赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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おっす!オラ作者!
暇なら見てってくれよな!


オラ、もっと強え奴と戦いてえ!!

「やっぱり、彼女については何も解らないのね…」

「はい。3年前に兵藤家の居候になったとしか解りませんでしたわ」

 

夕暮れのオカルト研究部。

リアス・グレモリーは眷属の姫島朱乃が集めた情報に落胆せずには入られなかった。

 

イセリア・ヴァルキュリア。部内での呼び名はヴァルブルー。

初めは只の神器所有者と思っていたリアスだったが、3日前に目の前で見せられた蒼い炎の力を肌で感じそれが過ちであると直感で見抜いていた。

そうして眷属たちを使ってイセリアについて調べ始めたのだが、解った事は3年前に兵藤家の居候になったことで、後は少々の問題行動と古びた喫茶店で働いていることだけ。裏の世界で活躍していた記録どころか、表の世界でもその足跡はない。

何の足跡も残さずにあれだけの殺気と力を持ち得る筈がない。オタマジャクシが蛙にいたるまでの過程があるように足跡は必ずあるはずなのだ。

 

「ヴァルキュリア…北欧神話の関係者なのかしら…?」

「少なくとも神や天使との関係は無いと思いますわ。3年前も人間の警察に捕まりそうになっていたほどですし」

「余計に解らなくなってくるわね…」

 

少なくとも魔王の妹であるリアスの情報によって悪魔ではない事は解っている。

名前から神族の関係者かと思えば、3年前に現れた頃は警察によって強制送還されそうになっていたほど。兵藤家の両親の尽力と、イセリアに帰るべき国が見つからずに捜査が長引いていなければ今頃何処か別の国で彷徨っていたのではないかと思われる。

本当に神族の関係者であれば、こんな間抜けな事を起こしていないだろう。おまけにドラレッド、もとい兵藤一誠とヒーローごっこをやって電柱を登ったり、民家の屋根を爆走して警察に追いかけられたりしている。

 

イセリアの事を知れば知るほど、リアスは頭痛を堪え切れなかった。

大体警察も、なんだまたあいつらか…で、何度も見逃しているのだ。

こんな非常識な人間を、今まで知らずにいたこともリアスの頭痛を引き起こしている一因だ。

 

「…はあ…いい子だとは思っているのだけど」

「そうですわね。ガラス代の弁償もきちんとしてくれましたし」

「いっそ2人揃って眷属に成ってくれれば楽なのだけど」

 

口には出したものの、2人を眷属にするのは難しいだろうとリアスは考えていた。

よほどの理由が無い限り、普通は種族を変えたりはしない。兵藤一誠には両親がいて家族思いでもあり、イセリアは一誠が悪魔にならない限りまず無理だとリアスは短い付き合いながら確信していた。

それに何より、2人を同時に転生させることがリアスの悪魔の駒(イービル・ピース)では不可能だという事だ。

眷属をチェスの駒にたとえ特殊な能力を与える悪魔の駒は、転生させる人物の能力に応じて必要な駒が増える。

一誠は二天龍を封じた神滅具(ロンギヌス)、赤龍帝の篭手(ブーステッド・ギア)の所有者。イセリアは全くの未知の力を使い、計り知れない能力を持っている。

既にリアスの悪魔の駒は、騎士、戦車、僧侶を1個ずつと兵士8個。例え一誠かイセリアの内1人を眷属に出来てももう1人は不可能。そんな条件であの2人が眷族になるはずもない。

 

「でも、兵藤君は真っ直ぐな人です。そんなに警戒しなくても良いと思いますけど」

「…変人ですけど」

「そうですわね。警戒するだけ疲れるだけだと思いますわ」

 

眷属悪魔達の言葉に、リアスも同意する。

まだ2人と接した時間は短いが、2人とも裏でこそこそと何かを企むような人間では無い事は解っていた。

一誠は顔に力を入れて隠そうとはしているのだろうが、考えていることが直ぐに表情に出る単純な人間。イセリアは天然が入ったヘンテコな人間。

オカルト研究部の面々の2人への評価は概ねこんな感じだった。

 

「とりあえず2人には私達をもっと良く知ってもらいましょう。面白い子達だし、仲良くしていきたいしね。でも油断はだめよ、みんなの安全が大事なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふおおお! ふおおおおお!!!」

「イッセー、何をそんなに興奮しているんだ? お腹でも痛いのか?」

 

星が見える夜、俺は今、夢の1つである一緒の自転車に乗るという偉業を達成していた。

ポイントは確り抑えている。

イセリアは横乗り、そして俺の腰に回った右手、そして背中に押し付けられるおっぱい!! あててんのか? あててんのかァアア!!?

