ついこの間と同じように王城の中庭に着陸した。クトゥルフに小さくなってもらい王城の中に入る。すると案内役らしき男が慌てて駆け寄ってきた。
「お待ちしておりました。会議室はこちらになります」
しばらく男の先導で進み、幾つかの階段と廊下を通って辿り着いた部屋に案内された。結構奥まった場所にあるし防衛的にもこの辺りは結構重要ラインになってくるのだろうか。そうなるとここは司令部的なものかもしれない。部屋の中では縦長の机に大臣や将軍らしき男たちが叫ぶように議論を行っていた。奥にはウェディングドレスを着たアンリエッタ王女とマザリーニ枢機卿もいた。
「枢機卿、手紙を読んで来たわ」
「……正直に言うと、其方に頼むことはお門違いなのかもしれない。だが私はこの国を守るために動く。その為に力を貸してはくれぬか?」
「乗り気ではないわ。実際、枢機卿の言う通り私には関係のないことですし。ただでは協力できないわ」
「貴様!この国の危機だというのに無関係などと言うか!」
「落ち着くのだ将軍。その者はガリアの者。我々の問題に力添えをしてくれるとわざわざガリア国王が手紙をくれたのだぞ?」
「ガリアだと!?そんなものこちらに付け入ろうとしているようなものではないか!自国の問題は自分達で解決しなければ!」
「その通りです、まずはアルビオンに特使を派遣して誤解を解くのです」
「そうだ!全面戦争になる前に誤解を解けばいい」
「……枢機卿、手紙には礼砲を撃った後、向こうの船が燃え落ちてそれをこちらの攻撃と見なしたとあったのですが。間違いないのですか?」
「ああ、それで正しい。これも何かの誤解だと思われるが」
「……本気で誤解だと思ってるのかしら?実際の状況は見てないけれど、話だけ聞いても向こうの計画としか思えないわ」
「先程から貴様はなんだ!貴様の手など借りることはない!さっさとこの場から立ち去れ!」
そう強気に言って立ち上がった将軍と呼ばれた男が突然固まった。よく見ると空気に溶けるように透明な氷が男を包んでいた。ふと、目を落とすと首元にいたルリムが白い光線を将軍めがけて撃っていた。いきなり何してやがりますかこいつは。
「やめなさい」
『?』
「その光線をやめて、あの男を元に戻しなさい」
そこまで説明すると素直に光線を引っ込めてくれた。なら最初から撃たないでくれませんかねぇ?お陰でみんな「こいつ、化け物か?」みたいな目で見てくるしさ。
「……で、力を貸せばいいの?このまま帰ればいいの?」
「……お力を貸してもらえませんか?」
枢機卿が答えると思ったけど意外にも返答したのは王女だった。まあ枢機卿だろうが王女だろうがあんまり関係ないけど、まあただ働きも嫌だし。
「……力は貸すわ、ただしあくまで貸すだけ。ちゃんと返して貰うわ」
「分かりました、そちらの危機に際してこちらから軍を「要らないわ」……返すのではないのですか?」
「はっきり言っていいならこの国に比べたらガリアの方が強いわ、だから軍を送られても足手纏いなだけよ。その代わり一度だけこちらの要求を飲む。それでいいわ」
「……分かりました」
「王女!」
「今はこの国の危機です。何であれ助かるのであればそれを利用します。ミス・ノーレッジ、この国をお救い頂けますか?」
「……まあいいけど、誓約書なりなんなり書いておいて貰うわ。ここでなかったことにされても嫌だし」
「分かりました、では後日ガリアの方「今よ」……枢機卿」
「ミス・ノーレッジ。貴方はこの国に何を求めるのです?」
別に、ただ働きしたくないだけなんだけどなぁ。まあ強いて言うなら戦争はしたくないし、面倒だから。
「……平穏、かしら?」
「……そうですか」
まあぼちぼち戦いますか。せっかく一回だけ言うこと聞いてもらえるんだしちゃんと報酬分くらいは働こう。それ以降は後続に任せた。
続く