勇者さんのD×D   作:ビニール紐

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戦闘描写が難しい……そして主人公を強くし過ぎた気がする。


第7話

 

勇真7

 

勇真は思った。周囲の視線が痛いと。

 

理由は当然、隣のルミネアが原因だった。

 

「どうかしましか勇真さん?」

 

上機嫌に、幸せそうに、勇真の腕に自分の腕を絡めてルミネアは勇真を見上げた。その姿は恐ろしく可愛いのだが、それが周囲の視線を引き寄せる。

 

「いや、なんでもないよ」

 

「ふふ、そうですか」

 

正直、勇真は恥ずかしくてしかたないので、出来れば、とても残念ではあるが街を歩く際はもう少し、そう、せめて手を繋ぐくらいにして欲しい、と思っているのだが、ルミネアがあまりに幸せそうなので言うにに言えない。

 

そして、その状況を放置していればいつの間にか、勇真は嫉妬の視線の嵐に晒されていた。

 

その視線は既に常軌を逸したレベルとなっており、勇真の7重展開した対魔術防壁を素通りし、彼にザクザクと刺さっては精神ダメージを与え続けている。

 

このままでは呪殺されかねない……誰か助けて!

 

そんな風な事を勇真が考えていると、空気を読んだのか、悲しげな目で、残念そうに、名残惜しそうに、ルミネアは勇真の腕を解放した。

 

そして一言。

 

 

「……あの、やっぱり、嫌ですよね」

 

「いや、なにが?」

 

勇真は離れたルミネアの手を自ら握る、それに、ルミネアは、あっと小さな驚きの声を上げ……すぐに嬉しそうに笑うと勇真の腕を抱きしめた。

 

呪の視線が3割り増しになったが、知ったことかと勇真はルミネアを伴って京の街を歩き回った。

 

 

 

 

昨日 “ゴニョゴニョ” した結果、勇真とルミネアの仲は急速に深まった。特に今までは自分を押さえあまり勇真に甘えていなかったルミネアが完全な甘えん坊と化していた。

 

勇真の言うことはちゃんと聞く、しかし、隙あらば、まるで幼子が絶対の信頼を置く父親にくっ付く様に、いつでもどこでも、勇真に腕を絡めたり、抱きついたり、したがるのだ。

 

まあ、離れてと一言言えばゴネることなく離れる(悲しげに)

 

今はダメと言えば素直に聞く(寂しげに)

 

やめてと言えば従う(涙目で)

 

可愛すぎるでしょ。by 勇真

 

そんな訳で、あまり目立ちたくない街中でもつい、勇真はそれらの行動を許してしまっていた訳である。

 

 

 

 

 

それが、いけなかった。

 

 

 

 

勇真の視界に黒い霧が映り込む、ヤバイと判断し、咄嗟にルミネアを抱きしめ転移魔法をしょうとするが時既に遅く、勇真とルミネアは現実世界とは位相の違う結界内へと飲み込まれてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やあ、久しぶりだね」

 

背後からの声に、勇真は答えずルミネアを抱いて魔法で数十メートルの高さまで飛翔、同時に展開されるのは多種多様の防御魔法陣、常時展開されていたソレとは明らかに違う、戦略核の直撃すら余裕で防ぐ超高密度多重防壁である。

 

これに加え、魔法で無理のない限界まで身体能力を上げる。

 

更には探索魔法で周囲を確認、ここが外界と隔離された約半径2kmの人工フィールドとの確認まで行う、そこまでしてようやく勇真は声の方に身体を向けた。

 

魔法で強化された視界に映るのは見覚えがある白髪の男、更に二メートルはある大男に、黒髪黒メガネの魔術師の様な男……そして、聖なる槍を担ぎ、学生服の上に漢服を着た男だった。

 

 

「……どちら様ですか?」

 

勇真はルミネアだけにさらなる防御魔法を掛けると、魔法で声を大きくして眼下の四人の男に問いかけた。

 

「はじめまして、俺は曹操、と名乗っているものだ」

 

四人を代表してか、同じく魔法で声を大きくして、槍持の男ーー曹操が勇真を見上げ笑顔で言った。曹操はただ槍を担いでいだけなのにまるで隙がない、勇真は警戒心を高めた。

 

「それで、三国志の曹操さんが俺たちに何か用ですか?」

 

「いや、なに勧誘だよ、たまたま用があって京都に来たのだが、ウチのジークフリートが君を見つけてね、是非勧誘したいと言ってきたのさ」

 

勇真は視線を白髪の男ーージークフリートに向ける。

 

「やあ、改めて言うけど久しぶりだね、僕のことを覚えているかい?」

 

「魔剣使いのジークフリート」

 

「正解、嬉しいね、覚えててくれたとは、嬉しいついでに君の名前を教えてくれるかい?」

 

「高橋です」

 

下手に本名を教えて呪われては堪らない。勇真はナチュラルに嘘の名前を言った。

 

「そうか、よろしく宮藤勇真」

「…………」

 

