さて、作戦を説明するから集まれ、と堂山大将が部下に持ってこさせた机に世界地図をおいて説明しはじめた。
この世界では地形に不自然な穴開きは見当たらない。ホント、大事にしろよ?
「よし揃ったな。ではこれから作戦・《多世界深海棲艦殲滅作戦》の説明にはいる。
まずは敵深海棲艦が集まっているカレー洋に向かいそこにある、《ナツメグ諸島》の防衛を行ってもらいたい。
防衛が終わり次第、敵に奪われた《コリアンダー島》の奪還作戦を行う。そして最後に《ガラムマサラ島》近海にある敵泊地の破壊作戦。計3つの戦いを行ってもらう」
ナツメグ、コリアンダー、ガラムマサラか……カレーに使うスパイスか?インド洋もカレー洋だし。カモフラージュに使ってるうちとは違って本当にこんな名前なのか?
それはともかく。
「異世界からの深海棲艦ということで敵がどういった能力を持つのかはまだ分かっていないので慢心せず、心してかかってくれ。以上だ!では準備ができ次第、作戦開始!」
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カレー洋、ナメツグ諸島…マレーシアやシンガポール周辺のことだそうだ。石油が涌く資源帯であり、そこを狙われたようで、攻撃を受け始めたのは三日ほど前。すでにマレーシア・シンガポール両政府から救援要請が来ているらしい。
3日前ってことはうちじゃなさそうだな。二人のうちどっちかの世界の奴らだろうな。
……上陸してるのはうちから行った奴らかもしれんが……
とりあえず藍原達の艦隊が先鋒として出撃することになった。奴の艦隊の利点は俺らや御坂の世界の艦娘と違って艦体、つまり軍艦としての本来の姿を使えること。今回で言えば上陸を仕掛けようと深海棲艦が築いた橋頭堡を艦体の艦砲で粉砕する傍らで、艦体の操作を妖精さんに任せて艦娘が深海棲艦に対して攻撃を仕掛けることができるという事らしい。
ガンダムで言えばデンドロビウムの後ろ部分だけで独立機動出来る感じか。………むしろGNアームズに近いか?
まぁ、そういうことで挨拶もそこそこに藍原率いる艦隊は沖合で艦体を鎮守府からスキマを通して移送してもらうと巡航よりも少し速い20ノットで東南アジアへと急いだ。
こういう所は艦娘だけの方がいいよな。富嶽で運べるし。
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『こちら藍原。現在マレーシアまで残り320000。第一艦隊はちょっと金剛型に無理をしてもらいますが30ノットで突撃。第二艦隊は木曾と第一艦隊の大鳳を入れ替え日向がついてこれる限界まで速度を上げます』
『こちら堂山。了解した。数時間前に護利准将以下の攻撃隊が発進した。作戦海域に入る頃には合流できるだろう。
現地の防衛隊ももうすぐ限界かもしれん。急いでくれ』
「だそうだ。聞こえたな?浸透打撃艦隊は奴らの上を富嶽でついて行って、戦闘開始と共に浸透打撃艦隊は
『了解しました!』
「第一空挺艦隊は奴らの第二艦隊が到着するまで富嶽で待機、到着し次第
『了解です』
「さて、シエルと俺はあいつらが見敵するまで機体習熟訓練を兼ねて索敵、余裕があれば触接だ。富嶽とはオートバックアップで接続した。まずは俺が操縦する。良いな?」
「了解、You have」
「I have」
さぁ索敵だ!
………あ、アイツラの周波数分からねえ。さっきの周波数は封鎖しただろうし……触接しても情報伝えられないじゃないか……次回は先に聞いておこう。
クイックブースト、背面飛行、進行方向とは逆を向いての飛行など、色々試しながら触接したところによると、
「戦艦8、空母4、巡洋艦が合計20に対空装備含む大量の駆逐か……まぁ、この程度なら問題無いな」
それよりちょっと吐き気がすることの方がキツいのは内緒だ!
