勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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……主人公が情けない。


第14話

 

勇真14

 

 

辛くとも認めなければならない現実がある。

 

それは考えられる可能性だった、それは予想して然るべき当然の事だった。

 

「………こ、これでルミネアの」

 

そう、ただ目を背けていただけの事、最初から分かっていた事だったのだ。

 

 

 

 

 

 

「十二連勝だね……ぐすん」

 

ルミネアが勇真より強いなんて事は。

 

 

 

 

 

「ゆ、勇真さん」

 

勇真がいじけて砂浜に転がってしまい、ルミネアがオロオロしている。

 

しかし、そんなルミネアを構う余裕は今の勇真に残されていなかった。

 

「ああ、本当、俺ってダメな奴だなぁ〜、ガチで戦って超手加減してもらった女の子にボロ負けとかマジ引くわぁ、え、お前って本当に男? 筋力よわ、マジもやし、能力使えない一方○行よりもやし、いや、むしろもやしとか言ったらもやしに失礼なレベルで貧弱、ああ〜この人これで自分は運動神経が良い方とか言ってたんだよ〜笑っちゃうよね〜とか思われてるんだろうなぁ……はぁ、死にたい」

 

「お、思ってませんから! 落ち着いて下さい勇真さん!」

 

もう、勇真は色々とダメダメだった。

それは勇真がルミネアに魔法知識と聖剣を与えた次の日の訓練の事である。

 

まず勇真はルミネアに魔法有りの戦闘を実際体験してもらう為に軽く模擬戦を行おうとしたのだ。

 

そう、“軽く”

 

 

 

模擬戦一戦目

 

「まず、ルミネアは俺があげた魔法知識に慣れるところから始めよう、大丈夫、加減はするから全力で掛かって来て」

 

結果・敗北

 

模擬戦二戦目

 

「凄い! ルミネアは魔法のセンスあるよ、じゃあ、今度は俺も結構本気で行くから覚悟してね!」

 

結果・敗北

 

模擬戦三戦目

 

「天才だ、マジ天才だ! よし、俺も本気で行く! だから今回は勝たせてもらうよ」

 

結果・敗北

 

模擬戦四戦目

 

「はは、は、つ、強いなぁ、ルミネアは。ちょっと俺、油断しちゃったよ、じゃあ、今度こそ正真正銘の本気で行くからッ!」

 

結果・敗北

 

模擬戦五戦目

 

「……じゃあ。今度は俺、神器も使うね、覚悟してね」

 

結果・敗北

 

模擬戦六戦目

 

「………聖剣も使うね」

 

結果・敗北

 

模擬戦七戦目

 

「…………今回ルミネアは会話に呪詛を込めるの禁止ね」

 

結果・敗北

 

模擬戦八戦目

 

「……………追加で、空間転移禁止ね」

 

結果・敗北

 

模擬戦九戦目

 

「………………さ、更に追加、雷と炎属性は禁止ね」

 

結果・敗北

 

模擬戦十戦目

 

「…………………ついか、七属性禁止」

 

結果・敗北

 

模擬戦十一戦目

 

「……………………つ、いか、物体、浮遊と障、壁もダメ」

 

結果・敗北

 

模擬戦十二戦目

 

「………………………オレゼンリョク、ルミネア、シンタイキョウカイガイキンシ、オーケー?」

 

結果・敗北

 

「……………………………はは、ゴメン、ルミネア、俺はもう、ダメだ」

 

 

 

ダメ人間ここに極まれり。

 

軽く二回程模擬戦するつもりが、勝てないので熱くなり、更に数回負けた続け、最後には恋人の女の子に超手加減してもらった上で自分は全力全開で倒しに行っての敗北、カッコ悪いなんてレベルではない。

 

それどころか、この男、このザマで昨日『女の子には出来るだけ戦って欲しくないんだ』とか『中途半端な実力が一番危ないんだ』とかほざいていたのである。

 

まったく嘲笑モノの愚か者だ。

 

「……俺は弱いね、はは、分かりきってた事じゃないか、俺が強かったのは聖剣から力をもらったからだし、小細工が出来る魔法がなきゃ俺なんてミジンコ程度の実力さ、勇者時代もあっさりミルたんに負けちゃうし、聖剣折られるし、あ、そう言えばミルたんどうしてるかなぁ、魔法少女にしてあげるからセラビニアから帰ってって騙してから会ってないなぁ〜、ちょっと探して会いに行こうかなぁ、逝こうかなぁ〜」

 

