に住んでいる者だ。よろしく」

 

イセリアはそう言って右手を差し出したのだが、その手が握り返される事は無かった。

握手に答えられなかった事を不審に思ったのか首を掲げて目の前の変態2人組みを見て、次に俺のほうを不安そうに見詰めて来る。

 

「ば、ばかな…?!の、脳内妄想では、なかったのか…!?」

「ほ、本当の、ことだったと言うのか…!?」

 

握手に答えなかった変態2人組みは俺達の目の前で顎を大きく開けて固まってる。

ふっ…まあその気持ち、解らなくもないぜ。

 

「何か、可笑しいのか?」

 

なにせ今日のイセリアの服は何時ものワイシャツとジーパンみたいな適当な服ではなく、青のブラウスに、緑のカーディガン、そして白いスカートを履いて上品な大人の女性ファッション。さらには母さんに頼んで何時もはしない化粧までしているのだ。

昨日俺が土下座して頼み込み、女の子らしい格好を普段着でしてもらっているのだ! 本当ならもっと露出の多い服装が良かったけど、この変態2人組みになるべく見せたくなかったため、この服にしてもっらた。

 

「…イッセー、この2人どうしたんだ? 私の服が、お、可笑しかったのか?」

 

ちょいちょいと俺のブレザーの肩の部分をチョイチョイと引っ張るイセリアに、さらに変態2人組みは口を大きく開けて絶望の表情をする。

おずおずと、自分の服が可笑しくないかを確認する様など、普段とは違った弱弱しい印象で興奮するでしょうが!!

 

「この2人は変態こじらせただけだろ。何、気にすることはない 川´_ゝ`) 服はちょー似合ってるって。さあ、行こうぜイセリア」

「あ、ああ」

 

彼女って嘘ついてるのがばれないように2人からイセリアをとっとと引き離す。

 

わざと見せ付けるようにイセリアの手を引っ張って歩けば、元浜の握り締めるメガネに皹が入り、松田は血の涙を流した。

くくく、これが勝者の味と言うものか…!! 散々俺のことを馬鹿にしていた報いを受けるが良い!!

 

 

学園までの道、イセリアに視線が集まる。どいつもこいつもイセリアの美貌に見とれて間抜けに口をポカンと開け、次いで俺を見て悔し涙を流す。

俺に対する怨嗟の視線や言葉が聞こえてくるが、今の俺にはもはや負け犬どもの遠吠えにしか聞こえん。

 

くくく、これまで俺を電波とか、脳内彼女とかキモーイとか言っていた女子生徒が目を皿にして凝視するさまはお笑いだったぜ!

 

「イッセー、イッセー? なに1人でぶつぶつ言っているんだ?着いたぞ」

「フハハハ、ってもうかい!?」

 

俺の顔を覗き込んでくるイセリアに、周りを見渡してみれば既に校門の前。

もう少しこの優越感を味わって居たかったと言うのに…。いや、でもこれからは毎日だもんね!

 

「はい、お弁当」

「あ、ああ。ありがとう!」

 

校門の前でイセリアから弁当を手渡してもらう。…良い!何だこれ、家で既に作られて机に置かれている弁当をカバンに入れて学校に行くのとは違う! この胸に来る熱い想い!! なんて、すばらしいんだぁ!!

 

ちなみに、血の涙を流しながらゾンビのように着いてきていた元浜と松田は、この光景を見た瞬間に崩れ落ちた。

それとは別に視界の端で何人かの男子生徒が校門を殴っているのが見えるが見えないふりをしておこう。…ていうか、手の皮擦り剥けてるぞ。学園の壁が凄く、…ホラーです。

 

だが、そんな光景など今の俺の幸せフィールドの前には無意味だ。思う存分俺を祝福する太鼓を鳴らすが良い!

 

「…ところで、私が持っていたことに何か意味はあるのか?最初からカバンに入れておけばいいのに」

「ある!物凄く、ある!」

「あ、ああ。解った」

 

危ない、辞めさせられるところだったぜ。

全くイセリアはわかっちゃいねえ、この行動こそに意味があるというのに。

 

「じゃあ、行って来るぜ!また帰りにな!!」

「ああ、いってらっしゃい」

 

校門から微笑みながら手を振って見送ってくれる…!

ああ、今日は彼女が出来たらやって欲しいことBEST30を次々にやってもらえてる! いいのかこれ、俺今日死ぬんじゃないか?!

 

(『アホみたいに浮かれるのは良いが、校内に悪魔がいることを忘れるなよ』)

(大丈夫だ! 今の俺は無敵だ!! すげぇ力が湧いてくるぜ!!)

(『そういえば、お前が初めて禁手化した時はイセリアの裸を見たときだったな…。確かに力が上がっているような気がする。なんでこんなんでレベルアップするんだ、お前は…?』)

(漢だったら、これをされてパワーアップしないわけねえだろ!)

