赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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オッス、なんとか今日中に更新できたんで、ホットしてっぞ!



ギャルのパンティおくれーーー!!!②

朝の教室。昨日の件でイセリアはすっかり寝込んでしまい、未だに押入れから出てこない。

あの怪文書によって今までイセリアが誰にも言わずに隠してきた黒下着すらバラされてしまった上、脱ぎたての下着すら盗まれたその精神的ダメージは計り知れないだろう。本当なら学校を休んで一緒に居るべきなのだろうが、俺は犯人を抹殺する事を優先して学校に来ている。

そして俺の目の前には犯人候補が2名。奴らはいつも通り自分達の机の上でエロDVDを広げていた。

ウホッ…! イイAV…! ってやってる場合じゃなかった。

 

「おい」

「おわっ!! ど、どうしたイッセー…!? さ、殺人でもしそうな顔だぞ!?」

「い、イセリアちゃんと、喧嘩でもしたのか?!」

 

慌てふためきながら後ずさる変態2人組み。

この行動、間違いなく後ろめたいことがある証拠だな。

 

「最近、この辺で下着ドロがはやってるそうじゃねーか…、おめーらじゃ無いよな…?」

「…何だ、その話か」

「フッ…我々を見縊って貰っては困るぞ、イッセー…!」

 

何故か急に偉そうになる変態達。特に元浜はメガネをクイッとしてかっこつけているところがうざったい。

 

「下着は脱がしてこそっ!! 女体が無ければ只の布だ!! そうだろう、松田ァ!!」

「そうだ! それを態々盗み、着用する姿を見れなくするなど! 愚かしいにも程があるぜ!!!」

「…っ!?」

 

そうだ、その通りだ! 下着は女の子が着用してこそ。下着そのものに欲情するなんて、こいつら2人の言う通りありえねえ!

俺はどうやら間違っていたらしい。よりにもよって、友達を疑うなんてどうかして…

 

「でも、脱ぎたてなら盗んでみたいかもな! な、元浜っ!」

「確かに! クンカクンカしてみたいっ!」

 

…やはり犯人だったようだ。一瞬でもこいつらを信じた俺が馬鹿だった。

変態2人組みの言葉に、クラス中の雰囲気が絶対零度と化した。

誰もが変態達を汚物を見るような目で見詰める。かく言う俺も、同じ目をしているだろう。

 

「…お、おい、イッセー、そ、そんな目で見るなよ……お、お前らも、冗談だってーの」

「そ、そんな目で見るなよ…! ぬ、盗んでねーよ…」

「「「「「「嘘だ!!!」」」」」」

 

変態達の処刑がクラスで展開されたが、俺は特に止める事はしなかった。まあ、元浜と松田がやってないことだけは信じることにしたから俺は参加しなかったけど。

 

放課後、旧校舎にある部室へ続く道を歩いていると何者かの気配がする。というより、ごそごそと動く茂み。あからさますぎて何も言えん。何奴!

 

「イッセー」

「な、なにぃ!!」

 

せ、制服だとぉ!! い、イセリアの奴、制服で出てきやがった!

 

「お、おまっ! せ、制服、どうやっ、…い、いや、そうじゃない、もう大丈夫なのか?」

「ああ。もう、大丈夫。ちなみに制服は侵入が楽になるだろうって店長がくれた。あと下着は戦闘服を使ってる。犯人は任せてくれ、ヴァルキュリア人は、決してやられたままでは終わらない」

 

気合を入れるようにガッツポーズするイセリア。

お前、喫茶店の店員だろうが。店長何者だよ、前にお婆ちゃんとか言ってただろ。

 

「あ、あと…あの、…く、黒い下着なんて、持ってなかったからな…、ほ、ホントだぞ」

 