「落ち着いて勇真さん! た、たまたまですよ! と言うより今、勇真さんはランスロットくんに魔法力95%と殆どの属性魔法と呪詛系列と高位魔法障壁と身体能力強化まで契約で渡してるから本来の百分の一以下の実力しか出せないじゃないですか!」

 

ルミネアがいじける勇真を必死でフォローする。

 

「…………うん、それ言い訳にしようと思った。でもさ、ルミネアに身体能力強化以外禁止させてコッチは神器と聖剣と空間転移使って敗北って……もう、死んだ方がいいかなぁ?」

 

「死なないで下さい!?」

 

「………はは、大丈夫、冗談だから、死んだりは、しないから」

 

そう言って、勇真ゆっくりと砂浜から身を起こした。

 

「はぁ………それにしても今の俺の戦闘力がここまで低いとは思わなかった。ジークフリートとかを魔術知識が乏しい上、魔法に対する警戒も薄い、って思ってたけど、俺も全く人の事を言えなかったよ。俺は接近戦の技量が皆無な上、それに対する危機感が欠如していた……数倍以上の速度差が有ったのに曹操に接近戦で負けるわけだよ」

 

今回の勇真が如何に魔法に頼りきっていたか分かる結果だった。

 

模擬戦の敗因は主に自分がピンチの時、契約で使えない魔法を癖で使用しようしてしまうことでそれが発動せず、動揺で隙が生まれ敗北というパターンが多かった。

 

そう、例えば攻撃が当たりそうだから魔法障壁で防ぐ→今、強い魔法障壁はランスロットくんにあげてますよ? の様な行動をつい取ってしまうのだ。

 

そして、この行動を取るのは癖だけではなく、知覚速度の倍化が出来ないからという要因も関係する。

 

勇真は戦闘の際に身体能力強化に合わせ、知覚速度も倍化している、その速度は通常時の数百倍以上。これにより勇真は余裕と冷静さを失わずに戦う事が出来ていたのだ。

 

だが、これを無くすと途端に勇真から冷静さが消えてしまう。そして、目まぐるしく変わる戦況に対処出来なくなってしまうのだ。

 

 

 

 

「まず、勇真さんに足りないのは判断力です、私との模擬戦で勇真さんは何度も判断ミスをしています、先ずはここから治しましょう!」

 

「はい、分かりましたルミネア先生」

 

「ーーッ!?……よろしい、勇真くん、勇真くんが強くなるまで先生が勇真くんを守ります!」

 

「すいません、それだけは勘弁してください。リアルファイトで女の子に守ってもらうとか精神的に死んでしまいますッ!」

 

 

 

こうして、勇真はルミネアの訓練をつけるつつ自分の訓練をするつもりが、ルミネアに指導してもらい彼女には魔法のアドバイスをするという状況に変わってしまうのでした。

 

 

 

 

 

 

 

高めに高めた集中力を持って魔剣を創造する。イメージするのは常に最強の魔剣、聖剣を、聖剣エクスカリバーを打ち砕く最硬の魔剣だ。

 

そうして創られた魔剣を片手に木場はジークフリートに踏み込んだ。

 

「はあああッ!」

 

木場は強い踏み込みで加速、一気に間合いを詰めると裂帛の気合いと共に手加減など一切無い、殺す気の横薙ぎをジークフリートに放った。

 

しかし……。

 

「まあ、悪くはない踏み込みだね」

 

木場の横薙ぎの十倍以上の速度で振るわれた黒鉄の剣が彼の魔剣を木っ端微塵に打ち砕いた。

 

「ただ剣の出来は悪い」

 

「ーーッ!?」

 

そして次の瞬間、魔剣を砕かれ隙が出来た木場の腹筋にジークフリートの前蹴りが叩き込まれる。

あまりの激痛に腹が爆発したと木場は錯覚した。

 

木場はくの字に折れ曲がりながら大地と平行に数十メートル吹っ飛び、地面に接触、そこさら更に数十メートルゴロゴロと地面を転がり、ようやくその動きを止めた。

 

「ガッフ、ガ……はぁ、ぁあ、はぁッ!」

 

甚大なダメージに木場の身体が悲鳴をあげる、それでも彼は血反吐を吐きながら立ち上がる。

 

 

しかし……。

 

「起き上がりが遅い」

 

何時の間にか至近距離に居たジークフリートのアッパーが木場を天高く舞い上がらせた。

 

そして彼は20秒を超える長い長い滞空時間を経てから地面にべちゃりと墜落した。

 

「き、木場さんッッ!?」

 

アーシアが悲鳴をあげて木場に駆け寄ろうとする。だが、ジークフリートの作った結界に阻まれ近付けない。

 

「アーシアさん、まだ回復は早いよ」

 