いかん、柔らかい感触に鼻血が出そうだぜ!

なんという事でしょう。おっぱいとはこんなにも夢と希望を俺に与えてくれるものだったのですね。

 

「ん。次は右だ」

「オッケー!」

 

イセリアが手に持った携帯機器に表示された赤い点までの道のりを教えてくれるので、俺はそれを目指して自転車の進路を変える。

 

悪魔との最悪のファーストコンタクトから既に3日。

今何をしているかと言うと、悪魔を召還するための簡易版魔方陣を欲深い人間に配っているのだ。まあ、一言で言えばチラシ配りだ。

これによってグレモリー眷属、つまりオカルト研究部の連中が召還されて契約を取りに行く。

悪魔の仕事、つまりは契約を取って対価を頂くのが彼らの仕事だそうで、契約を結んだ人間は物やらお金やら命等を支払うらしい。そして、契約を多く取れる悪魔は魔王から評価され、位が上がっていく。

部長もといリアス先輩曰く、悪魔についてあなた達にもっと知って欲しいとの事で、眷属になったら最初にやる仕事、チラシ配りをやらされていると言う訳だ。

 

最初は何でこんな小間使いをやらないといけないんだ~とか、悪事の片棒を担ぐみたいで凄く抵抗感があったんだけど、イセリアがやった方が良いと言ったんで、こうやって自転車を走らせてる。

自転車にはお札らしきものが貼ってあって、これがあれば夜の間は普通の人間に認識されにくくなって警察にしょっ引かれる事もない。

 

「なあ、イセリア。魔方陣のチラシと一緒に配ってるのは何なんだ?」

 

そう、さっきからイセリアは魔方陣のチラシをポストに突っ込むとき、一緒に別の紙を突っ込んでいる。

 

「ん? ああ、これ? はい」

 

イセリアの右手が俺の正面に回り、丁度顔の下あたりに広げられる。

自転車を漕ぎながら下を見るのは少々危ないが、イセリアが開いた手で俺のバランスを取ってくれているようでふらつかなくて済む。

 

何々? 悪魔や天使、堕天使に怪奇現象ドンと来い! 酷いことをされたり困ったことがあったらこちらまでお手紙を。正義のヒーロー”蒼紅の騎士ドラヴァル”

SDにデフォルメされているが、禁手化で赤龍帝の鎧を纏った俺と槍と盾を持った戦闘服姿のイセリアのイラストも載ってる。ちなみに書かれている住所は俺の知らないところだ。

 

「何だこれ?」

「もしも、このチラシ配りのせいで酷い目に合わされた人用に作った」

『俺達がやらなくてもこの簡易魔方陣は配られていただろう。だからこそ、逃げ場を作ってやろうという事だ』

「まあ、これを配るためにこのチラシ配りを承諾したんだ。部長さんにも許可を得ているぞ。信頼の証だって」

 

なるほど。って内容もっと如何にかしようぜ!

 

「もう私も開き直った。ヴァルブルーで結構」

「う…悪かったって」

 

不機嫌そうな声だったので後ろをチラッと伺えば、ジト目のイセリアに睨まれた。

そう、あの堂々と宣言した日から俺の名はドラレッドになった。オカルト研究部の悪魔の面々からドラレッドとしか呼ばれず、巻き添えをくらったイセリアもヴァルブルーと呼ばれるようになっていた。

 

「…それにしても、悪魔に頼る人ってこんなに居るんだな」

 

イセリアがやるせない感情を吐き出すように呟いた。

悲しそうな表情で、最近のゲーム機のような形状をした欲深い人間を探す機械、そのモニターに表示されたいくつもの消えない点滅を眺めている。

 

この配っている簡易魔方陣は一度の召還につき一枚。

一度願った人間は癖になって何度も召還を繰り返すらしく、この仕事が尽きる事はないそうだ。

 

『誰もが強く居られる訳が無かろう』

「解っているつもりだけど…」

 

イセリアは努力する人が好きだ。

だからこそ悪魔に頼る事、努力せずに安易な道に行こうとする人たちが気に入らないんだろう。

 

「部長に聞いた話なんだけど、悪魔にとって人間の命は等価値じゃないそうだぜ」

「? それは?」

 

疑問に首を掲げているらしいイセリアを確認して俺は続けた。

 

「つまり不相応な人間はでかい対価が居るんだと。だから、相談やら恋の手伝いとかそういう契約が多いらしいぜ。まあ、そういう悩みを解消する逃げ場程度じゃないか? この仕事」

