赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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1週間ぶりの更新です。
思ったより感想多くてビックらでござる。
しかし、作者。土日しか書く時間がないのでござる。
なるべく土曜日更新で頑張りまする。


全て嘘です!!

喫茶、マウンテンキング。私の働いている小さな店だ。

喫茶店の名前の由来は単に店長のお婆ちゃんの苗字が山王さんと言うだけであり、山にちなんだ名物があるわけでもない普通の喫茶店。悪く言えば寂れた喫茶店、よく言えば趣のある喫茶店だ。

唯一、この喫茶店の変わっているところはこのウェイトレス用の服だろうか。此処の店員は誰でもこの服を着ている。そう、店長のおばあちゃんもこの服を着ているのだ。ミニスカートとか自重して欲しいものである。

まあ、そんな喫茶店だから客は多いとは言えない。

利用客はこの喫茶店のある商店街の店員が主で、同じ時間で働く店員はアルバイトと店長のたったの2人。

そんな店が私のバイト先だ。給料はもちろん安い。

 

午後3時32分。

今日もいつも通りに客の居なくなったテーブルをピカピカにする。

ちなみにこの時間の店長さんは、カウンターに座ってウトウトしてる。

 

「…はぁ」

 

また、ため息をついてしまった。流石に客の居る時や店長さんの前ではしていないが、1人の時はどうしても出てしまう。

私のシフトはもう直ぐ終わり、次のミルたんさんがもう直来るのだが、学校に居るイッセーが無事かどうか不安で仕方が無い。

ドライグの言っていた悪魔と言う存在が、どういった存在なのかも解らないし、昨日の堕天使の件もある。

やはり手榴弾の1つくらい持っていって欲しかった。

 

もしもを考えると、気が逸って居ても立っても居られない。例えば、悪魔がこんな奴だったら…

 

 

ケース1

 

「ドラゴン波ァ!!!」

 

赤龍帝の鎧を纏ったイッセーの至近距離からのドラゴン波が相手に命中した。

禁手化し、更にBoostによって強化された気の破壊力は、たとえヴァルキュリア人でも甚大なダメージを負わせられるだろう威力。

それをこの至近距離から当てられれば、無事で済む者などこの世に1人も居ないだろう。

ドラゴン波を受けた相手は、その直撃によって生じた爆煙の中に消えていった。

 

「やった…、勝っ…!? な、…あ、ああ…!!」

「なんなんだぁ?今のはぁ?」

 

だが煙の晴れた先には、その男が何の怪我も無く、後ずさった様子すら見せず、ただ悠然と立っていた。

ドラゴン波はその男に、まるで蚊に刺されたほどのダメージすら与えていないのだ。

 

『馬鹿な!! ドラゴン波が効いていないだと!? ば、化け物か!!?』

 

ドライグの切羽詰った声が響き、イッセーは自らの最強の必殺技を防御すらせず防がれたことに絶望を隠せず、ただ立ち尽くす事しか出来ない。

 

「俺が化け物? 違うな。俺は悪魔だぁ…!! フフ、フハハハハァ!!!」

「あ、悪魔たん…!!」

 

遂には、赤龍帝の鎧が力なく消滅し、イッセーは絶望のまま目の前で嘲笑う男を見上げることしか出来なくなった。

そして、その男の手のひらに集まる緑の光。

 

「とっておきだぁ…!」

 

星そのものを爆発させるほどの破壊の光が、イッセーに直撃した。

 

 

……………。

……いや、無い。流石にナイナイ。ブ○リーはない。

そんな奴が居るとしたら既に地球は滅茶苦茶どころか、堕天使と天使なんて一瞬で殲滅されてる。

 

首をブンブンと振って、イッセーがブロ○ーにやられる嫌なイメージを追い払う。全く、縁起でもない。

私の知っている悪魔の中でイメージで一番強い奴が出てきてしまった。

昨日の堕天使とか言う奴はワンパンで沈む雑魚だったし、だからこそ悪魔も似たような強さの奴のはず。

なら、こんな奴か…?

