「俺たちは一体何処へ向かってるんだ?」
「後のお楽しみだよ。今言ったらつまら無いだろう?」
つまるつまら無いの問題じゃないぞ。
「せめて何処へ行って何をするのか教えてくれ」
「行けばわかるさ。」
こいつそろそろボケたんじゃねーのか?60歳だからそれは無いと思うが……
俺はヘリの中で、1時間程前のことを思い出していた。
「『深海棲艦』って、知ってるかい?」今喋ったこの狐顏は『ペイラー・榊支部長兼、前アラガミ技術開発統括責任者』如何にも最後に裏切るような顔してるけれど別にそんな事は無かった。
「ああ。ニュースでやってた程度の情報ならな」なんでも新種のヒト型アラガミらしい。完全な『人型』ならともかく『ヒト型』ならシュウ神属やらツクヨミ神属やらがいるだろう。別に騒ぐような事じゃない筈だ。
「じゃあ、対深海棲艦用に海軍を新設していることは?」
「まあ、一応は……でもなんで必要なんだ?そもそもそんな余裕あるのか?」
「知っての通りこの支部のある『日本列島』は周りを海に囲まれている。だから他の支部へ行く時は海の上も飛ぶ必要がある。ところが制海権はアラガミが持ってるから海の上を飛ぶのはとても危険なんだよ。これまではとても高いところを飛べば良かったんだけれども、深海棲艦が現れてからはそうもいかない。」
「何でだ?まさか深海棲艦は空も飛べるのか?いや、シュウやサリエルも飛べるけどそこまでの脅威じゃない。神機使いの護衛があれば追い払うくらいは簡単だろう……ダメだ、全くわからん。降参だ、教えてくれ。深海棲艦の何処が脅威なんだ。」
「そうだね、簡単に言ってしまえば、彼等……彼女等と言うべきかもしれないが……とにかく、深海棲艦には『神機を含めた既存のオラクル兵器が一切通用しない』まずはこれだね。じゃあ何故深海棲艦にはオラクル兵器が効かないのか。もっとも君は、既にその理由を知っている筈だよ。なんせ、『最初は君達だけが対抗出来た』相手だからね」
「まさか感応種?だけど今じゃ全神機使いのうち30パーセントはP57KIP2偏食因子を使ってるし、神機兵に至ってはBRCA1偏食因子を使ってるから、感応種に対応出来ない筈がない。」
「そう、深海棲艦は特殊な偏食場を作り出すんだ。そこまでなら対抗出来るんだけれども、問題なのはその偏食場の中で行われる事。ところで君は『どうして神機の攻撃がアラガミを倒せるのか』知ってるかい?」
「そりゃあ、『神機がオラクル細胞を使ってるから』だろ?」
「まぁ、そうなんだけど、じゃあ何故オラクル細胞を使えばアラガミを倒せるんだい?」
「なるほど、そう言う事か。答えは『オラクル細胞の結合を《喰い裂く》ことが出来るのはオラクル細胞だけだから』だな?それが出来ないってことはまさか、深海棲艦はオラクル細胞の活動を抑制出来るのか?」
まるでロミオみたいだな
「ご名答。ただし抑制よりも『沈静化』に近いみたいだけどね。もっとも、向こうもその力を上手く扱えないようだ。」
「と言うと?」
「向こうの偏食場……いや、『結界』と呼ぶべきか?……ともかく、その『結界』の効果はありとあらゆるオラクル細胞に作用し、結合をほぼ保てなくする。そう、『自分自身』さえもね。」
なんと言う自己矛盾
「それだと存在すら出来なく無いか?」
「確かに誇張し過ぎたね。正確には自分自身の結合は旧世代の実弾兵器で断ち切れる程度まで弱められているに過ぎない。そこが僕達人類にとっての唯一の救いさ。と言っても、戦闘ヘリで斃せる程ちゃちな装甲じゃない。最低でも艦砲か航空爆弾ぐらいは必要だね。」
「なるほど、実弾兵器が必要なのはわかった。でもそれなら航空機で十分だろ。軍艦は小回りが効かない。普通のアラガミに襲われたらどうする。」
現に航空機はジェットエンジンがあるし過去の文献からロケットエンジンが『開発中』の筈だ。なんでわざわざ軍艦なんだ。
「これ以上は直接見てもらった方が良いだろうね。一時間後に、自室の私物を持って第一ヘリポートに来てくれ。君のコレクションも持ってきてくれ。もう今の部屋には戻らないつもりでね。」