架空艦になった男   作:緑小灰

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昔の話


番外編

周防と提督がドックまで行っていた一方その頃。

 

「それでは、部屋にご案内します。」

ミュリエルとポベーダは再び戦艦寮に来ていた。

唐突に、大和が思い出したように口を開く。

「そう言えば長門。特訓してたんじゃないの?」

「あぁ、さっき提督に入れ替えの件で私が召集されたら休憩になってな。この後少ししたらまた戻る。」

「なるほど。……ぬいぐるみは持っていくの?」

「まさか、置いて行くさ。綺麗に取って置きたいからな!」

ぬいぐるみをモフモフと玩ぶ長門。ポベーダがキラキラした目でぬいぐるみを見る。

「可愛い……。」

「だろう!だがやらんぞ!」

無駄に威勢の良い長門。これが彼女なのだろう。

「そうそう。」

龍鳳が口を挟む。

「現在は金剛型で2部屋、山城さんと長門さんで1部屋なので、大和さんと同室か1人部屋か選べますけど……。勿論、誰か来たら相部屋になりますが。」

「……周防と相部屋。」

「それは、出来ません。」

ミュリエルの要求は却下された。

なんでも周防は外のプレハブ小屋を仮の部屋として後々移転するとかなんとか。

まぁ、流石に男女同室は駄目なのだろう。

「……じゃあ1人。」

大和をチラッと見てミュリエルは言った。

「ポベーダさんはどうです?」

「誰か居た方が嬉しいなぁ……。」

「じゃあ大和お姉さんと一緒に居ようか!」

大和が自分を売り込む。ポベーダはそれで良いとの事。

「じゃあ、決まりですね。」

部屋に付き、それぞれ案内していった。

 

『……。』

紙に筆が乗らない。

ミュリエルは手に入れた自室で日記を書いていた。

ミュリエルは何時からか忘れたが、日記を書くようにしていた。

「……今日は色々あった。」

最初から整理するべきだろうか、と考えていたらドアがノックされた。

パタンとノートを閉じて応答する。

「……どうぞ。」

ガチャリと音を立てて開くドアの外には大和が立っていた。

「ミュリエルー。遊びに来たよー。」

「……。」

何しに来たんだこいつは、と考えるミュリエルを余所に、適当な椅子へと腰かける。

「……何の用?」

「そうつまらない反応しないでよぉ……。お義姉さんなんだよ?」

「……。」

遊びに来た、と言っていた。

おそらく、周防に絡むのも私に絡むのも兄弟姉妹として、友人としての感覚なのだろう。

それで私のアプローチを冗談めかされるのは困ったものだ。

大和が口を開く。

「単刀直入に聞こう!ミュリエルは周防のどこに惚れちゃったのかな?」

「……。」

一緒頭が真っ白になる。

まさか、この人の口からこの手の話が出るとは思わなかったのだ。

大和は固まる私を見て怪訝そうな顔をした。

「……私が恋愛話するのは意外かなぁ。そんなに年増に見える?」

「……確かに意外。」

「さらりと言わないで!傷つくから!」

「……一目惚れ、じゃ駄目なんですか?」

大和は頬を掻きながら、苦笑する。

「いやー1日2日そこらでしょ?艦娘になって周防を発見して合流してさ。」

大和は、そのまま続けた。

「二人が話してるとさ、まるで"昔から知っていたかのような仲の良さ"が見えたからさ。どうなのかなーって。」

「ッ!」

ミュリエルは髪の毛が逆立つような感覚に陥った。

「ちょっと気になっただけなんだけどさ。」

「……勘違いでしょう。」

気持ちを落ち着け、応答するミュリエル。

「そっか、じゃあ進展したら教えてねー。」

大和が立ち上がる。

「……教える気はありません。」

「冷たいよぉ……。」

大和を見送って、ミュリエルは机に再び向かった……。

 

結局、肝心の日記を忘れていたミュリエル。

「……初めから、か。」

仕方ないので、今日の頭から書く事にしよう。

 

『○月△日

予定通り、艦娘として目覚めた。

妖精さんから聞いてみればH42という艦艇らしい。

私は艦艇に疎いので正直なんでもいい。

早朝に目覚めた私は各システムのチェックをしながら適当にふらついてみる。

恐らく、その方向に彼がいるはずだからだ。

走り出して数十分、彼を見つけた。

予定に近い艦艇に乗り込んで見て、一瞬驚いた。

そのままの容貌だからだ。

思わずその芳しい匂いを存分に楽しんでしまった。

彼そのものの声で、彼と会話をしていくと、どうやら彼には記憶が無いようだった。

非常に残念だ。なんてことしてくれてるんだアイツは。

まぁ、再び会えただけでも幸運と思う事にした。

アプローチをかけてみたが、なんか効果が薄い。

いや、こんなんだったか?