「……ふふ、何だかショボイな、悪魔」

「っぷ! ショボイは言いすぎだろっ」

 

目をパチクリとさせた後のイセリアの呟きに、確かにと思ってしまった俺だった。

 

 

 

 

「ただいま~」

「ただいま」

 

チラシ配りを終えて部長に報告して特に何もなく帰還した俺達。

時刻は既に八時。何の連絡もせずに家に帰るには遅すぎる時間だ。

 

「お帰りなさい、イッセー、イセリアちゃん」

「遅かったな、イッセー。ほら、早く入りなさい」

 

まあこの通り、俺の親には全部話してあるんで怒られはしない。

さて、今日はチャリを漕ぎまくったんでさっさとご飯にしてもらうぜ。

 

「それでイッセー、イセリアちゃんに怪我とかさせてないでしょうね?」

 

食卓について味噌汁を啜っていると母さんに鋭い視線で問われる。

悪魔の話をした時あっさり信じてくれたし、部活の事についても直ぐに許可してくれたからてっきり心配してないものだと思っていたけど、そうでもなかったらしい。父さんのほうも俺のほうを睨みつけてるし。

と言うより、イセリア。お前の話なんだから上手そうにハンバーグ頬張ってないで話聞けよ。幸せそうな顔しやがって、そんなにハンバーグが好きか? 俺も好きだ。

 

「あったりまえだろ。というより怪我するようなことをしてないぜ」

「なら、いいのよ」

 

母さんの返事を聞きながら味噌汁をズズッと啜る。

…えらいあっさりだ。いや、味噌汁の話じゃないぜ。

 

「悪魔の話の時も思ったんだけど、何でそんなにあっさりしてるんだ?」

 

俺が疑問をそのまま口にすると、逆に何言ってんのこいつ? 見たいな表情をされる。

軽くイラッとしてしまっただけで、怒鳴ったりしない俺は随分大人になったと思うぜ!

 

「何言ってるの、イッセー?」

 

母さんに言われた! 言いやがった! 表情と心の中だけにしとけよ!

 

「イセリアちゃんをお前が連れてきた時から、何時かこんな日が来ると父さんも母さんも思ってたもんだ。むしろ大分遅すぎたな」

「そーよ。母さんも何時大冒険が始まるか楽しみに待ってたのよ」

「いや、いやいやいや、普通そんなこと考えねーよ!」

 

何うんうん頷いてんだよこの2人は!

こら、イセリア! お前もツッコミにまわりなさい! ボケが多すぎて収拾がつかなくなるでしょうが! あ、ボケが増えるだけか…。

あと、何俺の皿にピーマン入れてんだ! まだ食えねーのか!

 

「父さんはお前がこんなんだし孫の顔が見れんと思ってたから、イセリアちゃんを連れてきた時は内心大喜びだったんだが、イセリアちゃんの格好はどう見ても異世界から来ましただったからな」

「母さんもね、お前には嫁が来ないと思ってたから大喜びだったんだけど、いつか一緒に異世界に行くのではと不安だったのよ。まあ、信じたのはそのためだけではなくて、いかにもなモンスターに半年前襲われたでしょうが」

 

モンスター? 半年前? 蟷螂さん以外でモンスター的な奴に会った事が…っあ! あった!

 

半年前、家の家族全員でイセリアの見たいと言っていたヒーローショーが遊園地であって、それに行ったときだ。

帰り道でイセリアと母さんが化粧室に行って一緒に居なかった時、ロングコート来たお姉さんに誘われてホイホイついていった俺達(父+イッセー)の前で謎のモンスターになったあのお姉さんか!

いきなりコートを脱いで上半身裸になったと思ったら下半身がでっかい獣みたいになった、あのおっぱい丸見せのお姉さんか!

でもあの人、俺達を探しにきたイセリアが”猥褻物陳列罪だ! 消えろ!”とか言ってワンパンであっさり星にしたからすっかり忘れてたぜ。ホントに何処までも飛んで行ったからなぁ。

 

『あれも悪魔だったぞ。はぐれ悪魔と言う奴だ』

「はぁ? でもドライグ、部長達はあんなのじゃないぜ」

 

ドライグの言葉通り、あのおっぱい丸見せお姉さんも悪魔なら部長達もあんな風に変身するという事になる。

そんなの嫌だ! 夢が無さ過ぎだ! 