「さて、戻りましょうか?」
「だな……よし、全航空隊、合流するぞ」
一度引き返し、航空隊と合流する。
ちなみに単騎突撃したのは大部隊だと気づかれる危険性があった事と、この流星があまりに速いので他の機体を待つのは時間のロスになるからだ。
見ると藍原の第一、第二艦隊は速力をあげ、一路カレー洋へと突撃していった。
第二艦隊が遅い所を見ると、やはり第一艦隊で叩きつつ制空権を取り、第二艦隊が到着し次第全力で殴る感じか。
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距離六万を切るか切らないかの辺りで逆探に反応があった。まぁこの位置なら藍原艦隊だろうな。
「まず制空隊が全て叩き落とす。この時爆装戦闘機隊は落とすのを忘れるなよ?次に爆撃機隊と攻撃機隊で交差攻撃。放ったら戦果確認はせず戻って富嶽で補給を受けろ。穴が開かないようにタイミングをずらしながらの波状攻撃だ。戦果確認は俺がやる……なに?別に戦果とったりはしない。本当だ。……本当だぞ?」
こっちは翼下装備はガンポッド。爆弾は無し。喰手は機体の上のバックパックも含めて5本でそれぞれが斥力空気砲搭載。まるでハリネズミだな。
さて、敵さんの戦闘機はどんなかね……?
「さて、ここからは俺がガンナーだ。You have」
「頼みますよ?I have」
BGMは『吹雪の声』ってところか?別に駆逐艦吹雪の発言集じゃ無い。フェンリル戦闘BGMアーカイブスにある曲だ。
クイックブーストを多用して躱し、後ろを向いての引き撃ち、喰手搭載空気砲で撃ち落とし、喰手の間合いに入った奴は喰手で噛み付いてコペルソール式(長いので以下C式)鹵獲独房へ放り込む事で制空権を奪取する。
そこへ藍原艦隊の装甲空母……確か大鳳とか言ったか……からの通信が入る。
「こちら大鳳。攻撃隊より報告します《敵ノ熾烈ナル対空攻撃ヲ突破シ敵艦隊二被害ヲ与エタリ
敵空母二隻撃沈、戦艦三隻二損害。駆逐艦二隻ヲ撃沈ス
ナオ敵艦隊二艦体ヲ確認セリ》以上です」
いや、見て来たから知ってるんだけどな。
やはりというかなんと言うか、敵艦隊は駿のいた世界のものだ。艦体があるのは資源輸送にもってこいと言う事だろう。
ウチの世界の深海棲艦だと喰っちまうしな。
と、胴体兵装として展開していた(C式弾薬庫の恩恵で飛行中に胴体・翼下兵装は交換出来る)対空レーダーが反応した。
取りこぼしが居たかと後ろを見ると、
艦隊上空をフライパスした俺らのあとを追うように駿と艦娘は『飛行』していた。
目玉が飛び出るかと思った。いや、ウチにも扶桑型と言う例外もいるし、俺のバトルドレスの脚にもホバーは付いてるが、扶桑型のは推進力はさておき飛ぶ力はきちんと翼で揚力を得ているし、俺のホバーに至っては海面より1メートルが限度だが……
まるで飛ぶ事が当たり前かのように飛んでいる。
その上翼が付いていないと言うのも驚きだ。
そして距離二万で各自が散開、目についた獲物に食いついていく。
金剛はその主砲でもって近くにいた戦艦タ級に狙いを定めると上空から砲撃。艦橋前面を破壊すると中にいたタ級に接射。タ級は見るも無惨な物体に成り果て、その艦体は漂流を開始した。
大鳳はヌ級をターゲットに艦載機を射出。下がっていたエレベーターから攻撃隊を侵入させると格納庫で機銃掃射やら爆弾や魚雷、果ては増槽までをも投下し、大炎上させた。
意味が分からなかった。
だが俺は、もう一人の提督の存在を忘れていた。。
「おっとぉ! 逃げられると思うなよ? スプラで鍛えた腕前、なめてもらっちゃぁ困る」
スプラってなんだ。
ガン!ガン!ガン!と三発銃声が聞こえたかと思うと哀れなヌ級は銃創から青黒い体液を流しながら息絶えた。
大鳳があわてて後ろを振り返ると一瞬固まった。
一体どういう手品を使ったのか横須賀にいたはずの御坂が対物ライフルをもって射撃をしていた。
それも反動の強い25ミリ径弾を使うM109ペイロード(のボルトアクション仕様と思われる)を飛びながら撃ち、全弾命中させていた。
御坂はハンドサインで止まるな、と伝えると新しい標的に向かって飛んでいってしまった。
と言うかそもそも、防弾装備を着て流星に乗っている俺らはともかく、出会った時とさして変わらない格好で空を飛んでいるこいつらは、果たして本当に人間なのだろうか……
あまりの衝撃に思考停止していると藍原がこっちを向いた。そうなるとやることは一つしかない。
「……シエル」「……ええ」
「「負けてられ
そうだ。いかに奴らが生身で空を飛べたとしても、いや、生身で飛んでいるからこそ真似出来ない事が、俺達には出来る。
BGMは煉獄の地下街がぴったりだろうな!
