架空艦になった男   作:緑小灰

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鎮守府案内


8話

「ところで。」

提督が切り出した。

「周防たちは目的とかってある?無ければここに所属してくれると嬉しいんだけど。」

「あー……今は目的は無いんだよなぁ……。」

俺は少し考えて決めた。

「じゃあ是非そうさせてくれないか?修理費用や補給資材を返そうにも働く場所が必要だからな。耳を揃えて借りは返す。」

「借りとか言うなよ。これも何かの縁だ。よろしく頼むよ。命令はあるもののその他は大体自由だし、好きにしていいよ。」

そう言って数枚の書類を渡す提督。俺はそれをきちんと見てから署名した。

脇からミュリエルとポベーダも覗き、提督に書類を請求する。どうやら、こいつらもここにするようだ。

 

全員が提出すると、秘書艦……龍鳳が言った。

「では大和さん、皆さんに鎮守府の案内をして頂けますか?」

「了解しました。では皆さん、行きましょう。」

提督に一礼し、司令室を出る。

……と、ここまでは普通だったのだが。

先程の如く大和が飛びついてきた。

「周防ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉクンカクンカスーハースーハー弟ってこんな匂いがするんだね周防ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」

はっきり言うべきだろうか。うざ暑苦しいと。

そして既視感がする。

廊下の温度が数度下がって気づく。

"感"じゃなくて既視だった。

背後から殺気を放つミュリエルが大和をひっぺがして俺に引っ付く。

「……周防は私の。」

「なんですか!?折角の姉弟の団欒を邪魔するだなんて!」

「……周防の嫁です。……お姉さま。」

バチバチと、二人の間で火花が散る。

そしてその隅で怯えるポベーダ。ごめんよ……なんか。

「とりあえず、だ。邪魔だ二人とも。」

「「「……。」」」

ジト目のミュリエル、しょんぼりした大和、助けが来たと羨望の眼差しで見るポベーダ。

「まずは案内を真面目にしてくれ……。その後は基本的に自由なんだろ?」

こうして、問題を先送りにする俺。だが、二人に好きなだけ痴話喧嘩(じゃれあい?)させとけば大人しくなるだろう。

「……わかった。」

「しょうがないです。今は先に案内をしましょう。」

不承不承、二人も頷く。

 

「まずここが、艦娘の寮です。」

司令室から渡り廊下を渡ってそこそこ大きめの建物に着く。

「とりあえず戦艦の皆さんの所から案内しますね。」

歩みを進めて、ドアを開けるとラウンジのような所に来た。

「あ、来ましたよお姉さま。」

「ヘーイ周防!」

すると、巫女のような服を着た2人がいた。

「えーと、さっきの比叡……と金剛とやらか?」

「そうデス。英国生まれの金剛デース!ヨロシクオネガイシマース!」

「えーと、戦艦周防だ。よろしく。」

二人握手する。すると、金剛が言った。

「艦は大和よりもビッグなのに身長はスモールですネーHAHAHA!」

「……言っとけ。」

金剛は165……ひょっとしたら170あるかもしれない。

癇に障るが、事実なので何も言えない。

「ソーリーソーリー。今度ティータイムでもしまショウ。これからフランクに接してくださいネー!」

「はいよ。」

「そっちのガールズも今日来た娘ネ?」

「……ミュリエル。」

「ポベーダです!」

「オーケー!ヨロシクオネガイシマース!」

「そういや金剛、他の戦艦たちはどこだ?」

「山城は長門と霧島と一緒にトレーニングネー。榛名は……マァ、あの娘にも色々あるんデスヨー。」

「じゃあ、これで全部か?」

「イェス!ワタシたちはティータイムしてるので暇な時にマタ声かけてクダサーイ!シーユー!」

「はいよ。またな。」

 

「この階が、巡洋艦クラスになっています。」

三階まで上がると、別の雰囲気のする空間となっていた。

「あれ?大和じゃん。」

「あら鈴谷さんに青葉さん。」

「ウィース。」

「ども恐縮です!青葉ですぅ!一言よろしいですか?」

その青葉とか言うポニテの少女は大和じゃなくて、俺に来た。

「俺か?」

「そうそう!じゃーいきますよぉ!」

青葉がメモとレコーダーのようなものを取り出す。

その脇で鈴谷は大和に話しかけていた。

「この人誰?大和のなんか?」

「実は……。」

頬を赤らめる大和。それを見てビックリした鈴谷まで俺の方に来る。

「ちょっとー大和のなんなんだよー?見せつけてさぁこのこの!」

ベシベシと叩いてくる鈴谷。

「では質問です!貴方は誰ですか!?」

青葉が差し出したレコーダーを避けつつ、俺は返す。

「戦艦周防。計画としては大和の弟に当たる。」

二人は一瞬固まったあと、"まさか"と言う顔をしたが、数秒後に、"マジで?"と言う顔になる。

「マジだ。」

「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?か、艦……娘?」

「艦……息子?」

その表現は合ってるのか間違ってるのか。

「じ、じゃあ次の質問です。艤装はどうされたんですか?」

「……なんじゃそりゃ。」

 

艤装……艦娘が装着する装備。

基本的なダメージは艦艇の方が受けるが、艦を自在に動かすに際に感覚が繋がっており、入ってくる肉体的ダメージを軽減するものとしての役割を果たす。

また、水上を艤装によって航行できたり、護身用・提督警護用の武器としても使える。

艦艇が轟沈しても、艤装を背負った艦娘が生還することがあるらしい。が、逆に艦艇だけでなく艤装をも失うと、艦娘は人としての存在を保てなくなり、船霊となって消えてしまう。

これを、艦娘のロストと言う。

因みに、近代化改修時の素材や艦艇解体時になると、艤装も特別な処置を施して解体される。この時艦娘は船霊として消滅するか、人間になるか選べるらしい。

 

「はぁん……艤装か。」

頭に入って来た情報を整理しながら背後を見る。

艤装は……出て来ない。ミュリエルもポベーダもどちらもキョトンとしている。

逆に大和は一瞬にして艤装を背負ったり外したりしていた。

どうやら普通の艦娘には艤装があるらしい。

「あー、俺らはちょっと変わってる艦娘なのかもな、だから艤装が無いんだろう。」

釈然としない鈴谷に俺は言った。

「まぁ、艦艇はちゃんとあるから安心しろ。いま入渠ドックにある。」

「怪我されたんですか?」

青葉が聞いてくる。

「まぁ、所属不明の艦と戦ってアッサリ負けたんだが。」

「……艤装無いのに痛くないんですか?」

「全身が若干痛む。」

「それ、大丈夫なの?」

「航行不能にはなってない。安心しろ。」

「「……。」」

二人は唖然として見ていたが、やがて笑いだす。

「アンタ面白いね。」

「そうかい。そいつは結構。」

「大和の弟……周防だっけ?よろしくね。」

「よろしくお願いしますね!」

「はいよ、よろしく。」

その後、二人の紹介をして巡洋艦の階を後にした。

 

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