ハイスクールD×D 〜イレギュラーの乱入〜 作:しおから
「あぁああ・・・・・・
おっぱい揉みてえ・・・・・」
そう呟く俺の言葉は、虚しく空へと消えていく。
俺たちは今、部活中の女の子を観察するべくグラウンドへと出ている。
ふわりと頬を撫でるそよ風と共に、耳に入るランニングをしている女子の掛け声。
あれはテニス部か、はたまた陸上部か。
「兵藤一誠君に同意。」
空へ拳を掲げながら、俺の隣にいる坊主頭の男がそう返す。
そう言うと思ったぜ。
「言うな。虚しくなる。」
今度は、反対側にいる眼鏡をかけた男が呟いた。
眼鏡の位置を直しながら格好をつけてはいるが、こいつも俺たちと同じ変態だ。
所謂むっつりというものだろうか。
いや、エロを隠そうとしてはいないからむっつりではない・・・・・のか?
まあ、そんなことはどうでもいいか。
こいつらは俺の悪友の松田と元浜だ。
ことエロいことに関しては、俺かそれ以上に情熱的だ。
俺もエロいことなら誰にも負けない自信はあるつもりだが。
それにしても・・・・
「松田、元浜。
どうして俺たちはこの学校に入学した?」
俺の問いかけに、2人のうちの眼鏡の方、元浜が答える。
「我が私立
よって、圧倒的に女子生徒が多く、更に海外からの美人留学生も多数!
そのため、男子は希少・・・・すなわち黙っていてもモテモテ!!
まさに入れ食い!!!」
「これ、即ちハーレム!」
元浜に同調するように声高く叫ぶ俺。
松田も同じ気持ちだったらしく、ポーズをつけて叫ぶ。
「おうよ!
俺たちを待っているのは、おっぱい溢れるリア充ライフ!」
俺もめくるめく桃色の楽園を垣間見ることができるのか・・・・・
と思っていた。
そう思って疑わなかった
しかし・・・・・・
「の予定が・・・・・
彼女すらできず、入学二年目の春を迎えちまったわけだが・・・・・・」
人生そう甘くないということか・・・・
ああ、俺もハーレム王になれると思って疑わなかった受験勉強の日々よ・・・・・
どうしてこうなってしまうのか。
「言うな、虚しくなる・・・・・」
力なく元浜が言う。
松田も元浜も、先ほどの元気はかけらも残っていない。
馬鹿め、そんなことだから彼女ができないんだ!
「諦めたら負けだ、チャンスはまだある!」
そうだ、俺たちだって負けていない。
チャンスはまだある。
だってそんなの、あまりにも悲しいじゃないか!!
「「「キャー!」」」
突然、女子たちの黄色い悲鳴が聞こえる。
なんだなんだと見てみると、そこには・・・・・・
「木場くーん!この後どうするの?」
「ねえ、一緒にカラオケ行こう?
いいでしょ?」
あれは俺たちと同じ、2年のイケメン野郎か。
「ごめんね、この後は部活があるんだ。」
「「「えぇー・・・・・」」」
「ざんねん・・・」
名残惜しそうに落胆の声を上げる女子たち。
「せっかく誘ってくれたのに、本当にごめん。」
キラキラした爽やかフェイスでそう言って、どこかへと歩いていくイケメン。
女子たちも、その様子を見て話し出す。
ここからでもかっこいい、優しいなんて単語が聞こえてくる。
くーっ!!そんなにイケメンが好きか!
「2年C組、木場祐斗。
全女子の約半分の憧れを総取りしている、」
「我々、全男子生徒の敵!」
要らぬ解説をありがとう、松田、元浜。
かくいう俺も、あのイケメンはいけ好かない。
「くっそぉぉお!!
ちょっと顔がよくてかなり頭が良くて結構性格がいいだけで入れ食いしやがってええ!」
こうして上げると欠点なんてまるでない、女子が食いつく訳だ。
あれで彼女がいるんんて噂も聞いたことがない。
同じ男として許せん、悔しい・・・・!!
「言うな、虚しくなる・・・・」
松田も涙を流しながらの返答だ。
「ああ、世の中不公平だよなあ・・・・」
どうしてもそう思ってしまう。
肩を落としながらボソリと呟く。
くっそお、俺だってあんなモテモテライフを夢見ていたのに・・・・・・
「おっと、そろそろ時間だ」
「ん?どこ行くんだよ?」
急にどこかへと行こうとする松田に待ったをかける。
まだまだ非リアトークに花を咲かせようと思っていたのに。
ま、花なんていうけど、女子がいないんじゃあむさ苦しいだけだろうけどな。
言っててやっぱり虚しくなってきた・・・・・
松田は俺の声を聞くと、こちらを振り向き
「ふふ・・・・・聞いて驚けよ?」
「はあ?」
だらしない顔になりながらもサムズアップをした。
どうした、いいエロ本でも手に入ったのか?
