架空艦になった男   作:緑小灰

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周防


4話

ル級は、自身の16inch砲が当たった事にえも言われぬ喜びを感じていた。

「イクラ戦艦トハ言エ、大口径主砲ニハ苦戦スル。敵モソレハ同ジダ。」

しかし、その笑みは数秒すると凍りついた。

爆煙の中から副砲を射撃しながらこちらへと向かう、無傷の敵艦の姿である。

 

「……周防!」

「ええい……聞こえてるっての……。損害報告と同時に副砲を前方の敵駆逐に発射!」

ドゥンッ!という音が二回鳴る。副砲は問題ないようだ。

艦橋の司令室内でキリモミになり、数回バウンドした周防は痛む頭を振り払いながら立ち上がった。

「ホンカン カンキョウ オヨビ ダイイチカラダイヨンホウトウフクメ ソンガイナシ!」

「6ハツチュウ ニハツ テキニ メイチュウ! テキクチクハ タイハ! シンスイシハジメテイマス!」

「主砲仰角調整できたか?」

「カンリョウシテマス!」

「よし、打てっ!」

一際先程よりも大きい音が鳴り響き、敵戦艦へとその猛威を振るう。

戦艦ル級はその艦体に大きな被害を受けながら、左舷へと傾いた。

そこに、更に砲撃が加わる。

ミュリエルが主砲をウチ放ち、その舷の装甲を突き破る。

「悪く思うな……1~2番注水、機関最大、前進せよ!」

距離を縮めて、艦首魚雷を打ち放つ。

1発は大きく外れたが、もう1発は戦艦ル級の艦首へと着弾した。

おおきな水柱が立ち上がりル級の機関が爆発する。そして艦首からゆっくり沈んで逝った……。

「橘花はどうだ!?」

「ホウコク! ワレテキクチクヲゴウチンセリ!」

「お、おう了解。戻ってきてくれ。」

さらりと倒してきたことに内心驚いた。

橘花の妖精らとの通信を終えると、ミュリエルが通信を入れてきた。

「……大丈夫、なの?」

「あぁ。艦に問題は無いし、俺自体も平気だ。」

「……主砲だったんだよね?」

「だろうな。ただ、大和型は46cm砲を想定の装甲をしていたって説があるし、その発展であればこその装甲の厚さなんだろうな。無傷はすげぇよな。」

「……なるほど。」

ミュリエルは続けた。

「……輸送艦は叩いておいた。」

「まじかい。おいおい……物質が散乱してるな……。まぁ回収できるだけ回収するか。」

 

物資の多くは油を積んだドラム缶だった。

妖精らと共に物資の回収をしているとき、するとそこで海面が薄く光っているではないか。

「な、なんだ?」

その光は一際大きく輝くと、グレーの小さな艦艇を浮かび上がらせた。

小さな、と言っても周防から見ればという話だ。それなりな大きさは持っている。

周防の頭に情報が流れ込んだ。

 

艦娘の魂、十分な資材、そして妖精。

この三要素がそろった状況で、ある条件が揃えば新しく艦艇が生まれる事がある。

条件の一つは建造。これはドックに於いて、所属の妖精が新しく艦を組み、必要な妖精と艦娘の魂を宿す事で艦娘が誕生する。

そしてもう一つは、ドロップと呼ばれる、戦闘勝利時にその戦果が高いと艦娘と艦艇が自然発生するというものだ。

三要素は、敵である艦艇の妖精と資材でなんとかなる。

艦娘の魂については、どうして召還されるのかはわかっていない。

ただ、この事から敵と味方……艦娘の魂は、根元が同じ船霊なのではないかと言う推測もされている。

因みに、人類にとっての敵の艦艇……これを"深海棲艦"と呼んでいるらしい。

深海棲艦と艦娘……その存在は謎に満ちているようだ。

 

そんな、得た情報を咀嚼し、一言それっぽい事を付け加えていると、その艦艇の甲板に艦娘が出てきた。

「……?」

ぽけーっとした、眠そうな目を擦ると、こちらを視認し、敬礼をして言った。

「ペレスヴェート級戦艦、ポベーダです!」

「「……。」」

こうして俺たちは、初めての戦闘後に初めてのドロップを確認したのだった。

 

