架空艦になった男   作:緑小灰

1 / 11
まずはプロローグ。


1話

突然の事で申し訳ない。

非常に叫び出したい気分なんだが、それが出来ないので俺の回想に付き合って欲しい。

まず、俺の名前が思い出せないんだ。

元々、俺は人間だったようなんだが、気づけば艦艇の上で目が覚めた。

そこで小さな人……妖精(自称)がペチャクチャと口早に説明をして、「まぁとりあえず動かしてみてよ。」と、そう言ってきたので視界の端にある大きな主砲を頭の中で旋回させてみる。

すると、イメージ通りに動いた。

どうやら本当に俺は艦娘の男バージョンらしい。

胸は無いし、アレもついてる。気のせいでは無い。

第二次大戦中の軍艦を中心とした、艦艇の姿を模して、その制御をする人々。

元々は船霊……つまり、当時の艦艇に宿った魂が大本になっていてそれが"艦娘"になるとされる。

何故艦"娘"なのか。

それには諸説あるらしいが、艦艇に付けた名や艦艇自体に対するイメージが女性的であった為ってのが主流らしい。

だからか、例として、ドイツの艦娘は男性の名がついていても女性型が多いらしく、日本に於いては女性型しか居ない。男性型がほぼいない……だから艦娘らしい。

なんで俺が艦娘になったのか、どうして男性型の艦娘なのか、そもそも何の艦艇なのか……。

わからない事だらけで泣けてくる。

 

更に泣きたい事に、今俺は命の危険に晒されている。

目の前に居る白髪?銀髪?の少女が乗っていた艦艇が砲をこちらに向けているんだ。

問題は、その少女は俺に抱きついてクンカクンカスーハースーハーしてる訳だ。

普通、喜ぶだろう?

砲が向いている以上それができない。

多分動けば撃たれて死ぬ。

先ほどまでこの艦艇に乗っていた少女も、艦娘なのだろうか。

仮に艦娘であっても、何で俺のもとへやってきて、クンカクンカスーハースーハーしているのか。

気になるは気になるが、下手に動けない以上、ある程度受け答えを考える必要がある。

しっとりした冷や汗を静かに流しながらシュミレーションする。

Q:貴方の名前は?

A:わからん。

あれ?終わった。

所属不明正体不明の男の話をどうやってしろってんだ。

しかもそれが自分なんだぜ。泣ける。

「……どうしたの?」

少女が顔をこちらに向ける。

俺より5cm程度低い身長の少女。俺がそんなに身長は大きくないから、155くらいだろう。

「いや、どうしたのって言われても俺がどうしたのって感じだよ……。」

つい、ため息が出る。

すると少女は再び抱きついてくる。

身長の割に豊かな胸が……じゃなくて。

会話だ、そう会話だ。俺たちに必要なのは会話だったんだ。

「とりあえず、離れてくれ。俺は今理解が色々と追い付いてないんだ。状況整理もしたいし、会話をしてくれ。」

「……わかった。」

少女は不承不承俺から離れて、ペタリと甲板の上に座った。

 

「えーとだ、まず、俺は自分の名前がわかってないからお前の名前から聞いてもいいか?」

少女はコクリと頷くと、話始めた。

「……私も名前はわからない。だけど、H42っていう計画番号なのは覚えてる。」

H42……そう聞くと、俺の頭に情報が流れ込んできた。

第二次世界大戦中に計画された、ドイツの軍艦建造計画でビスマルク級を踏襲、大幅に強化した戦艦の計画だ。

「ふーん……そのH42が、どうしてこっちに来て俺に抱きついてクンカクンカスーハースーハーしてたんだ?」

「……同じサイズの主砲だったから仲間かと思って。……でもそしたら格好いいのがいたから。……ちょっと嗅ぎたくなった。」

そいつはまた希有な性癖だこと。

同じサイズの主砲……この、さっき動かした主砲だろうか。

「この主砲……か?」

指差すと、少女は頷く。

「……"改19inch三連装砲"、50口径長48.26cmの大型主砲。」

「そいつは大和もビックリだな。」

確か大和砲は、45口径46cm砲だったはず。

一人苦笑していると、少女が言った。

「……貴方は、大和の弟じゃないの?」

…………は?

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。