知ってるなら聞くなよ、そう思い、勇真はジークフリートを睨みつけた。

 

「で、勧誘とはどういう事ですか? 宗教はお断りですよ」

 

「去年、言っただろ? 一緒に英雄になろうって、今日はそのリベンジ、ついでに僕の魔剣達を返してくれると助かるんだけど」

 

「じゃあ、去年と同じ事を言いますね、俺は英雄になんか興味がない、他を渡ってくれ、あと魔剣は売ったから返せません」

 

「……え? 冗談かい?」

 

「そう聞こえますか?」

 

「…………」

 

「へっ! 売られてやんの、まあ、お前が負けんのがわりいんだよ」

 

呆然しているジークフリートを大男が鼻で笑った。

 

「……うるさいよヘラクレス」

 

「お、やるか?」

 

勇真を置いてジークフリートとヘラクレスが険悪な雰囲気を醸し出す。

 

「二人とも落ち着け、敵前だぞ」

 

それを魔術師の男が仲裁した。

 

「ハッ、ゲオルクは心配性だっての、相手は2人……いや、1人はお荷物みたいだから実質1人だろ、敵になるにしろ俺たちが負けるわけねぇだろ」

 

「いや、この結界に取り込んでからの彼の反応は素晴らしいものがある、あまり油断はしないで行こう、ゲオルク、彼の魔法使いとしての力量はどの程度か分かるか?」

 

「見たことない術式だが、今、分かっているだけでも相当だぞ、飛翔術、魔術防壁、探索魔法、身体能力強化、魔法隠蔽術式、そしてそれらの発動スピード、どれを取っても凄まじい、特に魔術防壁と身体能力強化は完全にこちらを凌駕している、あと会話に混ぜて呪詛を飛ばしているな、弱いモノだが聞き続けると身体が麻痺していく効果が有るようだ、こちらでレジストしているが、一応気をつけろ」

 

ゲオルクの言葉にマジかよ! と自身の身体をペタペタ触るヘラクレス。

そんな状況の中、勇真は苦虫を噛み潰したような顔をした。

 

こちらの魔法が殆ど全て見抜かれている、特にさり気なく会話に混ぜた呪詛に気付かれレジストされたのがヤバイ、この時点で得意分野の違いはあるだろうが、敵の魔法使いの力量が魔法力を除いて勇真に近いのは確定だったからだ。

 

その上、このフィールド内で何度か転移魔法を試したが発動しない、いや、正確にはフィールド外に出る転移が使えない状況だった。

 

つまり退路がない。

 

「勇真さん」

 

その声に勇真は抱きしめているルミネアの顔を見る、彼女は不安そうにずっと勇真を見つめていた。

 

それを見て、仕方がないと勇真は腹をくくった。

 

 

 

「分かりました、仲間になりましょう」

 

「分かった、歓迎するよ。取り敢えず君と彼女に爆弾付きの首輪をつけるから魔法障壁を全て解除して降りて来てくれ」

 

「……おかしいですね、あなた方は仲間にそんな危険物をつけるのですか?」

 

「顔に『暫くしたら裏切ります』と書いてあるからね」

 

「あれ、俺そんな酷い顔してます? カッコイイってよく言われるんですが(ルミネアに)」

 

「ハハハ、悪くない顔立ちだよ、まあ、顔に書いてあるうんぬんは冗談、君は一度ジークフリートの勧誘を断ってるからね、ついでに洗脳魔法も効かなそうだから物理的に縛っておきたいだけさ」

 

「なるほど……はぁ、分かりましたよ、あ、所で皆さんは戸籍って持ってます?」

 

「ん? 当然持っているが」

 

「ああ、本当ですか? うわー面倒くさいなぁ」

 

 

 

そう言って勇真は頭を掻くと、下ろす動作に連動させ何気ない仕草で右手を曹操達に向けた。

 

「本当、事後処理が面倒くさいなぁ」

 

 

凄まじい衝撃がフィールド全体を揺らした。

 

不意打ち気味に勇真が放った重力魔法が曹操達を拘束する。

 

とはいえ相手は曲がりなりにも英雄を目指すもの達、そう簡単には行かない、いち早く反応したゲオルクが全員が押し潰される前に、魔法と黒い霧で重力波を無効化する。

 

「ぐぅ」

 

だが、魔法の威力にゲオルクは呻く、どうやら技量は近くとも魔法力は隔絶しているらしい。

 

ならば押し込む、勇真は更なる魔法力を重力魔法に込めようとした、次の瞬間、拘束していた四人の内、ゲオルクを除いた三人が消える。

 

「ッ! 転移か!」

 

瞬時に探索魔法で三人を探す、それと同時に勇真とルミネアを囲み様に曹操、ジークフリート、ヘラクレスが黒い霧を纏って現れ、それぞれ槍を、剣をそして拳を勇真とルミネアに叩き込もうとして来た。

これに対し、勇真も瞬時にルミネアを連れて転移、三人の頭上を取ると、ルミネアを重力魔法で浮かべて両手をフリーに、両掌から怒涛の魔術爆撃を繰り出した。

 