 

 

ケース2

 

「ヒーホー! こいつらの命が惜しかったら下僕なるホ~!」

「恐怖のズンドコに落ちるホ!」

 

雪だるまに青い帽子の白い生物と、ハロウィンのかぼちゃ頭に三角帽子とマント、手にはランタンを持った謎の生命体が、イッセーの宝物を手に持ったランタンの火で脅しながら迫る。

 

「そ、それだけはやめてくれ!! そいつらはイセリアたちに見つからない様に必死に集めた俺の宝物なんだぁ!!」

 

鼻水と、涙を流しながら己の宝物の命乞いを必死にするイッセー。

 

「ていうか、何故持っているんだ! 絶対に見つからない隠し場所に隠したはずなのに…!」

「簡単だったホ~」

「部屋の床を改造してベットで隠してるつもりだったホ? 馬鹿だホ、一部だけ床が盛り上がってたらバレバレホ! 兵藤家みんな知ってたホ!」

「あんなの逆に見つけてくれっていてる様なものホ~!」

「なん…だと…!!??」

 

謎の2体の生命体からもたらされたの情報に、何時ぞやのように膝から崩れ落ちるイッセー。目の光が消え、ただ床を見詰めることしか出来ない。

 

「さあ、オイラ達の尖兵となって世界征服ホ~」

「もう、燃やしちゃうホ?」

 

ランタンに照らされた先には、イッセーが買い集めたエロ本とエロDVDが悲しく光り輝いていた。

 

「うう、…助けてぇ!! どらえ…イセリアァーー!!」

 

 

………。

……ありえる! 間違いない、今学園ではこんなことになっているに違いない。

 

ドライグから通信が入らないか赤いネックレスを見詰めてみるが、ウンともスンとも言わない。

これが反応していないという事はまだ何も起きていないと思うのだが、やっぱり気になって仕方が無い。

 

「…はぁ」

「ため息ついて、どうしたにょ?」

 

1人だと思っていたが、何時の間にか背後をとられていたらしい。常の状態なら気付けたんだが、どうにも私は相当参っているらしい。

 

「…ミルたんさん」

 

私の振り向いた先にいたのは、素晴らしい肉体美を持ち、それを一切隠すことなくピチピチの服とスカートを着用して見せ付ける漢の娘”ミルたん”さんだ。

魔法少女?に憧れているらしく、コスチュームは魔法少女らしい。猫耳がチャームポイントらしい。

私は戦隊ヒーローか、仮面ライダー派なので、私にはよく解らない世界だ。

ちなみに結構な実力者で、油断していたとはいえこの私の背後をとれるほどの猛者でもある。

 

「困っているなら相談に乗るにょ。魔法少女の務めにょ」

 

ミルたんさんの目は、私の事を真剣に心配してくれているらしく真摯な色が見て取れる。

ミルたんさんはその見た目とは裏腹に、とても綺麗な心を持っている。この人になら相談しても問題ないかと、私に思わせるほどだ。

 

「実は……」

 

だからか、私の口は自然と動いてしまっていた。

 

「…なるほどにょ。つまりそのイッセー君が大切で、堕天使さんや悪魔さんに狙われていないのか不安って訳にょ」

「…ええ」

 

喋ってから思ったのだが、幾らミルたんさんとは言え悪魔だの堕天使だの口走ってしまっている私は、相当危ない奴に見えるのではないだろうか?

不安になってミルたんさんの様子をちらりと見上げるように伺えば、私の考えは相当な杞憂だったらしくミルたんさんは私の相談を真剣に考えてくれている。

 

「簡単な事にょ。今から迎えに行くのだにょ?その時に宿敵の悪魔さんを仲間にしてしまえばいいにょ」

「!」

 

ミルたんさんの言葉。それは、盲点だった。

確かに学校に居る悪魔達を仲間にしてしまえば、イッセーの安全は確保したようなもの。危険度は一気に無くなる。

敵と相対した場合に私が思い浮かぶ考えは、殺す、半殺し、捕虜、拷問、逃す、だけで、仲間にするという選択肢が無かった。

私は何時の間にやら、母上と似通った考え方になっていたのかも知れない。反省しなくては。

 

それにしても流石はミルたんさんだ。相談してよかった。

 

「ありがとう、ミルたんさん。…仲間にする、うん。頑張ってみる」

「敵対する宿敵さんとも仲良くなる。それでこそ、魔法少女にょ。同士イセリア、頑張るんだにょ」

「ええ! 後、私は魔法少女じゃないから」

 

ミルたんさんは私の事を魔法少女の同士だと思っているらしく、それさえなければなぁと思わずにいられない。私は18歳だし魔法少女が許されるのは小学生までだから無理だ。どっかの、高町なのなんとかさんみたいに魔法少女と言い張るのはどうかと思う。

 

しかし、悪魔と仲良くなるにはどうすれば良いのだろうか?MAGとか、マッカ的な物が必要なのかな?