力強かったガッツポーズから急に弱弱しく指をツンツンと胸の前でしながら俺を上目使いで見てくるイセリア。頬もほんのり赤く染まっている。

何故だろう。たったこれだけの事なのに、心臓の鼓動がマッハになって息子が元気になってしまった。俺は表情筋に力を込め、何事も無かったかのようにズボンのポケットに左手を突っ込んでポジションを整えた。ふむ、大きくなったな愚息よ…。可愛がってやりたいが、今は耐えるのだ。

しかし、いかんなイセリアよ。黒い下着は悪くはない。寧ろ、もっと着て欲しい。だが、此処は何も知らないことを装おう。

ぐっと親指を立てて安心させるように力強くイセリアに言ってやる。

 

「大丈夫だ、イセリア。俺はお前が密かに買っていた黒い下着の事なんて知らない。一回だけ着て鏡の前でセクシーポーズとってた事なんて見たことも無いぜ!」

「な…な…なんで…それを…!? し、知って…!?」

 

あれ? 何で口をパクパクと? …ハッ!? やべ、口が滑った。

 

「$#$%&&*っ!!?」

「お、落ち着け、イセリア!! にふょんほになっふぇふぇーふぉ(日本語になってねーぞ)!!」

 

顔を真っ赤にして俺に掴みかかってくるイセリア。もはや言語が日本語じゃなくて初めて会った時のイセリアの故郷の言葉になってる。

何とか落ち着かせようとするが、途中から頬を引っ張られて俺まで日本語じゃなくなっちまった。

 

「……校内でイチャつかないでください」

 

この冷たい声は小猫ちゃん。何時の間にか俺達の背後には体操服姿の小猫ちゃんが居て、俺達を呆れたような冷たい目で見てくる。

その冷たい目のお蔭でイセリアも何とか冷静さを取り戻したのか、わざとらしく咳をしながら俺と距離を取った。未だに顔が赤いのはまあ、仕方がないよな。

 

「ごほん…それにしても塔城さん。なんで体操服?」

「制服のコスプレをしてるヴァルブルーさんには言われたくないです」

「コスプレッ?!」

 

小猫ちゃんの言葉にガビンッ! っとショックを受けて体育座りで床にのの字を書くイセリア。

相変わらず小猫ちゃんはイセリアに厳しめだ。理由は解っている。小猫ちゃんはイセリアと喋る時、その視線は必ずイセリアのロケットおっぱいへと向けている。

間違いない。小猫ちゃんは新しく来たおっぱいに対抗意識を燃やしているに違いない。姫島先輩や部長は元から居た先輩おっぱいだからまだ諦めがつくのだろうが、その先輩達と同等のイセリアが入ってきたのだ。チッパイの小猫ちゃんからしたら新人の癖にデカイ胸してんじゃねーぞ、こら! ってなってるに違い…

 

「違います。変な妄想は禁止です」

「アベシッ!? めが、目が~!!」

 

小猫ちゃんの指が俺の眼に突き刺さった…!

俺の視線が小猫ちゃんのチッパイに向いていたことに気付かれていたのか…! な、なんという洞察力…!

 

「私も盗まれたんです。件の下着泥棒に」

「な、なにぃ!?」

 

小猫ちゃんの下着まで持っていっただと…!? こんな小さな子の下着まで盗むなんて、犯人の野郎、どこまで外道なんだ!

 

「小猫ちゃんも、イセリアみたいに全部盗まれたのか?」

「はい…気付けませんでした」

「大丈夫塔城さん、必ず私が取り戻して見せるよ」

 

無表情ながら、しかし悔しそうに俯く小猫ちゃんを見てると、ますます犯人に怒りが湧いてきた。女を悲しませる奴は絶対許せねえ。

イセリアも立ち上がって犯人への怒りを燃やしている。片手をポンッと小猫ちゃんの肩において励ますように力強く言った。イセリアは子供に優しいから、小猫ちゃんの件には真剣に怒ってるんだろう。だから、…

 

「黒い下着でセクシー…?」

「はぅっ!!?」

 

小猫ちゃん、追撃はやめたげてよぅ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

「……来たわね」

 

