side刻in後部甲板
こいつか。
俺の目の前には九六式艦戦があった。あったが、
「おい……マジかよ」
言いつつも自然と笑みがこぼれる。
何故なら、
「フライトシムで散々世話になったあいつの迷彩か!」
そう、フライトシムの俺の愛機、航空自衛隊の支援戦闘機「三菱F2」と同じ、洋上迷彩だった。
妖精の奴、わかってるじゃないか
"だんきはすんでいます!いつでもどうぞ!"
良し、行くぞ!
in操縦席
フライトシムで一応こいつも乗ったことがあるが、右に何やらすごく近代的なものがあった。
"みぎがわにあるぱねるでもーどとばれっとのきりかえができます"
試して見よう。
ええと、こいつがバレットの切り替え
カシャン!カタカタ
カシャン!
"ばれっとがそげきだんからちょうちょうきょりさくれつだんにへんこうされましたよ"
変更も出来ている。
"もーどのきりかえはいまはきんしです。こっちがふきとばされます"
わかった。飛んでからにしよう
さて、まずプロペラの回転数を上げる。
ドッドッドッドッ
ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!
ドドドドドドドド!!!!
日本の産んだ、一度は息絶えた海の荒鷲が今、
人と人の戦争では無く、人と神の戦争に、百四十年の時を経て。
『蒸気圧射出機、いつでもどうぞ』
おっと、感慨に耽るのは後で良い。今は吹雪を助ける。これが最初だ。
「了解。護悧 刻、高機動増槽装備型九六式艦戦洋上迷彩仕様、出る!」
長い……けど一度言ってみたかったんだよね、これ。
言い終わると同時にペダルを強く踏み、カタパルトに指令を伝える。
瞬間、カタパルトが暴力的な
「ッ………」
多分秒速430メートルは超えてる。
つまり、この機体の最高速度より早い筈。
慌てて機首を『下げる』。
今発艦した場合、最悪カタパルトの可動部に機体を引っ掛けて尻をしたたかに打ち付ける羽目になるからだ。
滑走路の終わりが見えた。
「上がれっ!」
機首を元に戻す
ブゥォォン‼︎
プロペラの回転数から吐き出される速度を軽く超えた加速を受け、プロペラが風の抵抗で回っている。
更にそのせいでエンジンの出力が強制的に上がり、結果高高度まで打ち上げられる形となった。
発艦から三分後
「ヘリからイーグルダイブした時もこんなに凄く無かったがんだがな……」
『こちらシエル、隊長、聞こえますか?』
「問題無い。だが、カタパルト使わなくても発艦出来た気がするぞ今回。
と言うか最高速度を軽く超えた加速を吐きだすカタパルトとかあぶねぇよ」
『吹雪さんのいる方向ですから問題無いのでは?』
「それはそうなんだが……」
『機体ダメージは無い様です。安心して下さい』
俺の身体があぶねぇんだよ
さて、そろそろ行くか
"ゔいえーえすを使うんですか?"
VAS?……なんだ、右の操作パネルに書いてあった。
Virtual
Air-Thrust
Systems
だそうだ。直訳すると「仮想空気噴進システム」か。
今は黒字に灰色で表示されている。
"ああ、使うつもりだが?"
"じつは、それ、まがれないんです。なのでふぶきちゃんのほうこうにきちんとむけてからつかってください"
"分かった"
鎮守府のレーダーに接続、吹雪の位置を確認して、
「VAS、起動!」
そう言ってパネルに触れる
クゥォーン
パネルの「VAS」がオレンジ色に染まり、その下に「起動シークエンス」と、同じくオレンジ色で表示される。
『Virtual Air-Thrust Systems
starting-up』
電子音声が告げる……が、何故英語なんだ。
『斥力システム、動作良好』
お、今度は日本語か。
『仮想大気噴進プログラム、始動』
ああ、大気だったか。
『大気シールド、造成完了』
ん?
『fire!!』
ってえ?fireってちょっとまておい
フゥォォン
フィン
フロロロロ
そんなSFチックな効果音も束の間
一瞬でマッハ1まで加速する、圧倒的な力が解放された。
俺は、このバケモノの性能を思い出していた
高速移動形態時
最低速度
マッハ1(秒速340メートル)
航続距離
機体が耐えられなくなるまで
最高速度
機体が耐えられなくなるまで
推進装置
高機動増槽(仮想大気噴進システム(VAS)搭載)
使用可能時間
30分(機体にダメージが蓄積しない限界は10分)
※ただし、曲がれない荒鷲