夜更かしを続け過ぎたせいで、体の調子が完全におかしくなった無機物です。
まずは目標である一ヶ月一話投稿ができて、ほっとしています。
余談はこのへんにして……それでは続きをどうぞ。
それからどう話が進んで行ったのかをエミヤはよく覚えていなかった。覚えていると言えば、何か大切なことを思いだそうとしていた事と敵意を持った視線が幾つか向けられていた事くらいだった。
あの後、手を縄で縛られて連行。その時、エレオノーラが何かを言っていた気がするが、覚えていない。
こうして今に至る。彼女が何を思ってこんなことをしたのかは不明だが、エミヤは牢屋ではなく普通の部屋に入れられていた。
「……立派な部屋だ」
その評価が牢屋と比べてなのは言うまでもない。日の入りが悪く周りはやや暗い。部屋はとても狭く横に腕を伸ばしただけで壁に手が付いた。それでもベットが置けるくらいには広くて実際にベットが置かれている。エミヤはベッドに寝そべりながら天上を見上げていた。ベッドの左隣に人一人がなんとか通れる通路があって右は向いてすぐに壁がある。小さいが窓もあった。とても狭い部屋だが天上だけは普通くらいに高かった。
(あの時……あれは、一体)
束縛する類いの物は付けられていないが、こんな狭い部屋でやれることなんてなかった。薄暗い天上を見つめながらエミヤは昨日のことを振り替えつた。昨日のこと。つまり、エレオノーラとのいざこざでの出来事のことを指す。終盤あたりで彼女が出した技を見て彼の脳裏に何が過った。その後彼はそれを必死に探った。目の前にいた者のことなど其方退けにしてしまうほどに。
その行動はらしくなかった。その結果、このような事態を招いてしまった。
(何故あの時、頭痛が。――私は)
あの時、必死にそれを思いだそうとしたとき頭が痛くなった。なのに何故、今、昨日と同じことをしているのにどうしてそうならないのか。
「何を、思い出そうと……」
突然、扉が開き誰かが入ってきた。開けられた扉の方へ視線を向ける。女の人だった。壁際の狭い通路を通ってベットの横に来ると見下ろす形でエミヤの顔を覗いた。
「呑気な人ですね」
表情の無い娘だった。機嫌が悪いように見える。年はエレオノーラよりも上だろうか。ただそれでもエミヤから見れば年端も行かない子と同等だった。
寝たままでの対応は良くないと思い、彼は上体を起こした。上体を起こした時、ミシリとベットが鳴る。そこそこ、危ない軋みだ。上体を起こしたことで少女の顔が先程よりよく窺えるようになる。表情が無いに等しいが、やはり機嫌が悪いように見えた。
「はて、君が誰だかは存じないが一体何の用が?」
そこには敢えて気づかぬふりをして疑問を投げかける。原因がどうであれ、下手に触れて八つ当たりをされてしまっては理不尽だからだ。
「……エレオノーラ様がお呼びです。私が案内するので付いてきてください」
それなりの配慮のつもりだったのだが、どうやら彼の対応が気に触ってしまったらしい。一度、エミヤへ鋭い視線を送った後、なにも言わずにさっさと部屋から出ていってしまった。
「全く、無愛想なものだな。しかしまぁ、捕虜に対してならそうもなるか……」
相手を待たせてしまうのは良くない。さっさと行ってしまった少女の後を追い、エミヤも部屋から出ていった。
少女は一体何の目的で彼の部屋へ訪れたのだろうか。エミヤが部屋から出てきた時、彼を迎えに来た筈であろう彼女は目的の本人を置いて自分だけ先に廊下を進んでいた。黙って来いとでも意味するのかその捕虜に扱いも何もないとは思うが、あの振る舞いが誰にでもか思うと呆れてしまう。
◆
迎えに来た使いに置いていかれるなど、ちょっとした事態が起きたりしたが今は無事に渡り廊下を歩いている。
初めて歩く公宮の渡り廊下。日の入りが非常に良くエミヤがいた部屋とは偉い違いだ。日が差してくる窓は大きめな造りになっているので外の景色がよく見えた。窓からは中庭らしき場所が覗くことができて、そこには兵士や侍女の姿も見ることができた。