部室に到着した俺達の前には、部長が碇ゲンドウスタイルで待っていた。

今日の部長は不機嫌メーターがマックスになってるようで、ドスの聞いた声だ。いや、不機嫌なのは部長だけじゃない。部室内に居る女子、全員がそれぞれマフィアのボスのようなポーズで怒りのオーラを放っている。そう、オカルト研究部以外の面々まで今日は居る。

ソファーに座って眼鏡を磨きながら暗黒オーラを放っているのは、この駒王学園の生徒会長、支取蒼那先輩。何時もの冷たく知的な美貌がパワーアップして怖そうな雰囲気がさらに強力になってる。そして最近生徒会の書記になった男子生徒がこれまたピリピリと険しい顔して生徒会長の後ろに居るものだから、もはやマフィアにしか見えない。

そしてもう1つ、そんな部室の中で一際異彩を放っているのは生徒会長の対面に座る謎の甲冑だ。日本武者の甲冑に身を包んだ不審者は手に刀らしきものを持ち、まるで本陣にドンと構える武将のようだ。何故か小刻みに震えているのが余計に危なっかしい雰囲気を増している。

 

「あ、あの姫島先輩、これは一体?」

「うふふ、皆さん共通で、ただ殺したい対象が出来ただけですわ」

 

台詞も物騒だし、何より目が全く笑っていない。こ、これは本格的にやばそうだぜ。

 

「昨日話していた援軍を紹介するわね。支取蒼那、真名はソーナ・シトリー。上級悪魔シトリー家の次期当主よ」

「よろしくお願いします、ドラレッド、ヴァルブルー」

 

立ち上がって薄く微笑みながら綺麗にお辞儀をする会長。俺達も、まだ混乱気味だがとりあえずぺこりと頭を下げた。どういうことだってばよ…?

 

(『どうにもこうにも、只悪魔だったという事だけであろう? 学園に2人の上級悪魔と2つの眷属がいたという事だ』)

(なら、生徒会メンバーは全員…)

(『悪魔だろうな。俺は気付いていたがな』)

(何で言わないんだよ…!)

(『戯け、それでは俺がおもし…ではなかった、お前が成長しないだろう』)

 

今、面白くないって言おうとしやがった…。ドライグめ、また篭手を毟ってやろうか…!!

 

「会長と俺達シトリー眷属が日中の学校を守ってるんだ。君が平和な学生生活を遅れているのは俺達の御蔭でもあるんだぜ」

「「へぇ~」」

 

何か生徒会の男子にドヤ顔で言われるが、いまいちピンと来ない。そんな俺達の反応にイラついたのか男子生徒の唇がピクピクとし、額に血管が浮かんでる。カルシウム足りてねーなこいつ。

 

「ふう…まあいい。俺は匙元士郎。会長の兵士(ポーン)をやってる」

「ポーン?」

「何だ、そんな事も知らないのか? 無知な連中だな」

「サジ。2人は悪魔ではなくリアスの客人です。それに、悪魔について知ったのも最近ですよ」

 

微妙に馬鹿を見る目で俺達を見ていた匙が、会長に睨まれてシュンとする。その様はまさに犬。

 

「悪魔の駒については後で私から説明するわ。…ヴァルブルーの格好に突っ込むのも後回しよ。第一優先は犯人についてよ。スーザンさん、手紙を見せてくださる?」

「は、はい!」

 

鎧武者がなにやら怪しい紙を懐から取りだして机の上に広げた。何事かと、俺達はその紙を眺める。其処に書かれた文字は、俺の家にあった怪文書と同じ文字だ。

なになに、…グレモリー眷属の皆様。あなた方の下着はどれも素晴らしいものでした。私のコレクションの中でも最高です。さて、私に簡単に下着を盗まれた皆様もその雪辱を晴らしたいでしょう。そこで挑戦です。本日、深夜にこのスーザンさんの下着を頂きに参上します。防げるものなら防いで見なさい。…ふふ、ふはははははっ!!

…。

こ、この野郎…!!

