赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス! オラ作者。
来週投稿できるか微妙だったんで今日投稿すっぞ!


ギャルのパンティおくれーーー!!!①

カーテンから差し込む仄暗い朝の日差しで目が覚めた。

最近は少し暖かくなってきたので、比較的目覚めはすっきりだ。首を動かして目覚ましを見れば4時55分。何時もより5分だけ早い。

イセリアが起こしに来る前にたまには自分で起きるのも悪くは無いかと思い、体を起こそうとするが体が動かない。まるで何かに縛られているように力を込めてみても腕すら上がらない。

 

「な、なんだ…!? か、金縛りか?」

 

しかし、金縛りだとしたら首だけ動くのはおかしい。もぞもぞと体を動かせば身を捩るくらいは出来るらしい。

 

「っ!?」

 

うつ伏せ状態だった体を仰向けにすると俺の視界には蒼い火の玉が複数浮かんでいるのが映った。

こ、これは人魂ってやつか?! ヴァルキュリア人、ドラゴン、堕天使、悪魔と来て次は幽霊ってか?! ま、まじで?! で、出来れば美少女の幽霊でお願いしますっ!! でも、貞子系はやめて!!

 

「っっっ!!!???」

 

く、クローゼットにな、何かいる!!

 

僅かに開いたクローゼットの隙間から長い銀の髪で覆い隠された顔が、血の様に真赤な瞳が、俺を睨みつけている!

俺の視線に気がついた幽霊は、ずるずるとクローゼットから這い出てくる。長い銀髪はまるで意思のあるようにウネウネと蠢き、その女は妖気を発する様に薄い蒼色に発光していた。

 

「うらめしや~」

「ぎゃああああ!! あああ…! あ、あ?」

 

最初は思い切り叫んでしまったが、幽霊の声は思ったより棒読みで緊迫感の欠けた声だった。

疑問に思った俺は、床を這っている幽霊をまじまじと見てみる。

よく見ればひよこ柄の黄色い寝巻き。なぜ今まで気付かなかったんだ、俺…!

どう見ても見覚えのある奴です。本当にありがとうございました。

 

「…ってイセリアじゃねーか!!? 何してんだ!」

「…今日は変わった起こし方をしようと」

 

床でうつ伏せになったままイセリアは言う。

とりあえず、立てよ…。

 

「しかし、何で動かないんだ…!?」

「念力」

『念力(物理)か? 相棒良く見てみろ、ロープだ』

 

ロープかよ! 道理で金縛りっぽくないわけだ。

しかし、こんなぐるぐる巻きに去れて何故起きなかったんだ俺は…!

 

「実はイッセーが寝た後直ぐに巻きつけた。それでも全く起きなかったから心配になってクローゼットの中に潜んでたんだ。死んでるかと思ったぞ?」

「その前になんで巻くんだよ! いや、やっぱいい! どうせ昨日見たリ○グのせいだろ」

「うん。しかし、やっぱり黒髪が良かったなぁ…」

 

ため息をつきながらロープを解くイセリア。

俺はイセリアの銀髪は綺麗だと思うんだが、イセリアは気に食わないらしく文句を言う事が多々ある。

 

憂鬱そうなイセリアの表情を見ながら、俺は昨日の事を思い出していた。

昨日のイセリアによる神父たちの玉虐殺の後、後処理のために部活は一端解散となった。

あそこに転がっていた神父たちは捕虜として堕天使側との交渉に使われるらしいが、ドライグ曰く、連中ははぐれのエクソシストなので命の保障自体が無いそうだ。

玉を潰された挙句、人権すらないのは少々かわいそうだが、はぐれのエクソシストは大抵禄でも無い連中ばかりで、殺人やら強盗まがいの事をやって正規の教会を追放された連中ばかりらしいので仕方がないと言えば仕方がない。

 

だから、それはまだいい。俺にとって一番の問題は、イセリアと俺の現状の差だ。

俺は堕天使たった一人に苦戦したってのにイセリアは昨日、誰も殺すことなく一方的に傷1つ負うことなくあの数を屠った。それは手加減してなお余裕があったことに他ならない。

