勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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名も知らぬ青年「…………」


第12話

少しもったいなかった、とジークフリートはヴァーリの下半身に残った白銀の鎧が消えるのを見て思った。

 

神滅具『白龍皇の光翼』

 

言わずと知れた最強格の一つに数えられる神器だ。

 

最大攻防力という点に置いては『赤龍帝の籠手』劣る(宿主のスペックが互角の場合)も決まれば敵の能力を半減させ、その半減した力を許容量が許す限り自分に上乗せ可能という反則的な能力を持った超兵器である。

 

一度でも決まれば大抵の相手はその時点で詰む、そんな必殺に等しい能力はジークフリートをして脅威と言う他なかったのだ。

 

 

そう、だから勝負を急いだ。

 

一応半減能力は障壁で無効化可能だった。しかし、100%無効化出来る訳ではない。

 

おそらく確率的に十回に一度は喰らう、そんな危険な技だったのだ。

 

しかし、惜しい、もし宿主のスペックがもっと低ければ、間違いなく捕縛し奪っていた。だが、残念な事にこの宿主が滅法強く、下手を打てばあっさり滅ぼされかねない程の強敵だった。

 

あの短い攻防の間だけで、いくつかのスペックでジークフリートはヴァーリに負けていたのが分かったのだ、むしろ確実に勝っていたのは魔法力だけである。

 

これには感情が薄いジークフリートも驚いた。

 

そこそこ良い運動神経の勇真とは違う、ジークフリートは素の時点で人間離れした身体能力を持つ生粋の剣士だ。その彼の身体能力を魔法で限界まで強化したにも関わらず僅かとはいえヴァーリに劣っていたのだ。

 

こんな強敵を生かして捕縛など出来ようはずがない、故に、彼は全力で相手の隙を作り、油断を誘い、速攻で勝負を決めた。

 

その判断を間違いとは思わない、しかし、やっぱり……。

 

「やっぱり、惜しかったな」

 

そう、ジークフリートは呟く、すると地面に転がっていたグラムが恨めしそうな波動を放った。

 

グラムはヴァーリがフェイクの鎧を本物のジークフリートだと錯覚する様にあえてそちらに持たせていたのだ。

 

で、ヴァーリの隙を作る為に傀儡の鎧を盛大に転ばせた結果、グラムも地面を転がり土まみれとなってしまった訳である。

 

グラムの波動からジークフリートにはグラムがその点について文句を言っているように感じた。

 

「ごめんごめん」

 

ジークフリートは素直に謝るとその機嫌を直す為、未だ不機嫌な波動を放つグラムを魔法で徹底的に磨いていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 

さて、後片付けをしよう、手入れを終えグラムを仕舞ったジークフリートがそう思った時、月をバックに一人の青年がヴァーリ(の残骸)のすぐ側に降り立った。

 

「ヴァーリ、迎えにきたぜぃ」

 

その青年は三国志の武将が着るような鎧を纏い片手に赤い長棍を持っている。

 

ヴァーリの仲間、つまりテロリストらしいが、まあ、とにかくご苦労な事だと、ジークフリートは思った。

 

「……おかしいな、確かにここらからヴァーリの気配がしてたはずなんだが、おーいヴァーリ、何処だよぉ! おーい!………あれ? マジでいねぇ!? あ〜おい、あんた何か知らねぇか?」

 

「…………」

 

ジークフリートは無言で青年の少し後ろに転がる二本の足を指差した。

 

「…………あ〜まさかとは思うけど、これ、ヴァーリの?」

 

ジークフリートは無言で頷く。

 

「…………え〜、マジでぇ!? いやいやいや、お前、ヴァーリって一応あれでも史上最強の白龍皇だったんだけどぉ! 何、あんたがやったの!?」

 

それに対しジークフリートは少し離れた、斜め後方にいるイッセーを指差した。

 

それを見て青年は目の色を変える、ボロボロの鎧を纏い、美女に支えられるイッセーの姿はたった今、激戦を制しましたという雰囲気がありありと漂っていたのだ。

 

少なくとも無傷のジークフリートよりは戦ったのがイッセーだと言った方が説得力がある。

 

いや、まあ、実際戦ったんだけど。

 

「……なるほどね、今代の赤龍帝は超優秀だった訳か、まさかヴァーリが死ぬとはなぁ……はぁ、しゃあない、勝者の赤龍帝に挨拶したら帰るか」

そう言って自身に背を向けイッセーへと歩いていく青年。

 

 

 

 

なに考えてるんだコイツ、ジークフリートそう思った。

 

彼は限界まで隠蔽術式を用い、また加速用の魔法陣を形成すると、新たに作り出した黒鉄の剣を静かにかつ全力で青年の背に投げつけた。

 

そして音速の数十倍の魔弾が青年の背に直撃、名も知らぬ青年の上半身はヴァーリ同様消し飛んだ。

 

「……はぁ、戦場で何してるんだか」

 

