架空艦になった男   作:緑小灰

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性能差


5話

「……。」

ミュリエルが 恨めしそうに こちらを睨んでいる。

仲間に できそうですか? ▽

はい

いいえ ←

 

そうじゃなくて。

ミュリエルが睨む要因はただ一つ。

「ごめんね周防……。」

「いや、大丈夫だ。」

俺たちが彼女よりも遅いと言うことだ。

H42改めミュリエル・ハイデルベルク=32.2ノット

111号改め周防=27ノット

ポベーダ=16ノット

あんまりに遅いのでミュリエルは呆れていたのだが、そこで俺が彼女を曳航する事にした。

お陰で相対的に彼女は速く、俺は余計遅くなり……。

「……曳航羨ましい。」

速さだけが問題じゃないようだった。

「ちょー良いよ。」

満面の笑みで返すポベーダ。歯ぎしりの様な音がしてミュリエルは悔しがっている……。

この娘怖いわぁ……。

 

ともかく、どこへ向かっているかと言うと、西に向かっていた。

先の戦闘で敵艦には日本語が通じる事がわかった。

なので、日本からも大して遠くないだろうと言う安直な考えである。

ところで、日もくれて夜になった。

一度停まって補給している時だ。

「ネンリョータリナイヨー」

しょぼくれた顔の整備士的な妖精がそう言った。

曰く、燃料が三人分無いとのこと。

それもそのはず、巨大戦艦が二隻なのだ、さっき奪った燃料で足りる訳がなく……。

「困ったな……備蓄資材庫の燃料も使っていいからミュリエルに回してやって欲しい。それから曳航用のワイヤーは俺からミュリエルに繋ぎ直してくれ。」

「リョーカイ」

妖精はパタパタと作業に戻った。

「……?」

ミュリエルが不思議そうにこちらを見ているので説明する。

「正直、ミュリエルの方が速度も出るし航続距離も長い。だったらこれを曳航するのもお前の方がいいだろ?」

ポベーダが「コレって言うなー!」と叩いてくるが気にせずに続ける。

「とりあえず燃料はお前に優先、次いで俺で日本を目指そう。」

「……か弱い女の子に不当な労働。……認められない。」

「25万馬力オーバーの奴が何言ってんだ。」

そう返す15万馬力相当の俺。

ポベーダ?聞いて驚け、俺の十分の一だ。

「……わかった。」

不承不承、引き受けるミュリエル。

「ミュリエルありがとー。」

「……ん。」

ポベーダの頭を撫でてあげるミュリエル。

言うほど嫌って訳では無さそうだ。

その時、一瞬だけミュリエルは僅かに口元を吊り上がるのを見逃さなかった。

元の顔に戻ると、諭すように言う。

「……私の事。……ママって呼んで良いよ?」

「わかった。じゃあ周防はパパだね?」

「しまったコイツ外堀を埋める気か!?」

任せたのは間違いだっただろうか……。

 

一方そのころ。

どこかの鎮守府で……。

「本当なんでち!島が動いてたんでち!」

「見間違いじゃないわ!本当なんだから!」

「……だ、そうですけど。どうなさいます?提督。」

「うーん……。にわかには信じられないなぁ……。」

幌筵泊地の中のとある一つの鎮守府で提督は悩んでいた。

秘書艦の龍鳳が、出撃していた部隊の伊58と阿賀野から"島が移動している"と言う報告を受けたので、その聴取をしていた。

動く島などありえない。

「どれくらいの距離?」

「どれくらいでちか?」

「それなりには遠かったと思うけど?」

……生憎、今日は天候不順だ。なんかの船団でも見間違えたのだろう。

提督はこれから来る嵐を、楽観視していた……。

 

所戻って周防たち。

「……子育てって大変ね?」

「ソウダナー。」

ポベーダを曳航して再び進み始めた三隻(実質二隻)。

ポベーダはその速さにご機嫌で。

ミュリエルは夫婦のように絡んできて。

周防一人、やっぱり失敗だったかと考えるのである。

「……あなた?」

「パパ?」

「えぇい!パパとかあなたとか呼ぶんじゃない!」

お父さん認めないからねっ!

 

またまたその頃。

「とりゃ!」

艦載機を飛ばす、巨艦の姿がそこにあった。

放たれる艦載機は他の艦の艦載機軽々と抜き、下部からミサイルを射出。次々に敵艦に叩き込んで行く。

その圧倒的な性能の機体の前に、立ちふさがるものは居なかった……のだが。

「なんでコイツなんだろうなぁ……結局作られなかったじゃん。」

巨艦の上の少女は不満そうだった。

もっとも、叩き込まれた敵は堪ったものではなく。

反撃もそこそこにどんどん退却していった……。

 

夜も明け、東の空が白んできた時……。

周防たちが引き続き進んでいると、レーダーに報告があった。

「えーと?270度距離20000の海中に艦あり、こちらへと進路をとった?」

妖精が羅針盤を回すので、手動で真西へと向かっていたら……潜水艦か。

「潜水艦かぁ……できりゃ戦いたくねぇよな……。」

対潜値が無いわけではない。

仰角マイナスにしたり雷撃だったりで攻撃は出来る。

だが有効な機雷の無い以上心許なく、戦闘は避けたい。

もっとも……敵が深海棲艦とは決まってないのだが。

「あんまり近づくようなら橘花を出して交渉を持ちかけてくれ。」

「リョーカイ!」

「……敵?」

「わからん。潜水艦の類いだそうだ。」

前方には、曇天が広がっていて今にも雨が降りそうだ……。

せめても、悪い事にはならないで欲しいと祈る周防だった。




ミュリエル 艦これ的ステータス
Muriel Heidelberg / H型戦艦計画42号艦
耐久 109 火力 99
装甲 77 雷装 46
回避 63 対空 43
搭載 20 対潜 2
速力 高速 索敵 28
射程 超長 運 38

最大燃料消費 400 最大弾薬消費 200

艦載 装備
0 改19inch三連装砲
0 改17inch三連装砲
0 改9inch連装副砲
16 改5inch連装高角砲+72式射撃指揮装置1型(FCS-1)
4 25inch四連装酸素魚雷
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