 

『最初からそういう種族か、はぐれ悪魔かで無い限りあのようにはなるまい』

「「「…ほっ」」」

「……え~」

 

ドライグの言葉にイセリア以外、俺も父さんも母さんもほっとため息をついた。

悪魔全部あんなのになるのは嫌すぎる。

イセリアはどうせ変身する悪役を期待しただけだろう。

 

「こらイセリアちゃん。冒険のモンスターはもっと可愛いものにしときなさい。ラッチューくん見たいなのがお勧めよ」

「でもおば様。ドラ○エ的なものの方が私は好きです」

「イセリアちゃん、あれは只の痴女だ。○ラクエ的なものですらないよ」

 

いかん、またボケ空間が広がっていく!

イセリアと父さん達を会話させるととてもじゃねーけどツッコミきれねえ!

 

『その痴女についていったお前達はなんなのだろうな?』

「そうよねぇ。ドライグの言う通りだわ」

「「うぐぅ!!」」

 

さ、流石ドライグ…! 一刀両断だな! 

でも男だったら仕方ないだろ! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後の放課後、俺は1人オカルト研究部のある旧校舎へと向かっていた。

例のチラシ配りは毎日順調。順調すぎてしまったために、イセリアに体力づくりだといって重り(50キロ)を自転車のかごに入れられてしまうほどだった。

正直、背中から感じるおっぱいの感触が無かったら投げ出していたレベルだった…。

 

部長達、グレモリー眷属の皆とはまだ完全に打ち解けているわけではなく、皆は俺のことを少し警戒している感じだ。

なんでも、俺の手に宿っているドライグは二天龍と呼ばれ、かつての悪魔、天使、堕天使の三つ巴戦争中にもう一匹の白龍皇と二天龍同士でバカみたいな規模で大喧嘩を起こして、三つ巴の勢力に大きな被害をもたらした、悪魔や天使、堕天使にとっては災厄の象徴みたいな奴だったのだ。

俺にとっては偉そうでボケの入ったドラゴンなんだが、その大きい力には警戒が必要だそうだ。

イセリアに関しては初対面の印象が強すぎて、木場なんかはいつもへっぴり腰になってしまうほど。

つまり、俺達はまだ微妙な関係のままだって事だ。まあ、初対面からまだ1週間とちょっと。そんなものといえばそんなもんか。

 

「はいりまーす」

 

がらがらっといつも通り扉を開けると、イセリア以外のオカルト研究部の面々が揃っていた。

時刻はもう4時10分。イセリアはこのくらいの時間なら既に来ているんだけど、今日はどうやら遅いらしい。

 

「来たわね。ドラレッド」

 

今日の部長はどうやらご機嫌らしい。ニコニコと微笑んで俺を手招きする。

美少女の微笑みにちょっぴり胸がドキドキして、俺はホイホイと部長の前まで行ってしまう。

ちなみに、俺はむっつりスケベなので表情に出す愚を冒さない。これはイセリアのおっぱいに自然にタッチするために生み出された技法で、傍目からは俺はキリリと凛々しい表情をしていることだろう。

 

「…いやらしい顔」

 

なにぃ! こ、小猫ちゃんに何か言われた! な、何故俺が先輩のおっぱいを見ていたことが解った!?

とにかく俺はさらに顔面に力を込めて、キリリと取り繕う。

 

「そろそろあなた達のチラシ配りも終わりにして、私達悪魔の本格的な仕事ぶりを見てもらおうと思うの」

「おおっ!! やったー!」

 

やった、あの面倒な作業からの解放!

本格的なことをやるなら、イセリアも重りを投入なんてしてこないはず! そしたら最初のようにおっぱいだけに集中して自転車を漕げるって事だ!

 

「そ、そんなに大変な作業だったかい?」

 

木場が俺の喜びぶりに冷や汗を掻きながら問いかける。

だって自転車の最大荷重を超える重さで走らされるって、もう足パンパンだっつーの!

 

「あらあら。ところで、ヴァルブルーさんはどうしたのですか? いつもならもういらっしゃっている時間ですわ」

「…遅い」

 

姫島先輩と小猫ちゃんの言う通りではあるが、そんなに心配する必要はないと思うんだが。

バイトが遅くなってるとか、来る途中でヘンテコ怪人がでたとか。後はヒーローショーをどっかのデパートでやってるとかそんな理由だと思うぞ。

 

「確かに遅いわね。ドラレッド、連絡を入れれないの?」

 

部長にまで言われたら仕方が無い。神器を出現させてドライグで連絡を入れることにした。

ピカーと宝玉のような部分から緑色の光を放ってイセリアのペンダントに連絡を入れる。携帯要らずの素晴らしい機能だぜ。

篭手の一部を毟ったせいでドライグに文句を言われたけど。

 

『…どうやら公園で戦闘中のようだぞ。こないだの堕天使共だ』

「な~んだ、戦闘中か~、って戦闘?!」

「そうなの戦闘中なのね…・なんですって!!??」

 

思わず部長までノリツッコミしてしまうほどの事態だ! ドライグ、そんな気軽に言うなってーの!