強そうなのにあっさり死んだ青年にジークフリートは溜息を吐くと彼は惨殺現場を近距離で見せられ、顔を引き攣らせているイッセーとリアスにゆっくりと歩み寄るのだった。

 

 

 

 

 

「つまり、君は禍の団の英雄派に所属していたのだね」

 

「はい、そうなります」

 

それぞれの戦いが終わり、会談も結果的に和平で纏まると、直ぐに襲撃時に現れたジークフリートの事情聴取に移ることになった。

ジークフリートは去年、曹操達に襲われ無理矢理従わされていたと、供述、信用を得る為に、自身が知りうる限りの情報を嘘も交えてサーゼクス達、三勢力のトップに報告した。

 

「英雄派を仕切る男は曹操と言います、彼は神滅具『黄昏の聖槍』(トゥルー・ロンギヌス)所持者で既に禁手化に至っている極めて強力な使い手です」

 

「英雄派の構成員は、はぐれエクソシスト数百人とはぐれ魔法使い数十人、更に誘拐して洗脳した一般家庭の神器所持者数百人、そしてその幹部にはゲオルク、ヘラクレス、そして無理矢理従わされていた僕の三人が居ました」

 

「ゲオルクは極めて高位の魔法使いです、僕が使っている魔法も元々は彼が作り出したオリジナル魔法です、その上、彼は神滅具『絶霧』(ディメンション・ロスト)の使い手であり、彼も曹操同様に禁手化に至っている強敵です」

 

「ヘラクレスは名前負けした、ただの大男です。多少、魔法が使えますが、曹操、ゲオルクに比べれば大したことない小物です。でも、一応攻撃力と防御力はそこそこあるので注意して下さい」

 

「ゲオルクは悪魔の駒を集めています、彼はそれを複数用いて強大なキメラを多数作ろうと目論んでいるようです、悪魔の駒の回収は主にヘラクレスがやっています、なのであまり数は集まっていないようです」

「曹操は名目上は『人間のままどこまでやれるか試してみたくなった、英雄になる為に禍の団に入った』と言っていますが、彼の本当の目的は全くの別です。まあ、英雄になる為にテロリストになったとか言われても説得力が全くありませんが、一応はそれが名目上の目的です」

 

「曹操の真の目的は人外全ての根絶、彼は無限の龍神の力を使いこの世全ての人外を排除するつもりです、そして今、ゲオルクと共に無限の龍神から力を奪い取る為、ハーデスと契約を交わし最強の龍殺しサマエルを解き放とうとしています、当たり前ですがハーデスはこの曹操の真の目的を知らないようです」

 

 

 

 

 

「……なるほど、曹操とはかなり危険な男なんだね」

 

「はい、その高い戦闘力もさることながら平気で人質を取ったり、その人質で人体実験を行ったり、結んだ約束を自分の都合で破る卑劣な男です、奴のせいで一体どれだけの罪のない人間が殺されたか……しかも、奴はそれだけの事をしているのにまるで罪悪感を抱いていないのです! 『殺した人数? 千から先は覚えてないなぁ』という言葉を僕は今でも忘れられませんッ!!」

 

ジークフリートはいかに曹操が卑劣かを熱心に語った、もう、名誉棄損で曹操が訴えるレベルで語った。

 

ジークフリートが語る曹操のあまりの悪逆非道な行動の数々に話を聞いていた大半の者達が顔を歪め曹操許すまじたいった雰囲気になっている。

 

これを曹操が見ていたら涙目である。しかも、微妙に嘘とは言い切れない事を多数混ぜるのが嫌らしい。

 

まあ、もちろん少数だがジークフリートを胡散臭い目で見る者もいる。

 

 

堕天使総督アザゼルもその一人だった。

 

アザゼルは不機嫌そうにジークフリートを睨みつけると、彼を問い詰め始めた。

 

「嘘くせぇな、お前、あのヴァーリに無傷で勝ったんだろ? 無理矢理従わされていたと言ったが、去年の襲撃の時点に返り討ちに出来なかったのか?」

 

ヴァーリと口にした際、アザゼルは僅かに悲しげな表情をした、裏切られたとはいえ、ヴァーリはアザゼルの養子の様なものだ。

 

自業自得とはいえ下半身だけとなった息子を見れば殺した相手に怒りを感じるのは自然な事である。

 

それが分かっている為かジークフリートはアザゼルの態度をとくに咎めはしなかった。まあ、それ以前にアザゼルの『嘘くせぇな』が大当たりなので何も言わない可能性もあるのだが。

 

「無理でした。襲撃は曹操とゲオルクの二人行われました。僕も禁手化した上位神滅具の使い手二人を同時に相手するのは不可能です。……いや、今なら辛うじて可能かもしれませんが、去年の僕はそこまでの力を持っていなかったのです」

 

これは嘘ではない、純然たる事実である。

 

そしてその事に疑問を持っていたミカエルが静観を止め、ジークフリートに質問した。

 