今は禁手(バランスブレイカー)を使いこなすのが最優先だってのは解っているんだが、単純な技量の差が離れすぎてるんだ。きっと俺が禁手化してイセリアと戦っても、例え俺の方が動きが早くても、簡単に見切られてしまうだろう。そしてその技量の差は埋まる事はきっと無い。俺の才能の無さもあるけど、イセリアの腕も初めて会ったときより強くなっている。

イセリアは焦る事は無いって言ったけど、どうしても差を見せられると焦ってしまう。

ただでさえ禁手は使用中俺の体力を消耗していくってのに、攻撃を当てられないんじゃもうどうしようも無い。何か、もっと強くなれる方法を、禁手化を越える何かを見つけないときっと何時までも勝てないと思ってしまう。

 

「はいっ、解けたぞ。…ん? どうしたんだ? イッセー。体調が悪いのか?」

「あ、いや、別に悪くないぞ!」

 

どうにも考えすぎてたみたいでイセリアに心配されてしまう。

咄嗟に誤魔化したつもりだったんだがイセリアは納得していないらしく、またあの盾をごそごそと漁りだした。

 

何だ? 今度は何が出るんだ? 体力回復系? 何かやばい薬じゃねーだろうな?

今まで出てきたものを考えると、何だかすげー不安になってくるんだが…。

 

「てってててって~て~♪ ラグナエイド~!」

「で、それは何だ?」

「いいから、いいから」

 

思わずジト目になる俺を誰が責められようか。

薬系かと思えば、謎のランプ。形状は風邪薬のカプセルと言うか、とにかくヘンテコランプだ。

ジト目の俺を気にせず、謎のランプを灯して俺に近づけるイセリア。その灯りはイセリアが普段戦うときに出す蒼い光より緩い光というか、柔らかい光だ。

 

「どうだ?」

「なんというか、疲労がとれてるって言うか、回復してる…?」

「ふふん、そうだろ。これで私の秘密道具が物騒なものばかりではないと証明されたなっ」

 

何かドヤ顔される。この前秘密道具を兵器扱いしたのを根に持っていたらしい。

だけど、これマジで凄い。ロープで縛られていたせいで硬くなっていた体が一気にほぐれてる。ロープのせいで硬くなってた体がっ! ロープのせいで!

それにしても、ドヤ顔満点のイセリアの顔を見てたらさっきまで考え込んでたのが馬鹿みたいだ。

 

「あと、これも持っていてくれ」

「お、おい!」

 

いきなり俺の首に腕を回してくるイセリア。

ち、近い…! い、いいにおい…っは! や、やべぇ!! 朝だから元気だった愚息がさらに元気に!

な、何だこれっ!? ご、ゴールするのか!? 大人になっちゃうのか!?

 

「これはラグナイトの結晶で私の力を込めたものだ。昨日ドライグとちょっと相談してな。いずれ必ずイッセーの役に立つからつけていてくれ。…どうしたんだ、急に落ち込んで」

 

ですよねー! そんなイベント起きるはず無かったよね!

俺は元気満点の愚息を隠すためと落胆する気持ちに耐えられず失意体前屈、つまりorzになった。

だが、視界に入ったものを見て失意の気持ちは吹っ飛んだ。

俺の首元にはイセリアがつけているドライグのネックレスの青色版のような物。つまり、ペアルックってことかぁああ!!??

 

「ぬ、ぬおおおおお!! よ、良し! く、訓練に行くぞ!! イセリア!!」

「あ、ああ。着替えてからな」

 

今日は何時もよりいいこといっぱい起きそうだぜ!!

 

 

 

 

 

 

今日は一日ハイテンションモードで過ごし、未だ恨みがましい目で見てくる変態2人組みを無視して部室へとダッシュした。

昨日は堕天使がイセリアを襲撃したせいでお釈迦になった悪魔の仕事の見学があるはず。

どんな事やってるのかちょっと興味があったから中々に楽しみだぜ。

 

「さて! 今日こそ2人に私達の仕事を見てもらうわ」

 

部室に入った俺達に部長は機嫌よさ気に声をかけた。

どうしてこんなに嬉しそうなんだ?

