勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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お待たせしました(こんな駄文待ってない?)

時間はあったんですがどうも上手く書けずこのザマです。

……せめてシルバーウィーク中に更新はしたかったのですが。


第39話

「まさに波乱の時代だな」

 

曹操は冥界の映像を見ながら呟いた。

 

ゲオルクの魔法によって映されているのは悪魔、堕天使の存亡の危機である。

 

まさか、こうもあっさり滅亡寸前まで行くとは、そんな思いが曹操の胸の内に渦巻いた。

 

「ふふ、良かったではないか英雄が必要な時代だぞ」

 

そんな曹操をからかう様にバルパーが言う。曹操と同じ映像を見ているのに随分とアッサリした反応である。

 

それもそのはず、バルパーにとっては悪魔や堕天使の存亡など興味がないのだ。

 

彼に有るのはただ異常な聖剣への執着心。彼は自分が創り出した聖剣の力さえ証明出来ればどんな状況でもノープロブレムなのである。

 

そんなだいぶイカれた頭のバルパーに曹操は苦笑を浮かべ頭を掻いた。

 

「……はは、まあ、その通りではあるんだが、俺が想定していたより波乱の規模がでかくてね」

 

「英雄冥利に尽きるではないか」

 

「まあね」

 

「ふん、それで、行動目的は決まったのか?」

 

そう問うバルパーの視線は鋭い。

 

彼は戦闘訓練だけの日々に苛立ちを募らせていた。

 

どれくらい募らせていたかと言うと、口癖が「聖剣で斬らせろ!」になるくらい募らせていた。

 

そんなバルパーに対し、曹操は一度目を瞑ると、静かにだかはっきりとした言葉で英雄派の目的を告げた。

 

 

 

「俺、いや、俺たち目的は人類の救済、そう、今から俺たちは人類を復活させる事を目的とする」

 

「…………」

 

ちょっとドヤ顔で言う曹操。

 

そんな曹操をバルパーは胡乱な、ダメ人間を見るような瞳で見詰めた。

 

「…………あ〜、バルパー? 泣きたくなるから『え〜、今まで考えてようやく出した結論がそれ?』みたいな目を止めてくれないか?」

 

「そんな事は考えていないから安心しろ、戦い以外はまるでダメな奴だと思っただけだよ」

 

「なお、悪い! ……これでも色々と悩んだ結果出した答えなんだよ」

 

「はぁ、分かった分かった。それで結局戦いになるのだろう? 最初の相手は誰だ?」

 

どうでもいいから早く話を進めろ。

 

そんな態度のバルパーに曹操は青筋を浮かべた。

 

「……バルパー覚悟しろよ、ここからは激戦続きになる。しかも初戦から魔王級の敵だ」

 

「ふん、魔王級か望むところだ、ふははははははッ!それでこそ証明しがいがある。私の聖剣が最強だとなッ!」

 

 

曹操の話を聞きバルパーはテンションが一気に上がった。

 

その姿はまるで遠足前の子供。

 

子供と違うの微笑ましいか微笑ましいく無いかだけの差である。

 

「初陣が魔王級とか、普通は怒る所だと思うのだが……まあ、やる気があるのはいい事か、それでゲオルク、人類復活は可能なんだな?」

 

ここで曹操は予め目的を知っていたゲオルクに話を振った。

 

「ああ、莫大な力が必要だが理論上では可能だ」

 

「……勇真の目的も人類復活だったよな?」

 

「協力を求める気なら止めておけ、アレは敵を味方に付けるとか考えない奴だ。しかも、相当根に持つタイプ、一度殺すと決めたらあらゆる手を使って殺しに来る相手だ、その上、直接戦闘も異常に強いから最悪だ」

 

「ふむ、私は直接面識はないが、こいつの行動を見る限り、おそらく一時的に協力して用済みになったら背後から刺すタイプだな、絶対に手を組みたくない」

 

良くない提案をしそうな曹操をすかさず止めるゲオルクとバルパー。

 

息ピッタリの否定。

 

彼らの中の勇真像は極悪非道の下衆野郎らしい。

 

……まあ、概ね正解である。

 

 

二人の強い拒否に「あ〜やっぱりか」と意気消沈する曹操。

 

どうやら未だに曹操は勇真を仲間に引き込みたかったらしい。

 