「いい景色だ。皆、活気がある様に見える」
一人、感想を言ってみるが前を歩く少女はそれに反応しない。聞き流しているのだろう。
彼女の仕事はエミヤ(捕虜)をエレオノーラの元へ場所へ連れていくことそれだけ。単純に興味が無いのもあるのだが、自分に与えられた役割以外のことをするのは会話も含めてやる気が無かった。
無言でただ廊下を歩いていると二人組の侍女が前から歩いてきた。
「あ、おはよう御座います」
侍女二人はこちらに気づくと足を止めて一礼。挨拶してきた。その対象は言うまでもなくエミヤの前に立つ少女に対してだ。挨拶をされると彼女も一礼して挨拶を返す。挨拶が終わると侍女達は止めていた足を動かしエミヤ達二人の横を通り過ぎていった。エミヤとすれ違う間際、侍女の一人が横目で彼へ視線を送った。不思議なものを目の当たりにしているような。そんな視線だった。
「ここでの私は珍獣、か……」
侍女達の反応も尤もな反応だ。彼女等から見ればエミヤは昨日までいなかった余所者。そんな彼が昼間から歩いていればその目で見られるのは必然と言ってもいいだろう。
横を通り過ぎていく侍女等を目で追うと、後ろの方にも物珍しそうにエミヤを見る視線が幾つかあった。しかも侍女だけではなく、そこには兵士の姿もあった。捕虜というのはそこまで珍しいものなのだろうか。
「ここではそうなっても仕方ないかと」
今まで無言を貫き通してきたはが口を開けて話しかけてきた。エミヤの方は向かずに話しかけてきたのだが、ここではと言うのはどういった意味なのか。
「それは、どういう意味かね?」
次の展開を何となく想像してからの問いかけだったのだが、やはりと言うべきか返事は返ってこなかった。変わりに返ってきたのは無言で冷たい雰囲気だった。
それからはまた無言の歩行が続いた。その内、彼女の無愛想な態度をエレオノーラと重ねて評価していた。
「着きました。ここです」
そうこうしているうちに目的の場所についたようだ。道はまだ続いているが右手側には大きな扉があった。木製で何かの模様が彫られていて高級感もある。どうやら彼を待っているエレオノーラはこの扉の先にいるらしい。
先を先導していた少女がここで初めてエミヤの方を振り返った。
「ここから先へはお一人で行っていただきます」
余程彼の顔を見たくなかったのだろう。仏頂面の少女の眉間にしわが寄っていた。
「それはどうしてだ?」
「……そういうご要望でしたので」
嫌々ではあったが今度は答えてくれた。
中で待つエレオノーラの要望らしい。正体もろくに分かっていない捕虜を見張りなしで部屋へ入れろとは全く可笑しな話だ。襲ってきでもしららどうする気なのか。する気は微塵もないが。
「経緯は分からんが了解した」
「くれぐれも、中の方では慎んでください……」
警告のような脅迫のような工場を受けながらエミヤは木彫りの扉へ手をかけた。
「やあ、待ちかねたぞ?」
扉を開けて直ぐに女の姿が目に写った。年増もいかない若い少女だ。銀色で艶のある長い髪に昨日と同じ露出度の高い服装。見間違えることなく、少女はエレオノーラその人だ。彼女は鞘に収まった剣を抱き抱えるように持ち、部屋の奥に造られた大きな窓辺に腰かけていた。
部屋の中へ足を踏み入れて扉を閉める。扉を閉める際、突き刺さる何かを感じたが敢えて無視をした。
「私に用があると聞いたのだが」
「そう。私はお前に用がある。それなりに大事なようがな」
エレオノーラは足を組んで、抱き抱えていた剣を壁に立て掛けた。空いた手で支えの形を作ると、そこへ顎をのせる。
捕虜に重要な話とは何なのか。エミヤは問いかけを敢えてせず次にくるであろう言葉を待った。
「これは私の独断の話でな、まだ他の奴らに話してないから決まっていないんだ。だから、リムには悪いが席を外させてもらった」
