まあ、リアス眷属が原作より強くなってるからいいか。
あ、グロ注意でお願いします。
な、なんて声を掛けましょう? そう、レイヴェルは緊張しながらイッセーを遠くから眺めていた。
此度、サーゼクからの打診により最初の眷属を持つことになった彼女は駒王学園を訪れていたのだ。
そして、軽い手続きの後、旧校舎のオカルト研究部の部室を目指している、そんな時、前方にイッセーを見掛けたので声を掛けようと思ったのだ。
しかし、最初になんと挨拶すれば良い?
年上だから敬語? 下級悪魔だからタメ口? いやいや、慕っている年上の男性にタメ口なんて有り得ない!
レイヴェルは意を決して、イッセーに近付くと勇気と共に声を掛けた。
「お」
「ーーッ!?」
それは尋常じゃない反応だった、レイヴェルの声に即座に振り返ったイッセーは肩を叩こうか迷い宙を彷徨っていた彼女の手を攻撃と判断、即座にしゃがみこみ腕を躱すとレイヴェルの腕で出来た彼女の死角を利用し、背後を取ったのだ。
あんまりの事態に「お」に続くはずだった “久しぶりですわね、赤龍帝” を飲み込むハメとなったレイヴェルだった。
イッセーは赤龍帝の籠手を発現させ、鋭い瞳でレイヴェルの胸を中心に全身をくまなく観察、数秒してからようやく警戒を解いた。
「………ふぅ、幻術じゃないな? ええと、確か、焼き鳥野郎の妹か?」
「レイヴェル・フェニックスです! それよりなんですか今の反応は!?」
私なにかしました!? 声掛けちゃいけない感じでした!? バケモノと相対したようなイッセーの反応にレイヴェルは涙目で困惑した。
「あ、ああ、悪かったな、この頃な背後から声を掛けられるとついこんな反応をしちまう癖がついちまったんだ……特に放課後は、な」
「どんな癖ですか!?」
その言葉に、好きでついた癖じゃねぇよ! とイッセー答える。
「で、どうしたんだ、こんな所で」
「え、そ、それはですね」
急に冷静になったイッセーに言葉を詰まらせるレイヴェル。
恋心を抱いてからしばらく会っていなかったせいか? イッセーの顔つきが最後に見た時よりも精悍に見えるのだ、特にその目は以前よりキリッとしており、身体は一回り大きくなるも、以前より締まった様に感じる。
「それは?」
「け、眷属を見に来たんですわ」
「眷属? そうか、上級悪魔だもんな、眷属くらいいるか、でも、ここに来たって事は駒王学園関係者か? 今更だけどこの学校は悪魔が多いなぁ……ところで、その眷属って女の子?」
「なんでそんな事を聞くのですか? ……いえ、その顔を見れば分かります。しかし、赤龍帝には残念でしょうが男性ですわ」
「なんだ、野郎か」
イッセーはそう心底残念そうに呟いた。それにレイヴェルがムッとする。
「なんだとはなんですか、私の眷属は素晴らしいですわよ? 赤龍帝なんて五秒でノックアウトしてくれますわ!」
「へぇ、凄いな、でも俺もこの頃かなり強くなってるぞ? 以前の俺と思うなよ」
そう言って軽く構えるイッセーには、なるほど確かに隙がない。
レイヴェルはそんなイッセーの姿にドキっとした。
「お、面白いですわね、では赤龍帝! 私の眷属と戦ってみたらいかがかしら?」
「マジで!? 良いよ! すぐ戦おう、今日戦おう! そっちが良いなら毎日戦おう!!」
「な、なんでそんな積極的なんですの!?」
「いや、ただ戦いたくなっただけだから! 理由なんて他にないよ? 俺はただ、レイヴェルの眷属と戦いたいだけだから!」
「はっはっは、嬉しいこと言ってくれるねイッセーくん」
その声にイッセーは凍りついた。
「あ、ジークフリート、こんにちは、昨日振りですわね」
「ええ、我が主、主はイッセーくんとお話し中でしたか、邪魔をしてしまい申し訳ありません」
「いえ、別に良いですわ、ちょうど貴方を紹介しようと思ったところですのよ、赤龍帝、こちらが私の最初の眷属にして女王、ジークフリートですわ!」
