赤い龍と蒼の魔女(仮)   作:イマーZ

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おっす! オラ作者。
特に言う事は無いぞ!


飛べねえんだよ、オレは・・・

オカルト研究部部室。

イセリアの看病で昨日は休んだから一日ぶりの部活だが、早く来すぎたのか今居るのは部長と俺だけ。ソファーに座ってみんなを待ちながら、部長が入れてくれたお茶を貰ってる。

しかし、イセリアが風邪を引くとは思いもしなかったぜ。そういえば、一昨日からくしゃみしてたっけ? なんか厚かましい連中に絡まれたせいとか。

だけど、偶にはああいうのもいいかもしれないな。熱で上気した頬、汗で張り付いた寝巻き、開いた胸元…。看病してる間は一生懸命だったからそこまで気にならなかったけど、今思い出すと俺の愚息が直立不動の仁王立ちだぜ!

 

「もうヴァルブルーの風邪は治ったの?」

「勿論っすよ部長。今日はもう元気満々になってますよ。でも、ちょっと遅れるそうです」

『バイト先に、なにやら厄介な3人組が現れてイセリアにたかってるらしいぞ』

「どういう状況なのよ…」

 

いつも通り頭痛を堪えるように頭を押さえる部長。イセリアのお蔭で部長はこのポーズが板についてきてる気がする。

イセリアに絡んでるという厄介な3人。無銭飲食でしょっ引かれそうになったけど、イセリアが一応知り合いでもあるそうだから、店で一緒に働けるように店長と交渉してるらしい。

本当に何やってるんだか。まさか、男じゃねーよな…。男じゃ、無いよな?!

 

(『安心しろ、女だ。大体あのお惚け娘にそんなものが出来るか』)

 

確かに! いや、でも、騙されてホイホイついていってしまい……それ以前にイセリアを如何にか出来るやつなんて居るわけ無いか。

しかし、女で厄介な連中…? 俺が中学の頃に襲われたけどイセリアが吹っ飛ばして事なきを得た時のカツアゲ集団か?

 

「ねえ、ドラレッド。貴方とヴァルブルーって何処までいったの? Cくらい?」

「ブファッ!!」

 

い、いきなり何言ってんのこの人! 

部長の突然の言葉についお茶を噴出してしまった。Cってもうゴールしてるじゃないすか、ヤダー!

 

「ゴホッ、ゴホッ! い、いきなりなんスか!?」

「ヴァルブルーが風邪を引いてる姿がどうしても思い浮かばなくて、昨日朱乃と話してたのよ。そしたら、朱乃がね、その、ドラレッドがエッチな事をやって、…その、ヴァルブルーの足腰が立たないんじゃないかって…」

「姫島先輩?! 何言っちゃってんの?!」

 

ちょっとどもりつつ、頬を僅かに赤く染めながらいう部長。その姿は本当に可愛いんだけど、本当に何言ってんの?!

 

「で、どうなの?」

「いや、CどころかAもやってないですって!? 普通にイセリアが風邪引いただけですよ!」

「あら? そうなの? 意外すぎるわ…」

 

興味心身に身を乗り出していた部長も俺の言葉に落ち着いた。ただ、凄く納得いかなさそうな顔をしてる。やっぱり部長も女の子ってことか。

まあ、確かに出来たらいいな、とは思ってるけど。

 

「あなたはHな事に関しては欲望も強いのに…。あなた達は想いあっているのでしょう? お互いを大切に想っているのでしょう?」

「え? あ、ま、まあ、そうっす」

 

噴出してしまったお茶を拭いていると、さっきまでとは違う、からかう感情を一切消した真剣な瞳で、何処か羨ましそうに部長は続けた。

 

「ドラレッドはそういうこと、したいんでしょう?」

「は、はい! 勿論です!」

「なら、どうして? ……あなたがイセリアに迫れば、きっとさせてくれるのではないかしら? 無理やりにでもしようとは思わないの?」

 

ぶ、部長、なんだってこんな真剣に…? …はっ!? ま、まさか、この俺に惚れてしまったのか?! いや、無い。ナイナイ。俺、惚れられるようなとこないしな。 

きっと俺達の何かが部長の気に障ってしまった。俺の返答が部長の心に抱えているものに引っ掛かったんだろう。あだ名で呼ぶことすら忘れてしまうほどに。

だったら、俺も真剣に偽り無く答えるべきだろう。

 

「えー、無理やりするのは違うと思いますよ。物じゃないんですし、俺1人の欲望で傷つける気なんて無いです」

「!……そう、そうよね」

「それに、俺には誓いがあります」

「誓い…?」

 

怪訝そうに俺を見詰める部長。きっと今から言う言葉を聞けば、もっと呆れてしまうだろう。

まあ、俺の誓いなんて他人から見れば、馬鹿馬鹿しいのかもしれない。だって、そんなものしていなければ中学時代にはとっくに童貞卒業してたかもしれないからな。

 

「イセリアより強くなるまで、俺はあいつに手を出しません」

 

でも、俺には貫き通す意思がある。それだけの思いがあるんだ。

 