「空は彼らにくれてやりましょう。私達は海面ギリギリまで下がります!」「了解!翼下ガンポッド及び胴体電探収納、胴体航空魚雷装備!バックパックは多目的ランチャーにカールグスタフ装填!全翼下パイロンにレッドアイを出した!行くぞ!!」
そう、
海面スレスレまで(文字通り波が当たる所……擦れ擦れまで)降り、各兵装を向ける。
あのスカした敵戦艦娘にレッドアイを二発ロックオン。「追尾する弾の恐怖を味わえ!」
ピーッピーッピーッピーッピピピピピピピーーーー
電子音がロックオンが完了したことを伝える。発射!
そのまますれ違い後ろの重巡洋艦に魚雷を三発発射、更にその後ろに隠れていた軽巡洋艦の深海棲艦娘(仮称)にカールグスタフの榴弾を至近距離で当てる。
横にスライド、生き残りのヲ級と思しき空母に接近して、深海棲艦娘(やはりヲ級だった)を喰手で引っ掴み、甲板に叩きつけて気絶させてからC式鹵獲独房へ
「奴らにもこれは出来ないだろうな!」「ですね!」
言いつつも撃ちきった兵装を再展開、さらなる
混乱しまくっている深海棲艦を尻目に藍原艦隊の、妖精さん操る(ちらっと見えた)第二艦隊の艦体はすでに第二艦隊の艦娘とも合流し、物資、兵力、護衛艦を火力で潰していった。(物資は回収しないのか………?)
同時に我が佐世保の誇る最
さて日が暮れ、味方航空隊はおネム……じゃなくて着艦の時間だが、流星は充電型だし俺とシエルにはナイトビジョンがある。まだまだ戦える。
ところで夜となると一番怖いのは潜水艦だ。
さっきはいなかったが増援として来ているかもしれない。
『こちら天龍、探信儀に感あり。頼めるか?』
おいおい、こっちは流星だぞ?
「出来ないわけ無いだろう?シエル!」
「潜水モード起動…………完了しました。潜ります!」
水中では電波の通りが悪いので主にソナーを使うことになる。
水中用のソナーがあるとは、実際乗るまで気付かなかった。
対潜魚雷があるからまさかとは思ったがな。
ーーーーーー
さて、最後の敵は飛行場そのものを支配する飛行場棲姫………らしい。さっき連絡が来た。
光のモールスをすっかり忘れていた。
尤も、今更どうと言う話ではないのは確かだ。
「シエル!後は奴だけだ!夜だから攻撃されることは無いなどと油断するな、対空砲を潰すぞ!三式空対地爆弾展開!と同時に投下!」「ミニガン展開、弾種徹甲弾。撃ち方はじめ!」
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人間かどうかわからない人外提督ども二人、試験型のチート機体一機、そして強力な艦娘多数が投入された結果、2000には殲滅完了(正確には生きている者もほんの少し居るが)した。
こうして一番最初の作戦は成功裏に終わった。提督の身でありながら戦った藍原駿、御坂楓、護利刻のうち、今回は護悧の活躍を綴った。残りの二人の活躍はまた別の話にて語られることになるであろう。なお、御坂は急に消えたので鎮守府では大騒ぎになっていたとか。
で終われれば良かったんだけどなぁ…………
事はそう単純ではない。ここはどこか?産油地域だ。だとすればここにも油田があったとしても、何ら不思議ではない。
「遅かったか………」
そこには、大量のドラム缶の跡と爆破された油田掘削施設(恐らく技術流出を恐れて爆破したのだろう)、そして少しのメモの消し炭が遺されていた。
その資料に書かれていた内容をなんとか日本語に翻訳すると、
『燃料移送、全体の99%を完了。最低目標を大幅に上回る。これで○○○○(恐らくコリアンダーの向こうでの呼称だろう)の防備はより盤石に成るだろう』