 

「部長がご機嫌なのは、ヴァルブルーさんが非合法の悪魔祓い組織”教会”を殆ど壊滅させてしまったおかげですわ」

 

疑問に思っていたら姫島先輩がニコニコと嬉しそうに教えてくれた。

昨日の連中って悪魔にとって結構厄介な連中だったってことか。

 

「あの連中は以前から目障りだったのよ。しかもヴァルブルーは誰も殺していないし返り討ちにしただけだから堕天使側も文句をつけられなかったの」

 

なに照れくさそうに頭を掻いてるんだイセリア。

イセリアが調子に乗るからあんまり褒めてあげないでください部長。

 

「今日2人には祐斗の仕事を見学してもらうわ。2人は魔方陣が使えないから祐斗と一緒に自転車で行くのよ。自転車で召還に応じる悪魔なんて前代未聞かもしれないけど…」

「でも昨日みたいに民家の屋根を走るよりずっといいですよ」

 

木場の言葉に全員の視線が俺に集まる。イセリア以外みんなジト目だ。イセリアは周りの反応に不思議そうに首を傾けてる。

実は昨日、木場の言う通り現場へと急行するために屋根を走ってしまった。ショートカットしたほうが早いんだから仕方ないと俺は思う!

 

「……非常識」

 

小猫ちゃんのジト目ってなんか心に来るものがあるよね。

 

「はあ…あなた達はもっと常識を学びなさい」

「?…悪魔に常識を解かれた。解せぬ」

『少しは反省しろ、イセリア』

 

イセリアの非常識は一緒に遊んでた俺のせいかも…。

 

 

 

 

 

 

とととっと軽やかに俺達の自転車の前を走る金髪イケメン、木場祐斗。

こうやって見てると本当に人間でないのが解る。俺の漕いでいる自転車だって決して遅くないスピードなのにこのイケメン野郎は息を荒げずに着いて来ているのだ。

 

「そういえば疑問だったんだけど、ヴァルブルーさんは何で昨日は誰も殺そうとしなかったの? あれだけの数を相手に手加減なんて大変だったんじゃない?」

 

木場が走りながら振り返らずにイセリアに物騒な質問をしてくる。

しかし、普通そんな事聞くか? 大体人殺しを積極的にやる奴なんていないっつーの!

イセリアも俺の後ろで不思議そうにしてる。

 

「? 人殺しは避けるものだろう?」

「…確かに、そうだね。ごめんね変なこと聞いて」

 

イセリアの言葉を聞いて木場は苦笑してそのまま無言になった。

何というか、今の木場は苛立っているようにも悲しんでるようにも感じて声をかけ辛い。一体なんだってんだか。

 

「よく解らないけど、木場君。あんまり暗いことばかり考えてるのは良くないぞ。大体昨日の男達は、イッセー曰く死ぬより辛い目にあったらしいじゃないか」

「ははは…た、確かにそうだね…あ、あれはちょっとね…」

 

た、確かに昨日の連中はちょっと可哀想だったな…! おのれイセリアめ、女にはあの苦しみが解らんのだ…!

でもシリアス空間っぽいのが一気に霧散しちまった。やっぱり1つのパーティーにボケが1人くらい必要なんだな。1人以上はツッコミが足りなくなるけど。

 

そのまま、ぽつぽつと取りとめの無い会話をしながら俺達は依頼者の住んでいるマンションに到着した。

依頼主のマンションは学園から30分程離れた場所だったが、依頼主は怒ってないか少々不安になってくる。やっぱりショートカットに屋根走ったほうが良かったんじゃないだろうか?

 

「ごめんください。グレモリー眷属の者です」

 

ドアの前に立って呼び鈴を鳴らす木場。

召還の魔方陣からではなく、ドアの呼び鈴を鳴らして依頼人を待つ悪魔。中々にシュールだ。

ちょっと口から笑いが漏れてしまいそうだぜ…!