「昨日からレイヴェル・フェニックスの眷属悪魔となったジークフリートです、今後ともよろしくイッセーくん、お近付きの印に毎日 “僕” と模擬戦したいというキミの願いを聞き届けよう、今日から集団戦の後に一対一の模擬戦もメニューに加えるね」
「オレガ、タタカイタイノハ、レイヴェルノ、ケンゾク、デス」
「ん? 僕がそうだって言ってるじゃないか、あ、ちなみに僕以外はまだ彼女に眷属は居ないよ」
変な人だね、そう言ってジークフリートは爽やかに笑った。
だが、イッセーは知っている、彼が爽やかに笑った後は決まって良くないことが起こる事を……。
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』
『
「いっけぇえええ木場ァァァァッ!!」
イッセーの譲渡により通常の何倍もの速度で木場が駆ける、向かう先は当然ジークフリートだ。
木場はジークフリートによって作り出された幻術を即座に見破ると右手に持った魔剣を本物に投擲、同時に新たなより強力な魔剣をその手に作り出した。
「
刀身から柄まで全てが黒いその魔剣は木場の禁手『黒呪の死剣』である。
つい最近至ったその禁手は伝説の魔剣に近い強度と斬れ味を誇り、傷つけた対象に治癒阻害と毒の呪いを掛ける、そして毒が相手に回れば回るほど木場の傷と体力が回復するというエゲツない能力を持つ剣だ。
その外見も相まって誰に影響されたのかよく分かる剣である。
「死ぬのに受けるのはごめんだね」
投擲された魔剣を軽々と躱し、ジークフリートは木場を迎え撃った。
次の瞬間、二人の間で剣撃の嵐が巻き起こる。
金属がぶつかり合う音が途切れる事なく響き渡り、剣撃の余波で地面に幾筋モノ傷が刻まれる。
双方共に超音速、二人の剣速はあまりに疾い、それゆえにその剣は並みの者では影すら捉える事が出来ない。
しかし、それ以外で戦況を知る方法が一つある。
火花の位置だ。
火花の位置は剣と剣の接触点、すなわち火花が身体に近い側が押されているに他ならない。
そして、火花は常に木場の近くで舞っていた。
「なかなか疾いね、だが、君に掛けられた倍化はあと何秒持つ?」
「20秒も持たないだろうね、でもそれで充分なのさ!」
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』
『
「ギャスパーッッ!!」
「了解です、イッセー先輩ッ!!」
イッセーの呼び掛けにギャスパーが『停止世界の邪眼』を発動、譲渡で力を得たギャスパーは呪詛返しを受け自身を停止させながらもジークフリートの足だけは止める事に成功した。
「はあぁあああああッ!!」
そこに木場の猛攻が襲い掛かる。
さしものジークフリートでも、文字通り足が止まった状態で動きが倍化した木場の剣を受けきるのは難しい。
故にスタイルを剣主体から魔法メインにシフトする、絶大な魔法力がジークフリートから迸り、彼の周囲に常時張られた高密度多重障壁が力を増す。そして障壁は捌き切れず直撃コースだった木場の剣の悉くを遮断した。
木場はこの障壁を自分では破れないと判断、魔法攻撃を警戒し即座にジークフリートから距離を取る。
そして、この行動はイッセー達への合図でもある。
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』
『
「朱乃さんッッ!!」
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』
『
「部長ッッ!!!」
イッセーの瞬間最大倍化譲渡、木場、ギャスパーを含めて四連続の瞬間最大倍化だ。
この無茶で猛烈な怠惰感がイッセーを襲うが彼は構わず、五度目の瞬間最大倍化を開始する。
『Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost Boost‼︎』
「ドライグゥゥッ! アスカロンに力の譲渡だッ!」
『承知!
