KAMEN RIDER IDEA ~ヘレシー戦役~ 作:ブランドマーカー
イデア皇国が、次元帝国から独立した
次元帝国軍の大型戦艦が艦体側面に設置された数十基の砲塔から一斉射を繰り出すと、イデア皇国の小型艦船は持ち前の俊敏性を最大限に活かしてその砲撃を掻い潜り、逆に敵艦隊の死角同然の方向から砲撃を行う。すると間もなく、成す術なく砲撃に晒された数隻の大型戦艦が小爆破を起こし、その余波に巻き込まれた艦隊の一部は流星群のように煌めきつつ消失した。
それでも傲慢な総督は降伏を断固拒否するとともに徹底抗戦を再度艦隊に通達したが、彼の旗艦であるラント・ラディーレン《シュティーア》の艦内では、そんな劣勢に拍車をかける大混乱が巻き起こりつつあった……。
〈艦内に侵入者! 繰り返す、艦内に敵部隊が侵入した! 発見次第、速やかに捕獲せよ! 繰り返す――〉
艦内のあらゆる場所から赤色のランプを光らせつつ鳴り響いている警報に混じり、そんな指令が絶え間なく数度通達される。
「―――ちょちょちょっ! ちょーい、待てぃ!」
しばらくすると艦体後部に位置する格納庫の中へ、強調的な叫びとともに古風な意匠のエレキギターを背負った青年が走り込んできた。しかし入口付近に到着するも束の間――人影を視認した格納庫内の乗組員は突然手元の作業を投げ出すと、素早く青年を取り囲んだ。
「なぁーんなんだよ、お前ら!」
「それは我々の台詞だ。キサマ侵入者だろ!? そうでないなら所属とIDを名乗れ!」
「あん? 所属とIDだぁ? ねぇよそんなもん」
そんな乗組員の脅迫同然の命令に、露骨に不機嫌な表情を浮かべると、青年は手荒く髪を掻き上げつつ自身を包囲している連中をぐるっと睨みつけた。
「やはりな。ならば始末するだけだ、反乱分子め」
「はん。このコウキ様を倒せるもんなら……やってみろってんだ!」
次の瞬間、真っ正面から拳が突き出てきたが、コウキと名乗った若者は難なく片手で受け止めると、そのまま手早く払いつつ振り上げた片手でその乗組員を殴打する。続け様に二人組が襲い来ると背を屈めながら一旦距離を置き、床に片手を着けながら逆立ちしつつ勢いよく数人の乗組員を蹴り払い、更に着地した場所から背後に迫ってきた一人を一回転しながら蹴り飛ばした。そして、彼がまた床に両足を着けると一連の大立ち回りは終わった。
「はっ……手応えねぇな。あばよ!」
コウキは呻き声を漏らしつつ倒れている乗組員を見回しながら鼻で笑うと、そのまま先程自身が潜り抜けたゲートの方へ走りかけるが……。
「―――っとっとっと」
そんな逃走再開の一歩手前でゲートの向こう―――格納庫の外から今度は軍服を着込んだ兵士達が現れ、また取り囲みつつコウキの行く手を塞いだ。
「なんだなんだ? まぁ~だ、殴られたいってか?」
”マスカレイド”
兵士達は答えることなく、代わりに骨格のような意匠のメモリスティックを懐から取り出した。そして、起動の合図らしい奇妙な音声を鳴らすと、各自首筋の付近に浮き出てきた基盤状の痣へ挿入―――次の瞬間、多少個性のあった兵士達の頭部は背骨とも百足とも形容できる不気味な意匠のマスクに変質する。『仮面舞踏会の記憶』を宿した怪人『マスカレイド・ドーパント』だ。
「おーおーおー、けっこうけっこう~!」
そう言いつつ先程の乗組員と同じように自身を包囲するマスカレイドの一団を一通り見回すと、コウキはそのまま彼らの方へ意気揚々と突撃するが、その衝突が発生するよりも数秒早く、斜め上の方向から数発の光弾が流れるように二人のマスカレイドを撃ち抜いた。
「あん?」
「いい加減にしろコウキ」
撃たれた二人のマスカレイドが倒れると、ほぼ同時に光弾が飛んできた方向から若い声音が聞こえた。
コウキとマスカレイドの一団は反射的に声のした方へ顔を向ける。すると格納庫内を囲むように敷かれている一本の細い通路の上に人影が現れた。
