架空艦になった男   作:緑小灰

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初陣


3話

敵襲……その言葉を聞き緊張が走る。

俺は彼女の艦艇"ミュリエル・ハイデルベルク"から自分の艦艇"周防"に飛び乗る。

どうやら(男性型の俺含めて)艦娘と言うものは、人間以上にはある程度の身体能力を有するらしい。

易々と艦から艦へ。

俺はミュリエルに向かって叫ぶ。

「敵襲だ!とりあえず先にそっちだ!」

そしてそのまま俺は艦橋へと駆けた。

 

「状況は?」

そう投げかけると妖精の一人(一匹?)がタブレット端末的なものを寄越した。

距離は本艦から一時方向で50000、すなわち艦首を0度として30度の50km先にいるとのこと。

敵編成は戦艦1、軽巡1、駆逐2、それから輸送艦が2らしい。

幸いして艦載機持ちは居ないが、こちらに進行中であるらしい。

「機関始動して19inch砲に通常弾、17inch砲に三式弾、副砲と高角砲も通常弾だ。機銃は後回しでいい。橘花は8機随時発進。艦首魚雷は1~4番に装填し注水準備、頼んだ!」

指示をすると、妖精は皆敬礼した後にわたわたと動き出す。

ゴゥン……と、鈍い音が立ち、艦内装置のあれこれが起動する。

すると通信が入る。

「……周防。こっちは火器も発進も全部できる。」

「こっちもなんとかなりそうだ。」

「……通信が繋がるまで40秒。……遅かったね。」

「遅いも何も今初めて触ってるんだっつの。勘弁してくれ。」

そうこうしてる間に敵はぐんぐん近づいてる。

深呼吸した後に俺は言い放つ。

「意見具申いいか?」

「……どうぞ。」

「まず近づき、距離26000で停戦交渉を持ちかけたい。それにはウチの艦載機を飛ばしてもらってる。」

「……話通じるの?」

「わからんがやるしかない。甘いと言われようと、兵器であるからと言っても、暴力を罪と思わないのはただのアホか狂ったアホのどっちかだ。とりあえずそれが先だ。」

「……わかった。……打てるようにはしておく。」

「了解。」

近くにいた連絡要員の妖精が色々受け答えした後に言う。

「オッケーダヨー!」

「わかった。戦艦周防、出征する。」

「……ミュリエル・ハイデルベルク。……続いて出撃します。」

 

進みながら、艦内設備を見る。

必ずしも昔の物というのではなく、レーダーや通信設備、生活備品なんかは若干現代的なものが多い。

このタブレットは正直凄い。戦況把握にデータベース、通信ログなんかもあり非常に便利。

「敵は水上偵察機を計8機射出、速度で負ける事は無く、爆弾搭載も為されて無いが機銃があるため警戒するに越したことはない、か。橘花で落とせなくは無いが、不用に落とす事も無いよな。注意して、まだ攻撃しないでくれ。係は停戦交渉を持ちかけてくれ。」

「リョーカイ!」

そのタブレットから得た情報で指示を出す。

「……もうそろそろ26000。」

「了解。作戦行動……って言えるのかわからんけど、それに移るぞ。」

 

戦艦に、女性が乗っている。

「ルキューサン! テキカンサイキカラニュウデン!"ワレ テイセンコウショウ ヲ モトム" ダソウデス!」

「……ソウカ。」

妖精にル級と呼ばれたその女性に、別の通信が入る。

「停戦交渉ッテ言ッテマスガドウシマス?」

ル級は、ニヤリと笑みを浮かべ、いい放つ。

「無論、沈メテヤル。」

 

「……なんか、艦載機攻撃されてるよ?」

「テキカンサイキヨリヘンデン! "シズメ" ダソウデス!」

「駄目なのかよ!?」

「……これで殺せる口実ができた。……さっさと殺そ?」

「お前も大概物騒だよ!」

艦載機同士による航空戦が始まり、ミュリエルは主砲旋回・仰角調整を済ます。

「あー糞味噌野郎が……適度に叩いて黙らせるしかないってのか……。」

どうにも乗り気にならないが、俺も主砲旋回・仰角指示を出す。

すると気づいた。

「駆逐が1足りない。どこいったか探してくれ。橘花を下がらせて索敵に回していい。」

妖精に指示を出し、俺は別に宣言する。

「橘花が離脱し次第、17inch砲を射撃する。タイミング任せた。続いて副砲、高角砲を旋回・仰角調整してくれ。」

 

橘花が下がった数秒後17inch砲が射撃された。

……だが。

「…………。」

「1キゲキツイ!」

「さ、三式弾なんだよな?」

三式弾の命中精度に驚かされた。

そこにミュリエルが入る。

「……打っていい?」

「あ、頼んだミュリエル。」

「……死ね。」

物騒な事を言いながら彼女の19inch砲が射撃される。

その砲弾は単縦陣の先頭にいた戦艦を越え、軽巡の前に着水しようとする。

すると、その砲弾は水面下ギリギリの位置を直進し、軽巡の艦首に命中した。

「水中弾……か?となると徹甲弾か?」

「……当たり。」

彼女の嬉しそうな声が伝わってるその眼前では、その軽巡が砕けひしゃげた艦首から浸水してその艦尾を大きく挙げている。

……本当に物騒な娘だ。

「まぁ、置いとこう……高角砲射撃、艦載機を落とすか牽制してくれ。続いて19inch砲仰角調整、副砲を後方の駆逐に向けて射撃、17inch砲は通常弾で装填急げ。」

「ホウコク! ワレ テキクチク ハッケンセリ! 」

送られて来たデータは……周防の220度方向、距離16000。

「なんだって……どうして……。」

そこで気づいた。左舷方向には島があった。それを回ってきたのだろう。

「機銃及び800kg爆弾使用許可を出す。敵駆逐に攻撃、足止めをしてくれ。」

「リョーカイ!」

「……周防!」

俺はそこでようやく、敵の攻撃が着弾したのだと知った。




※周防らの武装はごちゃごちゃありますが、次回以降書く艦これ的ステータスでは、武装は5スロットに制限して表記します
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