大体イセリアの奴、なんで連絡しない!

 

『飛んでいる堕天使が4匹、その下に人間28人。こないだイセリアに顔パンされた奴が復讐に来たといったところか。イセリアは人間の持ってる光の剣がカッコイイから、出来たら作ってくれって言っているぞ。悪魔に頼んでも闇の剣が出来てしまいそうだがな』

「ふざけている場合ではないわ! そんな大人数がこの街で暴れるなんて冗談じゃないわ! 直ぐに行くわよ! 朱乃、準備しなさい!」

「はい、部長!!」

 

ドライグから伝わった堕天使勢力の情報で、部長達は焦って魔方陣による転移の準備をする。

だけど俺は、ドライグのあんまりにも余裕そうな態度からさっきまでと違って逆に安心してきた。

ドライグは俺達の実力を一番把握している。だからこそ、この余裕の態度はイセリアの心配が要らないということを教えているんだと思う。

 

『別に行く必要はないぞ。あの堕天使どもではイセリアは殺せん。というよりお話にすらならん』

「何を言ってるんだい!? 幾らなんでも多勢に無勢すぎるっ!」

「…無謀」

 

ドライグの言葉にイラついたのか木場が声を荒げ、小猫ちゃんも不機嫌そうに赤龍帝の篭手を睨みつける。

イセリアのために怒ってくれているんだと思うと、何だか嬉しくなってしまう。警戒してたくせにこいつらはいい奴すぎると思う。本当に悪魔かと思ってしまうほどだ。

 

『だが、お前達が行っていいのか? 堕天使共と戦争でもするか?』

 

そのドライグの試すような言葉に、全員が動きを止めてドライグを見詰めた。

戦争の再開は、部長達悪魔にとって最も避けなければいけないことらしい。そして部長達にとって最も痛いところだ。

そう、俺達は眷属でも無い。本来なら庇う必要だってないんだ。

 

「っ!…だからって、一度受け入れた部員を平気で見捨てられると思う? 私はリアス・グレモリー! グレモリー家の次期頭首よ! 舐めないでちょうだい!」

 

そう言って堂々と立つ部長はマジでかっこ良かった。

どうやら俺も部長を侮っていたらしい。

 

『ふっ、中々気に入ったぞ』

 

ドライグもその勇ましい姿に、部長の事を認めたらしい。俺もこの人の事を信じていいと、確かに感じた。

 

「行こう!!」

「うふふ、行きましょうか」

「…突貫」

「みんな…!!」

 

部員達も覚悟を決め、決死の覚悟で頷く。

俺も久々に熱くなってきたぜ! 待ってろイセリア今行くぜ! 

 

『…ん?もう終わったのか?…空気を読め』

「「「へ?」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の天気は晴れ時々光。

ところで、光で攻撃ってどういう原理なんだろうと、自分の能力を棚に上げてツッコんでみる。

 

「また会ったわね、神器使いの人間…!!」

 

私の眼前には黒い羽を生やして空に浮く4人?の堕天使、公園の敷地内には怪しげな神父が28名、遠くの木々に隠れている者が1名。

 

「フフフ…この間はよくもやってくれたわね…!! でもこの数を前にどれだけ耐えられるかしら? なに? 恐ろしすぎて声も出な…偉大なるアザゼル様の…ペ~ラペラペラペラペラ」(※イセリアが真面目に聞いていないだけで実際はペラペラ言ってません)

 

さっきからペラペラと勝ち誇った表情で喋っているのはこの間イッセーを襲った奴だった。

どいつもこいつも下種っぽい顔をしてニヤニヤと私を見てくる。

特に私の一番近くにいる白髪の神父は狂った顔で手に持った銃をぺろぺろしてる。正直気持ち悪すぎる。ただ、手に持ってる光の剣だけは羨ましい。ライトセ○バーか、すッごく欲しい! 