 

「…ププッ…!」

「ドラレッド君、普段はちゃんと召還されて来ているんだからね」

 

いかんいかん、聞こえてしまっていたらしい。木場の口元がヒクヒクしてる。

 

『あいてます。どうぞにょ』

「「にょ?」」

「この声…?」

 

ドアの中から聞こえてきた野太い男性の声。何故か幻聴が聞こえ、木場とシンクロしてしまった。”にょ”ってなんだよ。

イセリアは声に覚えがあるのか顎に手を当てて考えてる。

しかし、男か。木場への依頼は綺麗なお姉さんが多いんじゃなかったのか?めっちゃおっさん声だったぞ。もしかしてヤーさんとか言わないだろうな?

 

恐る恐る靴を脱いで部屋の奥に進む。しかし、イセリアたちは普段どおりに進んで行く。

仕事に慣れている木場はわかるが、イセリアまで堂々としてるのは何か納得いかないんだが。

 

「っっっ!!????」

 

俺の先を歩いていた木場が、部屋のドアを開けた途端固まった。

どうしたってんだ? もしかしてホントにヤクザな方が待っていたのか?

とりあえず、固まっている木場の影から部屋を覗いてみて、そして俺も固まった。

 

「待っていたにょ」

 

あ、ありえない…!!

俺達の前には一体のモンスター。今まで対峙してきたどの敵よりも強大な人物が其処に君臨していた。

前に立つもの全てを圧倒する筋肉! あれと比べれば俺や木場は貧弱坊やとしか言えないだろう。それほどまでの凄まじい存在感を放つ筋肉!

だが、その程度はまだ序の口でしかない。

その筋肉隆々の肢体を包むのはゴスロリ衣装! しかもミニスカート!!

そしてその頭頂部にはネコミミ!!

このような存在を認めていいのだろうか!! こいつをこのまま放置すれば、きっと地球は滅亡する! そう思わずにはいられないほど圧倒的な男だ。

しかし、その漢の目を見たとき、俺の反抗心など消え去った。

純粋すぎるほど澄み切っていると思えば、凄まじい殺気を感じる双眸。

な、何て奴だ…! 何時の間にか俺は汗を掻いていた。それだけではない、手も小刻みに震えとてもではないが動けない…!

木場の様子を伺えば、奴も俺と同じ状態に陥っていた。

そんな時、動けない俺達の後ろから顔をひょっこり出す奴がいた。

や、やめろイセリア! 見てはダメだ!!

 

「なんだ、ミルたんさんか」

「にょ? 同士イセリアかにょ?」

 

し、知り合いだとおおおお!!??

俺と木場に衝撃が走った! ありえない事実に木場と俺の顔は顔芸状態! 脳髄を突き抜けるほどの衝撃!

同士ってどういう事だ!? 何処で知り合った、このモンスターにぃ!?

 

「同士イセリア、悪魔さんになったのかにょ?」

「違う違う。前に言ってた仲間にするっていう奴だよ。仕事の見学に来たんだ」

「そうだったのかにょ。上手くいってるみたいにょ。それでこそ魔法少女にょ、同士イセリア」

 

な、何でそんなフレンドリーなんだー!!?? 

何だこれっ!? 何だこれっ!?

魔法少女ってなんぞ?!

 

「ヴァ、ヴァルブルーさんの交友関係って、…か、変わってるんだね…」

「い、いや、俺も知らなかったんだが…っていうか、何だ、あ、あれ」

「に、ににに、人間だと、お、思うよ?」

「う、嘘付け…! あ、あんなの居て堪るかっ…!」

 

イセリアが奴をひきつけている間に部屋の隅でコソコソと聞こえないように会話する俺達。

もう、逃げ出したいぜ!

 

「ところで、何で悪魔を召還したの?」

「そうだったにょ! 悪魔さん!!!」

 

い、イセリアーー!? こっちつれて来るなぁああ!!

こ、殺されるぅ!!