「勝手に突っ走るなとあれほど言ってるだろ」
人影の正体はコウキとは別の青年だった。
年齢はコウキと大差ないようだが、背中まで伸びた長い髪、黒縁の眼鏡、身に纏っている衣服の装飾と配色など、あらゆる点を比較しても荒々しいコウキとは対照的に冷ややかな印象を与える。
「全く……尻拭いする僕達の身にもなってくれ」
「うっせ
コウキは自身とマスカレイドの一団を見下ろしている青年へ両腕を突き上げながら猛抗議するが、
「ふっ……単細胞な君らしい答えだ」
「なっ――」
「はーい! はいはいはいはい、上下から売り買いしない」
激化しつつあった青年二人の口論だったが、そこにまた別の人影が仲介するように両手を叩きながら現れる。
「ほら! そんな激おこぷんぷん丸みたいな面並べてないで、もっと笑顔になって。ほらほら!」
現れた人影は一人の男だった。
ゆったりとした衣服とフード付きの質素なパーカーに包まれた細身の肢体。やや中性的な顔立ちに鮮明な銀色の瞳と薄闇の中では一際目立つ純白の髪。一見近寄り難い印象の容姿ながら当人の対極的ともいえる軽妙な言動が加味されて一種独特な雰囲気を漂わせている。
彼は人柄そのまま軽妙な足取りで、置いてけぼり状態のマスカレイド達の間をすり抜けると、取り囲まれているコウキの傍に並び立ち、そこから再度周囲のマスカレイド達を見回すと突然奇妙な指摘を始める。
「いやいや旦那。笑顔も何もコイツら、ぜーいん! いま同じ面してんだけど?」
「え? あ……ああ、そうだな」
『ええい、いい加減にしろ! なんなんだキサマらは!?』
しばらく緊迫した戦況など意に介さない三人組の言動が繰り広げられたが、とうとう憤慨した一人のマスカレイドが問い詰めた。すると珍妙な三人組のやり取り取りは一応終息するが……。
「えっ、俺ら!? うーん、そうだな……よし! なら作者が唐突投稿しちまったから人物設定も世界観も全く浸透してないし、読者の方々へ自己紹介も兼ねて御教えしよう。俺はシルト! 上のあっちと下のこっちと一緒で、お前達がさっきから騒いでる――」
男は言い終える前に突然自身の隣に並んでいたコウキとともに素早く交差すると、そのまま目前に立っているマスカレイド達へ襲いかかった。
「侵入者だ。行くぜ、一騎! コウキ!」
「了解した」
「任されたぜ、シルトの旦那!」
そして、三人くらい殴打しながら言い終えた頃、青年二人にそう呼びかけた男はまた傍にいたコウキと交差し、彼とほぼ真逆の方向へ一目散に駆け出した。
『くそっ! 逃がすな、追え!』
直ぐに視認したマスカレイド達は二手に分かれつつ追跡するが、そのうち一方は追いかける前に突然降下してきた人影の片足に先頭の一人が蹴り込まれた為に出鼻を挫かれてしまう。当惑するものの人影の正体を突き止めるべく左右に展開すると、そこには先程上方の通路に立っていた長髪の青年の姿があった。
『おのれぇ反乱分子が! 邪魔するならキサマから片付けてくれる!』
「ふん」
そう言い放つとともに一人のマスカレイドが襲い掛かったが、青年は鼻を鳴らしながらその拳を手早く受け払い、更にそこから入れ替わりに襲いくる一団を次々いなした。
『クソッ……反乱分子めッ!』
「先程から反乱分子反乱分子と馬鹿の一つ覚えみたいに……仕方ない、ああいうのは柄ではないが、今回はシルトに便乗しよう」
青年は一人うんざりしたように呟いたが、言い終えた途端今度は一人をいなしつつ続けてきた二人目の足元へ素早く片足を突き出し転倒させ、更にまだ残っているマスカレイド達には拳銃から光弾を数発発砲して牽制する。
『くっ~、一体何者だ!?』
「僕はパルトナーの
怯んでいるマスカレイド達に青年――鮫城一騎はそう告げると、拳銃型だった携帯電話『ザインフォン』を引っ込めつつ手早く番号――変身コード『7・7・7』――を打ち込む。
”Standing by……”
「変身……」
”Complete!”