 

「お姉さまを傷つけた罪万死ペラペラペラペラ」(※イセリアが真面目に聞いていないだけで実際はペラペラ言ってません)

「此処がお前のぺ~らぺらぺら」(※イセリアが真面目に聞いていないだけで実際はペラペラ言ってません)

「至高の…ペ~らぺらぺ~らぺらぺらぺ~ら」(※イセリアが真面目に聞いていないだけで実際はペラペラ言ってません)

 

私がラ○トセイバーに気を取られている間にも、浮いてる連中は堕天使は至高の存在とか訳の分からない事を未だに言ってるが興味もないので適当に聞き流しておく。

大体、今日はミルたんさんが珍しくシフトの時間に遅刻してしまい、部活に向かうのが遅くなったので聞いてやってるほど暇じゃないのだ。

さっさと終わらせよう。

 

「ぐおっ!!」

「ドーナシーク!!? おのれぇ!!!」

 

軽く飛んで目の前に居た堕天使の男の腹を蹴り飛ばし、その反動を利用して地上へと即座に落ちる。

私の蹴りを受けた男はイチローのレーザービームのように公園の木々へと消えていった。一応上半身と下半身が分離しないように手加減をしておいたので生きているだろう。そうでなくては人間よりも上位存在だと誇るには余りにおこがましい。

 

落下中に腰に佩びていた盾から槍を一気に引き抜く。

ドリルのように回転しながら巨大化した槍と盾は、私のヴァルキュリアの力を引き出し巨大な炎を形成する。

この間イッセーが堕天使に襲われた際に分かったのだが、あの光の槍とやらは私の防御力を破るほどの力も無いショボイものだ。つまり、私にとってこの襲撃は焦るようなものでもなく、雑魚を片付けるだけ只の作業みたいなものだ。

 

着地と同時に槍を地面へと叩きつけ、公園のアスファルトを吹き飛ばし大きな土煙を起こす。

この程度でうろたえる実戦経験の余りに少なすぎる神父たち。そして当てずっぽうで土煙の中に光の槍を投げてくる堕天使達。

余りに退屈な敵だ。むしろヴァルキュリアたちとばかり戦っていた私にとっては、殺さないように手加減するのが非常に手間だった。

まず第一に炎で焼き払えば直ぐに皆殺しになってしまうし、槍で殴りつけるのも基本禁止。つまりは素手か蹴りで連中を気絶させなければいけない。

面倒だとは思いつつも、私はなるべくやり遂げるつもりだ。

 

「ぎゃああああばばっばばっ!!!」

 

土煙を一瞬で抜けて、さっきから顔芸をやってた白髪の神父の股間を蹴り上げる。もちろん、つぶれる程度の優しさ。決して体が上下に裂けたりはしない。足に伝わる感触が気色悪いが仕方が無い。

次に近い相手で股を広げていた奴の股間を潰す。その隣の奴の股間も潰す、とにかく潰す、潰す、潰す、潰す。

途中でドライグから通信が入ったが、現状を伝えて玉を潰す作業に戻る。

 

連中の目に私の動きは殆ど捉え切れていないだろう。ただ、股間を蹴り上げている私の姿だけがその網膜に焼きつき次の瞬間には自分の股間が蹴り上げられているのだ。

堕天使共も、私の動きが早すぎて光の槍の狙いをつけられず、既に通り過ぎたところに投げることしか出来ていない。

 

「に、逃げろ! た、玉キラーだべじっっっ!! アッーアアアアア!!!」

「うわああああ!!」

 

13人目の股間を蹴り上げた時には棒立ちしているだけだった神父たちも、己の窮状がやっとわかったのか死に物狂いで逃げ出した。

やはり、男性に恐怖心を与えるにはこれが最も効率がいいらしい。おば様の言う通りだった。

 

「お前達っ、逃げるなぁ!! 戦え、戦えぇ!!!」

「女には解らないんだぁ!!」

 

上空で逃げる神父たちに必死に叫ぶ堕天使達。この間イッセーを襲った奴だ。

人間を見下しているような口調だったが、本当に人間を解ってないらしい。

人は飢えと恐怖には耐えられない。これはヴァルキュリア人も一緒。そして人数が多ければ多いほど恐怖の感染力は強くなる。幾ら呼びかけたところで、恐慌しきった人間は言うことを聞くはずが無いというのに愚かにも敵から目を離して叫んでいる。

 

何だかあまりにも馬鹿馬鹿しくなってきた。

大体、本気で私を殺すつもりなら最初から奇襲をかければ良かったのだ。だというのに態々私の前に姿を現したり、ペラペラと偉大なるアザゼル様だとか至高のなんちゃらとか訳の解らんことを話したり。

この間、顔パンされたというのに何も学習していないらしい。むしろ叩かれて気持ちイイとか言うタイプの奴なのか?