 

まだ時間には早かったが、店長とミルたんさんの好意に甘えて、逸る気持ちのままイッセーの元に向かった。手にはイッセーの宝物を取り返せるようにキャンディやチョコレートのお菓子を大量に持って、ちょっとだけ悪魔と会えるのを楽しみにしながら。

 

だが、明るい気持ちでいられたのも学園に着くまでだった。

いつも冷静なドライグの切羽詰った声とイッセーの友人達からもたらされた情報は、私の背筋を凍らせるほどの衝撃を与えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧校舎二階、扉にオカルト研究部と描かれたプレートをかけられた部屋の中。

壁や床、天井に至るまで謎の文字が書かれ、部屋の中央には謎の魔方陣まで描かれている。

そんな怪しさ抜群の部屋の中で、俺こと兵藤一誠は悪魔によって殺されそうになっていた。

 

 

『我が手に宿るは真紅の篭手! 悪鬼羅刹を許さない、ドラレッド!!』

『我が手に宿るは蒼穹の槍! 天に代わって悪を討つ、ヴァルブルー!!』

 

『『2人そろって』』

 

『『蒼紅の騎士《あおべにのきし》、ドラヴァル!!』』

 

 

「フフフ、何度見ても面白いわね」

「…面白いです」

 

主に羞恥心でな!

どSな笑顔で俺の心を抉ってくるのは3年生、黒いポニーテールが特徴的で学園の2大お姉さまの1人、姫島朱乃先輩。映像が再生されるたびに俺が頭を抱えるのを舌なめずりして見ている。

そして吃驚するほど無表情で言ってくるのは銀髪が特徴で、男女を問わず小さくてカワイイと評判の塔城小猫ちゃん。此処まで無表情で見られると逆にダメージを受けえるんですけど。

 

「あ、あははは」

「朱乃、そろそろ許してあげたら?」

 

この部屋の悪魔で唯一の男子の金髪イケメン野郎の木場祐斗には”引くわー”見たいな顔で苦笑される。

もう1人のお姉さまのリアス・グレモリー先輩は紅茶を飲みながら呆れた様子で、おざなりに姫島先輩を止める。

 

悪魔と思わしき連中と共にテーブルを囲んで座って見せられる映像。もう昨日の映像は3回目のリピートを迎えていた。

 

もうやめて! 俺のライフはゼロよ!

 

(『ドラレッド、いつまで落ち込んでいる。此処は敵地だぞ』)

(お前までドラレッド言うな!)

(『何を言う、ドラレッド。良い名じゃないか、ドラレッド、…ククク』)

 

こ、こいつ、暗黒☆赤龍って呼んでたのを根に持ってやがる!

味方はいないのか?!

だ、誰か助けてくれーーー!

 

俺の心が助けを求める絶叫を挙げた時、その祈りが天へと通じたのか救世主が現れた。バリンッ!! と窓ガラスを割って飛び込んできたその蒼い影は、俺にとってまさにヒーローだ。

 

突然の襲撃に、何事かと腰を浮かせ戦闘状態になる先輩達。

俺も先輩達が襲い掛かったときにイセリアを援護出来る様、彼らの背後をとる。

 

「イッセー!! 尻は無事か!!?」

 

だが救世主イセリアの意味不明な叫びが場を凍りつかせ、今にも襲い掛かりそうだった先輩達を一瞬で止めた。

俺も何か耳が可笑しくなったらしく、変な言葉が聞こえてしまったぜ。

 

「あれ…? 木場とかいう同性愛者の変態に、襲われたって…」

「ぼ、僕?! 同性愛者?! ちょ、ちょっと!!??」

 

イセリアの衝撃的な発言に、木場は自分を指差して抗議の声を挙げた。

しかし、今のイセリアを前にその行動は悪手。部長達に困惑していたはずのイセリアは憎き仇を見つけたように鋭い目で木場を睨みつけた。

 