最後にそう呟きながら腰に巻いてあったベルトのバックルに突き立てたザインフォンを左側へ倒すと、一騎の身体に低い電子音声を発しつつ白色の光線が駆け巡る。
すると彼の全身は白い閃光に包まれながら紺色基調の特殊スーツに覆われた。腰のベルトに下がった大小三点のツール。白光する全身各所のエネルギー流動経路――ブライトストリーム。頭部に煌めく水色の
「仮面ライダー……ザイン」
『なっ!? ライダーだと!?』
「僕は弱い者イジメが大嫌いだ。直ぐに終わらせる」
『ふざけるな!』
一連の変身と姿に怯んでいるマスカレイド達へそんな兆発紛いの忠告を発すると、早速集団の一部がそれぞれ左右から駆け出してきた。対するザインはバイザーに覆われた右目付近を一瞬払うように触れた直後、ベルト部に下げていた二点のマルチウェポンZ状の『ザインブレイガン』とハンドル型の『アクセレイガン』を取り出し、間髪なく発砲すると、先陣を切っていた数人が被弾しながら倒れた瞬間合図だったように躊躇っていた者達もザインへ一斉に襲いかかってきた。
しかし、ザインは動じることなくアクセレイガンで牽制し、掻い潜ってきた者は軽くいなしつつ時折攻撃に失敗して隙の生じた不運な者にその背後から強烈な一撃を食らわせながら、バックル部のザインフォンに付属していたメモリーカード・ミッションメモリーを手早く取り出しザインブレイガンの側面に挿入した。
”Ready!”
するとザインブレイガンは上部から白色に輝く
更にもう一方のアクセレイガンをコンバットナイフ型の基本形態すると、ザイン自身も正確無比な狙撃者から一転勇猛な剣士のように一度腰を屈めつつ自ら敵陣に突っ込んだ。まず最初に接触した一人をいなしつつ飛び乗り、素早く押し蹴った反動を利用し迫ってきた二人目と三人目を蹴り払うと、そのまま宙返りして着地し、そこに迫ってきた残りのマスカレイド達を順序良く斬り伏せた。
「だから言っただろ……直ぐに終わらすと」
斬り倒されながら粒子化する敵兵達を背景にザインがそんな事を呟いていた。
――同じ頃、彼が最初登場した上方の細長い通路では……。
『うわあぁぁぁ~!!』
マスカレイドが一人落下した。
下の格納庫内で、まだ発見できない侵入者を捜していた他のマスカレイド達は一瞬当惑しつつも反射的に仲間が落ちてきた上方の通路へ視線を向ける。
「はっはっはっ!」
そこには別のマスカレイドの首元を掴みながら――実に楽しそうに――高笑いするコウキの姿があった。
彼に捕捉されているマスカレイドは必死に身動ぎながら言い放つ。
『クソッ! キサマ離せ!』
「いいぜ。ほれっ♪」
『なっ!? うわあぁぁぁー!』
するとコウキは景気よく要望に応えるように二人目のマスカレイドも通路から放り投げた。
「おおっと! これまた派手に落ちたな。んじゃ俺も――よっと!」
更にその末路を見届けると、今度は自身が手前の柵を乗り越えて飛び降りた。
そして、見事真下の格納庫内へ再臨すると、早速周囲に展開していたマスカレイド達の包囲網と対面する。
「着地成功♪ しっかし、そろそろ厭きてきたな……一気に片付けるか」
コウキは自身を包囲しているマスカレイド達を見渡しながら不敵に笑うと、素早く腕輪――変身音弦・音錠をかざすとともに吊り下がっている鎖を引っ張り、間もなく鬼の顔面を模した装飾から現れた小型の弦を弾いた。
刹那――コウキの全身に金色の業火が立ち上がる。突然の怪現象にマスカレイド達は驚愕のあまり一時膠着するが、我に返った数人が業火の飛び火する可能性を促す。
そして、一団は包囲網を維持したまま最早原形を留めていない火柱同然のコウキから距離を置いた。
その時だった。
「ハアアァァァーッ! ハアッ!」
燃え盛っていた火柱から唸るような叫び声が響き渡り、ほぼ同時に一本の剛腕が突き出るとともに勢いよく業火を振り払われるが、既にその消え失せた火柱の上がっていた場所にコウキの姿はなく、代わりに一人の戦士が立っていた。