遠距離攻撃の手段がある相手にとって空を飛ぶという行為は常に動き続けない限り只の的だ。こいつらはいちいち槍を投げるのに動きを止めるし、攻撃の届く範囲の高さだったりと、空を飛べるという利点を全く活かせていない。

 

とりあえず、間抜けに的になってる3人組みには地面に落ちてもらうことにする。

私の炎では強力すぎて消し飛ばすことぐらいしか出来ないので、適当に拾った石をその黒い翼目掛けて投げつけた。

この投石も中々馬鹿に出来たものじゃない。弓矢よりも風の影響を受けにくく、武器となる石ころはその辺に転がっているのだ。

さらに私の炎、ラグナイトエネルギーを込めてあげれば、現代の拳銃よりもよっぽど殺傷能力は高くなる。まして、私の膂力で投げつけられるのだ。当たればあの紙のような障壁とやらは意味を成さない。

 

「ぐっ、ああああ!!」「「きゃああ!!」」

 

羽に大穴をかけて地面へと叩きつけられる堕天使3人。…ちょっと手加減を間違ってしまったらしく、思ったよりも大きな穴が羽に開いてしまった。血の勢いも結構ある。

しかも、イッセーを襲った奴以外は気絶してしまったらしく地面に落ちてからピクリともしない。

 

この世界に来てイッセーたちと生きるに当たって、人を殺さず生きると私は決めていた。

つまりは、こいつらの手当てをしないといけないという事だ。面倒だが盾にしまっていたラグナエイドを取り出した。

このラグナエイドは簡単に言えば回復アイテムで、私の槍と盾や戦闘服と同じくラグナイトを精製して作られている物で、発光させる事で鎮痛効果や回復効果を与えるもの。

本来私達ヴァルキュリアは槍と盾があればこんな物を使わずとも他人を回復できるのだが、集中しなくては失敗して逆に殺してしまうので戦場にはラグナエイドを携帯するのが慣わしだ。

 

ドライグに連絡を入れて、終わったことと手当てのために部活には少々遅れる事を伝える。何だか凄くがっかりしたように空気読めと言われた。解せぬ。

 

「お、おのれ、おのれ、おのれぇ、人間風情が…!! っく、痛っ、うううあああ!!」

 

どうやらこいつは仲間を置いて逃げる気らしい。

必死に痛む体を動かしているらしく、その様は芋虫の様でもある。母上が見たらその瞬簡に消し飛ばしているだろう。

だけど、その生き汚い姿を私は気に入ってしまった。

仲間を見捨てるのは気に入らないが、覚悟があるとか言って死を美化して勝手に死んでいく者達よりよっぽど良い。

 

「ひっ…く、来るな…!! やめっ、助けて、いやぁ! 来るなぁ!!」

 

治療しようと足を踏み出したら怯えられてしまった。

思えば、あの戦争でもよく見てきた光景だ。まるで、自分の罪を見せられているようで思わず足を止めそうになる。

しかし、治療が遅れれば遅れるだけ出血死の可能性が上がる。迷いを振り切るように足を進めた時、1人の人間が私の前に立ちふさがった。

 

「や、やめてください! お願いです!!」

「……?」

 

神父の次はシスターらしい。ストレートの金髪に緑色の瞳をした少女だ。イッセーが見れば鼻の下を伸ばして喜ぶことだろう。見た目どおり日本語ではなく英語だ。イタリア語とかではなくて助かった。英語なら何とかわかる。

しかし、この少女はさっきまでの光景を見ていなかったのだろうか?

 

「お願いです…もう許してあげてください…!」

 

必死に両腕を広げて、私から後ろの堕天使を庇う。試しに槍を向けても、涙目に成りながらも退きはしなかった。

…傍から見れば、もう完全に私が悪役だ。

 

「…はぁ、治療するだけだ。退かないとそいつらは出血多量で死ぬ。退いて」

「う、嘘よ!! 私達に止めを刺す気なのよ! アーシア、壁になって時間を稼ぎなさい!!」

 

…やっぱり、ほっとこうかな。

しかし、このアーシアと言う少女はあんなことを言われているのに退く気はないらしい。その目は諦めの感情。

この少女は自分の事をどうでもいいとでも思っているのだろう。だからこんな目が出来る。そして、私はそれが気に入らない。

 

「……なら、君が手当てをしろ」

「え? あ、はい!」

 

不機嫌になってしまった私は投げやりに言い放つ。

だというのに嬉しそうに頬を緩めて堕天使の治療に向かうアーシア。この子は厳しくされると嬉しく成っちゃう子なのだろうか?