「どうして…? そんな誓いなんて」

「想像つかないかもしれないですけど、あいつって初めて出会った頃は結構泣き虫だったんですよ」

「? ヴァルブルーが?」

「はい。まあ、いきなり違う場所に独りぼっちになったんだから仕方無いかも知れないっすけど。それで、当時の俺は守りたいって思ったんです」

 

警察に世話になってた時は本当に大変だったしなぁ。面会に行っても、部屋の隅っこで何時も体育座りしてたし。

命を助けられた恩もあったし、そんなの見ちまったから余計にほっとけなかったんだよな。まあ、下心も多分にあったんだけど。

 

「そんなこんなで、何とか家に引き取ってから一緒に過ごしていくうちにイセリアも精神的に落ち着いてきて、まあ、俺には勿体無いくらいにいい女だって解ってきて、その、隣に立っても恥ずかしくない奴になろうとですね」

 

言っててすげー恥ずかしくなってきた。なんか、部長も凝視してきてるし…。

 

『つまり、相棒がヘタレという事だ』

「誰がヘタレだ! へ、ヘタレじゃないやい!」

「…フ、フフフ、そうね。ちょっとヘタレね、ドライグ」

 

ドライグめ、いきなり酷い事言いやがって! 部長にも笑われちまったじゃねーか! しかも、ヘタレ扱いだし!

ちょっと自信が欲しかっただけです~! イセリアがあんなに強いなんて知ってたらもっと難易度低い奴を目標にして、とっくにクリアして襲い掛かってたっつーの! 

 

『これからはヘタレッドと呼ぶがいい』

「やめて!」

「フフッ、悪くないわね。…でもヴァルブルーが羨ましいわね」

「部長?」

「毎朝毎朝、いっつも頑張っているんでしょう? それに、部活が終わって帰ってからだって人間じゃ苦しい筈の訓練をずっと。本当に一途に、ひたむきに」

 

褒められているのは解るんだけど、…部長、なんだか落ち込んでるというか、哀しい表情だ。

なんで、こんな顔をするんだ?

 

「あなたの様に、真っ直ぐ見てくれる人が居る。本当に、本当に幸せなことだわ」

「…部長は」

 

「遅くなりました」

 

木場、お前本当にタイミング悪いぞ!

 

「さて、部活をしましょう」

 

立ち上がった部長の顔には、さっきまでの憂鬱気な表情は無かった。いつも通りの部長。あまりにいつも通り那表情は、まるで俺の事を拒絶してるように思えて何も言う事が出来なかった。

 

 

 

 

「「使い魔?」」

「そう、使い魔よ。この子がそう」

 

遅れてやってきたイセリアと共に部長の言葉を聞き返す。それに頷いた部長の手からポンッというコミカルな音と共に赤い色をしたコウモリが出現する。

 

「私のはこの子ですわ」

「…シロです」

 

朱乃さんが呼び出したのは手乗りサイズの鬼っぽい奴。俺達に差し出された朱乃さんの両手の上で元気いっぱいに万歳している。

小猫ちゃんの使い魔は白猫みたいだ。ソファーに座った小猫ちゃんの膝の上で丸くなっている。なんかかわいいな!

 

「僕のはこの子」

 

木場の肩に小鳥が出現する。小鳥とか、つくづく見た目どおりイケメンの持ってそうな使い魔だぜ。

俺達の前に飛んできた部長のコウモリをイセリアが受け止めて撫でる。あのコウモリをイセリアは大分気に入ったみたいだ。イセリアの奴、明らかに羨ましがってる。

 

「使い魔は悪魔にとって基本的なものよ。情報伝達、敵の追跡、様々な用途に臨機応変に使えるのよ。貴方達と私達の連絡手段に、丁度いいでしょう?」

「でも俺達悪魔でもないし、魔力なんて使えないんだけど」

「それは心配しなくてもいいですわ。人間にも魔法使いはいますのよ。はい、これを」

 

姫島先輩が赤色の腕輪を渡してくる。何だこれ? あやしげな魔方陣みたいな絵も描かれているし。

 

「これは私の魔力を溜めたものよ。それで貴方達と使い魔を擬似的に契約させるの。そして、これは私との契約の証でもある。つまり、これがあれば貴方達も魔方陣を通れるの」

「「なるほどな~」」

 

先輩の説明を受けて早速右腕に装着する俺達。これで俺達も魔方陣を通れると言う事は、今までの様にチャリで契約を取りに行かずに済むというわけだ。

 

「じゃあ、早速使い魔をゲットしに行きましょう」

 

足元が光りだした。部長達が契約を取りに行く時の光だ。

ブレスレットを直ぐに装備した俺達に微笑んだ部長がすぐさま転移魔方陣を発動させたみたいだ。まさに有言即実行って奴だな!

 

転移魔法の光が止むと、俺達は知らない森の中だった。辺りはうっそうとしていて日の光もあまり届いていない。

部長達は悪魔だからいいかもしれないけど、俺、暗くて周りがよく見えないんだけど。モンスターがいきなり出てきたらやばくね?