逃げ場のない広範囲に渡り、毒と治癒阻害の呪詛を込めた多種多様の属性魔法が雨あられと降り注ぐ、一撃もらうだけでも曹操達には致命的だ、いかに人間離れしていようが人間は人間、毒には弱い。

 

しかし、この魔法も防がれてしまう。黒い霧が曹操達を覆ったかと思えば、勇真の攻撃を完全にシャットアウト、一撃たりとも当てる事は叶わなかった。

 

「本当に面倒くさいなぁ もう!」

 

生半可な攻撃では魔法と霧の防御を抜けないと悟った勇真は右掌に炎熱球を作り出すとそこに猛烈な勢いで魔法力を込め始めた。

 

「ヤバイ! それを撃たせるなッ!」

 

ゲオルクが顔を青くして叫ぶ、彼には分かったのだろう、炎熱球に込められた魔法力の強大さが、そしてその一撃の常軌を逸した破壊力が。

 

しかし、分かったところで攻撃を阻止できるかは別、曹操、ヘラクレス、ジークフリートが時間差をつけてゲオルクの転移魔法で勇真を追う、だが、勇真自身も転移で逃げるのだ、魔法完成まで逃げるのは難しくない。

 

そして何度目かの転移中に魔法は完成、勇真はデタラメに転移し、狙いを乱すと、初めて敵から逃げるのではなく、近づく為に転移を発動した。

 

 

 

転移先は勿論、ゲオルクだ。

 

理由は今の所、最も面倒なのが彼だから、そしておそらくこのフィールドを作り維持しているのも……故に勇真がゲオルクを狙うのは当然の事である。

 

 

だが、その動きと狙いは当然、故に読まれる。

 

ゲオルクは勇真が至近に転移した瞬間、黒い霧ーー神滅具『絶霧』(ディメンション・ロスト)で盾を作り出しながら転移で回避。先の勇真で分かるように転移合戦は逃げる方が有利、故にこの攻撃は空を切る。

 

そして、そんな事は当然、勇真も分かっていた。

 

次の瞬間、空を切った “炎熱球” が転移する、場所は勇真の背後、隙をついて攻撃しようとしたジークフリートとヘラクレスの間である。

「ッ!?」

 

「ヤベエッ!?」

 

焦った所でもう遅い、ゲオルクが転移で二人を救おうとするが、それを勇真は妨害、魔法力を込めに込めた炎熱球が炸裂した。

 

 

 

 

鼓膜を破る轟音と共にフィールド内に閃光が瞬いた。

 

朱炎龍すら焼き殺す、焼滅必至の大魔法、一切合切を焼き尽くし空間すらも歪ませる、絶大威力の大炎撃、そのあまりの熱量に地面は残らず融解した。

 

そして、この一撃でフィールド内の温度は何処もかしこも2000℃を超える灼熱地獄と化していた。

 

こんな空間で生きていられる人間は存在しない。

 

 

 

魔法なしで、生きていられる人間など存在しない。

 

 

勇真は自身の一撃を魔法障壁で無傷で耐えると、障壁内を魔法で作り出した酸素で満たした。

 

勇真は視線を右に移す、そこには浮遊する四人、恐ろしい事に、この一撃で四人は全員生きていた。

 

とは言え、ジークフリートとヘラクレスは絶霧で防ぎきれず転移での回収も遅れた様で大火傷、残り二人は無傷だが、魔法を使えないらしい曹操はゲオルクが作った防御結界から一歩も出れず、肝心のゲオルクは結界維持が限界らしい。

 

つまり、これで。

 

「終わりだな」

 

勇真が両手を振るう、すると融解した地面が意志を持ったかのように動き出し、巨大なマグマの津波となって曹操達を防御フィールドごと飲み込んだ。

曹操達を飲み込んだマグマは不自然に宙に浮くと数十メートルの球体となって浮遊し続けている。

 

それは曹操達を逃さない為のマグマの牢獄だった。

 

「ルミネア、もうすぐ終わるから、あと少し頑張ってね」

 

勇真は隣に浮遊するルミネアに優しく話し掛けた。

 

「……はい、大丈夫です」

 

そうは言うがルミネアの顔色は今にも死にそうなほど悪い。

 

勇真はルミネアに自身に掛ける以上の防御魔法を掛けている、故に彼女がこのフィールドにより影響を受けるはずがない。

 

しかし、だからと言ってこんな灼熱地獄の様な風景は人間には受け入れ難いのだ、それはまた、この地獄を作り出した本人にも言える事。

 

故に、さっさと終わらせる。

 

 

勇真が右手をマグマの牢獄に向かい突き出した。右手に集まるのは天地を焦がす裁きの雷光、先の大炎撃をも上回る、勇真が使う二番目に高い威力の大魔法だった。

 

「……今日は疲れたから観光は中止だね」

 

 

勇真はため息混じりにそう呟くと、右手の雷光の解放した。

 

 

 

 




勝ったッ! 第3部完!
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