 

「ヴァルブルー。貴方も下着を盗まれた?」

「ええ、塔城さんも一緒。もしかして、部長達も?」

「そうよ。朱乃も私もね。…これは私達に対する挑戦状よ。必ず犯人は消滅させるわ」

 

ゴウッと4人から立ち昇るオーラー。ここに、グレモリー陣営女性陣の心は1つになった。俺達男性陣は、女性陣のあまりの気合にビビッて身を寄せ合う。木場なんか特にへっぴり腰だぜ。

 

「…ドラレッド君の方がもっと腰が引いてるよ…」

「こ、これは、だな…! あっ! そ、そういえば何で生徒会長たちが? 会長達も盗まれたんですか?!」

「いいえ。私達には盗まれた者はいないわ。本当なら貴方達と一緒に協力して犯人を見つけ出すはずだったのだけど……」

「それには及ばないわ。此処で貴方達の協力を仰げばグレモリー家の恥よ。それに、犯人が現れなくなったらどうするのよ。犯人は必ず私の手で消滅させるのよ」

 

クククッと笑いながらさらに赤いオーラを出す部長。いつも悪魔らしくないと思ってたけど、今の部長はまさに悪魔だ。そして、そんな部長に呆れたようにため息をつく会長。

 

「リアス。冷静さを失っているようだけど、相手は恐らく強敵よ。只の変態ではないわよ。貴方達の誰にも気付かせないで一晩の内に全員の下着を盗んでいくなんて並みの使い手ではないわ」

「…わかっているつもりよ。けれど、負けるつもりも無いわ」

「はぁ…止めても無駄のようね」

「ごめんなさいね。せっかく来てもらったのに…」

「いいのよ。その代わり、絶対無事で帰ってきなさい」

 

…この2人、綺麗なんだけど何だか少女マンガを見てる気分だ。それにしても、生徒会長の気遣いといい、部長にだけは敬語じゃないところといい、部長と生徒会長は浅からぬ縁があるみたいだな。

 

「…まあ、頑張れよ」

「…リアスの事、守ってくださいね」

 

俺に一声かけて生徒会長と匙は部室を後にした。俺みたいなのに頼むほどに、生徒会長は部長の事を相当に大切に思ってるんだろう。

 

「さて、本日の依頼は全て中止。全員でスーザンさんの下着を守るわよ!」

「あ、あの宜しくお願いしますっ! 私も、この鬼神丸国重で戦いますっ!」

 

いや、鎧武者さんは戦わなくていいって! やめて、刀を振り回さないで!

 

 

 

 

 

 

かがり火が轟々と燃え、深夜の公園をオレンジ色に照らす。周囲には陣幕と旗が立ち並び、その様は例えれば現代に蘇った戦国時代の本陣。そしてその中央にドンッと威風堂々と座るスーザン。そして、スーザンの目の前には下着の入った袋が風呂敷に入って置かれている。

…何だこれ。

 

「……かっこいい…!」

「って、こんなんで犯人来るわけねーじゃん!! イセリアも何目を輝かせてんだ! 突っ込めよ!!」

 

俺達は現在、スーザンの下着を囲むように椅子に座って待機していた。スーザンの隣にイセリア、次に俺、そして木場。その対面に部長、姫島先輩、小猫ちゃん。俺達が鎧を着て、囲んでいるものが下着の入った風呂敷ではなく机だったら本当に戦国時代だ。

あ、頭痛い…。なんで誰も突っ込まないんだよ……。

 

「うふふ…、来なかったら来なかったで良いんですのよ。ドラレッド君」

「そういうことよ。来なければ犯人は只の臆病者。そうなれば、冥界にいるすべての女性悪魔に召集をかけて虱潰しに見つけ出してやるだけだわ」

「…出来れば来て欲しいです」

 

グレモリー眷属、女性陣のみんなからかがり火にも劣らないオーラが出てる。…犯人、来たら確実に死ぬな。いや、この分だと来なくても死亡確定だ。

 