三大勢力の会合なった前、ミカエルに願掛けとして貰った伝説の聖剣、そこにイッセーは高めた力の全てを譲渡する。
すると、籠手から生える聖なる刃に凄まじいオーラが集中した。
そして……。
「部長ッ! 朱乃さんッ!」
「ええ、行くわよイッセーッ! 朱乃ッ!」
強大な滅びを纏うリアスが……。
「はい、部長!」
眩く輝く雷光を纏った朱乃が……。
聖なるオーラを迸らせるイッセーが……。
「「「はあぁあああああッッ!!!!」」」
ーー同時にジークフリートに牙を剥いた。
三人同時の最大倍化攻撃、未熟な彼等ではあるが、その同時攻撃にはかなりの威力がある。それこそ下位の最上級悪魔なら何も出来ずに滅殺されてしまう程の高威力がある。
それ故にその攻撃を脅威と感じたジークフリートは腰から愛剣を引き抜いた。
「………グラム」
最初から最高潮、鞘から抜いた瞬間、強大無比の魔の波動を放つグラム、ジークフリートはソレを即座に上段に構え、今まさに自身の障壁と接触しそうな同時攻撃に向い振り下ろした。
瞬間、大河の如き強大な光の奔流が天へと昇る。
光の大河は一瞬にしてリアス達の同時攻撃を飲み込むと訓練フィールドに穴を開け、空の彼方へと消えていった。
魔剣の中でも頂点に位置するグラム、その一撃をジークフリートの魔法で限界まで補助、強化すればそれこそ戦神にさえ通じる一撃と化す。
要するにこの結果は驚くことでもなんでもないのだ。
とは言え、こんな超威力の攻撃を撃たれたリアス達からすればたまったものではない。
「こ、殺す気かッッ!?」
イッセーがリアス、朱乃を脇に抱え、ジークフリートに猛抗議する。
そんなイッセーにジークフリートは何か悪い事した? といった感じに首を傾げる。
「ちゃんと当たり “にくい” 場所に撃ったよ? まあ、一週間くらい前の君なら掠るくらいしたかも知れないけど、今なら余裕で避けれる速度とコースだったでしょ?」
まあ、掠ったら死んでただろうけど。とジークフリートは内心で付け足した。
「余裕全然なかったから! 超ギリギリだったから!」
「それはキミが二人を助けてから回避したからでしょ? 二人を見捨ててたら余裕で回避出来たよね?」
「余裕で避けれるって見捨てる事、前提かよ!?」
「いや、あんまりイッセーくんに頑張られるとリアスさんと朱乃さんの回避スキルが上がらないから困るんだ。というかよく助けられたね? 二人を助けてたら回避出来ないくらいの速度で撃ったつもりだったんだけど、キミ歴代最弱の赤龍帝とか言われてるけど潜在的には案外中堅くらいはあるんじゃないかなぁ」
そんな事を呑気に言うジークフリート、彼は微笑を浮かべたまま、膝を曲げ頭を下げる。
そのジークフリートの頭上を死剣が通り過ぎた。
「木場くん、お話中に斬りかかるのは……なかなかいいよ、躊躇なく首筋を狙ったのもいい。以前のキミなら出来なかった行動だと思う」
「模擬戦終了は告げられてないからね、これで死んだらキミが間抜けだったというだけの事だよ」
爽やかだが、どこか黒い笑みで木場が言った。
「はは、いいねぇ、そうだ、戦闘中に隙を見せる方が悪い、でもね、一応今日の訓練は我が主に僕の力を見てもらうという目的も含まれていてね? あんまりいつも通り過ぎると引かれるかなぁとか考えてたんだよ?」
「キミ……自分の戦い方がエグいって知ってたの?」
「そりゃ知ってるよ? 当たり前だろ、まぁ、だから今日はあまり小細工せずに圧倒させてもらうよ」
そう、言ってもジークフリートはグラムのオーラを完全に抑え込むと、ただの袈裟斬りを放った。
そして、その一撃であっさり死剣は砕かれ、木場は死なない程度かつ戦えはしないダメージを負ってしまった。
「がっ!?」
木場が驚いた様な顔をする。何故ならイッセーの譲渡は生きていたのだ。さっき木場が言った20秒も持たないというのはフェイクで、本当はもう少しだけ強化が持続する。
つまり、強化された状態にも関わらず木場は一刀の下に斬り伏せられてしまったのだ。
