架空艦になった男   作:緑小灰

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質問タイム


10話

着任したその日。

俺、周防とミュリエル、ポベーダの三人の歓迎会が開かれた。

「という訳で乾杯!さぁ飲むぞ!」

この適当な音頭をとっているのが提督。

優しくテキトーで、真面目な所もあるが、緩めに物事をやりたがる、酒好きな人だった。

「提督?」

「司令官さん?」

その提督にストップをかける二人。

片方が、黒髪の美女。龍鳳。

この鎮守府では第一艦隊旗艦と秘書艦を別にしていて(曰く、第一艦隊旗艦=秘書艦な鎮守府が多いらしいが)、龍鳳は電と入れ替わり立ち替わり秘書艦に就いているらしい。

艦攻を好む軽空母で、最近まで第一線で活躍していたらしい。

薬指には光る指輪……すなわち、ケッコンカッコカリとやらの相手らしい。

そしてもう片方、茶髪の少女が電。

提督の最初の艦娘らしい。

お前のような駆逐艦がいるか、と言いたいが、残念ながら駆逐艦である。

謎のプレッシャーと威厳により大和ですら恐れ敬う大先輩だ。

二人に提督が酒管理をされ始めた所で、俺はその大和を発見する。

世界最大級の戦艦……大和型の一番艦。

それが大和なんだが……。

「周防ぉぉぉぉぉ聞いてよぉぉぉぉぉぉぉぉミュリエルが私の事年増だって虐めるのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ……」

