魔法使いが魔法の世界に行ったのに何かおかしい   作:粉プリン

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第9話

ルイズの爆発事件からしばらくしたある休日のこと。何時ものように部屋で魔法の研究を進めていると、いきなり扉が勢いよく開き、キュルケと背中を掴まれたタバサが入ってきた。

 

「いきなりご挨拶すぎないかしら?」

 

「悪いわね、でも今急いでるのよ。ルイズ達を追うことはできるかしら?」

 

「タバサの使い魔はどうなの?」

 

「聞いてみたのだけど、竜の視野外に行っちゃったらしくて見つけられなかったわ」

 

「邪神」

 

「そうそう、パチュリーの使い魔ならどうにかなるんじゃないかと思ってきたのよ」

 

「……つまり、私に作業を中断してルイズを探すのを手伝えと?」

 

「……だめかしら?」

 

「…………まあいいわ、ちょうど休憩でもしようと思ってたところだし。息抜きにはちょうどいいのかもね」

 

「そうこなくっちゃ」

 

「クトゥルフ」

 

『魔の者、東にて、駆ける肉塊が二つ』

 

「見つけたようね、行くわよ」

 

「行くって……何でよ」

 

「飛んでいけば馬よりは早いでしょう。ならタバサの竜に乗っていけばいいわ」

 

という訳で早速タバサの使い魔に乗ってルイズ達を追う。ぐんぐん速度は上昇しそれに比例して前方に大きな町が見えてきた。

 

「どうやらあの辺りにいるようね」

 

タバサの使い魔から降りてしばらく歩いた先にある店を裏路地から見つめるキュルケ。どうでもいいが今ここに自分がいる意味はあるのだろうか。正直方角さえ教えれば後はどうにでもなったんじゃ……。考え過ぎかもしれないけど考えてしまうから仕方ない。まあこれも休憩の一つだと考えれば無意味ではないはず。

 

「……あれ、クトゥルフ?」

 

少し目を離したスキにクトゥルフが何処かへ行ったのか姿が見えない。と思ったがフワフワと上から帰ってきた。

 

「どこに行ってたのかしら」

 

『彼の地にて、配下の僕を、手中に収めていた』

 

「なんでもいいけど、人間を直接支配して操るとかはやめておくのよ。私が目をつけられても困るから」

 

『了承した、魔の者』

 

「行くわよパチュリー」

 

見れば全体に宝石を散りばめた明らかに実戦向きではない剣を持ったキュルケがいた。というかそれはどうするんだ?自分で使うのか。

 

「それ、どうしたの」

 

「ルイズには手が出せなかった物よ。だからこそ私から彼にプレゼントするの!」

 

「彼って……ルイズの使い魔?」

 

「そうよ」

 

「……気のせいじゃなければ、確か朝食の席で男三人くらいに告白してなかったかしら?」

 

「あぁ、あれ?あれはもういいわ。せっかく私が何処かに行こうかと思ったのに勉強勉強ってそればっかりで飽きちゃった」

 

「とんだ女王様ね」

 

「それよりも、早く帰ってこれをサイトにプレゼントしないとね」

 

「私は自力で帰るからいいわ。もう少し見て回るから」

 

「あらそう?なら先に行ってるわね」

 

タバサの使い魔に乗って帰るキュルケ達を見送ると裏路地に入る。せっかくこうして街に来たのだから何か魔法の研究に役立つ物でも集めておこうと思う。まあそうそう希少な素材があるとは思えないが、掘り出し物の中にそういった物があるかもしれない。覗くだけならタダな訳だし少しだけ見てから帰るとしよう。

 

「クトゥルフ、この辺りに何か変わった物はあるかしら?」

 

『西の端、城の上にて、神格の気配』

 

西の端、と言われ見てみたがそっちの方向にあったのはどう見ても王城だ。ガリアなら兎も角トリステインの王城に勝手に侵入して厄介ごとになるのはごめんだ。まあ神格というのも気になるが機会があった時にでも見ればいい。機会があるかどうかは別として。