 

「此処が、悪魔が使役する使い魔が沢山居る森だよ。っと大丈夫かい? ドラレッド君」

「あ、ああ」

 

転びそうになったところで木場が俺の腕を支えてくれた。流石イケメンと褒めてやりたいところだが、最近学校の噂に危機感を覚えてるからやめてくれ。

ところでイセリアはこんなに暗くて大丈夫なのか? って、イセリアの目が真赤に輝いとる?! 目だけでも光るのか?!

 

「? どうした、イッセー?」

「いや、目が光ってるぞ!?」

「? いつもの事だろ? それに暗いから光らせないと見えないじゃないか」

「…部長、本当に人間なんですか、あの人」

「…さ、さあ、怪しくなってきたわね」

 

小猫ちゃんも部長もどん引きしてんだけど! 確かに目が光る人間なんて居ないモンね! ホント、なんなんだよヴァルキュリア人って! 暗くても目を光らせれば見えるってずるくね!?

 

「? イッセー見えないのか?」

「あ、ああ。ちょっとな」

 

いや、イセリア。そんな見えてないのが可笑しいみたいな感じで言われても…。

 

「しまったわ…ごめんなさい、ドラレッド。人間だってことをすっかり失念していたわ…」

「いえ、ちょっとは慣れてきましたからだいじょ…」

 

急に周りが明るくなった! 蒼い光…って、今度はイセリアが目だけじゃなくていつも通りにオーラ出し始めた。いや、何時もより光が明るめ?

俺達の視線に気付いたイセリアが、腰に手をあてて、ふふんとドヤ顔する。

 

「停電にも暗い夜道にも便利な、一家に1人ヴァルキュリア!」

「何言ってんの?!」

 

一家に1人居て堪るかっての。まったく。でも、イセリアのお蔭で暗かった森がはっきり見える。

よく見れば周りの木は異常なほど大きい。しかもちょっと湿っていていかにもモンスターが出現しそうなところだ。

こんな所に部長たちの使い魔は住んでたのかぁ…。見た目と印象が違うけど、やっぱり魔物…っ?! 木の上に変なオッサン?! イセリアをガン見してやがる! 

 

「ゲットだ「オラァ!!」っぜばぁああ!!」

 

変なおっさんがイセリアに網持って飛び掛ってきたので蹴り飛ばしてしまった。俺に蹴られたおっさんはそのまま巨木に頭から当たって沈黙。

なんなんだこのおっさん。変質者か? シャツと短パンとリュックに帽子。ラフな格好がいかにも変態っぽいぜ。

 

「誰この人? イッセーの知り合いか?」

「こら、イセリア! 変質者に近づいてはいけませんって何時もドライグお母さんが言ってるでしょ!」

「ドライグお母さん…?!」

『誰がお母さんだ、誰が』

 

イセリアが倒れたおっさんに近づこうとしたので急いでその手をとって止める。

全く、何にでも興味を持つお年頃って奴か! こりゃ、危なっかしくて目を放せねーな!

 

「ちょ! ドラレッド、この人は!」

「いけませんわ! 完全に気絶しています! ああ?! 息が!」

「確りしてください、ザトゥージさん!」

「瞳孔が開いてます…!」

 

オカルト研究部のみんなが倒れた変質者のおっさんを大焦りで介抱しだした。

え? 何これ、俺、やっちゃった…?

焦りに支配された俺の肩にポンッと手を、後ろから置いてくるイセリア。哀しい瞳をしていた。

 

「大丈夫。毎日面会に行くから。私、待ってるから」

「え!? 俺、逮捕?!」

 

 

 

 

「ふぅ…生き返ったぜ!」

 

一時期は心肺停止して死亡しかけていたオッサンだったが、イセリアの蒼い光で復活した。ラグナエイド使わないのかよと思ったが、別に無くても怪我を治せるらしい。ただ、失敗したら内側から破裂するそうなので、俺にはぜひラグナエイドを使って欲しい。

復活したおっさんが両手を合わせてイセリアにヘコヘコ謝ってくる。

 

「すまんすまん! 新手の使い魔かと思ってゲットしようとしちまったぜ!」

「?」

「いやぁ、銀髪美人の嬢ちゃん。青色に発光してたじゃねーか。魔力も感じなかったし目も赤く光ってたからついな! ホント悪かったぜ!」

 

いや、幾ら光ってても人型だろうが! 

どうやったら家のイセリアがモンスター扱いになるんだよ、このおっさん! 一応カテゴリー人間だぞ、多分!

 

「俺の名はマダラタウンのザトゥージ! 使い魔マスターを目指して修行中の悪魔だ」

「アウト」

「イセリア?」

 

おっさん改め、ザトゥージさんの自己紹介中にいきなりアウトというイセリア。

何かザトゥージさんの何かがイセリアの癪に障ったらしい。何時もより険しい顔をしてる。さっき襲われたせいか?