結界の前で涙目のアーシアに無情の言葉が突き刺さった。

 

「そ、そんなッ!」

 

非常に珍しくアーシアが非難の目でジークフリートを見た。だが、そんなの御構い無しに、いや、それどころか彼はアーシアに一瞥すらせず、ただ静かに地面で痙攣する木場を観察していた。

 

「木場くん、キミの鍛え方は少々極端過ぎる」

 

倒れて痙攣する木場の周りをゆっくりと歩きながらジークフリートが木場に語り掛けた。

 

「 “当たらなければどうということはない” ……確かに、それは真理だ。どんな攻撃も当たりさえしなければ問題は起きない。その認識は正しよ」

 

ジークフリートは木場の周囲をクルクル回る。

 

「しかし、そんな事が本当に可能なのかな? 僕はこう思っている。どんなに高位の悪魔だろうと、そう、それこそ何処ぞ神話の主神だろうと全ての攻撃を回避出来る者なんて存在しないと」

ジークフリートは木場の周囲をクルクル回る。

 

「例えば、“音” なんてどうだろうか? 戦闘中の会話に、音に呪いが乗っていたらどうやって回避する? 聴覚を遮断するかい?」

 

「例えば、“姿” なんてどうだろう? 僕を見るだけで掛かる呪いがあったとしたら、どうやって回避する? 目を瞑って戦うかい?」

 

「例えば、今、僕が張っている “結界” なんてどうだろう? この結界の範囲を一気に狭めて圧殺するとしよう、360°から迫る壁をどうやって回避する? 結界をすり抜けるかい?」

 

生徒に語りかける教師の様に、ジークフリートはゆっくりと木場の頭に浸透する様に自説を語る。

 

しかし、倒れた者の周囲をクルクル回りながら語りかけるのその姿は、何処となく洗脳儀式の様で、この光景を見る者に強い不安を抱かせた。

 

 

「軽く上げただけで君がまず回避出来ない攻撃が三種も出たね? この攻撃は果たしてこのまま速度鍛えていけば回避出来るモノかな? 良く考えてみると良い。……さてと、長くなったね、そろそろ休憩は終わり、続きをしようか?」

 

そう言ってジークフリートはほんの少しだけ木場に回復魔法を掛ける。そしてバックステップで20メートル程距離を取った。

 

「さあ、再開だ、向かって来るといい、でも、もしあと10秒経っても来なかったら……僕から攻めるよ?」

 

そう言ってジークフリートは冷徹な瞳で起き上がろうとする木場に発破をかけるのだった。

 

 

 

 

悪夢はサーゼクスの何気ない発言から始まった。

 

「実は近々プロ入り前の優秀な若手悪魔を集めてレーティングゲームが行われる事になったんだ、そこでジークフリートくん、ウチのリアスとソーナさんを鍛えてもらえるかな?」

 

主候補が見つかり、やる事がなく暇だったジークフリートにサーゼクスが言ったのがこれである。

 

そう、これがリアス、ソーナ眷属の悪夢の始まりだったのだ。

 

後にサーゼクスは言う、言い訳の様に言う。ほんの軽い気持ちだったと、強力な魔導騎士を暇にさせておくのはもったいないと思ったと。

 

 

 

『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』

 

「うおぉおおおおおッ!!」

 

ジークフリートの戦闘教室が始まって今日で一週間。

 

イッセーは度重なる臨死体験とジークフリートに見せられたリアスの乳を吸う幻覚により完全な禁手へと至っていた。

 

彼は限界までパワーを高めると脇目も振らず一直線にジークフリートに突っ込んだ。その速度はジークフリートを除くこの場の誰よりも速い、この短期 “超” 集中型ジークフリート教室で最も成長しているのは彼なのだ。

 

「良い速度だ、パワーも素晴らしい」

 

ジークフリートはイッセーの動きを褒める。

 

だが、彼が褒める後は決まって……

 

「だが、少々一つの事に集中し過ぎだね」

 

ーーダメ出しが飛ぶのだ。

 

次の瞬間、ジークフリートの手前に “アーシア” が現れた。

 

「ッ、あぶねぇッ!?」

 

イッセーは今まさに叩き込もうとしたパンチを辛うじて止める。

 

その間にジークフリートはバックステップで距離を取った。

 

「イッセーさん?」

 

目の前で止まった赤い拳を見て、“アーシア” はキョトンとした顔をした後、嬉しそうにイッセーに抱きついた。

 

「良い反応ですよ、イッセーさん、でも、ここでの正解はそれではないんです」

 

次の瞬間、“アーシア” が大爆発を引き起こした。

 

