架空艦になった男   作:緑小灰

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邂逅


7話

大和が敬礼をしながら挨拶したのを見て、内心驚きつつ俺は返事をする。

「えーと……所属は無い。艦艇の名もさっき決めたものなんだが……。第111号戦艦の、周防だ。」

それを聞き、というか、声を聞いて大和を含めた全員が驚いた。

「お、男?」

ざわめく艦隊の面子に向かって、俺は宣言する。

「艦娘が女性ばかりなのは重々承知している。でも俺は正真正銘の男だ。」

「えーっと……まぁ、それについては置いておきましょう。他の方の名前を伺ってよろしいですか?」

「……H42改めて、ミュリエル・ハイデルベルク。」

「ペレスヴェート級のポベーダです!」

「あ、そちらの方々は女性なんですね。」

ちょっと安堵した感じの声をあげる大和。

「えーと、敵と交戦していたとの事ですが……。」

「コテンパンにやられた。ちょうどお前らが来たから、数では勝てないと考えたのか敵は逃げて行ったよ。」

「そ、そうですか……。」

少々驚いた感じの大和。

「……あの。」

「ん?どうした。」

大和の後ろにいた、航空戦艦とおぼしき女性が声をかける。

「大和よりも巨大な貴方が、そう簡単に負けるものなの?」

「事実負けたんだから敵はそれだけ強かったんだよ。たぶん。」

「ふーん……。」

釈然としない、といった様子の女性。

「そういやお前は?」

「あぁ、私は山城。よろしく。」

山城が名乗るのを皮切りに、大和以外の艦も名乗る。

大和に山城、比叡、瑞鳳、大鳳、蒼龍、それから伊19。

「随分なお出迎えで……。」

俺がビックリしていると、逆に大和がため息を吐く。

「巨艦二隻が"救援求む"って言ってたらそれなりに覚悟してきますよ。」

「あー、そいつは心配かけたな。大丈夫だ。」

そう言うと、大和は"何言ってんだこいつ"と、言いたげな感じでこちらを向いた。

「そんな大破させられて大丈夫な訳無いでしょう?提督から、こちらへご招待するよう仰せつかっています。ウチでドック入りしてください。」

「お、おう。」

なんとなく、凄みを感じさせる大和の物言いに圧倒される。

「……是非甘えるべき。」

ミュリエルも、その考えに乗ったようだった。

「じゃあ、すまんがよろしく頼む。」

 

ミュリエルはポベーダに付き、俺は大和と比叡に曳航されていた。

「航行不能じゃねぇから一人でいいんだが……。」

「何言ってるんですか!曳きますよ!」

ぶつくさ言う大和を横目に、比叡が言ってきた。

「周防さん、大和さんに気に入られたみたいですね。」

「そうなのか?」

「全く……手の焼ける弟ができたみたいです……。」

大和が強ち間違って無い事を呟く。

「"手の焼ける"は余計だ。誰だって戦えば傷つくだろ。」

「弟で良いんですか……。」

比叡がツッコむ。すると、比叡が思い出したように。

「周防さん。予め言っておきますが、金剛お姉様に手を出したら容赦なく撃ちます!」

「手を出す気は無いが、まぁわかった。」

「妹の榛名と霧島なら別に良いです。」

「妹を売るなよ!」

ミュリエルと山城もそこに加わる。

「まだ居ませんけど、扶桑お姉様に手を出せば撃つわよ。」

「手を出さないと言ってんだろ!?」

「……私以外に手を出せば殺す。」

「お前ガチっぽいからマジで止めろ。」

「……私だったら。」

「いきなりモジモジすんな!手は出さないって言ってr」

「……私に手を出さなければ死ぬ。」

「何それ俺が?それともお前が?もしかして両方?」

「……痛いのは一瞬。」

「怖っ!コイツ怖っ!」

物騒な話をしながら、俺は鎮守府へと向かっていった……。

 