「貴様か…!! そうか、そういうことか!」

 

何がそうなのかは解らないが、イセリアの怒りのゲージは振り切れてしまっているらしい。

高速で回転する槍が木場へと突きつけられた。

イセリナの纏う蒼いオーラがその感情に反応してか、今まで見たどの時よりも燃え上がり、長い銀の髪が逆立つ。

蒼い炎は部室の天井まで立ち上り、纏っているイセリアの姿を殆ど見えなくさせるほど。蒼の中の輝く真紅の瞳が、俺たちの心臓を鷲掴みにするほどの恐怖を与えてくる。

 

「手篭めにした女と共にイッセーを嬲る気だったとはな…!恥を知れ! 外道!!」

「えぇ!! ちょ、違うよ!! ひょ、兵藤君! と、止めて!!」

 

イセリアの凄まじい威圧感の前に誰もが近づくことすら出来ない。蛇に睨まれた蛙の如く動けないのだ。

かく言う俺も冷や汗が止まらないが、このままでは死人が発生するかも知れねえ、止めなければ…!

 

「や、やめろ、イセリア、落ち着くんだ!」

 

ダメでもともと、イセリアにビビッてしまってのへっぴり腰のままではあるが何とか説得して止めようと近づくが、ビビリすぎて声が震えてしまったぜ!

 

「!?…まさか、その動きはすでに…!!」

 

? 小さな声だったせいで何を言ったか聞こえなかったが、俺を見て何かを呟いたのは確かだ。ついでに息を呑むように驚く雰囲気を感じはした。

しかし、どうやら説得は失敗したらしい。

 

「イッセー、加害者を庇う必要はない! さあ、変態。覚悟はいいか…!!」

 

聞く耳持ちません。全くダメだこりゃ。

よく解らないがイセリアの奴、物凄い勘違いしてる。いや、この部室で行われた仕打ちを考えればあながち間違っていない。間違いなく俺は精神的に蹂躙されていたけど。

木場が未だに助けを求めているが、今のイセリアさんは物凄く怖いので俺にはもはや止められんのだ。すまない。犠牲になってくれ。

 

「ちょ! 兵藤君! 何逃げてるの!!」

「すまない、木場。お前の事は忘れない」

 

逃げようとしてたら木場に引き止められたが、とりあえず敬礼で返しておく。

いや、マジで無理。だってもう、部室中イセリアのオーラで真っ青だし。

何より一度怒らせたことのある俺には、あの状態がいかに危険か身をもって知っているのだ。

下手をすれば、旧校舎そのものが無くなる。だが、木場1人が犠牲になればそれは回避できるのだ。

 

べ、別にもてキングが酷い目にあえば良いなんて、思ってないんだからね! 

 

『落ち着かんか、馬鹿者。相棒の尻は何の問題も無い』

 

何時の間にか赤龍帝の籠手が俺の左腕に現れていて、ドライグの冷静な声が部室に響いた。

 

お前よくあの状態のイセリアに話しかけられるな。

というより、もっと他の言い方は無いのか。尻が問題ないってなんだよ。

 

「落ち着いている。今こいつを消滅させるから待っていろドライグ」

 

その地獄から響くような声は、もはやどっちが悪魔か解らないほどだ。

あのイセリアに殺気の向けられる木場はもはや立っていることすら出来んらしく尻餅をついた。

解ります。俺も昔そんな感じになりました。

 

『大体さっき俺が言った、相棒の尻が木場に襲われている、というのは嘘だ』

「「へ?」」

 

聞き捨てならない事言いやがった! 原因、お前かい!!ていうか、ホモネタはやめろ!

 

『相棒が余りに情けないことになっていたから助けを求めただけだ。だが、いつも通り普通に呼んでいたらつまらんだろう? ちょっとしたお茶目だ。許せ』

 

あっけからんと続けて言うドライグ。

イセリアも呆気にとられたのか、身にまとった蒼い炎は減衰していつも通りに戻って蒼い炎で見えなかったイセリアの姿が見えるようになった。

 

「え? じゃ、じゃあ、さっき言ってたイッセーが旧校舎に連れ込まれて拉致監禁とか、口ではとても言えないようなことをされてもう立ち直れなくなってるっていうのは?」

『ああ、嘘だ』

「口では言えないことってなんじゃ!?」

 

何を話していたんだ己ら!こら、無視するな!