「き、木場…お前も、突っ込めよ…!!」

「む、無理だよ……。何だか、最近こんなのばっかりだね、僕達…」

「言うな…。空しくなる…」

 

木場と一緒にこの世の空しさについて、確かめあった。何だか、最近木場とのホモ疑惑が学校で強まってるんだが、どうすればいいんだろう。でも、このプレッシャーを1人で耐えるのは難しいと思うんだ。男は辛いよな…。

 

「でも、犯人は何者なんだろうね」

「確かに、悪魔のみんなでも気付けなかった程だしな」

「相当な実力者なんだろうね」

「でも、それほどの奴がこんな事すんのか?」

「透明人間」

「「へ?」」

 

木場と犯人について語り合ってると、イセリアが突然意味不明なことを言ってきた。

部長達もオーラを高めるのを一時中断して、イセリアに注目する。

 

「私がお風呂に入っている時、一度気配を感じて脱衣所の方向に振り返ったけど、何の影も映っていなかった。またイッセーかと思って流してしまったけど、あの時は確かに何かいると感じた。だから透明人間」

 

おい、こら。不名誉な噂を流すんじゃありません! 

た、確かに週3で覗いてるけど、気配を絶つ訓練をしてるだけよ! 勘違いしないでよね! 決してイセリアの柔肌を見るためなんかじゃないんだからね!

 

「でも、それだけで透明人間と決め付けるのは良くありませんわ。気配を全く感じさせない身のこなし、さらには私達全員の家を一晩で廻る俊敏さ。私の予想では忍者ですわ」

「そうかしら、忍者ならもっとマシな事をするはずよ。きっとゴキブリのような奴に違いないわ」

「……召還魔法を極めた変態だと思います」

「わ、私は蛇みたいにくねくねした人だと思いますっ!」

 

女子達の剣呑な気配が霧散し、犯人について各々予想を立て始めた。俺的には姫島先輩の言っていた忍者が怪しいと思うぜ。口から火を吹いたり、水出したり、隕石を落としたり、手を合わせると木が生えてきたり、幻術だ…とかで最近のNINJAは何でもありだからな。

 

「どれもありそうで怖いね」

「そうか?」

「僕が思うに、一番ありそうなのは召還魔法を極めた人なんじゃないかと思うんだ」

 

木場も女子のプレッシャーから解放されたために、引き攣った顔から何時ものイケメンニコニコになった。でも、木場と小猫ちゃんの言う通り、召還魔法を極めた奴なら、俺達にはどうしようも無いんじゃないか?

 

「…っ!? ……」

「どうしたイセリア?」

 

急にイセリアがバッと振り向いた。その視線の先を追いかけるが、特に何も無くて遮蔽物も無しで人が隠れるスペースなんて1つも無い。

 

「気のせい…? でも念のため…」

「お、おい、それって…!?」

 

急に立ち上がり、盾から何かを出すイセリア。かがり火の炎で照らされたそれは、以前見た手榴弾の小さいバージョン…? 

な、何をする気だ? ピンを勢いよく抜いて、ピッチャーイセリア投げました?!

 

「おいぃいいいい!!?? みんな早く伏せるんだ!!」

「「「「え?」」」」

 

夜の闇を吹き飛ばすような蒼い閃光と大砲をぶっ放したような爆発音が公園に響き、爆発によって起こった強風が俺達を容赦なく襲う。しかし、爆風は俺の想像よりは小さかったらしく俺以外の伏せなかったみんなも踏ん張れたようだ。

 

「ちょっと、ヴァルブルー!! いきなり何を投げてるのよ!!」

「これほどの気配遮断能力を持った相手、慎重すぎるくらいが丁度いい。それに出てきたぞ…!!」

 

掴みかかる部長をかわして槍を盾から引き抜くイセリア。水平に構えられた槍の穂先には相変わらず何も無い空間、いや、地面に穴開いたけど何も居ないはずの場所だ。

 

『馬鹿者、いい加減に気付け、いるぞ! 構えろ!』

「…!?」

 