鋼鉄のような光沢のある真っ赤な皮膚に覆われた逞しい肉体。目鼻口のない顔面に形相と錯覚させる金色の装飾や模様。そして、頭部から突き出ている二本の角。
その異形の姿は正しく……。
『鬼……?』
『いや、ライダーだ!』
マスカレイドの一人が呟きかけるが、間髪なく二人目が遮るように口走った。
するとコウキだった戦士―――荒鬼は変化前と全く変わらない、おどけた態度を取りつつ周囲のマスカレイド達へ名乗り出した。
「その通り~、俺はパルトナーの仮面ライダー荒鬼! へっへっへっ……待たせたな? 礼も兼ねてもうちっと遊んでやるよ。ホレホレ♪」
『なめるなよっ!』
手招きしつつ早速兆発すると案の定、包囲網から怒声を発したマスカレイド数人が駆け込んできた。
待ち構えていた荒鬼は早速先頭の一人をいなしつつ続けてきた二人目に蹴り込み、怯んでいる間にその反動を利用して宙に浮きながら更にもう一蹴して着地すると、間髪なく襲いくる二人の後続も勢いよく半時計回りに蹴り払い、また着地しつつ素早く態勢を整えた直後背後から持ち直した最初の一人が迫りくるが……。
『コイツッ!』
「ハン! そらよっ――」
荒鬼は背負っていた自身愛用の音撃弦『
「はっはっはっ! よ~し、そろそろ終わらすか。ほら来い!」
『おのれェ~!』
残っていた五人のマスカレイドはまた詰め入るように襲い掛かるが、荒鬼も疾走して一気に距離を縮めると、先頭から続け様に三人を豪快で叩き伏せ、更にその足元へ音撃弦を突き立てて軸代わりにしながら身体を勢いよく振り上げるとともに四人目へ蹴り込み、そのまま――軸代わりの豪快は一旦手放して――残っている反動を利用し、最後の一人に頭上から鉄拳を繰り出した。
「――ヒュ~♪ よろしんじゃね? はっはっはっ!」
――また別の空間にも逃走中の侵入者を追いかけて、軍服軍帽姿のマスカレイド数人が走り込んできた。
『いたか?』
『いや……他のブロックは?』
『それがダメだ。ブリッジにも連絡がないらしい』
『なんだと!?』
薄暗い空間を巡回しながら艦内の異常を察知し始めた兵士達はそんな口論に近い会話を交わしていると……。
「おーい!」
『『『ッ!?』』』
不意に呼び掛ける声が薄闇の奥――彼らの前方から聞こえてきた。
ほぼ反射的に振り向くと、その先にはシルトと名乗った男が、満面の笑顔を浮かべながら手を振っている姿が見える。
「こっちこっち!」
『アイツッ!』
『そのまま動くなよ!』
『おい待てッ!』
すると先頭の二人が周囲の引き止める声も無視してシルトの方へ突っ走ってきた。
「おっ? よし!」
『なっ?!』
『うぉわ?!』
しかし二人が跳びかかるように接近した瞬間、正面に立っていたシルトが消えた。
彼は突然失神でも発症したように倒れると、走ったまま当惑する兵士二人の足を障害物の如く引っ掛けて転倒させる。
「ごめんごめん。寝ちゃダメって言われなかったから♪」
『己ッ!』
『ふざけるなッ!』
そう怒声を上げながら転倒した二人は直ぐに復帰して男に再度攻撃を試みる。
シルトはまた難なく二人の攻撃を退いて殴打すると、今度は背後から迫ってきた三人目へ裏拳を繰り出し、更に怯んだ三人の間を潜り抜けてきた四人目を蹴り飛ばし、五人目は背を屈めつつ足払いして転倒させ、立ち上がった直後に最後の六人目が襲い掛かってきたものの間髪なく掴みかかって捕捉すると、そのまま倒れ込むとともに力一杯床へ叩きつけた。
「よし。今度はどなた?」
シルトは立ち上がりつつ残っているマスカレイド達へ振り返ると、彼らの顔を一通り見渡しながら冗談半分に問い掛ける。しかし流石に最初の連中が打ち負かされている光景を見ている為か、残っている敵兵達は臨戦態勢を取っているものの一向に攻撃を再開しようとしない。
そして、それから数分経過した頃……一瞬微笑んだシルトがとうとう自分の方から一団に駆け込みかけた、その時だった。
”ビースト!”