 

何となく治療の様子を伺っていれば、どうやらアーシアは神器持ちらしく緑色の光が堕天使の傷を包み込む。相当に強力な神器のようで、みるみると傷が塞がっていく。治しきったところで、今度は別の2人組みへとアーシアは向かった。

これなら私のラグナエイドは必要なさそうだ。

 

だけど、あの神器はどうやら体力までは回復できないようで、未だに堕天使は這い蹲って私を睨みつけてくる。

その表情は憎悪。まさに憎しみを顔にそのまま表したような表情だ。

 

「なぜ、殺さない…! 何の真似だ! ふざけんじゃないわよ!!」

 

プライドが高いのかと思えば、這い蹲って逃げたり命乞いをしたり。生き残りたいのか、死にたいのか。いまいち良くわからない奴だ。

 

「別にふざけている訳でも無いし、同情したわけでもないし、第一にお前のことなんてどうでもいい」

「…!!? このっ…!!」

 

どうでもいいと言えば額の血管を浮き上がらせて睨みつけてくる。

なんだか生かしておいたら一生憑いて来そうで凄く嫌だな。

まあでも、何で殺さないかと言えば、今言ったことよりもっと大切なことがあるから殺さない。

 

「だけどな…好きな奴の前でくらい綺麗な女で居たいでしょう?」

 

とっくに薄汚れていても、それでも惚れた相手の前でくらい綺麗な姿で居たい。

私がこの世界に来て出来た、最も大切な男。理由も解らずこの世界に来て、初めて出来た愛おしいと思う人。

此処にはいない、あの馬鹿を思い浮かべてついつい笑ってしまう。まあ、私にあいつが勝つようになるまでこの気持ちは絶対に伝えるつもりはない。あんなに堂々とセクハラされて怒らない女は居ないと思うし、もうイッセーも気付いているのかもしれないけどこういうのは言葉にしてこそ意味がある。

 

む? この堕天使、凄く呆けた表情してる。何かおかしな事を言ったか?

……言わなきゃ良かった。何時の間にか復活していた他の堕天使とかアーシアもこっち見てるし。なんだよ、こっち見んな。

 

「…あんたは、…アンタは必ず、私が殺すわ」

「これでもまだ諦めないのか?」

「命令以外で殺す理由が出来たのよ。…私の名はレイナーレ。アンタの名前は?」

 

いい目だ。さっきまでの怯えきった目でもなければ、相手を侮った目でもない。決意の篭った瞳だ。

レイナーレ。確かにその名覚えた。

私もその瞳に対する返礼として、姿勢を伸ばし槍を眼前で直立に構えレイナーレの瞳を真っ直ぐ見返す。

 

「我が名はイセリア。ヴァルキュリア族、女王の娘イセリア・ヴァルキュリア」

「戦乙女ね…。覚えたわ。…また、会いましょう」

 

レイナーレは起き上がって頭上に魔方陣を浮かべ、消えていった。他の堕天使も同様だ。アーシアもつれて行かれたようで、この公園には居ない。

ただ、私に股間を蹴り上げられた連中は未だに転がっていて泡を吹いている。

 

「お~い! イセリア!! 無事か!!」

「!」

 

イッセーの声に振り向けばオカルト研究部の面々が走って此方に来ていた。

てっきり私はイッセーは来たとしても、部長達は来ないものと思っていたのでちょっと面食らってしまう。

 

「うわっ?! ぜ、全員、玉を…!!」

「ど、ドラレッド君…こ、これは…!? う、震えが…!」

 

何だかイッセーと木場君が私が倒した敵を見て震えている。微妙に腰が引き気味だ。

別に蹴ったりしないと言うに。

 

「あらあら、イセリアさんも結構やるみたいですね」

「…鬼」

 

姫島さんは股間を押さえて蹲る神父たちをニコニコしながら見てる。

塔城さんには何だか呆れられた目で見られる。私からしたら一撃で戦闘不能にしただけだし、そんなに酷い事をしたようには思えないんだけど…?

 

「…はぁ、無事な様ね」

「ええ」

「でもね…! あなたはもうオカルト研究部の部員なの! 幾ら強くても一人で戦うような真似はやめなさいっ!!」

「お、おぅ」

 

部長さんには肩を掴まれて揺ら揺らされる。ははは…こやつめ。

何だか懐かしくて不思議と私は笑顔になっていた。

 

「真面目に聞きなさい!」

 

部長さん、結構熱い人みたいだな。ちょっと気持ち悪くなってくるほど揺らしてくる。

 

…しかし、あのレイナーレと言う女。あいつは強くなりそうだ。ちょっぴり厄介だと思う気持ちと、強くなったレイナーレと戦ってみたいと言う気持ちが不思議と心地よかった。

やっぱり私は戦闘民族ヴァルキュリアらしい。

 

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