 

その漢の眼光の前で、俺達は只身を寄せ合って怯える事しか出来なかった。

木場と俺の命運は、此処までらしい。朝、いいことあったと浮かれていたけど、どうやら今日は厄日だったらしい…!

 

「ミルたんを魔法少女にしてほしいにょ」

「「異世界に行ってください」」

 

俺達は即答した。どこの世界に筋肉モリモリな魔法少女が居るというのかっ!

 

「ミルたんさん。異世界に行って無理だったんだから、この世界の連中じゃ無理だと思うよ?」

「「行ったの?!!」」

 

またもやイセリアからの衝撃発言だった。

異世界ってそんな簡単にいけるのかよ!

 

「ど、同士、イセリア…、やっぱり無理なのかにょ…」

「人造ヴァルキュリアだったら出来るかも……」

「「やめてぇ!!」」

 

なんかイセリアがさらに目の前の存在を改造しようとしてるし! これ以上どう魔改造するつもりだぁ!

 

「魔法少女…宿敵の悪魔さんでも、やっぱり無理かにょ……」

 

ポロポロと大粒の涙を流すミルたん。

何だか可哀想になってくるが、こればっかりは魔王でも神様でも不可能だろう。

 

「…し、仕方ないにょ。今日はとりあえず”魔法少女ミルキースパイラル7オルタナティブ”を一緒に見るにょ。其処からきっと魔法が始まるにょ」

 

涙を袖で拭って漢らしい笑顔を浮かべたミルたんの手の中にはアニメDVD。

なんか、長い夜になりそうだ…。

 

「あっ! そうだったにょ。同士イセリアに渡すものがあったにょ。明日渡そうかと思ってたけど、丁度良いにょ。これ、魔法少女協会本部に届いた奴にょ。ドラヴァルに依頼が来てるにょ」

「ありがとう、ミルたんさん」

 

ミルたんから謎の封筒を受け取るイセリア。

どうやら前に配ったチラシに書かれていた住所は、魔法少女協会本部というらしい。

 

「ま、魔法少女協会本部ってなんだろうね…?」

「ま、まさか、み、ミルたんみたいなのがいっぱい、とかか…?」

 

想像しただけで恐ろしい…! 木場も想像してしまったのだろう。頭を抱えて蹲った。

かく言う俺も自分の想像で頭がどうにかなりそうだった。

 

「同時多発下着ドロ?」

「そうだにょ。ブラもパンツも盗んでいく悪質な犯人にょ。ここら辺で最近沢山の被害届が出てるにょ。同士イセリアも洗濯物には十分注意にょ」

 

下着ドロ…だと…?

まさか、元浜と松田じゃねーだろーな。あいつらが自暴自棄を起こしたとか…。

ありえるっ!

 

「被害の起きてる場所は把握されている?」

「もう一枚封筒に入ってるにょ。それに被害の起きた地図が載ってるにょ。魔法少女協会は優秀にょ、同士イセリアのバックアップは任せるにょ」

「こんなに子細に…。ありがとう、ミルたんさん。みんなにもお礼を言わなきゃにょ」

 

おいぃいい!! 語尾感染してるぞイセリアァあああ!!

 

 

 

 

 

 

あの後、ミルたんの”やっぱり魔法少女として見回りをするにょ”という言葉でDVD観賞は無くなり、木場への依頼は下着泥棒退治に変更となった。

そんなわけで俺達は一旦部室へと作戦を練りに戻ると、どうにも部長達も同じ依頼を受けたそうで、今日のところはお互いの情報を交換し合って明日助っ人を呼んで一緒に退治することとなった。助っ人は頼りになる悪魔で、上級悪魔だそうだ。

そんなこんなで俺んち。

 

イセリアは現在風呂に入っていて、俺は自分の部屋で筋トレ中だ。

どうにも、あのミルたんの筋肉に触発されてしまったぜ。

それにミルたんから感じたパワーは本物だった。あの漢ほど鍛えれば、イセリアに届くかもしれん。

 

『328、329、330、331…ん?』

「どうしたんだ、ドライグ?」

 