”バイオレンス!”
不意に二種類の不気味な音声が響き渡ると、後方からマスカレイド達を押しのけて、走り掛けていたシルトの方に大柄な二つの影が飛びかかってきた。
「おーっと!?」
乱入者の強襲に流石のシルトも戸惑ったものの間一髪、二つの影の猛攻を掻い潜ると、そのまま一旦距離を置きつつ乱入者の正体を突き止めた。
『ハッハッハッ!』
『ここまでだ、反乱分子!』
乱入者の正体は『暴力の記憶』により浸食された屈強な肉体に無機質な頭部――ただし鋭利な歯は並んでいる――と鉄球状の左手を持った『バイオレンス・ドーパント』と、『野獣の記憶』により変貌した青い剛毛や茶色の皮膚に覆われた獰猛な獣人『ビースト・ドーパント』だった。
二体のドーパントが轟くような声音でそう言うと、左右から威勢を取り戻したのだろうマスカレイド達がまたシルトを取り囲んだ。
「バイオレンスとビースト……なんか適当に倉庫から引っ張り出してきたようなチョイス」
『また訳の分からん事を……だが、その余裕もこれまでだ!』
『総督から許可は取ってある。この場で始末していいとな……!』
『安心しろ。逃げ回ってる二人も後から速達してやる『あの世』にな!』
せせら笑いながら言い放ったバイオレンスとビーストは付き従えるマスカレイドとともにそれぞれの象徴的な凶器でもある剛腕をゆっくり構えつつ包囲網を狭める。しかし、対するシルトの方はそんな絶体絶命といえる状況にも関わらず、恐怖に怯えるどころか、休息の一時でも過ごしているような微笑を浮かつつ言った。
「それよりも軍服姿に戻って、全員仲良く両手を上げながら降参する方がいいって、俺は思うんだけど?」
『フンッ! 命乞いならまだしも、何を言い出すかと思えば……』
『キサマはそういう哀れな冗談を吐く自分自身に自己嫌悪しないか?』
「殆どしない。まだ有効だが?」
『ほざけ! 今すぐ終わらせてやる!』
ドーパント達が怒気とも呆れとも思える言動を見せると、シルトは穏かな表情のまま胸の前に組んでいた両手を解いて、どこからともなく取り出した一枚のカードを掲げる。
「そうか。なら、こっちも……」
そう言い掛けている最中腰部に銀色のベルト『ディフェンドライバー』が現出し、彼は自動的に展開されたバックル中央部へ掲げているカードを投げ入れながら『キーワード』を口走る。
「期限切れだ……変身!」
”カメンライド・ディフェンド!”
直後にバックル部のハンドルを押し込むと、シルトの『キーワード』に呼応したように女性的な電子音を鳴り響かせながらカード状の閃光が複数発生し、周囲のドーパント達を弾き飛ばしつつ瞬く間に薄色のアーマースーツとともに無機質な『仮面』に覆われたシルトの頭部へ突き刺さるように一体化する。
鮮明になる青色のスリット、眩い輝きのプラチナボディ、腰から伸びつつなびくロングコート、最後に意思を有した芸術が名乗り上げるように全身から白金色の閃光を放たれると、その『仮面の戦士』は完成する。
「仮面ライダー……ディフェンド! 決め台詞はぁ~……絶賛募集中!」
『キサマがディフェンドだとッ!?』
『まさか……ええい、やれッ!』
仮面の戦士『ディフェンド』が名乗り上げると、バイオレンスとビーストは驚愕した様子を見せたが、直ぐに動揺しつつ後退っている配下のマスカレイド達へ、攻撃再開の号令を響かせる。
マスカレイド達は一瞬躊躇ったが、意を決したように一人が叫びつつ先陣を切ると、残りの者達も包囲網の中央に立っているディフェンドへ一斉に襲いかかった。
「大掃除だな」
ディフェンドはそう呟きつつ先頭の一人をいなしつつベルト部に付属していた銃剣一体型の専用武器『ラウムブッカー』を取り出すと、振り向きざまに一人目を斬り伏せた。それから間髪を入れず、ラウムブッカーの本体側面から一枚のライダーカードを引き出し、そのまま流し込むようにドライバーのバックル部へ挿入した。
”アタックライド・スラッシュ!”