ドライグの警告に、俺達は一斉に立ち上がってそれぞれ構えを取った。俺達には相変わらず何も無い空間にしか見えないが…、いや、イセリア以外にも木場の奴は何か感じ取ってるみたいだ。

どっから取り出したのかは解らないが、木場の剣は迷い無く構えられている。

 

「いままで、全く気付けなかったのに…参ったね」

「何がいるんだ? 木場…」

「ヴァルブルーさんの予想、当たってたみたいだよ!」

 

木場が一気に走り出し、何も無い空間に剣を振るう。そのスピードは素の俺ではかわしきれないと思うほどだ。だが、木場の言う見えない敵はかなりの強者らしい。触れ合う木場の剣と見えない敵の攻撃。一瞬だけ散った火花が周囲を照らし、相手の影を僅かに映した。

なにか、別の物が当たると透明が切れるのか…?

 

「…ぐっ!?」

「木場!!」

「祐斗先輩!」

 

見えない敵との均衡は一瞬、木場は素早く剣を引き戻し二撃目を繰り出そうする。しかし何かが木場の腹に放たれ、体はくの字に曲がり吹き飛ばされる。そのままかがり火に突っ込みそうになったが、イセリアが素早く受け止めてなんとか事なきを得た。しかし、イセリア。お姫様抱っこはやめてあげて…。

 

「はぁあああ!!」

「消し飛べぇえええ!!」

 

部長から放たれる黒い魔力と、姫島先輩の雷が見えない敵のいただろう場所に突き刺さる。

爆音と共に大きな土煙が周囲を覆った。

 

「…くっ…手ごたえ無し」

「…みんな、スーザンさんを囲む円陣を! ヴァルブルー! 敵の位置は解る?!」

「周囲に居る事は解るが、位置までは特定できない。姿を見せなくする能力にそれに頼らない隠形…。向こうからアクションを起さない限りは捉える事はまず無理だ」

 

部長の声に一斉にスーザンを囲むように集まる俺達。全員、姿の見えない敵に冷や汗を流して苦い顔をしている。

姿の見えない敵、それがこれほど厄介だったなんて…。気がついたら死んでる、何てこともあるんだ。こんなの反則だろ。

 

「くっ、このままじゃ嬲り殺しだ…!」

「匂いもありません…!」

「っ! イッセー!!」

「うわっ!?」

 

木場と小猫ちゃんが状況の悪さに愚痴をこぼした途端、俺に向かってナイフが飛ばされる。目の前にいきなり現れたナイフに反応できなかった俺は、そのまま眼球に突き刺さって死亡するところだったが、イセリアの突き出した槍が、俺の眼前まで迫っていたナイフを横合いから吹き飛ばした。

守ってもらって何だけど、顔の直ぐ前でイセリアの槍がキュルキュル回転してるとチビリそうになるぜ!

? イセリアの槍の回転が、何時もより速い? 

すぐさま俺の顔面から槍を構えなおしたイセリアは砲撃体勢に入った。しかし、敵も捉えきれていないのにその攻撃じゃ当たらないはずだ。

 

「はぁああああ!!」

「イセリア?!」

 

イセリアの槍から放たれる炎。いつもなら真っ直ぐ突き進むだけの蒼い破壊の炎は、しなやかにうねる。イセリアの腕の振りにあわせて伸びていく蒼い炎は、とぐろを巻くように俺達を囲み、獲物を探す蛇の様に変幻自在に周囲を駆け巡った。蒼い炎の通り道は抉られるように焼き消えていく。

 

「捉えられないなら、周囲ごと吹き飛ばせばいいだけだ…!!」

「っ!?」

 

誰もが唖然とする中、俺は炎の鞭の軌道に一箇所だけ僅かな空白があるのを発見する。イセリアに視線を送れば、力強く頷かれる。

なら、俺のする事は決まってる…!!