腕立てのカウントをやってくれていたドライグが急に唸りだした。

何かあった時、直ぐに動き出せるように俺は重りの入ったバッグを下ろした。

 

『下がなにやら騒がしいぞ』

「母さん達か?」

 

耳を澄ましてみると、なにやら母さんが大きな声を出している。

疑問に思った俺が1階へ降りてみようと立ち上がると同時に、どすどすと怒ったような足音が階段から聞こえてきた。

 

「こら、イッセー! イセリアちゃんの下着を返しなさい!」

「は?」

 

来て早々母さんに失礼な事を言われる。凄い剣幕だ。

しかし、返すも何も俺ずっと筋トレやってたんだが。

 

「あんた位しかいないでしょ。洗濯前の下着すら持っていって、全くもう!」

「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は知らん!」

『本当の事だぞ。相棒はずっと筋トレやっていたからな』

「あれ? そうなの? なら、一体誰が?」

 

ドライグが言って、やっと落ち着く母さん。

俺の信用は相変わらずゼロなのね。

 

ん? これって依頼の下着泥棒か?! 家に現れた? 気配なんてしなかったぞ?

いや待てよ、もっと大事な事を母さんは言っていた。

洗濯前? 洗濯の前? イセリアはお風呂だった? まさか…ぬ、脱ぎたてだと…!!? は、犯人の野郎…!!

 

「ちょ、母さん! イセリアは?!」

「今、部屋に戻ってるけど…ちょ、待ちなさい! まだ着替えてるかもしれないでしょ!」

 

母さんの横を通り過ぎて、ダッシュで階段を下りる。

着替え中だと…! 下着盗まれる=今マッパだと…!

犯人め! 絶対に許さないぞ! 

 

「イセリア、無事か!?」

「い、いっせー…?」

 

部屋にはタンスを全て開けて、その前に座り込んでいるイセリアがいた。

普段の勝気な様子とは全く違う、あまりに弱弱しい姿だった。

だが、残念ながらバスタオルを装着してしまっている。何てことだ…!

いや、でも少し、あと少し、もう少しで、見える! 俺にも見える!

 

「見え…「見えるじゃないわよ!!」…ぐわぁ!!」

 

Oh! この俺の頭に走る衝撃…! 母さんの拳骨が久々に直撃したぜ…!

完全に不意を突かれてしまった。母さんめ、一体何者だ…!

 

「イセリアちゃん、どうしたの? まだ着替えてなかったの?」

「そ、それが、下着が全部…全部無いんです…!」

「「な、なんだってー!」」

 

俺と母さんは直ぐにイセリアのタンスの中の下着を確認する。

見事に、イセリアのタンスの下着コーナーの中身はゼロだった。

あんなに清楚系の白や青い下着が並んでいたはずなのに…! それに、イセリアが大人ぶって買って、奥のほうに隠していた一組だけのセクシーな黒の下着も無い!

 

「母さん! 大変だ! ポストに怪文書が!!」

 

今度は父さんがなにやら怪しい紙を持って現れた。

母さんは素早くその手紙を受け取り、父さんのメガネを外した。

うん、流石母さん。いい仕事だ。イセリアのバスタオル姿を見るのは俺だけでよい。

 

「なになに…? …、……っ?!」

 

手紙を読んでいる母さんが、ワナワナと震えだした。手には力が篭り過ぎているのか小刻みに震え、手紙に皺が生まれる。

 

「イッセー…!」

「はいっ!!」

「犯人を必ず捕まえなさい(殺しなさい)…!」

 

ん? 幻聴か? 何か今捕まえなさいと、何かが二重に聞こえた……?

 

「返事はどうしたの? いいわね、犯人は必ず殺しなさい(捕まえなさい)」

 

逆! 今度は逆ですか?! 今絶対殺せって言ったよね!?