……こちらは逆に威厳の欠片も存在しない。

もうちょい何かあっても良いはずなんだが。

職務態度は良く物腰も柔らかいが、この様にオフでは残念な人となっている。

「まだ1ミリも酒飲んでないんだよな?」

「え?うん」

「……年増邪魔」

「ガーン……」

そのミュリエルが大和を押し退けて俺の前に来た。

「……周防」

白髪紅眼の少女で、そして正体不明の高速戦艦。偶々発見した俺に一目惚れしたと語るが、俺に以上なまでの執着を見せる。

「……」

じっと見てくるミュリエルから視線を反らすとミュリエルの位置が移動した。

「な、なんだよ?」

「……」

ミュリエルは提督と龍鳳を見てから、俺を見る。

そしてどこからかゼク〇ィを取り出す。

「話し合いはしないぞ?」

すると、たま〇クラブを取り出す。

「それは早すぎるだろ」

ミュリエルは少し考えて、婚姻届けを取り出す。

まぁ順番では確かに合ってるんだが……。

「なんで俺なんだろうね……」

俺はため息を吐きながら呟く。

すると、ミュリエルが鬼のような形相でこちらを睨んだ。

俺は堪らず萎縮して、「いや、すまん」と謝っていた。

「……わかれば良い」

何故怒られたのかはわからないが、この世には知らない方が良い事もある。

そういう事だろう。

ミュリエルはピトリとくっついてくる。

頭を撫で、ミュリエルの機嫌を取る。

喉を鳴らして和むミュリエルの反対側、大和が俺にひっつく。

「お姉ちゃんにも愛を!周防の優しく温かい愛を頂戴!」

「はいはい……」

流石に構って上げた方が良いだろうと思い、俺は大和のグラスにワインを注いだ。

「ありがとう……周防は優しいねぇ……」

少々縮こまりながらチビチビと酒を飲む大和の反対で、ミュリエルが俺のコップにドバドバとお茶を注ぐ。

「おぉ、ありがとうミュリエル」

「……ん」

ミュリエルは自分のコップを突き出す、俺はお茶を注ぐ。

「んでだ、邪魔臭いから離れてくれたりは?」

「しない」

「……しない」

ですよね。

そんな光景を発見した航空巡洋艦の鈴谷がニヤニヤしながら接近してくる。

「チーッス、モテてるねぇ」

「代わってくれ」

「無理でしょ、素直に喜んどきなって」

カラカラと笑う鈴谷、手にはカクテル。

「……なぁ疑問なんだが、艦娘は酒を飲んで良いのか?」

「さぁ?戦艦や空母系なんかは普通に飲んでるけど、駆逐艦や潜水艦は飲まないからねぇ……」

艦娘の姿は艦種に依ってアバウトな年齢に見える……のだが。

「あの、周防さんですよね?」

「はい、初めまして。周防だ」

「駆逐艦の潮です、よろしくお願いします」

俺達の挨拶回りの途中に、逆に挨拶しに来てくれる娘も居るのだが、例えばこの潮と言う娘は駆逐艦とは思えないバストサイズを持つ。

潜水艦は大体同じ位の年齢層に見えるし胸の発育の良い者も居るが、酒は飲まないそうだ。

逆に大人っぽいのが多い空母で言えば大鳳は幼く見える。

「種類に依って、アバウトな年齢が決まって至りとかはしないのか?」

「さぁ?鈴谷もそれなりに若い外見のはずだけどねぇ……」

「実は酒が飲める程度には……と」

「次言ったらしばくよ」

半ギレの鈴谷は脅しつつも解答する。

「まぁ、艦娘の年齢自体を問うのがアレなんじゃない?艦艇として言えば100オーバーとか多いし、逆に艦娘としての年齢を言えば皆若い、電パイセンだってまだ12~13のはずだよ」

「……なるほど」

意外な事に、この鎮守府は10年以上前から存続しているらしい。

鈴谷は説明してくれた。

「確か、昔は鎮守府も多かった。でも全てが生き残れる訳では無いし、そもそもが人口激減した後だったらしいし、強い所が残る方式に自然と成ったみたいだよ?現に、この幌筵泊地だって、生きてる鎮守府はここと、もう1つの鎮守府だって聞いた覚えがあるし」

「番号があるのはその名残か……」

「そ」鈴谷はそう言いながら、俺のコップにウィスキーを入れる。

俺は少しコップを見つめ、一口含み、テーブルに置いて、言った。

「色々ありがとう、勉強に成った」

苦々しい顔の俺を見て鈴谷は苦笑していた。

 

しかし改めて見ると、この鎮守府の所属艦娘は多い気がする。

「なぁ大和、艦娘って何人くらい居るんだ?」

「ここには90人?80人?位だったかな」

「そうじゃなくて、日本中のって話かな」

「あーうーん……」

大和は酔いの回った赤い頬で唸る。

「何だったっけなぁ……そんな条約あったんだよなぁ……各国の艦娘保有数を決める奴」

「……多分ニューヨーク条約の事」

背後から小さな声が答えた。

両腕の拘束を離してから俺は振り替える。そこには弥生と言う駆逐艦が居た。

「それって何だ?説明してもらえるか?」

「……各国の泊地あるいは大艦隊数と鎮守府保有制限数から為る、艦娘の数を制限する条約」

曰く、日本の大艦隊は5つだが泊地の数は計12。

艦娘の個体は日本艦で171。

海外生まれだが日本の海域で発見あるいは拡張作戦以降日本での所属許可が出た者が14。

合計で185体となる。

対して各鎮守府は100隻と制限数を決めている為、積は1200となる。

「……つまり、日本の海軍力として活動できる艦娘は1200以下なんだけど」

そこで弥生は言い澱む、しかし続けた。

「……鎮守府の数が減少した話、聞いた事ある?」

「あぁ、幌筵もここ含めて二つらしいな」

「……だから実際は、運用の難易と言う問題では無いんだけど、もっと少ない。……形骸化した廃泊地もあるから」

「……じゃあ、保有数も減る?」ミュリエルが口を挟む。弥生は首を横に振る。

「……そこは隠してるのか何なのかわからない、けど1200のままに成ってる」

あくまでも上限は下げない、と言う事らしい。

「……実際アメリカの保有数は凄く多いけど、それだけカバー範囲も多い。……日本も東アジアをロシアとか、中国とか、韓国とかに援助してもらいながらカバーする事に成ってる」

「その為にある程度の数は保たないといけないのか」

「……そ」

弥生は近くのテーブルからメロンを持ってきて食べる。咀嚼し口の中を空にしてから、ぽつぽつと話す。

「……実際、日本艦娘は時々増える」

もきゅもきゅ。

「……生きてる泊地自体は実質1つの鎮守府で運営されてる」

もきゅもきゅ。

「……生きてる鎮守府自体の数となると、8~10ってところだと思う」

もきゅもきゅ。

「……だけど難しいのがニューヨーク条約の第二項、"各鎮守府に同個体を複数在籍する事を禁じる"」

もきゅもきゅ、と食べ始めた所で俺は質問を投げ掛ける。

「艦種が変わる奴ってのが居るんだよな?」

「……それも含める。……だからここに龍鳳は居ても大鯨は居ないし、再発見しても、転属か解体かで、ここから去らないといけない」

全て食べ終わると弥生は言った。

「大和と大鳳ばっかりで第一艦隊を組むってのは無理って事か」

「……ふふ、そしたら遠征が大変だね」

弥生は微笑んだ。

実際にそんな事が出来るほどの資材を集めるのは困難である……って事か。

「あのー、何だ、いきなり転がり込んで修理してもらってすまん」

「……別に、怒ってないよ」

「ねぇねぇー、大和って何人位居るのー?」

若干酔っぱらいと化してきた大和が弥生に問う。

「……第三項、"一部の主力艦艇は別途で全体制限を設けるものとし、艦娘運用の中核を担う主要各国は、これの増減を逐一報告する義務を有する"だよ。……大和型は大鳳同様に各個体数3隻までのはずだよ」