「ん、何か驚くような事をしたかい? もしかしてさっきの斬り合いが僕の全力だと思った? はは、それだったら考えが甘過ぎるよ」
教師役が簡単に全力を出すわけないでしょ? そう言ってジークフリートはグラムを天に掲げた。
「でも、今日はサービスだ。少しだけ、死なない程度に本気を出そう、いや、本当に死なないでね? 事後処理が面倒くさいから」
ジークフリートは先のグラムで壊れかけたフィールドを簡易修復、それと同時に数千の魔法陣が天に出現した。
リアス眷属一同は青い顔で、ちょ、やめろ! と言ったニュアンスの言葉を繰り返す。
だが、まあ、そんな抗議くらいでジークフリートがやめる筈もなく……。
「さあ、受けるといい!【全魔法陣術式解放】」
そして、数千の魔法陣から数万の魔法が降り注いだ。
「どうでしょうか私の戦闘力は」
「非の付け所がございません」
レイヴェルがカクカクと青い顔で頷いた。
強過ぎる。
それが、レイヴェルのジークフリートへの感想だった。サーゼクスに彼を紹介された時、かなり強い、将来有望と言われたが、“かなり” が魔王基準でかなり強いとは思わなかったのだ。
というか、つい数日前、魔王レヴィアたんが何者かに敗北するという、本当か疑わしい記事がゴシップ誌に載っていたが、これは目の前の男のせいなんでは? とレイヴェルは思った。
だってレヴィアたんに勝ったのは魔法剣士って書いてあったし!
今更になってレイヴェルは悟った。
「(サーゼクス様が私に彼の眷属化を打診したのは女王の変異の駒を私が持っていたからからですわねッ!?)」
間違いない、これを眷属悪魔にするには兵士8個では足りない、女王1個でも、戦車2個でも足りない。それこそ戦車の変異の駒+普通の戦車の駒か女王の変異の駒でもなければ不可能だ。
「え〜……一つ聞たいのですが?」
「何ですか我が主」
「あ、レイヴェルでお願いいたします主と呼ばれるのは恐れ多いです。もちろん敬語も不要ですわ」
レイヴェルがタメ口を許したのは親しみからではなく、明らかに自分の十倍以上強いジークフリートに萎縮してしまったからだ。
「分かりました。いえ、分かったよレイヴェル、それで聞きたいこととは?」
「ジークフリートは元異教の邪神でしたっけ?」
「嫌だなぁ、人間に決まってるじゃないか」
「俺の知ってる人間とちげぇ」
約束通り一対一の模擬戦で満身創痍となったイッセーが倒れ伏しながら呻く様に呟いた。
「イッセーくん、それはキミが人間を知らな過ぎるだけだよ。僕レベルの人間も居ないことはないんだよ? 世界に十数人くらいは居るかな? あ、ちなみに、禍の団の英雄派に最低二人はいるから戦う時は気をつけてね」
「……俺、英雄派が攻めてきたら部長達を連れて逃げるわ」
割と本気でイッセーはそれを決意した。
それはいつも通りの昼下がりだった。
街の公園の一角で一人の男が鞄から弁当を取り出した。
「〜〜♪」
男はご機嫌な様子で布に包まれた弁当ーーそう、愛妻弁当の蓋を開く。
男の予想通り、弁当は男が望んだオカズが綺麗に並べられ、ご飯には若干歪んだ “LOVE” の文字がノリで書かれていた。
国際結婚で日本人の妻は良くこのノリ文字を好んで弁当に作る。
「ふふ」
男は思わず笑みを浮かべると妻に習い、目を閉じ、両手を合わせる。そして日本の食事前の挨拶……。
「いただきます」
を言うとパクリと一口で “食べられた”
グジャ、ガギジャと強い水気と硬い何かが噛み砕かれる音が聞こえる。
男のすぐ近くのベンチに座っていた女性が目を見開きフリーズする。
そして、その女性が我に返った時、つぶらな瞳の黒い龍と目が合い、公園に大きく “短い” 悲鳴が響き渡った。
Q.あれ? 木場くんこんな性格だったっけッ!?
A.多感な時期ですからね〜性格もよく変わるんですよ(目を逸らす)
Q.ジークフリート、これ以上強くしてどうすんだよ!?
A.作者も困り果てています。
そろそろ物語が進む……かも?