鳴り響いた電子音声へ呼応するように刀身部が発光するラウムブッカーをガンスピンさせた後、ディフェンドは四方八方から襲いくるマスカレイドを、時には斬り払い、時には撃ち倒し、時には蹴り飛ばしながら、次々両断していく。
間もなく斬撃を食らった箇所から白金色の閃光を噴き出しつつ倒れたマスカレイド達はそのまま黒い粒子となり消滅した。
『ええい! 情けない奴らだッ!』
すると今度は怒声を上げたビーストが迫ってきた。
ビーストは鋭利な鉤爪が伸びた剛腕を勢いよく繰り出したが、対するディフェンドは素早く掲げたラウムブッカーでその一撃を受け流し、同時に蹴り上げるものの看破したビーストも反射的に数歩後退しつつ態勢を立て直す。
それから、休む間もなく再度接近した両者は互いの得物――ディフェンドはラウムブッカー、ビーストは両腕の鉤爪――を激突させたが、その攻防戦が暫く経過した頃、ビーストが受け止めたラウムブッカーに掴み掛り、そのまま強引に持っていたディフェンドごと捕捉すると後方へ放り投げた。
「った!? いてぇ~!」
『ハッハッハッ!』
「見えてても動けないって、もう年かな俺……よっ!」
”アタックライド・ブラスト!”
床に叩きつけられたディフェンドは転がったまま苦痛の声を溢し、ビーストはそんな彼に更なる追撃を仕掛けるべく進行する。
それでもディフェンドは横向きのままカードを挿入すると、接近してくるビーストにラウムブッカーの
「どうなるどうなる?」
『ハッハッハッ! 俺はその程度では倒れん!』
「わぉ……」
しかしディフェンドの銃撃は致命傷に至らず、ビーストは笑い飛ばしながら傷跡を再生させる。
「よし。なぁら……コイツはどうだ。変身!」
次にディフェンドはそう言うと、立ち上がりつつラウムブッカーから一枚のカードを取り出し、ドライバーのバックル部へ投げ入れた。
”カメンライド・コウキ!”
すると鳴り響いた電子音声とともに金色の業火に包まれたディフェンドは瞬く間に音撃戦士『仮面ライダー荒鬼』へ変身した。
『姿形が変わっただけでッ!』
ビーストは荒鬼へ変身したディフェンドにも臆することなく威勢よく言い放つと、また剛腕を振り上げながら襲いかかった。
「ああ、よく言われる。まぁそこは実体験してから感想くりゃんせ♪」
”アタックライド・オンゲキボウ――コウカイ!”
一方律儀に答えた
「んじゃぁー……どぉぞっ!」
すると先端の鬼石から火炎弾『洸戒弾』が放たれ、真っ正面から迫っていたビーストに直撃し――怯んだ隙に急接近したD荒鬼はその胴体部へ二対の音撃棒を叩きつける。
そのまま苦悶しながら数歩後退するビーストにD荒鬼は容赦なく音撃棒の連撃を繰り出した後、素早く飛び退きつつ握り直した音撃棒から刀身状の火柱が上がる鬼棒術『洸戒剣』を炸裂させた。
抵抗らしい抵抗もする間もなく金色の業火に『両断』されたビーストは怒気の混じった悲鳴とともに炎上、間もなく本来の姿である軍服軍帽の士官に戻り、首筋から亀裂の入ったガイアメモリを排出しながら倒れ込んだ。
「よよっと……よし」
『おのれぇ~ッ!』
飛び退いていたD荒鬼は着地しながらビースト・ドーパントの敗退を確認すると、多少安堵したように呟いたものの休む間もなく、後方から最後に残っていたバイオレンス・ドーパントが息巻きつつ突進してきた。
バイオレンスは左腕と一体化している鉄球を突き出したものの気づいたD荒鬼は瞬時に振り返りながら後退り、紙一重ながら強襲をかわす。それに怒り心頭したバイオレンスは巨体を震わせつつ上げた咆哮とともに再度猛攻を仕掛けるもののD荒鬼は中腰の姿勢で前後左右に逸れながら掻い潜っていく。
そして、また暫くすると一定距離を取ってからドライバーにカードを挿入する。
”カメンライド・ザイン!”