 

なにせ俺、幸せを見つけるたびにパワーアップ出来るぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

朝のことで気合十分、やる気満点の俺だったのだが…

 

(悪魔、全然こねえなぁ。もう放課後だぜ)

 

悪魔らしい奴は全く現れやしねえ。

ドライグの勘違いじゃねーのかって思っちまうほどいつも通り長閑な一日だった。いや、変態2人組みがダウンしていたお蔭で何時もより静かな一日だ。

確かに今まで来なかった連中が、昨日の今日でいきなり現れるってのも可笑しいか。

 

(『学生やってるからな、悪魔も』)

(だにぃ!!? 学生かよ!?)

(『悪魔は来てなくてもゾンビなら来たようだぞ』)

 

悪魔が学生って……ゾンビって何だ?

 

「いっせぇ~…くぅ~ん…!! 俺達と、ちょっとぉ…お話ぃ…しようかぁ~…!!」

「そうぅぁ…だ…せ、説明…を、求めるぅ~…!」

「うおっ! お前ら復活したのか?! ていうか、気持ち悪っ!」

 

今日一日、机に突っ伏していた変態2人組が現れた。顔は干からびたかのようになっていて不気味さが凄まじい。

俺の机に齧りつく様にくっ付く様子はまさにゾンビ。

こいつらがドライグの言っていた悪魔なんじゃねーのかと思うレベルだ。

 

「今まで、散々言ってたろーが。あいつがイセリアだ」

「「う、裏切り者~!!」」

 

俺の言葉にゾンビたちは涙を流しながら走り去っていった。

DVDを貸して貰えなくなったら困るし、あいつらのためにイセリアにバイト先のお姉さんたちを紹介してもらおう。

喫茶店とか言ってたし、綺麗なお姉さんの1人や2人ぐらい居るだろ。上手くいくかは知らんけど。

 

(『来たぞ、悪魔』)

 

今日は来ないと思っていたが、ドライグの言葉に俺は気持ちを切り替えて周りを警戒する。

俺の周りはクラスメイトぐらいしかいない。”来たぞ”というドライグの言葉からクラスメイトが悪魔なのでは無く、外から来るのだろうと俺は当たりをつけて扉の向こう側に注意する。

 

昨日のようにイセリアの手は借りない、学園の中の事は俺自身で蹴りをつけねーとな。

 

(どいつだ、ドライグ?)

(『お前でも直ぐにわかる』)

 

直ぐに解る?

? 廊下から女子の黄色い声…? まさか…!

 

「やあ、兵藤一誠君。今良いかい?」

「お前は…」

 

教室の扉から現れたのは全女子生徒の憧れにして、全男子生徒の敵。木場祐斗だった。

 

まさか、この男の敵が悪魔だったとはな。

ぶっ飛ばしやすくて俄然やる気が湧いてくるぜ!

 

「僕は只の使いだよ。だから、そう身構えないんで欲しいんだけど」

 

俺が右半身を引いて左手を前に出す戦闘状態なのに対し、木場の姿はこっちに警戒心を与えないためか体の力を抜ききっている。

舐めてんのかとムカついて来るほどだが、流石に俺の間合いには入らないらしく一定の距離を置かれている。

 

「使い…?」

「リアス先輩のね。着いて来てくれるかい?」

 

まさか、あの美人の先輩まで悪魔だったとは…!

こいつに着いて行けば、あの先輩が待ってるって訳か。いや、もしかしたら先輩は俺を誘うための釣り得で、この学校中の悪魔が大量にいるって事か?

 

(どう、思う?)

(『十中八九罠、もしくはお前を下僕にしようとしてるかだな。イセリアが迎えに来るのは4時半だ。まあ、行っても構わんのじゃないか?罠ごと食い破って逆に悪魔共を味方にしてやるぐらいの気概を見せろ』)

 

俺への信頼の証か、ドライグの声は楽しげに弾んでいた。

相棒にここまで期待されたら、引くわけにはいかねえな。

 

「…良し、解った。着いて行く」

「助かるよ」

 

上手くいけば悪魔の後ろ盾がついて、イセリアや父さん母さんの身の安全に繋がるかもと思えば、一層気合も入るぜ。

 

 

 

 

リアス先輩のところへ木場の案内で向かう途中、様々な女の子が木場に話し掛け、デートの誘いやラブレターなどをこの野郎はもらいやがった…!

 

「気が高まる…!! 溢れるぅ…!!!」

「ひょ、兵藤君?な、なんでそんなに怒っているんだい? っていうか見た目が凄くごつくなってる気がするんだけど…?! そ、そのオーラはなんだい?!」

「お前の、当て付けツアーのせいだろうがっ…!!」

 

この野郎、マジで悪魔だぜ。女の子達を次から次へと、こ、この野郎…!!!