 

「いやあ、嬢ちゃん、さっきのはホントに悪かったって。許してくれ! この通り!」

「ヴァルブルー、この人は使い魔に関しては本当に熱心なの。だから暴走してしまったのよ。お願い、許してあげて」

「えと、そうじゃ…うぅ、解る人がいない…! あの、頭を上げて。怒ってないから」

 

必死に頭を下げるザトゥージさんと取り成す部長に折れたのか、困惑顔になって許すイセリア。

悔しそうにミッ○ーマ○スじゃ無いからいいのか? 任○堂だって怖いんだぞ、とか言ってる。

ミッ○ーマ○ス? ○天堂? なんか雑音みたいなのが入って聞こえそうで聞こえない。

 

「さあ、さっきの侘びだ! どんな使い魔がいいんだ! 何でもいいぜ! 即日ゲットしてやらぁ!」

「山みたいにでっかいドラゴン。全長100mを超えてる奴」

「じょ、嬢ちゃん、さすがにそりゃ無理だよ」

 

両手を大きく広げてドラゴンの大きさを表現するイセリア。

またイセリアの天然が始まってしまった。そんなのが居るのか? いや、もし居たとしても使い魔は無理だろ。部長達も、またこの子は…みたいに苦笑してるし。

 

『馬鹿者。ドラゴンとは俺の様に誇り高いものだ。使い魔になどなるものか』

「……」

『おい。なんだその目は、こら。何が言いたい、この中二娘が…!』

 

確かに最近のハッチャけ具合的にイセリアがドライグをジト目で見るのも解らないでもないな。

 

『…はぁ、大体、そのようなドラゴンが居るものか』

「いるぞ。3年前、確かに会った」

『はぁ?』

 

3年前? 俺とイセリアが会ったのも3年前だな。そういえば、イセリアは俺と出会う前、別の世界に居たって言ってたな。

どうやってこっちの世界に来たのかは全然わからないけど。大体、イセリアの元居た世界には悪魔や神様なんて居ないって聞いているしな。

 

「母上達の最後の炎で死んだと思った後、気がついたら変なとこに居たんだ」

「まず、その時点で意味が解らないわよヴァルブルー…」

 

部長が頭を押さえながら言う。他のみんなもうんうんと頷いている。勿論、俺も解らない。

ただ、以前聞いていた話だとイセリアは母親に反逆して、そして母親の自爆で島諸共吹っ飛ばされただったか? その次に直ぐ俺に会ったと思ってたんだが、どうやら間があったようだ。そういえば訳の解らない所を抜けたらビルの間だったって言っていたな。そこで会ったって事か、ドラゴンに。

俺達の反応にちょっと腹が立ったのか、頬を膨らましながらイセリアは続けて説明する。まあ、出てきた話はさらによく解らなかったけど。

 

「変なとこは変なとこなんだ。説明が上手く出来ない。まあ、そこを漂ってたら山の様に大きい赤いドラゴンが目の前に来てな。帰り道が解らなくて困ってるって言ったら乗せてくれたんだ。ついた所は元居た場所と大分違うところだったけど」

『ちょっと、待て、いや待て、いやいやいや、お前まさか…、いや、ありえんだろ』

「どうしたんだよ、ドライグ。焦ったりして」

『いや、非常識だ、非常識だと常々思ってはいたが、まさか此処までとは思いもしなかった…』

 

ドライグの驚愕の思念が伝わってくる。ドライグに俺の感情や思考がある程度伝わるように、最近は俺もドライグの感情の波動みたいなのが解ってきている。

 

「信じてないな…。だから今まで黙ってたんだよ」

「いや、イセリア。ドライグの奴なんか心当たりがあるみたいだぞ」

『……まあ、そうだな。お前がいたのは次元の狭間で、お前が会ったドラゴンは普通では絶対会うことの無いドラゴンだ。運が良かったと思っておけ』

 

よっぽど珍しいドラゴンって事か?

 

「ふ~ん。でもここは冥界って言うほどだから、あんなでっかいドラゴンが居ても可笑しくないよな。ね?」

 

イセリアはそう言って目を輝かせながらザトゥージさんを見詰める。俺もそんな奴がいるなら見てみたい。だから、ついつい期待に満ちた目をイセリアと一緒に向けてしまっても仕方が無いだろう。

 

「い、いや、じょ、嬢ちゃん、坊主、俺は生憎そんな100m超えの龍、見たことねーんだ」

「「え~」」

 

ザトゥージさん…。使い魔マスターを目指しているとか言いながら、なんて残念な奴なんだ。

 

「あ、いや、そんな残念な奴を見る目で見るんじゃねー! 100m超えは無理だが、こいつならどうだ!」

 

俺達の視線に憤ったザトゥージさんはカタログらしきものを取り出し、見開きいっぱいに迫力満点で描かれたドラゴンを指差した。

 

「こいつは龍王の一角、天魔の業龍(カオス・カルマ・ドラゴン)ティアマット!! 龍王唯一のメスにして五大龍王の中でもかなりの強者、伝説のドラゴンだ! その力は魔王にも匹敵し、未だ嘗て誰もゲットした事が無いドラゴンなんだぜ!」

 

マジで! 超カッケーな! イセリアの目もキラキラ輝いてやがる!