「二人がそこまで言うなら仕方ないか、バルパーが言うと説得力があるしな……では勇真とは関わらない方向で行く。それでは二時間後、準備をしてゲート前に来てくれ」

 

そう言って曹操は会議室の椅子から立ち上がる。

 

そして、彼は不敵な笑みを浮かべ攻め入る場所を二人に告げた。

 

 

 

 

 

 

「ああ、そうそう、目的地は天界、先ずは救うべき人類の魂を準備しようじゃないか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「気分はどうかな?」

 

勇真は自身のアジトで一人と男に話し掛けた。

 

「……悪くない」

 

男は身体の調子を確かめながらそう答えた。

 

長い黒髪に切れ長の赤い瞳を持ち、その背に6対の翼を背負う優男。

 

彼の名はサマエル、全ドラゴン最悪にして最強の天敵 “だった” 者である。

 

「それは良かった。呪い(コレ)を貰ったかいがあったよ」

 

そう言って勇真は魔帝剣グラムを見せる。

 

それを見てサマエルは顔を顰めた。

 

「そんなモノを欲しがるお前の気がしれんな」

 

「貴方にとってはそうでしょう、しかし、今の俺にはコレが何より必要だった」

 

そう言って勇真はグラムを優しく撫でる。

 

グラムの刀身は幾重にも巻かれたベルト状の拘束具で見えない。しかし、拘束具の僅かな隙間から漏れる黒いオーラはかつてのグラムが纏っていた龍殺しのオーラとは比較にならない程強大だ。

 

それもそのはず、グラムから放たれるのはサマエルに掛けられた聖書の神の呪い。究極の龍殺しの呪詛なのだから。

 

 

 

「……絶対ここで解放するなよ」

 

サマエルが警戒したように言う。

 

彼はこの呪いに耐性がある唯一の龍属性の持ち主である。

 

しかし、だからと言って受けたい呪いではない。第一、耐性と言っても死なないだけで食らうと死ぬ程の激痛を齎す呪詛なのだから。

 

「分かってますよ、早々このグラムを使う気はありません、もっとも呪いの方は薄めて普通に使いますが」

 

そう言って勇真は虚空に溶かすようにグラムを消し去る。

 

圧縮空間にしまったのだ。

 

「その程度ならば問題ない。それで、お前の目的は何なのだ?」

 

「ああ、言っていませんでしたね。人類の救済ですよ」

 

それを聞きサマエルは怪訝な顔をした。

 

「……………世界征服ではないのか?」

 

「いやいや、なんでそうなるんですか?」

 

心外ですね、と言う勇真。

 

それに続き、勇真の背後には居た二体のドラゴンもサマエルに抗議を入れた。

 

『サマエル様、勇真様は本気で人類救済を目指す素晴らしい方なのですよ』

 

『その通り、勇真様は素晴らしきお方です』

 

そう口にしたのは伝説級邪龍の二体、グレンデルとラードゥンだ。

 

……口調や性格に全く面影がない上、その身体がやけに赤い(・・)が確かにグレンデルとラードゥンだった。

 

「ほら、グレンデルもラードゥンもこう言ってますよ」

 

「………言わせているの間違いだと思うが?」

 

「違いますよ、二体とも心から言ってますよ、だよな、グレンデル? ラードゥン?」

 

『『その通りでございます』』

 

「……………」

 

この三者を前にサマエルは無言。

 

彼は哀れな者を見る目で変わり果てた二体のドラゴンを見つめ無意識の内に十字を切った。

 

嫌いな神の教えだが、サマエルはこれしか彼等に贈れるものがなかったのである。

 

そして、サマエルはつい先程、まだ、この身体から呪いを取り切る前に勇真が言っていた事を思い出した。

 

 

 

 

 

 

『逆らうの? お前達は所詮、代わりの居る駒に過ぎないんだよ?』

 

 

『反抗的な駒には記憶も感情も必要なし戦闘経験以外は削除削除っと♪」

 

 

『この呪いは素晴らしい、薄めて使えば強固な汚れ(邪龍の精神・記憶)も一発で良い具合に綺麗にできますね、しかも『支配』の力と相性抜群!』

 

 

『疲れた、使い過ぎは禁物か? しかし、幽世の聖杯、予想以上の性能だ。これを上手く使えば英雄派も魔獣派も容易く始末出来る……俺が手を下すまでもなくッ! ふふ、ふは、ふははははははッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

「やはり世界征服が目的だろ?」

 