腰を落とし俺のイメージの中で最強の人物、空孫悟の最強の技をイメージする。ドライグがブーストした気が俺の両手に集中して爆発しそうなほど暴れだした時、俺はイセリアがわざと作った隙間に向かって一気にそれを解放した。

 

「其処だ、ドラゴン波ァアアアア!!」

「グワァアアアア!!!??」

 

良し!! ドラゴン波が変態に直撃したみたいだぜ。イセリアの槍の回転が収まり、蒼い炎が陽炎の様に消えていった。だけどその破壊の後は禍々しく残り、公園は原型を留めぬほど荒れ果てていた。

荒野と化した公園の中心、姿の見えなかったはずの敵の姿がくっきりと見える。倒れ伏したその変態は所々焼けて穴が開いてはいるが、黒いタキシードとシルクハット、さらには顔を妙な仮面で隠した明らかな変態だ。

 

「た、タキシード仮面…?!」

『また妙なネーミングを…』

 

いや、ドライグ。今日は比較的まんまなネーミングだったと思うぞ。

 

「……ドラレッドとヴァルブルーは後で説教ね」

「へ? 何で?」

「俺も?!」

 

イセリアは公園を此処まで無茶苦茶にしたからわかるけど、なんだって俺まで?!

抗議の声を挙げた俺に部長は呆れるようにため息をついた後、その長い指で指し示した。その指の先を追えば、見事に円形に切り抜かれた民家の屋根。穴はあたかも元からそうであったのかのように真丸を描いていた。一階建ての建物だったのが唯一の救いなのかもしれない…。

……間違いなく俺です。本当にごめんなさい。射角を考えていませんでした。

 

「…覚悟はいいかしら?」

「うふふ、何時まで正気を保っていられるか、テストしましょう」

「…サンドバッグに丁度いいです」

 

怒りのオーラを漂わせながら変態を囲む女性悪魔3人。姫島先輩ってやっぱりSなんだな。それに小猫ちゃんも中々のサディスティック性を持っているみたいだ。

イセリアは何処に行ったのかと探せばスーザンさんに必死に頭を下げていた。何だ?

 

「陣幕が…、陣幕が…」

「ごめんなさい、ごめんなさい!」

 

Oh、そういえば、本陣っぽく改造していた奴全部スーザンさんの持ち物だった。今は消し炭だけど。

……聞かなかったことにしよう。

 

「……クククッ、見事だ…。まさか、この私がリア充にやられるとはな……」

「…最後に1つだけ聞かせなさい」

「なんだね、誇り高き黒のパンツを履いた乙女よ」

「フンッ!!」

「あふん」

 

あの変態は部長のパンツを覗いていたらしい。俺も見たい…じゃねえ、何て、何処までも漢らしい奴なんだ…!

しかも部長に顔面を蹴られて踏まれてあんなにも嬉しそうに…! とてもじゃねーが、俺ではあの高みには昇れそうにねえ!

っていうか、あいつ全然余裕じゃね? 何モンだよほんとに。

 

「何故これだけの力を持ちながら、こんなことを貴方はやっていたのよ」

「好きだから…というのもあるが、嘗て、私はとある悪魔に仕えていたことがあったのだよ」

「はぐれ悪魔ってわけね」

「そうだ。だが奴は私の力を暗殺にしか使わなかった」

「……」

 

あれほど気配を隠すことが出来る奴で、しかも透明化の能力まで持ってるんだ。そんな能力を持った下僕がいたのなら、暗殺を命じるのも当然なのかもしれない。

 

「麗しい乙女達を次々に殺していった私はどうしようもない罪悪感に囚われ、主を裏切り、自らを封印したはずだった」

「なら、何故貴方はこうしているのよ」

「うむ。つい最近なのだが、私自身を封印した壷をビッチっぽい堕天使が八つ当たりで割ったようでな。久しぶりのシャバだったからつい張り切ってみたというわけだ」

 

ビッチな堕天使…? 一体何者なんだ…!?