でも、流石に魔王と同等の強さの奴を使い魔にするのは無理じゃねーかな? だいたい絵から全く打ち解けられる雰囲気を感じねーし。

 

「部長っ! 私、こいつが良い!」

「うーん。ドライグも居るし、伝説のドラゴン同士で意気投合出来るかもしれないわね」

 

イセリアは滅茶苦茶気に入ったらしい。部長の手を引いてティアマットの絵を指差して元気いっぱいに欲しがっている。こんな反応したのは家族で見に行ったヒーローショーで販売されていたヒーロースーツを見たとき以来だ。

部長も他のみんなも苦笑しつつも賛成みたいだ。こりゃあ激しい戦いになりそうだぜ。今日帰れんのかな…。

 

『そいつはやめとけ』

「? ドライグ?」

『そいつと俺は意気投合など出来ん。別の奴にしろ』

 

なんだ? ドライグの奴、このティアマットと何か因縁があるのか?

はっ!? もしや…!

 

「まさか、お前の元カノか?!」

『ふざけろ、この大馬鹿者が!! 大体、お前達は連絡手段のために使い魔を得ようとしているのだろうが! 巨体の使い魔を選んでどうする!』

「「「そ、そうでした」」」

 

もうみんなしてショボンと意気消沈。流石ドライグ、的確なツッコミだった。そして、マジ切れでした…。

最近家のドラゴンが怒りっぽくて困るぜ。つまり、あれだろ。家にはもう自分がいるから他は要らんって事だろ?

 

「あ~、なら素早い奴がいいな。任せときな! 今この森には超レアなドラゴンが一体居やがるんだ! その名も蒼雷龍(スプライト・ドラゴン)!」

「蒼雷龍?」

「そう、蒼雷龍。その名の通り蒼い雷を使うドラゴンだ! 嬢ちゃんのオーラの色とも合ってるし、しかもまだ子供らしいからな! ゲットするなら今のうちだぜ!」

 

イセリア、ドラゴンってだけで無邪気に喜んでるしそいつで良いか。

さっそく蒼雷龍を目指してザトゥージさんの先導で移動する俺達。みんなも珍しいドラゴンに期待をしてるみたいでご機嫌だ。

しかし、俺はどんな使い魔にするべきか…。めっちゃ悩むな…。透明になれて、その視覚情報を俺に遅れるような使い魔は居ないものか…。

 

「おおっ! あ、あれはウンディーネ?!」

 

考えすぎてたせいで俺は気付けなかったが、みんなはザトゥージさんの視線の先を追っていた。

ウンディーネ? RPGで素敵なお姉さんになっていることが多い、あの! あの精霊ウンディーネ?! お、おれ、そいつにしようかな! 

さあ、どれくらい綺麗な精霊なんだ? ぜひ、俺の使い魔にって、なんじゃありゃあああ!!?

 

「なんてレベルの高いウンディーネだ。ありゃ相当な猛者だぞ! かなり打撃力に秀でているみてーだ。どうだ少年! あいつなんかどうだ?!」

「いらんわ!? あれが、ウンディーネ?! 嘘付け!! どう見ても水浴びに来た格闘家だろーが!!」

 

そう、幻想的な湖の真ん中に居るのは馬鹿げた筋肉をもった猛者。

前に出会ったミルたん位のインパクトがあるぞ、このアホ野郎が!

 

「あんなん、いらんわ! まずは蒼雷龍だろ!」

「ああ~? 坊主、あれだって結構レアなウンディーネだと思うんだけどね~?」

 

レア度とか関係あるかっ! やべ、何かこっち見てるんですけど…!

俺はなるべく視線を合わせないように明後日の方向を向いてるってのに、みんながガン見してるせいで、このままじゃこっち来るんじゃね?!

 

「ドラレッド、あの子強そうじゃない?」

「あんな筋肉じゃ追跡とか絶対無理っすよ、部長。もっとコンパクトな奴にします!」

 

俺のツッコミによって何とか先に進み始める一行。イセリアと部長がもったいなさそうにウンディーネ(仮)を見ていようが知ったこっちゃねー!

大体、あんなの使い魔にしたら一日中筋肉と向き合わないといけないだろうがっ。

 

 

「もったいないなぁ」

「アンタがゲットしろよ…」

 

ザトゥージさんは相変わらずあのウンディーネにすれば良いのにと俺に言ってくる。先頭を歩きながら数十秒おきに振り返ってきて、ありえねえ程ウゼぇ…。

 

げんなりしつつも蒼雷龍を目指して歩いていると、凍りついた数本の巨木が見えてきた。

なんだかこの辺だけ妙に寒い。この不自然さ…。恐らく、何かがいるんだな。

この現象にキョロキョロとしていたザトゥージさんがある一方を指差し大声をだした。

 

「おおっ! あ、あれは雪女! こんな所に居やがるとは、相当レアな固体だぜ!」

 

雪女、だと…!?

あのちょっとエッチな感じの! よく想像の物語で美女に描かれている、あの、あの雪女だと!!? 和服から覗くふとももが素敵な雪女だと!!

鼻息が荒くなっちまってるが、そんなの関係ねえ! 俺はザトゥージさんの指差す方向に思いっきり振り向いた!

 

「ウホッ、良いゴリラ! って、ゴリラじゃねーかぁ!! 何処が雪女じゃい!!」

「イッセー。あれメス見たいだぞ。ほらリボン」

「おっ! 嬢ちゃん流石だな。あのリボンが雪女の証拠だぜ!」

 

確かにあの白ゴリラの頭頂部には赤いリボン。…どうでもいいわ!!