 

「あ、あんなに切羽詰った声で言ってたのに…?」

『名演技だっただろう?』

 

ドライグ…。いつからそんなにお茶目な性格に…?

いや、初めて会ったときから結構アレだったな。

 

「で、でもさっき会ったイッセーの友達の2人組みも、木場とイッセーが口では言えない関係になったからイッセーの事はもう忘れろとか言ってたぞ…!?」

『それは知らん。そもそも、あの変態2人組みの言う事を信じるな』

 

いや、信じてしまったのはお前が先に連絡入れたせいだろ。

イセリア可哀想なくらいオロオロしてるぞ。まるで反抗期の娘にどうすればいいか解らず困っている母親のようだ。

しかし、あの野郎共…! 何か復讐を考えねば…!

ハッ!? も、もしや俺がホモとかそんな感じの噂が学校中に広まってるとか、無いだろうな?

 

「お、落ち着いたかしら?」

 

そう言ってソファーの陰からそっと顔を出す女子悪魔3人。

さっきから姿が見えないと思ったら隠れてたのか。まあ隠れるよな。俺だって隠れる。

だから木場。そんなに悲しそうな顔をするな。

 

 

 

 

 

「本当に、ごめんなさい…!」

 

場を仕切りなおして再びソファー。

木場と俺のホモ疑惑が解けた後、みんな緊張していたせいかグテっとソファー座り込んでいる。

しかし、イセリアは1人ソファーにも座らず必死に頭を下げていた。

 

「い、いえ、良いのよ。気にしないで、ね?」

 

リアス先輩の言葉に高速で何度も頷く3人。

あのビデオに関してはイセリアの剣幕を見たせいか、凄い勢いでリアス先輩が片付けた。

それにしても…

 

(なんでイセリアにあんな嘘ついたんだよ、ドライグ)

(『交渉を上手くいかせるためだ』)

 

?下手したら交渉どころか校舎が消し飛んでたのにか?

俺が首を傾げていると、ドライグは少々苛立たしげに続けた。

 

(『お前が悪魔どもに弱みを見せすぎていたからな。あのままではお前が悪魔共の良いようにされていた。だから逆に悪魔共を怯えさせる必要があった。イセリアも普通に現れていたら相棒の二の舞だっただろうしな。お前のことならば激昂するだろうと嘘をついたのだ。解りやすく簡単に言うと、お前が全て悪い』)

 

うぐぅ! は、反論できねえ…!!

 

(『解ったのなら悪魔共が調子付く前に、これ以上イセリアが謝るのを止めろ。交渉を有利に進めろ。もう無様を晒すな』)

(…ああ)

 

なんだかんだと言っても、俺の事を心配してくれてるんだな。

そうと決まれば、さっと立ち上がって未だに頭を下げてるイセリアに近づく。

 

「イセリア、先輩も良いって言ってるんだからもういいだろ?」

「だ、だけどな、イッセー」

「ほら、落ち着けって」

 

ぽんっぽんっとイセリアの肩を押さえると、渋々といった感じだが謝る事をやめた。

 

「先輩達も俺に用があったんじゃないですか?」

 

イセリアにもドライグにも、これ以上情けない所を見せるわけにはいかない。

背筋を伸ばして、真っ直ぐにリアス先輩を見据える。

俺の視線を受けて、リアス先輩も今までの空気を切り替えるように引き締まった表情になった。

これから、本当の戦いが始まるんだ。だからイセリア、俺のことを誰こいつみたいな目で見ないでくれ。地味に傷つくんだよ。

 

「単刀直入に言うわ。あなた達は何者なの?」

「人間です。この町で普通に育って、普通に暮らしている只の人間です」

 

俺のかっこいい台詞の前にリアス先輩は呆気に取られた。

イセリアが恥ずかしそうに俺の裾を引っ張って台詞を止めようとしているが、もはや俺は何も怖くない!

今までで行われた精神攻撃やイセリアの襲撃、ドライグの叱咤で、俺は次のステージへと上がったのだ!