 

「…まあ、良いわ。処刑の時間よ」

「残念ながら、それは無理だ」

「何っ!?」

 

薄らと消えていく変態タキシード。気付いた部長達は一斉に攻撃を放つが土煙が上がっただけで奴の悲鳴は一切上がらなかった。

 

「ハーハッハッハ!! また会おう!」

「に、逃げられた……!」

 

代わりに俺達を嘲笑う笑い声が闇に熔けるように周囲に響いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おまけ ある日のイセリアとリアス

 

「良くぞ我が呼び声に答えた!」

「え、ええ。どうしたのよ、ヴァルブルー、此方の方達は?」

 

召還に応じて転移したリアスの前に居るのは腰に手を当ててドヤ顔で仁王立ちするイセリアと、そのイセリアを見守るようにソファーに座っている兵藤一誠の両親だった。

どうやって召還したかと思えば以前頼んでいたチラシ配りの時、一枚だけネコババしていたらしく、その手には簡易魔法陣が握られていた。

リアスが周りを見渡せば、召還された場所は兵藤家のリビングだという事がわかる。

 

「おお、君がイッセーとイセリアちゃんがお世話になってる悪魔の部長さんか!」

「まあ、本当に可愛い子ね。いつも息子達がお世話になってます。さあ、お茶をどうぞ」

「え、ええ。ありがたく頂きます」

 

何故か甲斐甲斐しく世話をしてくる一誠の両親に戸惑いを隠せないリアス。一体何が起こっているのか、何故一誠の姿が見えないのか、様々な疑惑と不安がリアスの脳内を駆け巡る。

 

「今日、部長を呼んだのは他でもない。私のお願いを聞いて欲しい」

「ヴァルブルーが…? 一体何を?」

 

ソファーに座って、いつもと違い真剣な表情の表情を見せるイセリアにリアスは戸惑いを隠せない。

 

「実は、…歌を、上手くして欲しい」

「…はい?」

「お願いします! 先生、イセリアちゃんを治してください!」

「なんとか、なんとかお願いします!」

「お、落ち着いてください…!」

 

余程の緊急事態だと思っていたリアスは、イセリアの小さな願いに聞き間違いかと思ったほど。しかし、一誠の両親の暑苦しいまでの懇願にそれが事実であると悟った。

話を伺えば、一誠の前で歌った時にドライグと一誠に相当馬鹿にされたらしく、見返してやるために一誠が居ない時にリアスを召還したらしい。

 

「まあ、一度聞いてみて欲しい」

「…解ったわ」

 

そう言って歌いだすイセリア。曲は卒業式でよく歌われる”ビリーブ”という曲だ。

 

「……フッフフフフ…こ、このままで、い、…いいんじゃ無いかしら」

「ど、どうして笑ってるの?」

「い、イセリアちゃん、…い、いい、歌だったよ」

「そ、そうね…、で、でももっと上手くなっても、い、良いのかもしれないわね」

 

そう、リアスが聞いたイセリアの歌は素晴らしかった。普通の人が歌えば無性に悲しい気分になるはずの卒業式定番ソングが、あっという間に明るい歌謡曲のように変貌した。さらに、音が外れているはずなのに自信満々に笑顔で歌う姿が聞いている者の笑いを誘うほどだ。

此方の笑いを堪える姿を見てか、涙目になってきたイセリアを可哀想に思ったリアスは、早速、悪魔用携帯端末でイセリアの願いの対価を調べる。

 

「……ダメね、願いを叶えた途端、死ぬわ…」

「何で?!」

「いえ、聞いた人が昇天するみたい…これは凄いパワーアップだわ…」

「駄目な意味で?!」

 

端末に表示された情報を見れば、対価自体は髪の毛を切れば願い事態は叶えられるが、どうにも強化されすぎてしまうらしい。決して下手すぎて死ぬのではない。

 

「そういうのではなくて、部長には歌の先生をやって欲しい」

「…そういうことね。なら、私は厳しくいくわよ」

「望むところ」

 

こうして、イセリアとリアスの長い、長いレッスンが始まったのであった。

 

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