リリカルなのはー聖王と魔弾の射手ー   作:ハマトラ

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魔弾の狂信者編終了なのです!




第50話 キリエ・グラシア

メテオラをまともに受けて地に伏す壊姫に穹は背を向けて立ち去ろうとすると、壊姫が突如起き上がり、穹に飛び掛かってきた。

しかし、穹には想定内の出来事だった。

 

穹「ハウンド(追尾弾)」

 

穹は向き直る事無く、頭上に大きな黒いキューブを出現させる。キューブは無数に分割して上下左右から放物線を描きながら襲い掛かる。

そして、全身に当たり、着弾した箇所に六角柱の重石が付けられた。"鉛弾(レッドバレット)"、穹の持つバインドで重石で相手の動きを封じるもの。

穹は鉛弾をシューターに応用する術を模索して、この鉛弾追尾弾(レッドバレットハウンド)を編み出した。

実践で使うのは初めてだったが結果は目の前で全身に重石を付けられて動けず地面に伏しながらもがく壊姫見る限り成功だったようだ。

 

壊姫「ぐっ!」

 

穹「これ以上傷付けさせないでくれ。これからもっと酷い事をするんだから」

 

その時、穹のすぐ後ろに誰かが降り立った。黒い翼に白いバリアジャケット、そして杖と本を持った女性だった。

壊姫は女性を見るなり殺意を込めて睨みつける、その女性こそ壊姫がヴィヴィオの次に殺したかった女性、八神はやてだったからだ。

 

はやて「穹、この子が?」

 

穹「ああ、頼んだよ。母さん」

 

壊姫「な、何を・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

穹「今から・・・・・・・お前の記憶を抹消する」

 

壊姫「っ!!!!!!!!!!!!!!」

 

穹「母さんの忘却魔法で、お前があの娼館に連れて行かれる前までの記憶を消す。お前は普通の女の子に戻れる」

 

壊姫「イヤ!!!!貴方との出会いを!貴方との運命的出会いを忘れるくらいなら死んだ方がいい!!私を殺して魔弾!!貴方にならこの命捧げてもいい!!!!」

 

穹「俺はもう殺し屋じゃない。そしてお前も、本当は"そっち"にいるべきじゃない。さぁ、日常に帰るんだ」

 

壊姫「イヤ!!やめーーーーーーー」

 

はやて「忘却の意、其は流れ落ちる雫の様に!"メモリーリーク"」

 

壊姫の頭の中で雫が滴り落ちて波紋が浮かぶ。やがて壊姫は崩れる様に眠りについた。

 

ホルク『壊姫のバイタルは安定している。拘束を解いても問題ないだろう』

 

穹「さて、母さん、こいつの事任せていいの?」

 

はやて「心配せんで、引取先に心当たりあるしな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???「・・・・・・・・・・ん」

 

朝日が目に入り、壊姫だった少女は目を覚ます。うっすらと見えて来たのは、白い天井と朝日が差し込む窓、そして傍らに座る女性の姿だった。

 

???「目が覚めましたか?」

 

???「ここは・・・・・・・・・私は一体・・・・・・」

 

???「貴女はご両親を失ったショックで1年程眠っていたのですよ。身寄りも無いと聞きましたので、私が引き取りました。貴女のお名前は?」

 

キリエ「・・・・・・・・・キリエ」

 

カリム「キリエですか、私はカリム。カリム・グラシアと申します。この聖王教会の教会騎士団に属しています。戸籍上は、貴女の親代わりということになりますね」

 

キリエ「親、代わり?」

 

カリム「ええ、"キリエ・グラシア"。それが今日からの貴女の名前になります」

 

キリエは呆然となりながら、窓の外を見る。差し込む朝日の中どこからか教会の鐘が響き、聖歌を歌う声が聞こえて来る。

 

キリエ「・・・・・・お父さんとお母さん、本当に死んじゃったんですね」

 

それは少女を襲った突然の悲劇だった。休日を利用してクラナガンの大型ショッピングモールに家族で買い物に出掛けた時だった。

何気ない帰り道、信号無視をしたトレーラーが横断歩道を歩く通行人を撥ねた。少女は咄嗟に父が突き飛ばしたおかげで軽傷で済んだ。

しかし両親はトレーラーに撥ねられて、数m先で血溜まりを作って死んでいた。即死だった。

それは当時9歳の少女には受け入れ難い事だろう。

トレーラーの運転手は逮捕されたが少女に残ったのは大量の損害賠償と両親の遺した貯金、そして、からっぽになった家だけだった。

常に孤独に押し潰され続けた少女の心は壊れてしまった。カリムはキリエの病んでしまった心を理解して、彼女の小さな手をとった。

 

カリム「貴女の心を完全に理解しようなんて思い上がりはありません。けど、貴女の傍に寄り添う事は出来ます。だから、今は我慢せず、泣いていいんですよ」

 

キリエ「・・・・・・・私はもう涙を流す事は無いって思っていました。なのに・・・・・・・・もう、涙も枯れたと思ってたのに、涙が・・・・・」

 

カリムの暖かい温もりを受けて、少女は涙を流す。カリムは泣くキリエを優しく抱きしめて、宥めた。

こうして、裏で破壊の限りを尽くし、魔弾の射手を狂信し狂愛した破壊の姫は、新たな家族に優しく迎え入れられて日常に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてここにも、日常に戻った少年が一人ーーーーーーー

 

 

 

 

穹「行ってきます!!」

 

はやて「いってらっしゃい!」

 

シャマル「気をつけてね~」

 

非番の母と姉に見送られ、穹はいつもの様に登校した。

 

穹「ホルク、インターミドルまで後どれくらいだっけ?」

 

ホルク『後一ヶ月と24日といったところだな』

 

ホルクからインターミドルまでの期間を聞いた穹がいつもの通学路を歩いていると、いつもの4人が待っていた。

 

リオ「あ、ヤッホー穹!」

 

アインハルト「穹さん、おはようございます」

 

コロナ「穹君、おはよう!」

 

ヴィヴィオ「おはよう!穹君!!」

 

いつもの何気ない日常、取り戻してそれがどれ程かけがえのないものなのかを実感した穹は笑みを浮かべながら4人の元へ歩いていく。

 

 

 

 

 

 

 

穹「おはよう、皆」

 

近づく初の舞台に心躍らせながら、少年はまた日常に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーー魔弾の狂信者編、END

 

 

 

 

 




次回からインターミドル編に入って行きます!



って事でfate/go的予告を
内山昂輝ボイスをイメージしてお楽しみ下さい!




新章、開幕!

幾多の苦難を乗り越えて、少年は初の魔法競技へ

友との対決の約束を胸に、少年は舞台で引き金を引く!

リリカルなのはー聖王と魔弾の射手ー、新章「インターミドルチャンピオンシップ」

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