リム。誰かの名前なのは分かるが、一体誰のことを指しているのか。
「リム?」
初めて聞く名前だ。
「なんだ、まだ聞いてなかったのか? お前をここまで連れてきたやつのあだ名だ。名前はリムアリーシャ」
あの少女の名前はリムアリーシャと言うのか。初対面から名前も聞かないままここまで来て今初めて知った。覚えやすい名前だとエミヤは思った。自分がどうなるのかは後に分かるとして、彼女の名前を覚えていても損は無いだろう。
「話を戻すぞ。まだここだけの話だが――」
足を組み換え、エレオノーラは上目遣いの様な視線を彼へ送った。
「私に仕えろ」
突拍子もないことを言い出した。昨日今日、生け捕りにした捕虜を相手に自分に仕えろなどと。彼女の身分がどれ程のものなのかはエミヤの知ったことではないが、一体誰がそんな独断を認めるのか。そんな大それたことを発言したことが一番の驚きだった。彼一人を部屋へ入れた時もそうだ。
何故護衛の一人も側につけなかったのか。確かに、彼女は強かった。それは分かっている。だが、それでも。武器を持っていたとしても、それは無防備と言えるのではないだろうか。
「私の異論は無視か?」
「無視だ」
即答。本人はまだ決まっていないと言ったが、それではもう決定事項のようなものではないか。
「突然刃物を突き立ててこられたと思えば、次は捕虜にされ。更には部下になれときた。些か勝手が過ぎるのでは?」
これがエミヤにとって初めてというわけではない。今までにも私利私欲に力を振る人間を見てきている。見慣れていると言っても良いくらいに。
しかし、そういった権力を振るう者はそれ相応に年をとった人達ばかり。だからこそ、年端のいかぬ娘がそれに混じって似たようなことをすることは納得いかなかった
「それがどうした? ここの主はこの私だ。それなりの権力を持っているし力だってある。少しくらい欲深くても誰も文句は言うまい」
驚くことに、エレオノーラはこの城の宿主だった。貴族あたりだろうとは思っていたがまさかこれ程までだったとは。しかし、彼女の様子を見ればそれもあり得た話か。
溜め息を一つ。
「……何故私を引き込もうとする? 人望の厚い人間がいないわけではあるまい」
「私はお前が欲しいんだ。それ以外はいらない。同じことを言わせるな」
エレオノーラは不機嫌そうにしかめっ面を作った。腰かけていた窓辺から降りると壁に立て掛けていた剣を左手で手に取りエミヤの目の前まで近づいてきた。
「お前はずれている。戦姫から直々に歓迎をされているのだぞ。何故それを拒む?」
分からないが戦姫とは高貴な家柄な様だ。確かに王族や貴族から歓迎を受けることは喜ばしいことだろう。己の実績が認められ評価されているのだから。
しかし、自分の意見を無視され、やりたくもない役職をやらされることになったら。はたしてそれを光栄と思えるのか。少なくともエミヤには思えない。
「なるほど。君から勧誘を受けることは光栄と思えることなのか」
エレオノーラが何かを言おうとするが、そのまま話を続ける。
「目上の者に称えられる事は、確かに光栄に思えるだろう。しかし、その考えは私には適応しない。残念だろうが諦めることだ」
彼女の眉間にしわが寄る。どう意味だとでも言いたげな表情だ。それを察せないエミヤではない。聞き返されるより先に彼は話を続ける。
「私は無理矢理ここまで連れてこられてしまった。無抵抗な相手に剣を平気で挙げるような野蛮な者に好印象は持つことはできない」
「……」
彼女は何も言ってこない。怒りのあまり声が出ないのか、呆れてしまっているのか。それとも何も言い返せないだけなのか。しかし、エミヤがそんなことを気にするような事はなかった。
「つまりはそうことだ。君の様な人間に私は従わない。だから早く私を自由の身にしてくれると助かるのだが?」
