第51話 八神穹⑩
早朝、海岸沿いを一人の少年が走っている。八神穹、時空管理局の司令、八神はやての息子で元殺し屋でもある。
春先まで裏社会の冷酷な殺し屋と畏れられた少年は、過去を感じさせぬ真っすぐな瞳をしていた。
日課のジョギングを済ませた穹がいつも通り帰宅すると、朝食のいい匂いが漂って来る。リビングに行くと、母、八神はやてが朝食の準備をしていた。
傍らで簀巻きにされ逆さ吊りにされている姉のシャマルを見て苦笑するとはやてがフライパン片手に顔を出した。
穹「おはよう、母さん」
はやて「おはよう穹、もうすぐ朝ごはん出来るからシャワー浴びといで~」
はやてに促されて浴室でシャワーを浴びていると、右手中指の指輪が光り、額に宝石の着いた鷹、ホルクが現れる。
ホルク『穹、今日は放課後特に予定も無いがどうする?』
穹「そうだな、書店でも寄ってみるか。課題の近接戦闘のヒントが見つかるかもしれないし」
穹のスタイルは全距離対応型射撃術(ガンスリンガー)、ハンドガンからスナイパーライフルまで多種多様な銃器を巧みに操りその実力は同年代でも群を抜いていた。
だが、そんな穹にも弱点がある。近距離(クロスレンジ)、特に近接格闘に持ち込まれると圧倒的に不利になる事だ。
今までは距離を詰められる前に終わらせていたので問題無かったが、インターミドルとなるとそうはいかなくなる。
ノーヴェの様な生粋のインファイターと当たってしまえば容易く距離を詰められてしまうだろう。
穹「訓練はいつも通り、そこに近接格闘への対処、間に合うかはともかく、せめてまともに戦えるレベルにはしたいな」
浴室を出て、自室で着替えてリビングに戻り、いつも通り朝食を取る。非番のヴィータと夜勤明けのシグナムとアギトは今も寝ており、ザフィーラは門下生の朝食片手に訓練メニューのチェックを行っている。
はやて「そうだ穹、アインハルトちゃんにデバイス明日には出来上がるからって伝えといてくれる?」
穹「解った。先輩のデバイスか、どんな感じに仕上がったの?」
はやて「それは秘密や♪」
遊び心全開の笑みに若干の不安過ぎる。
穹「そういえば、リイン姉さんは?」
はやて「今日は早めに終わらせる業務があるからもう出掛けたで」
「曹長、この書類の確認お願いします!」
リイン「は、はいです!」
「曹長、クラナガンの防犯協会からの要請ですが・・・・・」
リイン「それは警邏隊に頼んであります!」
「曹長!青髭と名乗るヒステリックな男性からまた犯行声明が・・・・・・・」
リイン「またですか!?近隣住民に避難勧告の後オルレアン小隊に事態の収拾を・・・・」
「わたわたしてる曹長、可愛いな~」
「あんな小さな体で頑張ってる姿は癒されるよな~」
曹長、リインフォース・ツヴァイは、局員から和まれながらも次々舞い込む案件と格闘していた。
穹は朝食を済ませて、いつもの通学路を歩いていた。
学院の近くに来たところでいつもの面子と合流する。ルーフェン伝来の春光拳と二つの変換資質を持つリオ・ウェズリー、ゴーレム創成を得意としクラストップの知性を持つコロナ・ティミル、覇王の末裔で古代ベルカから受け継がれて来た覇王流の使い手のアインハルト・ストラトス、そして聖王のクローンでいつも明るく上級生からも人気の高い穹の最初の友人、高町ヴィヴィオだ。
軽い挨拶を交わして一緒に登校する。雑談を交えながらいつもの通学路を歩いて行く。穹にとって今では当たり前のようでかけがえのない日常だった。
途中で中等部のアインハルトと別れて自分の教室に入るとクラスメイトと軽い挨拶を交わして席に着く。
クラスでの評判は良く、特に女子からはとても人気が高い。
「八神君、昨日シューターのコツ教えてくれてありがとう!」
穹「ああ、大した事は教えられなかったけど、役に立ったならよかった」
「八神~ノート貸してくれ~昨日出された課題が~」
穹「そういうのはやり忘れたお前が悪いんだろう・・・・・・・・仕方ないな、今回だけだからな!」
整った顔立ちで気配りが出来て、文武両道、後たまにみせるツンデレに射抜かれた女子は多い。ちなみに穹自身はその事に全く気づいていなかった。
放課後、穹は行きつけの書店に寄っていた。周りには高校生が多いが、特に気後れする事なく武術関連の本を探す。
穹「色々あるな、『ルーフェン流派全集』、『近代術式ストライクアーツ指南書』、『誰でも出来るニの打ち要らず』、『聖女監修!!正しい竜の殴り方』、『物理的御仏の加護の全て』・・・・・・・物理的ってなんだよ・・・・・」
??「おや、その制服はst.ヒルデの・・・・・・・・」
変なタイトルにツッコミを入れていると、後ろから小柄な眼鏡をかけた女子高生が声をかけて来た。
穹はその女子高生に見覚えがあった。最も画面越しでしか見た事は無いので本人との面識は無い。
穹「もしかして・・・・・・・・エルス・タスミン選手!?インターミドル上位選手の!!」
インターミドル上位選手で屈指のバインドの使い手として知られているエルス・タスミンが穹の目の前に立っていた。
裏話 穹の私服選び
まだ穹が八神家に来て間もない頃、一つの問題が発生していた。
穹の私服が、今着ているボロボロのコートとシャツとズボンだけということだった。
そしてそこから色々案が飛び交い、穹をベースにしたコーディネート対決にまで発展してしまった。
no.1八神はやて
はやてのお下がりのパーカー(A'sで着ていた)+黒のジーパン
穹「結構いいかも」
はやて「丁度昔の服残ってて良かったわ~」
no.2シグナム&アギト
ウェイト付き胴着上下
アギト「大丈夫か?」
穹「シグナム姉さん?これ結構重いんだけど・・・・・」
シグナム「安心しろ、その内慣れる。その時には・・・・・・」
はやて「アウト!」
アギト「だから止めとけって言ったのに・・・」
no.3シャマル
はやての着ていた小学生時代の制服
某天草の衣装
某円卓の妖弦使いの衣装
穹「シャマル姉さん?なんで三つも!?しかもこれ女物だし!!」
シャマル「大丈夫よ!穹君似合ってるから・・・・・ハァハァ」
はやて「シャマル、ちょっと裏行こうか?」
バートリハロウィンエルジェーベト!! ギャアアアアアアアア!ミミガ、ミミガァアアアアアア!!
ザフィーラは門下生指導の為不参加
no.4ヴィータ&リイン
黒の猫耳パーカー+白シャツ+灰色のジーパン
ヴィータ「私のはリインと選んで来たぜ!」
リイン「苦労したです~」
穹「ん、いい感じだけどなんで猫耳?」
リイン「穹君猫さんみたいだからです~」
結果
採用
はやてコーディネート
ヴィータ&リインコーディネート
不採用
シグナム&アギトコーディネート
論外
シャマル