どう見ても日本の妖怪じゃねーだろ! ただのゴリラを白ペンキで塗っただけだろ! あんな握力500kgありそうなゴリラなんて要らんわ!

 

「ドラレッド君。あの子、君の使い魔にしないのかい? せっかくの珍しいレア物だよ」

「木場ァ!? お前あんなのと一緒に暮らせる自信あんのかぁ!! そんなに欲しいなら、自分でゲットしろコラァ!! 次だ、次!」

 

渋々と歩き始める一行。もうホントこの人たちあれだね! 俺がツッコミしなかったら凄い色物パーティーになってんじゃね?

大体、あれが雪女ってどういう事だ!? 全国の日本男児全員の夢がぶち壊れたぞ!

 

 

「あのリボン、赤色でグレモリーさんとも気が合いそうだったんだがなァ…」

「合う訳あるか…」

 

相変わらずしつこいザトゥージさん。部室が動物園になるっつの…。

ザトゥージさんを無視しつつも歩いていると、今度は不自然な熱気。再びキョロキョロとしだすザトゥージさん。なんか、パターン化してきてね?

異常の原因を発見できたようで、またザトゥージさんは指差した。

 

「おおっ?! あれはトイレの精霊! こんな所に居るなんて、何が起こってやがるんだ?!」

 

と、トイレの精霊?! なんじゃそりゃ? トイレの女神様とか、何かそんな感じの奴か?

名前からして明らかに期待できねーが、俺はまたまたザトゥージさんの指差す方向に振り向いた。

 

「ウホっ、良い男! って、どこの作業員のオッサンだ! オイ、何で俺を見てる!? ツナギの前を空けてんじゃねー!!」

「あらあら、ドラレッド君、相当気に入られたみたいですわ」

「あいつに此処まで気に入られた奴は、今までで始めてだぜ! どうだ? あいつを使い魔に…」

「するわけあるか!! ほっといてさっさと行くぞ!」

 

何であんな貞操の危険を感じるような奴を使い魔にせんといかんのだ!?

大体、何でベンチに座ってんの?! どっから持って来たのあれ?! 後ろには公衆便所っぽい奴があるし、雰囲気ぶち壊しも良いとこだろ!?

再び渋々と歩き出す一行。この人たちアレだよね、俺の使い魔だからどうでもいいやって感じだろ! 唯一、木場だけがあいつに危機感を覚えていたらしくホッとしてるみたいだが…。

 

「おおっ! あ、あいつは?! ちょ、超激レアの…!」

 

超激レア? こいつの激レアなんて全く信用できねーよ、もう。ザトゥージ、お前ホント何なの? どうせ振り向いたらムキムキのマッチョメンが居るんだろ?

まあ、一応騙されたと思って振り向いてやるけど…。

 

「ホモォ…」

 

!? な、何だこいつは…!? でっかい白饅頭?!

白くて丸くて長い胴体に4本の昆虫みてーな足、口からは涎、這うようにゆっくりこっちに向かってくる?!

その目は確り俺と木場を見てるのか? 何かロックオンされとる?!

 

「アレは伝説の使い魔、腐り神!! その昔、腐り神を手にした女悪魔がその力で全世界に猛威を奮ったと言われているわ…! ドラレッド、ぜひ使い魔にしないかしら?」

「部長、何言ってんの?! 無理無理無理、なにあれ動きキモ過ぎるよ!! ちょ、イセリア、俺を盾にするなぁあああ!!」

「こ、小猫ちゃんどうして僕の後ろに隠れてるの?!」

「頑張ってください、祐斗先輩…」

「「あああああーーー!!!??」」

 

◇20分後◇

 

つ、疲れる…。何だこの森、全部マッチョとかホモォとか変なキショイ化け物ばっかじゃねーか!

何で誰もツッコマねーんだよ…。というか、部長達の使い魔、本当にこの森でゲットしたのかよ…?

 

「おい、まだ蒼雷龍のとこにはつかねーのか…?」

「おいおい、坊主、疲れすぎだろ? 大体坊主はあんなレアな使い魔たちを何でゲットしねーんだ? もったいねぇ」

「もう、つっこむ気力も起きねーよ…」

 

あいつらを素晴らしいと思うこいつの精神を疑うぜ。

マジ、もうさっさと使い魔を捕まえて終わりにして帰ろう…。

? 何だ? カーン!カーン!っと甲高い音がする。後ろを歩いているイセリアの方か? これ、イセリアの炎に何かが当たって弾かれてる音だ。

 

「何だこれ? 緑の液体?」

 

首を傾げるイセリアの上、巨木の上から降り注ぐ緑色のネバネバ。イセリアの体を覆う蒼い炎に弾かれて地面にべチョべチョと落ちて消えていく。部長達は降ってくるところから離れていたがイセリアは動かずに謎の物体を眺めいていた。

よく解らねーがイセリアの防御力を抜ける物じゃないみたいだな。なんなんだこれ?

