ポケットモンスター Reversed   作:アダス・セッシャー

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00 - 導入

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。

 この世界の不思議な不思議な生き物。

 

 彼らは空に、海に、大地に、街に、この世界のありとあらゆる場所で目にすることができる。

 その数は、百、二百、三百……いや、それ以上かもしれない。

 彼らは人間と仲良く暮らし、生活の手助けをしたり、ボディーガードの代わりになったり、人間の周囲に密接に関わっている。しかし、未だその生態には謎が多く、だから人間の研究者は彼らの事をいつまでも熱心に研究するのだ。

 

 ――では、ポケモントレーナーとは何か?

 

 この世界にはポケモントレーナーと呼ばれる人間もまた存在している。

 ポケモントレーナーと呼ばれる人間は、彼らをモンスターボールの中に入れて持ち運び、ポケモンバトルを通じてその強さを競わせる。勝利のために、あるトレーナーはポケモンとコミュニケーションを通じて絆を深め、あるトレーナーはポケモンを鍛えることに手段を択ばない。

 学校帰りの女子高生。網を振る少年。腕の悪い釣り人。泥棒。火を噴く曲芸師。神に仕える神主。暴走族。紳士。破滅寸前のギャンブラー。人間嫌いの科学者。ポケモンより強い格闘家。超能力者。天才。そう呼ばれる人々がいる。彼らはその肩書きと同時にポケモントレーナーでもあった。トレーナーは人種も職種も選ばない。ある一定の年齢を超えれば、人はモンスターボールを持つだけで誰でもポケモントレーナーになれるのだ。

 

 二年前、ある二人の少年たちが世界の頂点の闘技場に立った。

 共にポケモントレーナーを許される年齢を過ぎてすぐにトレーナーとなり、一年にも満たぬ間に地方を巡り、バッジを一つ重ねるごとに世界に彼らの力は広まっていった。そして季節が一巡する頃には、彼らは四天王と呼ばれる最強のポケモントレーナー達を下して、全てのポケモントレーナーの上に立っていた。

 二人はほとんど同時に頂に立った。一人は常に一つ先を行っていた者。もう一人は後を追いながら、少しずつその差を縮めていった者。

 彼らは頂の上で遂に交わって、そして戦った。歴史に残る数十分の攻防の後、真にその頂に登ったのは、後を追っていた者の方だった。

 

 かくして一人の少年は伝説となり、世界に衝撃と欲望をもたらした。

 ポケモンマスターとなって栄光を! チャンピオンに就いて名声を! などと、世間はこれまで以上にポケモントレーナーとして成功しようとする者で沸き立った。私も彼らのようなバトルがしてみたい、あんな少年がなれるのならば私にもなれるのでは、と。

 その伝説の後、ポケモントレーナー人口は急速に増え、今まで生活の足し程度にしかポケモンを扱っていなかった者もポケモンの実力を競わせるようになり、まさにポケモントレーナーの黄金期と言えるような時代が幕を開けた。

 

 では、この世の全ての人間はポケモントレーナーになるのだろうか?

 

 先の戦いについて世間は言う。勝敗など関係ない、素晴らしい戦いだったと。彼らに差は無かったのだと。

 だが、伝説に敗れた少年は、それ以降頂に上がることを良しとしなかった。敗北の後に彼の胸中にあったのが何だったのか、人々は推測できるばかりで、真実は何も知りえない。

 この戦いを見て、あれほど実力に差の無い者もあっけなく敗れ去ると受け取った者がいた。キャリアが一年程度の少年にあっけなく実力を抜かされて、才能の壁に絶望した者もいた。

 

 

 この世には当たり前に二種類の人間がいる。何かである人間と、その何かでない人間だ。

 男も女も、大人も子どもも、悪も正義も、その大多数がポケモンを操れるトレーナーであるのと同時に、この世にはトレーナーでない人間、トレーナーになれない人間も確かにいる。

 これはそんな中の、一人の少年の物語。

 

 トレーナーでなかった人間の物語。

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