まぁいい、彼が資料漁りをしている横で茶を啜った。

そこそこの味だ。

そう言えば第111号だ、この話を忘れていた。

私は生憎、日本の艦艇と言えば大和、長門、扶桑しか知らなかった。

巨艦なので、大和型かと聞いてみた。

漁った資料には、艦舷同様第111号、と書いてあっただけで明確に大和型と書いてあるのは無いらしい。

そう言えばアイツも、明確に大和型とは言ってない。

これは私の勘違いだったようだ。

そうそうそのあと、名前をつけるって話になったんだ。

彼がゲームのプレイヤーネームにしていた名前を幾つか上げてみると、"周防"に決まった。

彼は記憶は無いにしても、"何故その名前か"とは聞かなかったから、恐らく無意識に愛着が湧いたんだろう。

その後、私の名前を決めてくれた。

まさか、"ミュリエル"を出してくれるとは思わなかったので、とても喜ばしい。

彼にはもしかして、記憶を思い出す可能性があるんじゃないだろうか?

 

暫く航行し、深海棲艦とか言う敵と戦った。

はっきり言って、私たち二人の敵ではない。

その後、ポベーダとか言う娘を仲間にして、航行を続けた。

子供は可愛い。妹や娘がいたらこんな風に愛せるようになりたい。

だが、子供故に彼に構って貰えている。

羨ましく、妬ましい。

 

その後、一晩寝ずに航行した。

艦娘の体は不思議だ。日記を書いている今もそうだが、疲れは感じるが食べなくても寝なくても死なない。

逆に食べても排泄の必要は無いし、寝ても疲れが取れるのみで、休憩で済ましてしまっても特に問題はない。

だが、空腹や眠気が無い訳では無いので一先ずは人間同等の生活をする事にしよう。

 

話を戻そう。

ジェラルドとか言う航空母艦からの襲撃を受け、彼が戦闘に出た。

私はポベーダを連れて潜水艦の下へ向かった。

そして、ポベーダを置いて彼の援護に回った。

ジェット機やミサイルによる攻撃で周防は大きく損傷していた。

ジェラルドは、鎮守府の艦隊が来るのに気づいて撤退したようだ。

彼も無茶をする。折角の機会なのに死なれては困る。

もし……いや止めよう。態々嫌な発想をする事はない。

あのジェラルドとか言う奴、どうして私らを襲ったのだろう。

 

あとは鎮守府に着き、周防を修理してもらった。

彼がここに所属するというので私も所属する事にした。

どうやら、艦娘には一定の権利があり、着任から1ヶ月後に正式な艦娘用の人権が与えられるようだ。

あとは、労働組合のような、対提督用の抵抗権があるようだが……まぁこの鎮守府の提督には使う機会は無さそうだろう。

良く言って優しくユーモアがあり、悪く言ってポンコツのきらいがある。

仕事に関しては60/100点、人間性は80/100点と言った所だろう。

問題はあの秘書艦。龍鳳とやらだ。

彼女は時に優しく時に厳しくタイプで、仕事がかなりできるだろう。

鎮守府での影響力が高そうだ。

彼女は、たぶん敵に回さない方が良いだろう。

 

一番困るのは大和、周防の(義)姉にあたる。

彼女は変な所で鋭く、変な所で遣りづらい相手だ。

しかも、気に入られてしまったらしい。

私には彼がいれば十分なのに。

気にしなければいけない人が二人もいる。

あ、もう一人いた。伊19とか言う潜水艦だ。

あの娘は正直苦手だ。

ダル絡み、というのだろう。

やたら胸やら顔やらを触って撫でてくる。

 

とりあえずは今日はここまでにしよう。

これから退屈はしなさそうだが、面倒くさそうだ。』

「……と。」

とりあえず、起きた事と会った人を書いてみた。

……そろそろ、ドックから彼は帰って来ただろうか。司令室へ向かおう。

ミュリエルは部屋を出た。

これから何度も相対するだろうこの鎮守府の人々への接し方に頭を悩ませながら歩いた。

そこに、ちょっとした懐かしさを感じながら。

 

「……なぁ。」

「なに?」

「アタシらは何処へ向かっているんだ?」

「知らない。」

「……。」

「気にしたら負けだよ二人とも!これから強い相手を探し求めれば退屈しないよ!」

「……ま、そうだな。」

「主砲のチェックをするわ。何かあったら教えてね二人とも。」

「わかった。」

「了解だよ!」

遠洋に、三隻の巨艦が航行していた。

 




※本編にあまり関係無いと言いましたね。
あれは嘘でした、申し訳ない。
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