幌筵第0180鎮守府。

まず艦艇を入渠させてから、大和に案内されて司令室へ向かう。

「失礼します!大和帰還しました!それからお客様をお連れしました。」

ノックして、先に大和が入る。

俺は入っていいものなのかわからなかったがとりあえず入る事にした。

「失礼する。今回は助けてくれて本当にありがとう。あと、鎮守府の方で修理を請け負ってくれて申し訳ない。」

「……お、おう。君が周防君だね?」

若い、黒髪の青年提督が俺を見て驚きながら言った。

「あぁ、マル4計画の第111号艦だ。名前はさっきつけた。」

「僕はこの鎮守府の司令官、瀬川暢(せがわ とおる)だ。暢で構わないよ。」

「いや、提督なんだし提督と呼ぶよ。俺は周防で構わない。」

「そう堅いこと言うなよ。んで、そっちの二人が……。」

「ペレスヴェート級のポベーダです!」

「……H型42号艦のミュリエル・ハイデルベルク。……周防の嫁です。」

「ポベーダちゃんに周防のお嫁さんね。はいわかった。」

「わかるんじゃない提督!こいつの言う事は半分嘘だ!」

「え、じゃあ戦艦じゃないのかい?」

「どうしてそっちを取った!言え!」

「いやー冗談だって。」

カラカラと笑う提督。

「……こういうのは第一印象が大切。」

「変な風評被害を作んな。」

「……こんなに可愛いのに。」

「自分で言うかそれ。」

「……娘が。」

「パパー。」

「そのネタもういいよ!ポベーダも乗らなくていいから!」

この様子を見ていた提督はまたカラカラと笑う。

自分被害なのは納得できないが、雰囲気が和んで何よりだ。

ところで、と提督が切り出す。

「君ら……本当に艦娘なのかい?」

「それについては何ともわからんな。俺とミュリエルは未完成艦だし、ポベーダは日露戦争時の艦艇らしい。」

「未完成?」

大和が口を挟むと、提督が注釈を入れる。

「H42は、ドイツのH型戦艦構想で計画された艦艇。作られてはないんだ。そしてマル4計画の第111号艦……。これは、計画変更によって完成しなかったんだよ。」

「へぇ……。詳しいんだな。」

「一応少しはね。というか大和、マル4計画の110号と111号と言えば、君の姉妹になったかもしれない艦なんだよ?」

その言葉を聞いて大和は固まった。

「……え?」

「だから、姉妹。大和の、武蔵以外の姉妹になったかもしれない艦。」

「まぁ、110号艦は信濃って空母になったしな。知らなくても仕方ないか。」

「信濃はまだ発見されてないけどね。」

あ、そうなんだと思っていたら大和がツカツカとこちらへ来て俺の肩を掴んだ。

そうして俯いた顔を上げると、非常にキラキラした目。

「お姉ちゃんって呼んでみて!」

「……姉貴?」

何言ってんだとは思ったが、呼んでみた。

すると、大和は豹変した。

「うっふぉぉぉぉぉぉ武蔵は"大和"って呼ぶしこの鎮守府にまずまだ武蔵いないしお姉ちゃんって呼んでもらいたかったのよやっふぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!」

……大和である。

紛れもなく、大和である。

「ねぇねぇ!お姉ちゃんじゃないよね?お姉ちゃんって呼んでないよね?姉貴じゃなくてお姉ちゃんって!さぁ!」

「……。」

これが、この後俺の"姉貴"となる、残念な大和である。




ポベーダ 艦これ的ステータス

ポベーダ / ペレスヴェート級3番艦
耐久 28 火力 33
装甲 20 雷装 15
回避 18 対空 4
搭載 0 対潜 6
速力 低速 索敵 5
射程 中 運 8

最大燃料消費 0(機関が油じゃない為) 最大弾薬消費 65

搭載 装備
0 40口径10inch連装砲
0 45口径6inch単装砲
0 15inch水上単装魚雷発射管

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