体中から闘気が溢れ出すのがわかる。全身に嘗て無いほどの力が沸き起こり、今の俺はまるで”禁手”状態のようだ。

 

「俺は今まで”幸福”が俺のエネルギーだと思っていたが、純粋な”怒り”でもパワーアップできるみてーだぜ…!!」

「ちょ、ちょっと落ち着いてよ…! ほら、もう着くよ!」

「待てこら、逃げんな!!!」

 

木場は俺にクルッと背を向け脱兎の如く逃げ出した。

怒りで我を失いかけている俺にその行為は火に油!絶対に無事には済ますまいと俺も猛ダッシュで追いかける。

 

木場の野郎、かなり足が速えーな。素の俺じゃ追いつけそうに無いな。おのれ、小賢しい…!

だが、今貴様は墓穴を掘っているのだ…! こっちは人の殆どいない校舎の裏手だ。人目が無くなったらドライグでボコボコにしてくれるわ…!!

 

「逃すかぁ…!!!」

「ちょ、落ち着いて、ほら、ここの二階だよ!!」

 

木場が逃げ込んだ先は旧校舎だった。旧校舎は木々に囲まれた木造校舎で、壊れた部分が人目ではわからないほど小奇麗な校舎だ。

人気が無いのにその小奇麗さが怖いと噂の場所だが、烈火のごとく怒りに燃える俺のハートは臆することなく突撃した。

旧校舎の中は積もった埃や蜘蛛の巣が無いほど綺麗で、こまめに掃除している様子が伺える。

 

木場は何処へ消えたかと周りを伺えば、階段の方から駆け上がる音が聞こえてきた。

奴は二階にいる。

俺は奴に鉄槌を下さねば…!

 

『いい加減に落ち着け。ここは悪魔の陣地だぞ』

 

燃える心のままに階段を駆け上がろうとした時、ドライグの声で頭が冷えた。

 

そうだった、俺は家族の安全の為にも下手は打てない。ここは真面目にならなくては。

だけど、木場の野郎むかつく~!!

 

『お前も他から見れば今朝の行動は似た様なものだろう』

「いいや、違うね! あのもてキングとは違うね! いいかドライグ、お嫁さんは1人に1人、そして男子の出生率の方が女子の出生率より高い、普通にしていても男子が1人あぶれる。この意味、解るな」

『解らんわ』

 

全く、ドライグの奴は鈍いな。

呆れた声を出すドライグに、この日本、ひいては世界を襲う恐ろしい危険を教えてやらねば。

 

「つまりあいつは数多の女性を誘惑することによって、日本の出生率を下げて世界を滅ぼすつもりだったんだよ!」

「そんな訳ないでしょう」

「!?」

 

紅い、一度目に付いたら離れない鮮やかな紅の髪。

 

声に反応して見上げた先、階段の踊り場の先には美しい紅の少女、学園のマドンナ、リアス先輩が居た。

 

「始めまして、兵藤一誠君。いいえ、”ドラレッド”君」

 

そう言って唇の端を上げ魅惑的に微笑むその姿に、俺は一瞬此処へ来た目的も忘れて見惚れてしまった。

 

ん?い、今、なんて言った?

 

「つかぬことをお聞きしますが、今、何て…?!」

「ド・ラ・レ・ッ・ド・く・ん。そう言ったのよ。朱乃、あれ」

「はい、部長」

 

今、耳に入った言葉を理解する事を、俺の脳は拒否した。

現実逃避にイセリアとリアス先輩のおっぱいの大きさ、どちらが大きいか考えていると再び俺の視線に何かが入り込んできた。

 

現れたもう1人は、綺麗な黒髪をポニーテールで束ねる和風美人と名高い姫島先輩だった。

階段の踊り場に現れた姫島先輩は、手に持ったハンドビデオの映像を俺に見せた。

その小さな液晶の映像の先には…

 

 

『我が手に宿るは真紅の篭手! 悪鬼羅刹を許さない、ドラレッド!!』

『我が手に宿るは蒼穹の槍! 天に代わって悪を討つ、ヴァルブルー!!』

 

『『2人そろって』』

 

『『蒼紅の騎士《あおべにのきし》、ドラヴァル!!』』

 

 

空気が、凍った。いや、正確には、俺の時間が止まった…。

………。

…。

 

「…うわぁああああああああ!!!???」

「あら、いい声ね」

「落ち着きなさい、朱乃。でも、元気がいいのねドラレッド君は」

 

ぎゃあああ!! 見られていただと…!!

 

「「よろしくね。ドラレッド」」

 

そう言って微笑む2人の先輩に、俺はこの人たちが本物の悪魔《ドS》である事を理解したのだった。

 

 

 




捏造設定

~ドライグの通信機能~
 ドライグの声が一誠達に聞こえる前、篭手で遊んでいたイッセーとイセリアは、篭手の一部を剥いでネックレスにしている。ネックレスを持っているものとドライグは念話のようなものが使えて、携帯電話要らずとなる。
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