救助された明石と戦死したのであろう北上と大井の
「それにしても、あの肉じゃがは美味しかったわね。また食べたいわ」
あの肉じゃがは確かにおいしかった、機会があればまた食べたいものだ。三水戦が鼠輸送をやっていることがバレやしないかとヒヤヒヤしたものだが、どうやら提督は夜間航行訓練に対し何の疑問も抱いていなかったのでおそらくバレてはいないだろう。服や日用品についてはしばらく安泰だろう、と隣で歯ブラシを咥えたまま寝ぼけている相方の赤城を盗み見る。この人当たりのよさそうな、「面倒見のいいお姉さん」といった容姿とは裏腹に、彼女を慕う子が誰ひとりとしていないのが少々気になるところではある。あの吹雪ですら「
そんな戦闘マシーンじみた思考の相方のことを頭の隅へと追いやり、加賀は孤島の前線基地跡地のことを考える。あそこの妖精さんたちは前の提督にひどい仕打ちを受けたのか、「提督」という単語に過剰反応してきた。できれば、こちらとしては早急にあの子をあの孤島から連れ出し、鎮守府で保護するのが一番いいのだろうと思い提督に進言しようと思っていたのだが、向こうの妖精さんが露骨に不快感を示したのではそれができない。こちらとしては拉致まがいのことはしたくないし、できる限り穏便に事を進めたい。だが、この鎮守府の秘書艦を務める長門が頭の固い頑固女なのが悩みの種だ。これではいくら提督に綾波の保護を進言したところで、長門が一蹴するのがオチだ。
現状、提督や長門秘書艦の目を盗んで不定期の鼠輸送で綾波に支援物資を届ける以外に方法がないのが歯痒い。助けてもらった明石や三水戦のメンバーは彼女への支援に賛成してくれてはいるが、いかんせん味方の数が少なすぎる。このままでは彼女が処分される危険性がある。せめて、この鎮守府の主力である金剛型や二航戦、五航戦の面々はこちら側の仲間に引き入れておきたい。鼠輸送要員として、第六駆逐隊の面々や球磨型姉妹を引き入れるのもいいだろう。
「それにしても、あの子の持ってた手のひらほどの大きさの板はなんなのかしら?」
少なくとも、あんなものは見たことがない。綾波曰く「スマートフォン」と言うそうだが、そんなものは知らない。どうやら、あの端末ひとつで情報検索や通信が容易に行えるらしい。今度行ったときに手に取って触らせてもらおう、少しくらいなら許してくれるはずだ。指で擦って操作するという新感覚の機械には興味が惹かれる、明石や夕張あたりならそれの簡易量産型でも泣いて喜ぶだろう。
だが、前途多難なのは綾波も私も同じだ。綾波は資材の確保や妖精さんたちの説得に、私は綾波への鼠輸送計画やその計画を支援するための仲間集めに。これからの行動をどうしようかと悩みつつ、加賀は艤装の整備に工廠ドックへと向かった。
加賀「あの肉じゃが、また食べたいわ」