 

「だが、それは世を忍ぶ仮の姿! 俺の本当の名は真紅の篭手! ドラレッド!!」

 

部屋の空気が凍ろうが、イセリアが羞恥心で涙目になろうがもう関係ねえ!

 

「そしてこいつが俺の相方、蒼穹の槍、ヴァルブルー!!!」

「い、イッセー…! な、何を…!?」

「イセリア、いや、ヴァルブルー! 自己紹介だ!!」

 

イセリアの肩をがっちり掴んでその目を真っ直ぐ見詰める。

必死に目を逸らそうとしているが、もう俺は止まらない、止まれないんだ!

 

「言うんだ!!」

「わ、解った」

 

「そ、蒼穹の槍、ヴァ、ヴァルブルー…!」

 

俺の只ならぬ雰囲気に押されついに頷いき、俯き気味で、消え入りそうな声だったが確かにイセリアは言ってくれた。

 

「二人揃って! 蒼紅の騎士、ドラヴァル!!!」「…ど、ドラヴァル」

 

良し!決まりだ!

篭手からドライグの呆れを感じようが、イセリアが涙目で睨んでこようがこれで決まりだ!

何を恥ずかしがることがある! これで俺はドラレッド!! 恥ずべき事など何一つ無い!!

 

「「「「ひ、開き直った…!!」」」」

 

目の前の悪魔達は俺達の勇ましさに固まったか。

だが、これであのビデオは意味を成さなくなったな! もはや、あれは俺の弱点にはならない!

 

「さあ、俺達の正体は語らせてもらった! お前達の目的、話してもらおうか!!」

「な、なに1つ語って無いわよ!」

「蒼紅の騎士、ドラヴァルだ!! さあ、話すんだ!」

「ちょっ」

「ドラヴァルだ!!」

「な、何としてもそれで押し通す気なのね…!あ、頭が痛くなってきたわ」

 

頭痛を堪えるように頭を押さえるリアス先輩。

だけど、直ぐに姿勢を正し、真っ直ぐに見据えてきた。

俺もふざけた雰囲気では居られない。真っ直ぐに見詰め返す。

 

「もういい、わかったわ。…はぁ…あなた達が神器を使いこなす事、堕天使の勢力ではない事は解ってるわ」

 

 リアス先輩の、その力強い瞳には迷いが一切無く

 

「でも、この町は私が魔王様から任された地。あなた達を放置には出来ない。だから、監視させていただくわ」

 

 思わず、跪いてしまいそうなほど覇気に満ちていて

 

「兵、いえ、ドラレッド君はオカルト部に所属、ヴァルブルーさんも放課後、この部室に来て貰うわ」

 

 何より凛々しいその姿は綺麗だった。

 

「異論は認めない。これが、私達に出来る最大の譲歩よ」

 

俺はリアス先輩の覇気に、一瞬呑まれてしまっていた。

それでこそ、いいおっぱ…じゃねえ、俺達ドラヴァルのライバルに相応しいぜ!

 

「こっちもそれで丁度いいぜ! 俺達もあなた達が悪さしないか見張らせてもらう!」

「なら、よろしくね。歓迎するわ。ドラレッド、ヴァルブルー」

 

俺は悪魔らしく魅惑的に笑って手を差し出すリアス先輩の右手を力強く握った。

 

「訳が解らないよ…」

 

ポツリとイセリアの呟きが、夕日でオレンジ色に染まる部室に響いた。

そういえば何も教えて無かったぜ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ  校門でのイセリア

 

 

 

「ちょっと、早く着いてしまったか」

 

時刻は3時53分で約束の時間は4時半。

明らかに早い。が、授業はもう終わっているらしく、下校する生徒がちらほらと見られる。

バイトの時間の関係で余裕を持って4時半の約束をしたけど、これからは4時でいいのかもしれない。

 

とりあえず、私は校門の壁に背を預けてイッセーを待つことにした。

30分ちょっとくらい大した時間でもないし、こうやって校門を見張っていれば、ジャッ○フロストとか、○ャックランタンが出てくるかも知れない。

その時にこのお菓子で餌付けをして、私の仲魔にしてしまうのだ。そして思う存分触らせてもらう!