つまり、大和と武蔵を合わせて6隻。

そこに俺とミュリエルは属するから合計8。

「8隻のみの超大型戦艦かぁ……周防もミュリエルも頑張れぇ!」

酒臭い大和がミュリエルにベタベタと引っ付く。見える……ミュリエルに怒りの色が……。

「い、色々教えてくれてありがとう。これから宜しく頼むよ」

「……よろしく。……気さくな感じで、こっちも遣りやすい」

弥生は去っていった。恐らく方向から見て、駆逐艦達の所だろう。

……ところで何故俺の所に態々来たのだろう?駆逐艦達の近くには、メロンもあるデザートテーブルがしっかり配置されていたのに。

今にも殴り掛かりそうなミュリエルを羽交い締めにしながら、俺は考えていた。

 

「はい、それではこの辺でお開きにします。まだ飲みたい者は飲み、明日に備えて寝たい者はしっかり寝てくれ。明日の総員起こしは遣らないから気を付けてねー。」

酒瓶を抱えたまま逃げる姿勢に成った提督が一言声を掛けて歓迎会は終了。当然提督は逃げ切れなかった。

「周防!周防!」

ポベーダが帰ってきて非常に高いテンションでピョンピョン跳ねながら俺を揺さぶる。

「おう、お帰り。どうだった?」

「楽しかった!あのね、明石って人が面白いの!あの人みたいに成りたい!」

「そうか、ちょっと目指してみるのも良いかもなぁ……」

ポベーダが興味を持った事を聞きながら、本来用意されていた俺達の席に戻ると、そこには龍鳳が居た。

「どうも」と言われ「おう」と軽く返す。

「どうした?」

龍鳳は少し目を瞑って、それから切り出した。

「端的に言いますと……」

 

俺は暫し、言葉を失った。




言い訳をさせて下さい。
艦これがAndroid版が最近出るまで、復帰出来なかったんです。
と言う訳で、なんとかまたチマチマ書いて行こうと思います。
ここまで遅れて誠に申し訳ありませんが、また暖かく見守って頂きたいなと思っております。
(気づいたらグラーフやアクィラやアイオワやウォスパ実装ですってね。
9/16で日本の艦娘が更に1人増えるみたいですし、ドンドン増えますね……。)

※補足を及び訂正をしました。

ニューヨーク条約

前文 本条約は艦娘運用を行う各国海軍力への制約を記した物である。

第一項 各国全体に於ける運用可能な艦娘の数は、各鎮守府の保有制限数と稼働している大艦隊及び泊地数の積で算出する。具体的には第四項及び第五項を参照。

第二項 各鎮守府に同個体を複数在籍する事を禁じる。

第三項 一部の主力艦艇は別途で全体制限を設けるものとし、艦娘運用の中核を担う主要各国は、これの増減を逐一報告する義務を有する。これに当たる艦種は戦艦、空母である。
補足 巡洋戦艦を対象に追加とする。また、軽空母の制限は大型、中型正規空母より軽減する物とする。重巡洋艦級に関しては判断を保留とする。

第四項 各鎮守府の保有制限数を以下に記す。
日本 100
アメリカ 120
イギリス 110
ドイツ 60
フランス 50
イタリア 50

第五項 各国の大艦隊及び泊地数を以下に記す。また増減時にはこれを報告する物とする。
日本 大艦隊5 泊地含め計20 (12に減少)
アメリカ 大艦隊6 他基地含め計10
イギリス 大艦隊3 他基地含め計5
ドイツ 大艦隊4 他基地含め計6
フランス 大艦隊5 他基地含め計10
イタリア 大艦隊4 他基地含め計8

第六項 従って、現在の総合保有数を以下に記す。またこれの増減を逐一報告するものとする。
日本 1200
アメリカ 1200
イギリス 550
ドイツ 360
フランス 500
イタリア 400


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