確信を持って言うサマエルに勇真は苦笑した。

 

「もう、だからなんでそうなるんですか、人類の救済って言ってるじゃないですか」

 

「…………」

 

サマエルはそんな勇真を胡散臭そうに見た後、ため息を漏らした。

 

「はぁ……まあ、良い。それで人類救済の為にお前は何をするつもりなのだ?」

 

「天界に行って人間の魂を確保したら龍神を燃料に聖杯で人類を生き返らせるつもりです」

 

「またさらっと神をも恐れぬ所業を口にするな、それで俺の呪いを欲したか」

 

「はい、そうです。たまたま究極の龍殺しの噂を耳に挟みましてね、ふふ、まあ、龍神確保は念の為なんですが」

 

「念の為?」

 

「ええ、正直聖杯の性能を舐めてました。これなら複数の偽赤龍帝の籠手と併用すれば今からでも人類救済が出来そうです。なので取り敢えず試しに天界に行こうかなと思います」

 

そう言って転移魔法の準備をする勇真。

 

気付けばグレンデル、ラードゥン、サマエルの足元にも魔法陣が展開されていた。

 

「今からか? 随分と急だな」

 

「はい、出来る出来ないは置いておいて魂の確保だけはしておきたいんで、他勢力に天界を堕とされたら人間の魂がどうなるか分かりませんから、強い魂なら聖杯で簡単に探せますけど弱い魂は聖杯の探知能力に引っかからないんですよ」

 

「……そうか、しかし、良いのか? 聖杯は使い過ぎると使用者の精神と魂を蝕むのだぞ? 人類救済などすれば確実にお前の精神が保たないと思うのだが?」

 

「もちろん、その点は大丈夫です。俺が直接使うつもりはさらさらありません、ハーデス神殿で多数の死神を捕らえているので、彼等にやって貰います」

 

「……お前に捕まった者達は皆、哀れな事になるな」

 

「いえいえ、人類救済なんて素晴らしい偉業じゃないですか、そんな手柄を他人にあげるんですからむしろ感謝して欲しいですよ、あ、もちろんその死神の精神が壊れたら俺が聖杯で治すのでご心配なく」

 

でぇじょうぶだ、聖杯があればなんとでもなる。

 

そう言って笑う勇真をサマエルは白い目で見た。

 

「…………お前を見ていると聖書の神を思い出すよ」

 

それはサマエル最大級の称賛であり侮蔑だった。

 

そんなサマエルの視線に勇真は肩を竦めて笑う。

 

「ははは、神に似ているなんて光栄ですね、まあ、それはさて置き行きましょう」

 

その言葉と共に魔法陣が輝きを増す。

 

そして数秒後、勇真達は天界を守る大結界を無視して天界内部へと進入したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「俺は行くぜ……例え一人でもな」

 

静かに、だが強い決意を持ってイッセーが言った。

 

今回の複数勢力の同時襲撃で四大魔王全員が死に、レーティングゲーム上位陣の多くもヴァルブルガとの戦闘で亡くなった。

 

更に、襲撃して来た一つであるギリシャ勢力に魔王領及び殆ど全ての主要都市を強奪されてしまい、多くの悪魔達がギリシャ勢力の奴隷と化してしまう。

 

そして、その奴隷の中にはイッセーの大事な主人と仲間も含まれている。

 

それ故、イッセーは彼等の救出に向かう事を決意したのだ。

 

「俺も行くぜ」

 

そう言ったのは匙だ。彼も仲間と主人をギリシャ勢力に囚われている。

 

匙はイッセー同様仲間意識が強い。故に彼も高い危険が伴う救出を決意したのだ。

 

「本気? まさか二人だけで何とかなると思ってる? 十中八九死ぬよ」

 

ギャスパーがそう警告する。彼が言うようにまず二人で何とかなるとレベルではない。

 

だが、そんな事はイッセーも匙も分かっていた。

 

それでも二人は行く事を決意しているのだ。

 

 

「……ギャスパー、止めたって無駄だぞ?」

 

そう言って匙が神器を発動する。

 

最悪、ギャスパーを無力化してでも救出に向かうつもりなのだ。

 

しかし、そんな匙の前にイッセーが立った。

 

「兵藤?」

 

「ああ、匙、大丈夫だ、この感じはギャスパーも来てくれるらしい」

 

イッセーの言葉に匙は「え?」と驚いた顔でギャスパーを見る。

 