「確かに、戦士ジークは教会のエクソシストの中でもトップクラスの実力者でした、しかし、申し訳ありませんが、貴方が無傷で白龍皇を倒したと聞いた時、私は信じられませんでした、あの白龍皇はそれだけ強かった、私が知る貴方では確実に勝てないと断言してもいいほどに………一体どうやってそれ程の力を」

 

「ゲオルクの実験です、彼は潜在能力を限界以上に引き出す研究もしていました、彼は『オーフィスの蛇』を触媒としそれに成功します。まあ、最もこの施術をされた者は著しく寿命を消耗してしまい一年も生きられなくなってしまうのですが」

 

「ーーッ!? それでは貴方は!」

 

「はい、持って半年、早ければ1ヶ月の命です」

 

それを聞き、ミカエルが痛ましげな顔をした。

 

「ミカエル様、そんな顔をしないでください。大丈夫です。僕も短命で終わるのは嫌なので、申し訳ないのですが悪魔になろうと思ってます。それに元々、魔剣使いという事で教会からは異端視されてましたからね」

 

これも事実である。『魔剣創造』が異端の神器とされているのに伝説の魔剣が異端視されない筈がない、むしろ、今までジークフリートが異端の烙印を押されなかった事の方が異常なのだ。

 

それだけジークフリートの実力は高かった。ただ、やはり待遇は非常に悪かったと言わざるを得ない。

 

ジークフリートが禍の団に入った原因もそれである。自分より遥かに劣るゼノヴィアやイリナを聖剣使いだというだけで優遇する教会が許せなかったのだ。

 

「……そうですか、仕方がないでしょう。それに私には止める権利がありません。私は貴方の、いえ、魔剣等を操るエクソシスト達の境遇を知りながらも放置していた。言い訳ですが、神が亡くなり稼働が危うくなったシステムを維持するには聖なるモノを優遇するしかなかったのです」

「いえ、本当にお気になさらず、きっと例え教会の待遇が良かったとしてもいずれはこうなっていたと思います、何せ伝説の魔剣に選ばれてしまいましたからね」

 

「そうか、ジークフリート君は悪魔になりたいのか、優秀な悪魔が増えるのは喜ばしい。特に君はリアスとイッセーくんを助けてくれたからね、主人候補が見つかっていないなら協力するよ」

 

「助かります、魔王サーゼクスにそう言っていただけると心強い、ミカエル様もお気遣い感謝いたします」

 

そう言ってジークフリートはサーゼクスとミカエルに微笑んだ。

 

 

 

 

 

「おい、良い雰囲気のところ悪いが、まだ俺の質問は終わってねぇぞ」

 

そんな当たり前の事で口を挟んだアザゼルだが、こいつ意外と空気読めないな、と三人に冷めた目で見つめられてしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ、セラフォルーッ、おのれ、サーゼクスッ」

 

全身所々から血を流した褐色肌の美女ーーカテレアが地の底から沸き立つような強い怨讐を秘めた声を零した。

 

 

此度の三大勢力トップへの襲撃はカテレア達の敗北、つまり旧魔王派の敗北で幕を閉じた。

 

この戦いでカテレアが失ったモノはあまりに多い。

 

家臣は殆どが死に、同士にして実質旧魔王派リーダーのシャルバ・ベルゼブブも死に、そして、恋人だったクルゼレイ・アスモデウスまでもが死んでしまった。

 

カテレアが生き残ったのはクルゼレイが、サーゼクスに殺される寸座に彼女に逃げろと言ったから、そして、セラフォルーがカテレアに負い目があったからトドメをさせなかった故である。

 

 

つまり、彼女は情けをかけられ、一人だけおめおめと生き残ってしまったのだ。

 

 

「クルゼレイ……私は一体どうしたら」

 

カテレアは悲しげに、途方に暮れた様な呟きを漏らした。

 

既に旧魔王派は瓦解している、復讐しようにもカテレア一人では魔王の一人にすら勝てはしない。

 

そして、共に理想を語り合ったクルゼレイももう居ない。

 

「クルゼレイ、なんで、あの時私に逃げろなんて言ったのですか? セラフォルー、なぜ私を逃したのですか?……こんな惨めに生き残るなら、クルゼレイ、私は貴方と一緒に死にたかった」

 

 

 

 

 

「本当? じゃあオバさん、私のご飯になってよ!」

 

「え?」

 

それは一瞬のことだった。背後からの声に振り返ったカテレアが見たのは巨大な顎、そう、それがカテレアが見た最後の光景だった。

 

恋人から遅れる事、約半日、カテレア・レヴィアタンは恋人が待つ世界へと旅立っていった。

 

こうして幹部全員と実質リーダーを失った旧魔王派は完全に瓦解したのだった。

 

 

 

 

 




ジーク「僕は勇真とは違うんです、ちゃんとトドメをさせるんです」

勇真「…………」
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