 

「スライムだよ! ヴァルブルーさん、そこを離れたほうが良い!」

「? 解った」

 

木場の焦ったように張り上げた声に、大人しく部長達とは別の巨木の方に下がるイセリア。

これがスライム? なんか、イメージと違いすぎるんだけど? ゲームでは青くて目が真丸としたかわいい奴の筈だし。

イセリアが退いた後に落ちてきたために、僅かに地面に残った緑色のスライムたち。弾かれただけで消滅してたし、相当に弱そうだ。やっぱりその辺は定番なんだな。

とりあえずドライグを出して、左手でスライムを持ち上げて観察してみるが、ただのゲルにしか見えんなぁ。

 

「? 何これ? 蔓? 蔦?」

 

今度はイセリアの近くの巨木から謎の触手。これまたイセリアの纏っている炎に弾かれて千切れながら消滅していく。

それでもイセリアに襲い掛かるのをやめようとはしないあたり、中々根性ある生命体のみたいだ。

 

「ふん」

 

あまりのしつこさにウザくなったのか、イセリアが根元から引っこ抜いた。

ビチビチとイセリアの手の中で暴れていた触手だったが、やがて力尽きるように萎びれて消えていった。

 

「こいつらは特に名称はねーが服だけを溶かすスライムと、女性の分泌液目当てで動く触手だ。特に害はねーが、探索中は結構迷惑な連中なんだぜ。それにしても、嬢ちゃんの謎のオーラ、すげーなぁ!」

 

ザトゥージの説明に我が耳を疑った。

じょ、女性の分泌液を狙う、触手…!? さ、さらには服だけを溶かす、スライムだとぉ!! ま、マジでぇ!!

あっ、いかん! 触手丸はイセリアにやられてしまった!! もう生き残ったのはこの左手のスラ太郎だけになっちまった!!

 

「……イセリア、イセリア。ちょっと来てくれ。あと、炎はもういいぞ、ほらドライグが光ってくれるからな」

(『何を考えているか、丸解りだと思うがな…』)

「……解った」

 

部長達が苦笑しながら俺を見てる。

ザトゥージは俺に親指を立てて口パクで頑張れと言ってくる。

ああ、任せておけ! だけど、成功しても男は見たら殺すからなっ。

 

蒼い炎を収めて此方に向かってくるイセリア。その目は明らかなジト目。もはや、完全にバレているのだろう。だが、男には成さねばいけない時がある。

密かにドライグのBoostを連発して左腕に力を溜める。溜め続ける。

密かにとか言いつつ、俺の左手は集まった力が渦巻いてオーラを発しているけどなっ。

 

「「……」」

 

静かに見詰め合う俺達。知らぬ間に、俺の額から汗が零れ落ちる。

一挙一動見逃さないように、目の前のイセリアに集中する。

俺達の間を漂う緊迫感に、誰かがゴクリと喉を鳴らした。

 

「「……」」

 

これは、試練だ…。

僅かな隙を見つけ、赤龍帝からの贈り物(ブーステッド・ギア・ギフト)で堪った力をスラ太郎に譲渡し、イセリアにぶつける。ただ、それだけ。只、それだけなのだ…!!

 

「「……」」

 

今、見詰め合ってから何秒の時が過ぎているのだろうか?

少なくとも俺には、30分か1時間位の時間が過ぎているように感じた。

ただ、見詰め合っているだけ。それだけで、俺の体力を著しく消耗していく。

苦しく、辛い。だが、これだけはやり遂げる!

 

「……っ!」

『…Transfer』

 

隙ありィイ! ここだぁぁあああ!!!

僅かに俺から視線をはずしたイセリアの服に向かってスラ太郎を投げつける! ドライグから譲渡された俺のパワーによって高速のスピードで飛んでいくスラ太郎。

いっけぇええええ!! スラ太郎ぉおお!! お前は俺の新たな光だぁああ!!

 

「ああっ!?」

 

っ!? 

馬鹿な!? 今、イセリアの体に、確かに当たった筈だ!? スラ太郎は確かに、当たった筈なのに、通り過ぎた、そのままイセリアをまるで何も無いかのように通り過ぎただと…!!

イセリアをすり抜けたスラ太郎が何かに当たったようなベチョッと言う音と同時に、目の前にあったイセリアの姿が陽炎の様に消えた…!? 

なん…だと…?!

 

「…残像だ」

「ば、馬鹿な!? 何時の間に俺の後ろに…?!」

 

俺の目の前から消えたイセリアは、何時の間にか俺の真後ろに…!? ま、まるで見えなかった…!

っ!? そうだ、スラ太郎は!?

 

「ひ、ひどいよ、ドラレッド君…」

「何でお前がマッパになっとんじゃい!! せめて部長達に当たれよ!!」

「は、速過ぎて避けられなかったよ…。でも、スライム、今のパワーに耐えられなかったみたいだよ。ホラ」

 

座り込んで左手で股間を隠し、右手で指差す木場。僅かに残った服で乳首が隠れてるのが何かむかつく。

そして、その指先には地面に僅かに残った緑の染み。ま、まさか…!?