見られたギャスパーは途端に顔を綻ばせた。

 

「ふふ、バレたか、君達二人じゃ、仲間が何処に囚われてるかも分からないだろう? 僕も行くよ」

 

「助かる……でも、わざと勘違いする様に言うなよ」

 

イッセーがそうジト目で言う。

 

それにギャスパーは悪戯が成功した子供の様な笑みを浮かべた。

 

「良いじゃないか、君達の顔がまるでバンザイアタックを命じられた特攻部隊の様に強張ってたからさ、ちょっとその緊張を解いてあげただけだよ」

 

「……ありがとな、ギャスパー」

 

「そう、だな、確かに少し緊張が解けたありがと」

 

緊張し過ぎの自覚があった二人は軽くギャスパーに礼を言った。

 

「ふふ、どういたしまして。じゃあ、早速行こうか」

 

「お、珍しいな、割と慎重派なギャスパーが用意もせずに行こうだなんて」

 

「今がチャンスだからね」

 

「チャンス?」

 

ギャスパーの言葉にイッセーと匙は首を傾げた。

 

「ああ、丁度今、ヴァーリがギリシャ勢力に攻め込んでいる。向こうは良い具合に混乱してるよ、それに何故かハーデスが居ない。さすがにここから冥府の様子は見えないが、どうやら不測の事態で自身の神殿に戻っているらしい」

 

ギャスパーがそう言うとイッセーと匙の視界が切り替わる。

 

二人の目に映ったのはギリシャ勢力と戦うヴァーリだ。

 

ヴァーリは下級神相手に無双の戦い見せている。そして、そのヴァーリをゼウスが苦々しい表情で睨みつけていた。

 

「………確かにハーデスが居ないな」

 

イッセーがそう呟いた。

 

彼の言う通り、ハーデスがこの場に居ない。

 

「しかも死神の姿も全然無い」

 

「よほどハーデスにとって良くないことが起こったって事か?」

 

遠からず激突するだろうゼウスとヴァーリ。

 

オーラで判断する限り二人の力量はゼウスが若干ヴァーリより上に見える。

 

だが、ヴァーリはまだ覇龍ではない。

 

つまり、どちらが勝ってもおかしくはない、この状況に置いてハーデスが居ないのはおかしかった。

 

「ふふ、そういう事。さあ、急ごうじゃないか、ギリシャが慌てている内にね」

 

「ああ、で、みんなの居場所は分かってるのか?」

 

「舐めてもらっては困る。残りカスとは言え、これでもの魔眼のバロールの転生体だよ? もちろん、把握済みだ。幻術で隠してるけど、僕はどんな(・・・)幻術だろうと見破れるからね」

 

次の瞬間、再びイッセーと匙の視界が切り替わる。

 

見えたのはリアスとソーナが囚われた牢獄。更に視点が変わり今度はソーナ眷属がまとめて囚われた牢獄、その次が木場とアーシア。次の次がヴァレリーが囚われた牢獄だった。

 

ギャスパーにより何度も切り替えられた視界には全ての仲間たちの居場所が鮮明に映し出されている。

 

そして、そこまで辿り着く最短ルートさへも。

 

「うわぁ、千里眼に時間停止に能力停止、その上幻術看破とかその神器チート過ぎだろ!」

 

ギリシャの神々が張った結界をあっさり突破したギャスパーの魔眼に匙は戦慄する。

 

だが、日頃の訓練でギャスパーのチート能力には慣れっこのイッセーはただ笑みを浮かべギャスパーの行動を称賛した。

 

「さすがギャスパー、頼りになるぜ!」

 

「ふふ、褒めても何も出ないよ」

 

そう言いつつギャスパーは転移魔法陣を作り出した。

 

「さあ、行こうか……あ、そうだ赤龍帝、君に一つ聞きたいんだけど」

 

ギャスパーがイッセーの顔を真剣な顔で見る。

 

そんなギャスパーにイッセーは何故か嫌な予感がした。

 

「……なんだ? てかいい加減赤龍帝って呼ぶの止めろ」

 

「分かったじゃあ、イッセーと呼ぼう。それでイッセー……」

 

 

 

 

 

 

「宮藤勇真って知ってる?」

 

そう質問し、ギャスパーはイッセーの目を視る(・・)のだった。

 

 

 

 

 

 




次回はバトル? それとも協力? 勇真の心の広さが全ての鍵です(白目)
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