魔法使いが魔法の世界に行ったのに何かおかしい   作:粉プリン

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第3話

学校の入学式、まあ世界が変わろうと今までのようにホールのような大きな部屋に列をなして入っていき、名前を呼ばれたら立って返事をする。あとは校歌のようなものと神への感謝(必要なのかは定かではない)を唱えて、校長の長い話を聞き流したら入学式なんてすぐ終わった。その後、各教室に戻り自分のクラスメイトとの顔合わせを経てこれからの自室となる寮に戻った。といっても学校内に自室を作る辺り相当でかいんだろう。初めに外観を見たときに今まで自分のいた城と良い勝負してるくらいだったし。

 

「……まあ一人部屋にしては十分広いかしら」

 

入ってみれば今までいた地下室と大して変わらない広さだった。強いて言うなら本がそこいらに山積みになってない分、圧迫感がないので幾分かこっちのほうがマシとも言える。部屋の隅に安置されている荷物を整理し、しばらく待っていると鐘が何回か鳴った。この学校では鐘の回数で色々と時間を判断するらしく、手元の手引きによればこれから昼食の時間らしい。早速地図を片手に行ってみるが結構人が多い。今回新入生が過去稀に見る大所帯で来たらしく部屋もパンパンだと聞いた。食堂に着くと各学年ごとで分かれているようだった。新入生である自分達は割と端のほうに固まって話している。まあ自分は会話に参加せずに持ち込んだ研究のまとめを読んでいるが。今までの研究の成果とこの世界での魔法を比べてみるとやはり自分の使う魔法の方が利便性が高く、また威力や範囲的な面で見ても自由が利くようだ。だからといってこっちの魔法が劣っているというわけではないけど。

 

「……隣、いい」

 

「いいわよ……て」

 

話しかけらたので反射的に返事をしたが隣を見れば、青い髪に青い瞳。間違えようもなく、自分がジョゼフから護衛をと頼まれた子だった。

 

「……なにか?」

 

「いや、なんでもないわ。知り合いに貴方に似た髪色をした人がいただけよ」

 

「……そう」

 

なんとも物静かだ。自分が言える立場じゃないけど。

 

「名前、聞いてもいいかしら?」

 

「タバサ」

 

「そう、私はパチュリーでいいわ」

 

「……パチュリーは、いつも本を読んでる」

 

「ああこれ?これは本っていうよりも研究書のほうがいいかしら」

 

「研究書?」

 

「自分が魔法について調べたことをまとめ、新しく構築した魔法を書き記して、新しい理論を創り上げる。まあまだ序の口といったところだけどね」

 

本当、まだまだ序の口だ。個人的には魔法なしでどうにかして飛ぶとかしてみたい。夢のまた夢になりそうなのは気のせいだろうか。

 

「……すごい」

 

そんなにキラキラした目でみないでほしい。自分よりもっとすごい人はいるだろうし、それに周りからもなんか視線を感じ始めたのでここらで話を切らせてもらおう。

 

 

ーーーーーー

ーーーー

ーー

 

 

入学式してから一ヶ月が経った。特に変化もなく魔法の基礎のようなものから教わっている。まあ別世界の知識とはいえ二十年以上学校というものに通っていれば考える力は自ずと付いて来るわけで、結果

 

「……悔しい」

 

「入学一ヶ月のテストなんて事前知識の有無を調べる程度でしかないわ。むしろ大事なのはこの後のテストでしょ?」

 

入学してから一月後に行われたテストでフル得点を取ってしまい、余計な注目を浴びていた。確かに満点を連発した自分のせいだが、幾ら何でも四属性を答えろなんて簡単な問題作るか?テストが総じて簡単だっただけだと言っておく。

 

「そういえば、次は外で授業だったわね」

 

「確か、フライの呪文」

 

フライといえば、魔法なしで飛ぶ術だが一応思いついたことには思いついたのだが、まだ自分の力量では手が届かない為もう少し修行というか魔法の練習をしなくてはならなかった。その分それさえ習得してしまえば他のものにも十分応用が効くので、何としても習得しておきたいものだが。タバサと共に外に出ると既に何人かのクラスメイトが揃って話をしていた。自分たちも端のほうにいき授業が始まるのを待つ。

 

「それにしても……少しは誰かと話したら?」

 

「貴方には言われたくない」

 

常に本を読んでいる為タバサはクラスメイトの話を基本聞いてない。というか本を読んでいる最中のタバサに話しかけてもおそらく話しかけられたことすら気づいてないのではないだろうか。そのせいでクラスから浮いているのだが、まあ確かに日がな一日部屋に篭って魔法の練習をしてる自分には言われたくなかろう。

 

「諸君、私が今回の授業を務めるギトーだ」

 

ギトーと呼ばれる先生は開口一番言ってきた。

 

「今回の新入生は、ほぼ不作だ」

 

タバサと自分以外のクラスメイトが顔を歪める。まあ面と向かってお前らは使えないと言われたらそりゃ腹をたてる。

 

「書類を見たがほとんどの者がドットメイジではないか。ラインも数名。トライアングルに至っては皆無。どういうことかね?」

 

まあ新入生なんだからまだ基礎しか教わってないとはいえ、言い過ぎかもしれない。指摘するなどという馬鹿な真似はしないけど。

 

「その点、そこのミス・ノーレッジはスクウェアだ。新入生にしては唯一抜きん出ている」

 

お願いだから変に持ち上げるのはやめてください。クラスメイトの一部が化け物でも見るような目で見てくるんで辛いです。てかあの親バカなんでスクウェアで入学させたの?自分の姪はラインで入れたのに、タバサもうトライアングルなのに。

 

「では、まずはフライの呪文だ。唱えてみろ」

 

その後、全員でフライの魔法の練習を行ったが全員慣れていないのか少し浮く者もいれば全く上がらない者もいる。タバサは比較的早い段階で上の方に立って本を読んでるし、自分も合図があった瞬間からゆっくり上昇していたのでタバサよりも少しだけ早く上に昇った。

 

「みろ、こんな小さな娘にも出来ているのだ。お前たちは恥ずかしくないのか?」

 

いや、自分はまあそこそこ大きいからタバサのことを言ってるんだろうけど、タバサは既にトライアングルだしほとんどの生徒がライン以下なら仕方ないと思う。そのことを知らない生徒が恨みの視線でタバサを見てるけど、本人はどこ吹く風状態で本を読んでるけどね。

 

 

続く


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