間もなくD荒鬼の全身にエネルギー流動経路・ブライトストリームが駆け巡り、一瞬発光すると紺色の強化スーツに身を包んだ戦士『仮面ライダーザイン』へ変身した。
対するバイオレンスはそんな変化したディフェンドにも臆することなく、ただ興奮する猛獣のように唸りつつ一度全身を大きく振るわせると、そのまま襲いかかってきたもののDザインは変身時に装備されたバックパック『フライングアタッカー』の操縦桿を弄り、猛進してくるバイオレンスの鉄球が突き出されるより早く、白い煙を上げながら飛翔し、頭上を飛び越えそのまま背後を取ると、
「どうよ?」
『クッ……キサマが~ッ!!』
しかし、一瞬怯んだものの異変に気付いたバイオレンスはまた身を振るわせつつ憤怒の咆哮を上げると、浴びている銃撃も意に介さず、振り返るとともに再突進してきた。
「チィ……」
Dザインは発砲し続けるものの憤怒するバイオレンスは意に介することなく距離を縮める。そして、とうとうDザインの真っ正面に到達すると、やや当惑した様子の彼へ渾身の鉄球を突き出した。
『うおおおぉぉぉーッ!!』
「今かな?」
間もなくバイオレンスの一撃は見事命中し、切り離された『フライングアタッカー』を粉砕した。
『なんだとッ!?』
「よしっ!」
標的を打ち損じたバイオレンスは激しく動揺するが、一方着脱したフライングアタッカーを利用して掻い潜ったDザインはそのままバイオレンスの背後へ、転がりながら回り込むと、素早く態勢を立て直しつつドライバーにカードを装填した。
”ファイナルアタックライド――ザ・ザ・ザ・ザイン!”
背後から鳴り響いた電子音声にバイオレンスは振り返ったものの直後に発射された七角形状の白い光線に捕捉され、身動きの取れないまま跳び込んできたDザインの必殺キック『クリスタルスマッシュ』の直撃を受けると、唸るような悲鳴とともに爆散した。そして……。
「よっと!」
仕上げにバイオレンスだった黒煙の混じった火柱から意識の失せた士官とともに飛び出てきたガイアメモリを踏み砕いた。
「シルト」
「ん? ……おう」
不意に背後から聞き慣れた声に呼び掛けられる。
徐に振り返ると、薄闇の奥から歩み寄ってくるザインと荒鬼の姿があった。
軽く手を振ってきたディフェンドに対してそれぞれの言動を示しつつ二人が合流すると、片手にザインフォンを持っていたザインが早速報告を切り出した。
「別働隊を率いているバロネスから連絡が入った。シュティーアの艦橋はたった今制圧に成功、レームの身柄も確保したそうだ」
「了解した。そんならアハト・セクターの平定も一段落だな」
「ああ、そうだな」
「はんっ! 楽勝楽勝! 最近はホント手応えねぇな!」
「ふっ……そんな風に調子付いてると、さっきのように足元をすくわれるぞ」
「あん? なんだと?」
荒鬼は愛用の音撃弦を掲げながら上機嫌に言い放つが、隣のザインが額部へ手を当てつつ――如何にも呆れた様子で――皮肉気に言うと、瞬く間に威嚇射撃のような鋭い視線を向けながら迫った。
「迷惑だから集団行動を乱すな……と言っているだけさ」
「誰も迷惑なんざぁかけちゃいねぇだろ! オメェが勝手に手ぇ出したんだろが!? そもそもテメェは前々から――」
「はいはいはい。スキンシップは帰ってからやりんしゃい小僧ども」
最早日常の一部と言っても過言ではない、子供染みた口論を始めたザインと荒鬼だったが、ディフェンドはそんな両者の間に躊躇なく割って入ると、彼らの強固な頭部をガシガシ撫でまわし、あっという間に緊迫化していた空気を一掃した。
「そんな元気あんなら俺のブッ倒した二人縛り上げて、早いとこ艦橋のアラ達と合流すっぞ」
「ちょっ……ちょっと待てシルト!? 分かったから手を離せっ!?」
「いだっ!? いだだだ! 旦那わーった! わーったから手を離し――いだだだっ!!」
「はっはっはっ!」
必死に謝罪しつつ手を退けるようと懇願する二人の若い戦友に対し、ディフェンドは暫くそのまま笑っていた……。
