使い魔召喚の試験が無事終わり(一人だけ人間を呼び出したとかなんとかで騒ぎがあった)、今は食堂で夕食を取っている。あの後、クトゥルフとなんとか契約を結んだが正直に言ってただの一介の魔法使いが邪神なんて使役していいのか不明だった。まあ出てきた者は仕方ないし、今更元の場所に帰れということもできない。使い魔の交代は術者の死亡後と言われたため、もう諦めることにした。それとクトゥルフだがあのままの体格では絶対に面倒ごとになるというと、なんと体を自由に変えられるというらしい。最も変えられるのは大きさと一部のみだと言ってた。まあ大きさが変えられるだけマシといった感じだ。今はちっちゃくなってうねうねしてるスカートを履いた六本腕の少女となって自分の頭の上でなにやらボリボリ食べていた。出来れば生徒が置いておいた鳥の骨ではないと思いたい。骨が主食とかどんな生活してきたんだ。
『魔の者、彼の地には、血の雨は降る予兆がない』
そんなものあってたまるもんか。本当どういった世界で暮らしてきたのか。聞いても理解できないだろうし、理解して発狂したりとか廃人にでもなったら元も子もないため心の中だけで突っ込んでおく。夕食を終えて部屋に戻り寝巻きに着替えるとベッドに寝転んだ。流石に今日は疲れた。魔法の研究も今日は休みでいいだろう。適度な休憩も必要だ。
「おやすみ」
『猛り狂う、暗き夜を』
そんな夜死んでもごめんだ。
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次の日、朝からあちらこちらのテーブルで自分の使い魔の噂が広がっていた。どうやらクラスメイトが自分の使い魔について話しているところを他の誰かが聞き、一気に学校中に広まったようだ。今では自分の使い魔=邪神と皆が思っているようで誰も近づいてこない。朝食の際もタバサとキュルケ以外は距離を取っているくらいだ。
「馬鹿ねぇ、邪神だかなんだか知らないけどそんなに怯えることないじゃない」
「理解できない存在に対して人はまず恐怖を覚えるのよ。むしろ邪神と聞いた上で平然としてる貴方達の方が異端なんじゃないかしら」
「それを言うなら飼い主のパチュリーもそうじゃない」
ペットみたいに言うな。これはそんな可愛いものじゃない。朝起きて一言目に血はないのかなんて聞いてくるペットは誰だって嫌だと思う。
「私の場合、召喚した時点でもう諦めてるのよ」
「……でも、とても珍しい存在」
「確かにそうね。私の火龍山脈のサラマンダーとか、タバサの龍とかも珍しい方だけど、貴方の使い魔に比べたらねぇ……」
「使い魔に価値基準なんてないわ。それは自分たちの使い魔が劣ってるって言いたいのかしら?」
「そんな訳ないじゃない。うちのフレイムはそこらのラインにも引けを取らないわ」
「同じく」
「ならいいじゃない。たまたま私が邪神の使い魔を引き当てただけ。もしタイミングなり何かが違えば二人のうちのどちらかが邪神を使い魔にしてたのかもしれないわよ」
「……できれば遠慮したいわね」
「まあ過ぎたことは仕方ないとして、今は次の授業に遅れないようにしないと」
朝食を取り終え、次の授業がある教室で待つ。すると先生が入ってきた。どうやら錬金の魔法の復習を行うらしい。それぞれの机に石が置かれいよいよ始まろうといったところで、なぜかキュルケが挙手した。
「先生……あの、できればルイズには魔法を使わせないほうがいいかと」
「何故です?彼女はとても勤勉な努力家と聞きました。一度の失敗を恐れずに何事にも挑戦することが大事なのです」
「……忠告しましたよ?」
何故だかルイズという生徒に魔法を使わせたくないらしい。そこまでする必要があるのか。
「……キュルケ、何かあるのかしら?」
「パチュリーはあの子の魔法を使うところを見たことがないんだったわね。早く机の下にでも隠れた方がいいわよ」
それはどういう、と聞く前に前方で爆発が起きた。咄嗟に魔法で正面に防衛魔法を放ち自分より後ろに衝撃がいかないよう防ぐ。
『視界確保、塵を喰らう』
クトゥルフが埃と煙を分解してくれたので視界も開けた。目の前の机は所々掛けたり吹き飛んだりしていた。特にルイズが魔法を放った机はない木っ端微塵に砕け散っていた。他にも今の爆発で前方の方にいた生徒と使い魔が壁際まで飛んでいたり、先生が黒板前で気絶しているなど、正しく大惨事だった。
「……ほらね、こうなるからよ」
「まあ、納得はしたわ」
「それと助かったわ。ありがとうね」
「ありがとう」
「あくまで自分を守っただけよ。結果論だしそんな感謝しなくてもいいわ」
まあ本音を言うなら今のを受けてタバサが怪我でもしたらあの親バカが黙ってないだろうし、下手したら私欲で戦争でも起こしかねないから、とは流石に言えないだろう。
続く