 

「…それにしても」

 

私に集まる視線が多すぎる。下校する学生達は私を見て足を止めたり、少し離れた所から様子を伺ったり。

ヴァルキュリアの島では、こんなに大勢の人間に注目された事は無かったので少し居心地が悪い。

やっぱり私の容姿は目立つらしく、街を歩けばこんな風に注目されてしまう。ヴァルキュリア人が黒髪だったらこんな事にはならないのに。

 

(『…イセリア』)

 

そんな事を考えていたらドライグから通信が入った。

随分沈んだ声だ。イッセーが先生にでも叱られているんだろうか?

首にかけた紅いネックレスを右手に掴んでドライグに返事をする。

 

(どうしたんだ、ドライグ。何だか元気が無いぞ?)

(『そんな事を言っている場合ではないのだ…!!』)

 

ドライグのその悲痛な声に、私はイッセーの身に何かが起きたのだと理解した。

 

(『イッセーは今、木場と言う同性愛者の変態に捕らえられ監禁されている…!』)

 

なん…だと…!!

 

あんまりに衝撃的な内容に、私の手からお菓子の入った袋がポトリと落ちた。

 

(い、今何処にいるんだ!!)

(『旧校舎だ…! 旧校舎で…だめだ、とても言えん…! っく! あまりに相棒が哀れすぎて…!! もう相棒は立ち直れんかも知れん…いや、すまん、とにかく早く来てくれ、相棒の尻が危ない…!!』)

 

尻?! く、口では言えない?! 何をされているんだ、イッセー!!??

直ぐに助けに向かわねば…!!

 

「あれ、君は!!?」

「イセリアちゃん!」

 

校内へと突撃しようとした私を引き止める声。

朝会ったイッセーの友達だ。

正直、構っていられる時間なんて無いが、私は旧校舎の場所を知らない事を思い立った。何とかこの2人から教えてもらわないと。

 

「今朝会った、えと…」

「お、おおお俺、松田!! お、お菓子落としてるよ!」

「お、おおお、俺は元浜といいます!!」

 

坊主頭にしているほうが松田君、メガネをかけている方が元浜君と言うらしい。

何か2人とも顔が赤いし興奮したようにどもっているが、大丈夫なのだろうか?

でも今はこの2人を心配している時間も惜しい。イッセーが危険なんだ。

 

「ごめんなさい松田君、元浜君、旧校舎は、イッセーは何処?!」

「「!?」」

 

掴みかかるように問いただせば、さらに顔を赤くしつつも2人は痛ましげに俯いてしまった。

 

「こ、こんなに可愛い子が……! ち、畜生…!」

「きっと、騙されているんだ…!! 俺達が目を覚まさせてやらないと…!」

 

2人は私から離れてヒソヒソとなにやら話している。物凄く不審な様子だが、早く行かないといけないのだ。構っている時間が無い。

2人からは旧校舎の場所を教えてもらえそうに無いと判断した私は、足に力を込めて走り出そうとした時、2人のヒソヒソ話が耳に入り、走り出すのをやめた。

 

「……確か、…イッセーは…木場…旧校舎…」

「2人で…人気の無い…」

 

僅かに聞こえたそれは、私の心を掻き乱した。

これ以上はとても冷静ではいられない!

 

「2人とも! 教えて、イッセーは何処?!」

「!…イッセーは今、旧校舎だよ。ほらあっちの方向だ」

 

元浜君が指差す方向、あそこにイッセーがいるのか…!

 

「だが、今は行かないほうがいい…辛いものを見ることになってしまう…!」

「イッセーは、木場と言う男に…ダメだ、口ではとても言えん!」

「もう、イッセーの事は忘れるんだ…!! 木場は凄まじい変態で、エロエロで、外道で、両刀使いでもう、やばいんだ! もう間に合わない!」

 

ど、ドライグと同じことを…?!

そんなにやばいのか?! 口では言えないことって何?!

それに、木場と言う男…! 何て奴だ! 

おじ様とおば様に伝えてPTAと一緒に戦わなければ…!

 

「ごめん! 松田君、元浜君!」

「「ああ! 待つんだ! イセリアちゃん!!」」

 

もうこれ以上イッセーの身に起こっているおぞましい出来事を聞いていたくなかった私は、一気に駆け出した。

 

イッセー! お願いだから無事でいて…!!

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