▽
「村山の胸、マジデケェ・・・・・!!」
「80、70、81。」
「片瀬、いい足してんなあ・・・・!」
「78、65、79。」
あれからどこへ行ったかと言えば、答えは剣道部の使う更衣室の裏だ。
二人で壁に空いた穴を一心不乱に覗き込んでいる。
ちなみに、元浜の言う数字は女の子のスリーサイズだ。
なんでも、メガネをかけるとなんとなくわかるらしい。
とことんエロに忠実だな、お前も。
「体育の時間、偶然見つけちまってさ!」
「松田、グッジョブ!」
「くぉぉおら、俺にも見せろ!
壁に空いた穴は小さく、松田と元浜が覗くと俺の覗くスペースはもう残っていなかった。
俺は松田の突き出しているケツを引っ張り引きはがそうとするが、こんなときだけに力を発揮する二人はびくともしない。
俺は野郎のケツなんぞ見たくないんだよ!
「オイ!!いい加減にしろよ!」
じれったく、大声を出して怒鳴ると、二人とも脱兎のごとく逃げていった。
急に引っ張っていたものがなくなったので、盛大に尻餅をついてしまう。
なんだったんだよ。
ま、これで覗けるわけだ。
俺は走っていった二人を訝しみながらも、更衣室を覗く。
「あれ、誰もいない。
松田、元浜!お前らが変わってくれないからこんなことに・・・・・」
「また、あんたら?」
背後からお声がかかる。
更衣室に誰もいないと思ったら、こっちに来てたんですね。
あははは、これを予感して松田と元浜は逃げ出したのか。
やっべえ・・・・・
「ちょ、待って・・・・」
まあ勿論、待ってくれるはずもなく竹刀が振り上げられて、
「「「エロ兵藤!!」」」
俺に向かって振り下ろされる。
慈悲はないのか慈悲は!!
「ぎゃああああ!!!」
今の本気だったな!?
当たったら骨折じゃすまなさそうなんだけど!!
すんでのところで躱し、剣道部の部員に背を向けて走り出す。
「逃げた!」
「追うのよ!今日という今日は逃さないわ!」
不意をついて逃げ出したはいいものの、さすがは運動部だ。
みるみると差が縮まっていく。
剣道部員は袴なのになんでこんなに早いんだ!?
「どうせなら、物理的じゃなくて心理的に女の子に追いかけられたいだけの人生だったー!!」
俺の叫びは、やはり虚しく空へと消えていった。
「どうしたんだよ、そんな大声出して。」
そして、とうとう捕まってしまうかと思ったその時、俺の親友の声が聞こえた。
「聖!」
俺に声をかけたのは、
俺と一緒に駒王学園へと入った中学からの付き合いだ。
悔しいがかなりのイケメンで、木場とコイツで女子の人気を総取りしている。
しかし聖のやつ、いつもよりも口角が上がっている。
俺が追いかけられるのを見て楽しんでるな・・・・・
きっと俺に話しかけたのも、面白そうだからという理由に違いない。
「あっ、聖くん・・・・・」
俺を追っていた剣道部の女子たちが、聖を見て止まる。
ちょっと頬を赤く染めている。
さすが、女子の人気を木場とで半分こしているだけはある。
やはり顔か・・・・
「剣道部だったか?部活ご苦労さん。
これからも頑張れよ、運動少女。」
そう言うと、聖はにこりと笑い自然な動作で先頭にいた2人の女子の頭をぽんぽんと撫でた。
その瞬間、ボンっと効果音が聞こえてきそうな勢いで顔を真っ赤になった。
「じゃ、じゃあまたね、乃至くん。」
撫でられた女子部員たちは、赤くなった顔を隠すようにそそくさと立ち去っていった。
走っていく女子達の会話のずるーいだとか、どうだった?だとか、バッチリ聞こえてるからな。
だけど俺は知っている。
俺をからかう時の笑みとはまた違うさっきの笑みは、女の子をからかっているだけの作り笑いだ。
聖は、この笑い方が女子ウケがいいことを知っている上で使っている。
性格悪ぃ・・・
「よう兵藤、お前今何考えてた?」
がしり、と俺の肩に手が回る。
見ると聖が爽やかないい笑顔をしながら拳を握りしめている。
お、俺は知っている・・・・・・・・一見普通に見えるこの笑顔は・・・・
怒っている時の笑顔だ・・・・・!!!