貴族といった地位の高い輩に限って品格に拘っており、やたら誇りが高い。だから、そこを刺激してやりさえすれば簡単に挑発に乗ってしまう。貴族の類いの人物の殆どが欲深く、都合の悪いものが身近にあることを良しとしない。ここで激昂してくれれば後は彼の思う壺だ。
所見から自分の意思だけを優先してきた彼女もその類いの人物である筈だと、エミヤは思っていた。だか。
「くくくくくっ……」
少女は片手で口を抑えながら失笑し始めたではないか。予想の斜め上を行く結果が起きてしまった。
エミヤはエレオノーラからの誘いを蹴り、更には野蛮だと罵倒したのだ。にもかかわらず、目の前の彼女は何が面白いのか吹き出す笑いを堪えようとしている。流石のエミヤもこれには呆気に取られてしまった。何故笑うのか理解出来なかった。
「なにがそんなに可笑しい?」
「……いやぁ、すまない。だが、お前が可笑しなことを言うからだぞ?」
「私が、か……?」
思わず聞き返してしまう。エミヤが可笑しいことを一言でも言っただろうか。
「あぁ、可笑しい。お前のようなやつは初めてだ」
先よりは落ち着いたが、彼女はまだ笑っている。そんなに面白かったのか、部屋で最初に顔を合わせた時よりも表情が明るく生き生きとしている。今朝に見た誰かとは偉い違いだ。
「私とお前は初対面のようなものだろう? なのにお前は馴れ馴れしく言い寄ってきた。それが新鮮で面白くてな」
なるほど、と。表には出さず内心でそれがどうしてなのかを理解した。
エレオノーラは城の主を担える程の身分の持ち主。そんな大役を任されている彼女にため口を使える者はこの城に恐らくいないだろう。だから、こうして対等な立場であるかの様に話してきたエミヤの事を新鮮だと彼女はきっと思ったのだ。
「君は変わっている」
素直にそう思えた。仮に今までそういった経験がなかったとしても、自分の領域に土足で踏み入いられれることを良しとは思えないのではないか。なのに目の前の少女はそれを受け入れ、更には笑った。やはり、彼女は変わっていると思った。
「昨日の一件で君の人間性を決めつけてしまったが、どうやら検討違いな点があったらしい。見た目で判断するのは、やはり良くない」
「それは謝っているのか? よく分からないな。普通に頭を下げるだけで済むことだろ」
やや呆れ気味にエレオノーラはそう言った。だが、このやりとりが余程楽しかったのか、見ると満更でもなさそうだ顔をしている。
「それで、もう一度聞くのだが……」
彼女が突然改まった口調になったかと思うと、エミヤへ迫りだした。
「私に仕えてくれないか?」
改まって聞いたきたことは先程と同じことだった。だが、それよりも先にエレオノーラの行動の方が彼の頭を悩ました。
「……おい」
近い。二人の距離が近すぎる。視線を足元へ送ろうとするとそこでエレオノーラの目と合うくらいに。必要以上に迫ってきた彼女との間隔は無いに等しかった。少女は触れる一歩手前まで近づいて下から伺う様にエミヤへ視線を送ってきていた。
「下部でも奴隷でもない。私と共に戦う仲間になってほしいんだ」
それは、純粋な願いだった。そこに邪な気持ちは一切なく、本心からきていることが分かった。
だからこそ、と言うわけではないが気後れするような感覚を覚えた。何故だろうか。何故、そう思ってしまうのか。
「しかし、」
折角の誘いだが断られてもらおう。この世界で彼に殺す理由はないのだから。
「残念だ――」
二度の拒絶を言うより先に閉ざされていた扉が音をたてて荒く開かれた。エミヤとエレオノーラは反射的に扉の方を見た。扉の方を見た二人が目にしたものは、沸いて出る激情の怒りを顔中に表したリムだった。
見直しはしましたが、誤字や脱字があったら指摘の方お願いします。その他にも感想、意見もお待ちしております。
目標は一ヶ月一話投稿ですが、出来上がり次第投稿しますのでその時はどうか読んでください。
9月になって気温が少し低くなってきているので体調管理は気をつけましょう! それではまたいつか
……ガンプラ作りたい