 

「す、スラ太郎…? スラ太郎ぉおおおおお!!」

「…無茶しやがって」

 

悲しみに耐え切れず、俺は涙を流した。

ザトゥージも勇気あるスラ太郎に敬礼していた。

さらば、スラ太郎…!! お前の事は忘れない!!

 

「あの、僕の服は…?」

「はい」

「あ、ありがとうヴァルブルーさんって、これウェイトレス服?!」

 

 

鱗は蒼い輝きを放ち、ラブリーな瞳をしたバスケットボールサイズのドラゴン。巨木の上で羽を休めてる。蒼雷龍だ!

あれが、ドラゴン! 生ドラゴン! 夢の中で見たドライグよりずっと小さいけど、中々カッコイイじゃねーか!

みんなも初めて見るドラゴンに目を輝かせながらはしゃいでいる! ただ、視界の端に映る木場のウェイトレス姿だけは見ないようにしないとな!

 

「よし、イセリア、ゲットしよーぜ…って、何処見てるんだ?」

「ハネブタだ…!」

「おい! イセリア!?」

 

急に駆け出したイセリア。俺達も何事かとイセリアを追いかける。

駆け出したときのイセリアの顔は、凄く必死だった。今、追いかけないと会えなくなってしまいそうだと、俺が思った位に。

 

「ちょっと、ヴァルブルー! どうしたのよ!? え? 羽の生えた、豚…?」

「ぶひっ?」

 

木々を幾つか越えた先。

しゃがみ込んだイセリアの両手には、白い天使のような羽の生えた子豚。何か、珍妙な生物だ。

部長ですら見たことが無いのか、そのヘンテコな生物を凝視している。

 

「こいつぁ、一体…?」

「ザトゥージさんにも解らないのですか?」

「ああ、グレモリーさん。こんなのは俺も見たことがねぇ」

 

ザトゥージでも見たことが無いのか。

イセリアのあの豚を見る目…。まるで明日の朝には店頭に並ぶのね…じゃなくて、なんか、哀愁漂うというか、懐かしむような感じだ。

もしかしてこいつ、イセリアの世界の…?

 

「…お前の名はポルコ。誇り高い、天翔ける紅の豚の名前だ」

「ぶひ? ぶひぃ!」

 

立ち上がって両手で天高く豚を掲げるイセリア。豚もつけられた名前が気に入ったのかウンウンと頷いている。

いや、もしかして、イセリア。使い魔はこいつにする気か?

 

「あらあら、ヴァルブルーさん。その子豚がいいのかしら?」

「…蒼雷龍はどうするんですか?」

 

姫島先輩も小猫ちゃんも、この豚を使い魔にする事は反対みたいだ。

そりゃ、目の前にあんな立派な子ドラゴンがいたらな。豚より普通は龍だ。

 

「うん。この子が良い」

「その前に嬢ちゃん、その珍妙な生物はなんだい?」

「こいつはハネブタ。ちなみに飛べない」

 

飛べないんかい。飛べないと聞いて一斉にガクっとなる一同。

みんなもこの飛べない豚より蒼雷龍の方がずっといいと思ったのか、イセリアを見る目が非難めいてる。フォローしとくか。

 

「あのね、ヴァルブルー。使い魔は一生の問題なの。もっと真剣に考えなさい」

「あー、部長、あの許可してやってください。たぶん、こいつはイセリアの故郷の生物です」

「ヴァルブルーの…?」

「ちなみに、焼いて食べると美味しいって、ダルクスの民が言っていた」

「ぶひっ!!?? ぶひぶひぃ!!」 

 

イセリアの言葉に不安を覚えたのか、暴れだす豚。確かに、焼いて食べると美味しそうではある。

 

「大丈夫。食べたりなんかしない。此処には母上もいないし、生き物を飼う位大丈夫だ」

 

イセリアの母さんは生き物飼うの嫌いなのか?

イセリアはあの豚の事、相当に気に入ったみたいだ。ギュッと抱きしめて頭を撫でている。

 

「ぶひっ? ぶひっ」

 

抱きしめられてイセリアのマシュマロおっぱいの谷間に沈む豚。

……心なしか、豚の面がにやけている様に見える。

 

「…許せぬぅ!! そのポジションは俺のものだぁ!! 代われ! 今すぐ俺とチェンジだ! さもなくば、今日の夕飯はお前になるぞ!!」

「ぶひっ?!」

「ペットに嫉妬…子供ですね」

 

小猫ちゃん、解ってくれ。あの豚面を見てると意味も無く腹立つんだ!

 

「イッセー、食べたら駄目だぞ。もしポルコを食べたら、もうご飯作らないからな」

「だにぃ!?」

「本気だぞ」

 

イセリアの目は、マジだった。

イセリアが、ご飯を作らなくなる=弁当も作らない=登下校の楽しみが無くなる。さらに、美味しいご飯も無くなる。いや、母さんのも美味いんだけどイセリアのご飯が食いたい。

な、なんてこった…。あの豚を、認めないといけない、だと…!

 

「うぅ、く、くっそおおおおお!!!」

 

「ヴァルブルーの使い魔はこの子で決まりね」

「ええ。これからよろしく。ポルコ」

「ブヒッ!!」

 

豚の勝ち誇った鳴き声、むかつく~!!

 

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