物資を回収し終わり、周防の甲板にポベーダを招いて挨拶を交わすと、彼女はいきなり怒り出した。

「なんで!?」

「え?逆になんでだよ?」

「なんで"周防"って名乗ってるの!?」

125cmくらいしかない金髪碧眼の少女……と言うより幼女の言い分はこうだ。

ポベーダはロシア帝国海軍の艦艇で日露戦争時に着底。

日露戦争後に日本軍によって鹵獲されて改修を受ける。

"周防"として日本軍に編入、就役した。

そしてその後ワシントン条約で除籍された。

つまり、日本の軍艦にとっての周防は自分しかあり得ないと。

謝罪し改名してほしいとの要求だった。

「まぁ……確かに現状艦娘が第二次大戦中の艦艇だけだったからって安直に決めたんだけどさ……。」

まず、俺がイレギュラーなのだ、ミュリエル以外にもイレギュラーに遭遇する確率はあるのだ。

例えば……今みたいに。

でもだけどしかしけれど、率直に言わせて貰おう。

「でも、お前さ、ロシアの艦じゃん。」

「……うん。え?いいいいやそそそそそうだけど!日本の為に頑張ったんだよ!?日本の"周防"なんだよ!」

「日本の為"にも"だろ?元来ロシア帝国海軍の艦なんだしポベーダって名前があるんだろ?それに"周防"ってのも旧国名でしかない。周防って名前の本流はそっちだ。」

「あううう……そうだけどさぁ……。」

「それにだ、こっちには名前が無かったんだ。片方、日本名の方貸してくれたっていいだろ?」

第一次前から第二次まで広く見れば、名前の被る艦艇なんて山ほどある。

せめて名前をくれてもいいだろう?と少女に問いかける。

正直俺はどうでもいいのだが、妖精たちが無茶苦茶悲しそうな顔でこちらを見ているのと後ろのミュリエルから信じられないレベルの殺気がしたので、彼女の要求を飲む事ができなかった。

ごめんよポベーダ。

「うぅ……わかったよぉ……。」

「ありがとうなポベーダ。詫びと言ってはなんだがおやつでも食べるといい。」

「本当!?」

ポベーダの顔が輝く。この笑顔……120$。

艦橋へと駆けていくポベーダを追おうとすると、ミュリエルが物凄い、おおよそ女子とは思えない力で肩を掴んできた。

まぁ力に関しては艦娘だから強いのだが、それと同時に殺気がやばいのでそう感じたのだろう。

「……周防は私のもの。」

「わかったから落ち着け?」

「……周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防は私の周防だよね?」

「当分婿入りする気は無いと言っておこう。」

あまりの恐怖に後ろを振り返らないで俺は言った。

「……周防、好き。」

「……わかった、ありがとう。」

淡白に礼を言い、逃げるように艦橋に向かう。

「……周防。」

「子供に対抗してどうする。俺がロリコンだとでも思っているのか?」

「……信用する。」

数秒考えた彼女はそう答え、殺気を引っ込めた。とりあえず嵐は去った。

「それに、友達からじゃなかったのか?」

「……我慢は苦手。」

「笑うに笑えねぇなそりゃ……。」

向き直ると、俺は彼女の頭を優しく撫でる。

「必要な我慢ぐらいはしてくれ。」

「……必要かどうかは前向きに検討しておく。」

俺は苦笑すると、ミュリエルを連れてポベーダのもとへ向かった。




(航空)戦艦周防 艦これ的ステータス
周防/大和型4番艦?
耐久 126 火力 101+武装分
装甲 97 雷装 51
回避 30 対空 88
搭載 90 対潜 16
速力 低速 索敵 58
射程 超長 運 18
(全未改修)
最大燃料消費 325 最大弾薬消費 275

艦載 装備
9 改19inch三連装砲
6 改17inch三連装砲
13 改7inch三連装副砲
38 特殊攻撃機 橘花改二(現有20機)
24 艦首23inch魚雷発射管(6門)


現有戦力
1:(航空)戦艦周防
2:戦艦ミュリエル・ハイデルベルク
3:ペレスヴェート型前弩級戦艦 ポベーダ

※前弩級戦艦は正直巡洋艦レベルかと思われますので、今後"戦闘巡洋艦"として分類するかもしれません。
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