 

「な、なんて書いてあったんだよ…?」

「…!」

 

無言で突き出される紙。

何々?……”あなたの清楚な下着、頂きました。脱ぎたてはぜひクンカクンカさせていただきます。あと、一組だけあった黒い下着。何のつもりで買ったのですかな? ムフ、ムフフフフ”

………。

……。

…殺すしかねぇ。

 

「っ!?」

「い、イセリア!? しまった!」

 

何時の間にか立ち上がっていたイセリアが、俺の手の中の怪文書を見ていた。

読んでしまったのか目に光が無くなってしまったイセリアは、ノロノロと押入れの中に入ってパタンとふすまを閉じた。

途中でバスタオルがはらりと落ちたが、気にする余裕も無かったのだろう。

 

『相棒、鼻血が出てるぞ』

「ドライグ…。今回ばかりは、俺は犯人をぶっ飛ばすぜ。必ずな…!」

「甘いわよ、捻じ切って生まれてきた事を後悔させるのよ」

 

部長達、悪魔って言うほどだからアイアンメイデンのような拷問器具持ってるだろ。ぜひお借りしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ 今日のレイナーレ

 

 

堕天使の隠れ家の1つ。そこでレイナーレはシャワーを浴びていた。

元々拠点として使っていた教会は、既に悪魔との交渉に負けた上が引き払ってしまっていた。それだけではなく、レイナーレたち4人の堕天使をその組織内から追放したのだ。

もはや行き場所すら見失った4人とアーシアは、上に報告をせずに作っていた隠れアジトに潜んでいるわけだ。

 

勢いよく頭からシャワーを浴びながらレイナーレが思い浮かべるのは銀の髪の女。イセリア・ヴァルキュリア。

レイナーレに完膚なきまでの敗北を与え、そして、こんな環境へと追いやった女。

 

「くそっ」

 

拳を力なく壁に打ち付ける。

本当ならば、今頃アーシアの神器を奪い取り、レイナーレは敬愛して止まないアザゼルとシェムハザから愛を受けているはずだったのだ。

だが、現実はこんなボロ屋敷で何時仲間だったはずの堕天使達に粛清されるかもしれない日々を送る事になった。

その原因であるイセリアへの憎しみが、レイナーレの体の中に渦巻いていた。

そして何より、イセリアの言った言葉が気に入らなかった。

 

「”好きな奴の前で位は綺麗でいたい”だと…! だったら、私は何なんだ!!」

 

レイナーレは汚れてすら敬愛するアザゼルやシェムハザには会うことすら出来ず、ただ見上げる事しか出来ない。だが、イセリアは愛する者の傍で幸せそうにしている。綺麗でいようとする余裕すら持てる。

この差は、一体なんだというのか。レイナーレには理解したくも無いことだった。

 

そして、あの言葉はレイナーレにある事を気づかせた。

アーシアの神器を奪ったとして、果たしてそれを知ったアザゼルやシェムハザが本当に愛してくれるかということだ。

小娘を犠牲にして生まれた存在が、本当に至高の存在と認められるのか。もはやレイナーレには解らなかった。

だから、今のレイナーレはアーシアを手放す気は無くとも、もうその神器を奪うつもりは無かった。

何よりアーシアの神器、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)は戦闘能力を向上させるものではない。レイナーレがイセリアに打ち勝つには、戦闘能力を向上させる神器が必要なのだ。

 

「龍の手(トゥワイス・クリティカル)でも何でも良い…! あの女に勝てる力…なにか、無いのか…!?」

「レイナーレ姉さま~まだですか~。もう1時間は経ってますよ~」

 

ミッテルトの呼び声に、レイナーレは自分が時間を忘れるほど考え込んでいた事に気がついた。

こんな時にまで暢気そうなミッテルトの声に多少イラつくものの、自分の非を認めて許してやろうと、脱衣所に戻ってあることに気がついた。

用意してあった下着が消えてなくなっていたのだ。そして、脱いだ下着までもが。

変わりに謎の白い紙切れ。

 

「…”ビッチな下着、お見事です。脱ぎたては被らせていただきます”……おのれ、…おのれぇ…おのれ、イセリアァ・ヴァルキュリアァアア!!!」

 

見事な八つ当たりであった。

時刻は丁度イセリアが押入れに篭った頃の話。

 

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