「そう、一つの事に集中し過ぎると幻術と本物の区別がつかなくなる、キミが冷静だったら少し距離を取って本物のアーシアさんが居た場所を確認したと思うよ」

 

 

「ーーッ、イッセーくんッ!? クッ、おのれ!」

 

爆心地で倒れ込むイッセーを見て木場がキレた。彼は一直線にジークフリートに踏み込むーー振りをしてフェイント、巧みなステップで彼の背後に回るとその首を切り落とした。

 

 

そして、再び大爆発が巻き起こる。

 

「フェイントを入れたのは評価しよう。でも木場くん、キミも冷静ではない。今、爆裂魔法球を幻術でアーシアさんに見せたばっかりじゃないか、なんで僕は本物だと思ったんだい?」

 

そう言って、少し離れた場所で気配を消し透明になっていたジークフリートが姿を現した。

 

「さてと、残ったのは女性と、男の娘か……攻撃するのはちょっと気が引けるね」

 

そう言いつつ、ジークフリートは100を超える魔法陣を自身の背後に展開する。

 

「と、止まれッッ!!」

 

展開された大量魔法陣に焦ったギャスパーがジークフリートに『停止世界の邪眼』を発動、そして次の瞬間、ギャスパー “が” 停止した。

 

「ギャスパーくん、もう対象を絞って神器を使えるようになったんだね、素晴らしい成長だよ。でもね、そういう呪いに近い神器って呪詛返しに弱いんだ。君は魔法のセンスがあるけど時間停止に対する備えがないね、自分の神器が返される類の能力ならちゃんと備えないとダメだよ。まぁ、今は聞こえないだろうから後にするか」

 

そうして、ジークフリートは集まって隙を伺うリアス、朱乃、小猫、アーシアに視線を投げかけた。

 

「うん、下手に分散しないのは良い事だ。隙を伺うのも正しい。でも、攻撃を躊躇するのはいただけない。僕は今、視線をギャスパーくんに向けていただろう? それは明確な隙だったはずだ、例え作られた隙だとしても、隙は隙、通常時より攻撃が当たり易いのは確かなんだよ? だから、今は朱乃さん、貴女が最速の雷を撃つべきだったと僕は思うよ」

 

それが “ラスト” チャンスだった。そうジークフリートは付け加えた。

 

「…………」

 

ジークフリートの言葉に朱乃は無言、いや、朱乃だけでなく、リアスもアーシアも小猫も無言。

 

反論が浮かばないのではない、物理的に出来ないのだ。

 

「あと、もう一つ、何度もやったからあえて説明はしなかったけど、君達は短時間で勝負を決めるしかなかったんだよ? 知ってたよね、僕が会話に呪詛を混ぜる事が出来るって」

 

ジークフリートはゆっくりと固まって動けないリアス達に歩み寄る。

 

「それだけではなく、ギャスパーくんのソレには遥かに及ばないけど邪眼も一応使えるんだよ? 僕の呪いは君達レベルじゃレジストするのは難しい。だから僕の話を聞くたびに僕に見られる度に君達の勝機は薄くなっていったんだ、だから時間稼ぎが目的じゃなかったら玉砕覚悟で特攻すべきだった」

 

そしてジークフリートは良く “音” が聞こえる様にリアス達の近くで指を鳴らす。

 

それと同時に四人が地面に倒れ込む。

 

「これでリアス組、第三回目の模擬戦を終了とする」

 

ジークフリートはそう呟くと視線をリアス達から結界の外のソーナ達に移した。

 

視線を投げられたソーナ眷属がビクリと身体を震わせる。

 

「さて、よく休めましたかソーナさん? リアスさん達を片付けたらソーナ組の三回目を始めますよ?」

 

そう言ってジークフリートは爽やかな笑みを浮かべた。

 

「………はい」

 

そして、笑顔のジークフリートに答えるソーナの顔は死刑前の罪人よりも青かった。

 

 

 

隙がない、油断がない、躊躇がない、遊びがない。ジークフリートはいっそ笑いが出るほど合理的に冷徹にリアス眷属とソーナ眷属を鍛え抜いた。

 

その苛烈さは地獄の炎をも上回る、途中、あまりの苛烈さに保護者乱入(レヴィアたん襲来)もあったがそれすらあっさり片付け、ジークフリートはリアス、ソーナを鍛え抜いた。

 

その結果。

 

まあ、つまり、言うまでもない事だが、リアス眷属とソーナ眷属は大幅レベルアップを果たしたのだった。




流石は原作主人公勢、オリ主とは修行密度が違うなぁ。
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