【オリジナルライダー設定】
《仮面ライダーディフェンド》
ビャクヤ・シルトがライダーカードとディフェンドライバーを使用して変身する仮面ライダー。イデアール領域の人々には『物語の守護者』・『イデアールの英雄』・『エクェス・グランド・マスター』とも敬称される。基本カラーはプラチナ・白・灰色で、単眼状の複眼『ディメンションヴァイザー』は青色。また全身を被覆している装甲『ディヴァインアーマー』は下半身がロングコート状になっており、首元にはフードのような装飾がある。原作の次元戦士と同じく『ライダーカード』を用いた特殊能力や次元世界の単独移動が行える。総合的なスペックは特別高くないものの変身するシルト自身のプラーナ能力と培ってきた戦闘技術により戦闘力自体は極めて高い。
〈ディフェンドの専用ツール及びビークル〉
・ディフェンドライバー
ディフェンドの変身ベルト。基本カラーは銀色で、中央部に内蔵された『トリックスター』は白金色。形状と機構自体はディケイドライバーとほぼ同様だが、変身時はシルトの意思に呼応し直接腰に出現し、ライダーカードの装填時は『女性的な電子音声』が発声される。
・ラウムブッカー
銃剣一体型の専用武器及びライダーカードホルダー。内部は『クラインの壺』に通じておりライダーカードと次元エネルギーを無尽蔵に貯蓄できる。変身前でも使用可能。
・リヒトゼーベル
プラーナ・ユーザー愛用の短杖及び光剣。シルト仕様は先端から白金色の光刃を形成する。
・マシンディフェンダー
ディフェンド専用のサイドカー。基本カラーは白・灰・プラチナ。クラインの壺から供給される次元エネルギーによって如何なる環境でも走破可能の他、ディフェンドの意思に呼応した無人走行・次元世界の単独移動・ライダーカードを用いた変異能力なども備える。
〈ディフェンドの
・ディメンションキック
複数のカード型エネルギーを潜りつつ白金色のエネルギーを纏ったディフェンド自身の片足から蹴り技を叩き込む。
・ディメンションスラッシュ
複数のカード型エネルギーを潜りつつ強化されたラウムブッカーの斬撃で対象を切り裂く。
・ディメンションブラスト
複数のカード型エネルギーを潜りつつ強化されたラウムブッカーの光弾で対象を撃ち抜く。
〈仮面ライダーディフェンドの関連カード〉
・KR/ディフェンド:仮面ライダーディフェンドへ変身する。
・AR/スラッシュ:ディフェンドスラッシュを発動する。
・AR/ブラスト:ディフェンドブラストを発動する。
・AR/イリュージョン:ディフェンドイリュージョンを発動する。
・AR/インビジブル:ディフェンドインビジブルを発動する。
・AR/バリア:ディフェンドバリアを発動する。
・FAR/ディフェンド:『ディメンションキック』、『ディメンションスラッシュ』、『ディメンションブラスト』いずれかを発動する。
〈仮面ライダーザインの関連カード〉
・KR/ザイン:仮面ライダーザインへ変身する。同時にザインブレイガン、アクセレイガン、フライングアタッカーいずれかも装備可能。
・AR/フライングアタッカー:フライングアタッカーを装備する。
・AR/アームドライク:マシンディフェンダーをアームドライク・バトルモードへ変形させる。グリップは取り外してアクセレイガンとして所持可能。
・FAR/ザイン:『ザインスラッシュ』または『クリスタルスマッシュ』を発動する。
〈仮面ライダー荒鬼の関連カード〉
・KR/荒鬼:仮面ライダー荒鬼ヘ変身する。同時に音撃弦・豪戒も装備可能。
・AR/音撃棒・洸戒:音撃棒 洸戒を装備して『鬼棒術 洸戒弾』または『鬼棒術 洸戒剣』を発動する。
・AR/鬼火:鬼幻術 鬼火を発動する。
・AR/蜃気狼:鬼幻術 蜃気狼を発動する。
・AR/火炎刃:鬼闘術 火炎刃を発動する。
・AR/焼撃拳:鬼闘術 焼撃拳を発動する。
・AR/光芒一閃:鬼闘術 光芒一閃を発動する。
・FAR/荒鬼:『音撃斬 破天荒解』を発動する。