 

「なら、もう一つの目的も果たしておきましょうか」

 

そう言い、街の中を歩き回って丁度よく見つけた賭博場に入っていく。店に入った途端、嫌な視線を全身に感じたが仮にも邪神がいるから何か起きたとしてもそれは向こうの責任だろう。もちろん何かあるのも向こうだが。

 

「嬢ちゃん。ここは子供の遊び場じゃねえんだ」

 

「知ってるわ、だから入ったのよ」

 

ポーカーはイカサマでもされたら面倒なためルーレットにする。

 

(クトゥルフ、聞こえてるなら手を貸して。あの丸い玉が入る位置を先読みで教えて)

 

(血の16)

 

赤の16に持っていた金貨を一枚置く。これは金ならまだあるがわざわざジョゼフから借りるのもなんだし自分で使う分くらいは自分で稼ごうと思う。まあ仕事なんて時間がかかりすぎるからこうしてズルする訳だけど。バレなきゃいいよね。玉は狙い通り赤の16に入った。数字をぴったり当てたのでこれで32倍だ。

 

(次は?)

 

(闇の5)

 

黒の5に今当たった金貨を全て置き、また玉が回り始める。今度も当然のように黒の5に入り、金貨一枚が合計1024枚に。これだけあれば十分足りるでしょう。

 

「換金をお願い、全額金貨で」

 

『魔の者、背後より、反応』

 

突然背中に鈍い衝撃が伝わってきた。振り返ると酒瓶を手にした男が真っ青な顔で立っていた。そりゃそうだ。酒瓶で正確に頭を狙ったのに何処からか生えた触手が酒瓶をボリボリ食べれば(・・・・・・・・)誰でも驚く。まあ自分はクトゥルフの毎日の食事シーンを見てるから悪い意味でもう慣れてしまったけど。あれは初めのうちはトラウマになりそうだった。タバサも柄にもなく私に抱きついて震えるくらいだったし。

 

「な、な、ななんだ、てめぇ!」

 

「なんだはこっちの台詞なのだけど。ここでは勝った相手の頭を酒瓶で殴打するルールなのかしら?」

 

「う、うるせえ!ここに入ってきたからには逃がしはしねえぞ。身ぐるみ剥いで好事家に売りさばくんだからな。お前ら、やれ!」

 

その瞬間、さっきまでテーブルに座ってポーカーをしていた客や、隣にいたルーレットの客が一斉に襲いかかってきた。まあ

 

「クトゥルフ」

 

『贄の、鹵獲、遂行』

 

「うご!?」

 

クトゥルフに任せて全部処理して貰うのだけどね。まあ無闇矢鱈と何かを食べるなと言っておいたしさすがにいきなりここでバリボリ、とはいかないだろう。……いかないよね?見てみるとどうやら食事シーンを部分で拘束したようだ。でも、それならその首に刺さってる注射器みたいなものはなんなの?なんで拘束されてる連中がガクガク震えてる訳?

 

『贄、肉体の改変、完了』

 

何してくれやがったんだこの使い魔は。いきなり洗脳術とかやめてくれないか。こっちは色々やばくてストレス溜まるわ。

 

「……今すぐ、金貨を用意します」

 

「え、ええ分かったわ」

 

そのままフラフラとした足取りで店の奥に引っ込み、しばらくして金貨の入った大袋を担いで来た。金貨千枚ともなると相当の大荷物か。男も若干苦しそうな表情……これはクトゥルフのせいか。

 

「……どうぞ」

 

「ありがとう。クトゥルフ、運んで頂戴」

 

『了承した』

 

予想外の事態になったが、まあ結果的に資金は増やせた訳だし悪いことやってたのは向こうな訳だし、事項自得だよね。その後、帰った時に出迎えてくれたキュルケ達に金貨を見られ何があったのか問い詰められるのだが、それは別の話。

 

 

続く

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