Fate/wizard liner プリズマ☆イリヤ   作:天野蒼夜

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ごく普通の小学五年生、相馬悠生。冬木市に住む彼の前に一匹の赤いド
ラゴンに出会う。そのドラゴンは自分と契約するよう悠生に迫り、日常
を一変させてしまう。




第0話「魔法使い、誕生」

ここはとある県内に点在する冬木市。

 

そこにある展望台の頂上からフードの付いた青いローブを顔を隠している青年が右肩にぬいぐるみサイズの赤いドラゴンと左肩にぬいぐるみサイズの青い毛並みに金色のライオンを乗せて街並みを見下ろしていた。

 

「ドラグロス、レグルス、お前達がこの世界でやることは一つ。自分達の力を使いこなせる適合者を見つけだし、この地に散らばったサモンカードを全て回収することだ。分かっているな?」

 

「あ~あ~分かってる分かってる。けどよ、この世界にはクラスカードっていうとんでもねぇものまであんだろ?それはどうすんだ?」

 

「それは俺達の管轄外だ。そういうのはこれから誕生するであろう魔法少女に任せればいい。あるいは一緒に戦うか、だ」

 

「承知した。だが、貴様はどうするんだ?」

 

「俺はこれから魔法少女と共に誕生する魔法使いを見守るさ。奴等の力はこれからの脅威に立ち向かうのに必ず必要だからな。もちろん選出基準はお前達に任せる。だが、素質のありそうな奴にしろよ?」

 

「……しかし、この地に本当に素質のありそうな奴が存在するのか?」

 

「ああ、それは間違いなく存在する。たとえばそうだな……穂群原学園小等部とかな」

 

「小等部というと小学生のことか?お前は幼き子供に戦かわせるのか?」

 

「自分の運命を知ればそいつは戦わざるをえなくなる。でなければこの世界は他の次元世界もろとも暗黒に支配されることだろう」

 

「……しかし」

 

「レグルス、お前頭固すぎだぜ。俺達は最強クラスの力を持つ聖獣具なんだぜ。しかもその力は経験値や想像力に依存する。頭の固い大人よりもまだ想像力豊かな子供のほうは適任ってもんだぜ」

 

「ドラグロス、お前は適当すぎる……遊びではないのだぞ!?」

 

「んなの分かってら。んじゃ親父、俺はそろそろ行くぜ。善は急げという日本のことわざに習ってな」

 

そう言うと、ぬいぐるみサイズの赤いドラゴンのドラグロスは背中の翼を広げて青年の右肩から飛び去って

行った。

 

「父上、本当にあのような奴に任せてよかったのか?」

 

「奴はあれでも見る目はある。きっと素質のある奴をマスターに選ぶだろうぜ。さあ、お前もドラグロスを見習って適任なマスターを見つけて来い」

 

「……承知した」

 

青年に頷くと、レグルスも青年の左肩から離れて飛び去って行った。

 

青年はドラグロスとレグルスが飛んで行くのを最後まで見送る。

 

「魔法使いと魔法少女……この力が世界にとって絶望となるか、希望となるかは適格者次第だ。あいつ等がどいつをマスターとするかな……」

 

一人呟き、青年はその場から溶けるように消えて行った。

 

 

-----

 

 

【キーンコーンカーンコーン♪キーンコーンカーンコーン♪】

 

放課後のチャイムが校内に鳴り響く。

 

そのチャイムと共に肌色に近い長髪をした少女、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン通称イリヤが

さっさと教材と筆記用具をランドセルを入れて教室から走って出て行った。

 

「……」

 

イリヤが出て行った教室の出入り口のドアに手を伸ばしたまま立ち尽くしている少年が一人。

 

その姿は【一緒に帰ろう】と声をかけようとしたが、相手が声をかける前に行ってしまったというかなり悲しい情景だった。

 

そしてそうなっているのはまごうとなき俺、相馬悠生だ。

 

「どうした悠生、そんな顔して?はは~ん、さてはイリヤに一緒に帰ろうって声をかけようとしたのはいいものの、さっさと行っちゃって空しく立ち尽くしてるんだな?」

 

今の俺の姿を掛けているメガネを持ち上げながら推測しているのは黒い髪をおさげにしている少女は

栗原雀花。

 

彼女の推測はまったくもって正解である。

 

「元気を出して悠生君。今日はたまたま運がなかっただけだよ」

 

そう言って俺を慰めている両耳の前に髪の毛を出しているのは桂美々。

 

普段は優等生でおとなしめの性格だが、好奇心があり、人付き合いのいい子だ。

 

「はっはっは!悠生の奴またフラれたのか!元気出せって!諦めなけれりゃイリヤも気付いてくれるって!」

 

俺の背中を右手の平でバンバン叩いて豪快に笑っているのは嶽間沢龍子。

 

嶽間沢流武術の家に育ちにもかかわらず特に強くはないが、常にテンションが高い小柄な少女だ。

 

「誰がフラれた。別に告白はしてないし」

 

「でも悠生ってさ、イリヤのこと好きだよね?」

 

俺の返しにそう言う細めのピンクの髪のツインテールをしているのは森山那奈亀。

 

主に龍子のボケに対するツッコミ役担当の女の子だ。

 

以上紹介したのがイリヤとも悠生とも友好のあるクラスメートだ。

 

「ばっ!別にそんなんじゃないし!イリヤは友達。それ以上でもないしそれ以下でもない!」

 

「そうなの?てっきり好きだと思ってたけど……でも友達としては好きだよね?」

 

「まあ、それはそうだが……けど!決して!決してそれ以上のことはないからな!?」

 

「分かった分かった、そういうことにしといてやる」

 

「ったく……そういえばイリヤの奴何か慌てて帰ってったけどお前等何か知らないか?」

 

「何?やっぱりイリヤのこと気になるの?やっぱり悠生はイリヤのこと―――」

 

「那奈亀、それ以上言ったら鉄拳だぞ?」

 

「……ごめんなさい」

 

マジな顔で言う悠生に那奈亀は全力で頭を下げる。

 

その理由は過去に龍子が俺の逆鱗に触れて怒りの鉄拳を喰らわせてノックアウトさせたことがあるからだ。

 

「そういえばイリヤちゃん、何か今日一日ご機嫌だったね。何かいいことでもあったのかな?」

 

「残念だけど私達は知らないんだよな~。一回聞いてみたけど【ちょっとね】としか答えてもらえ

なかったし……」

 

「そうか、まあちょっと気になっただけだから別にいいんだけど。じゃ、俺も帰るな。今日は【仮面マジーカ】の放送日だから」

 

「仮面マジーカってあの特撮ヒーローの?」

 

「ああ、魔法使って悪い奴等と戦う正義のヒーローだよ。俺あれが好きなんだよ。じゃあ、また明日な」

 

「ああ、また明日な」

 

そう言って悠生は雀花達に別れの挨拶をしてから教室を出て行った。

 

 

―――――

 

 

悠生が教室から出て行った一方、ドラグロスは上空を穂群原学園小等部にたどり着き、下校している子供達を見下していた。

 

「ここが親父の言ってた穂群原学園小等部か。なるほどね~たしかに想像力豊かなガキがたくさんいそうなとこだな。さ~て素質のありそうな奴は……」

 

どの子供達も想像力が豊かそうな人達ばかりだったが、どの子もドラグロスにメガネに適う人材は見当たらなかった。

 

「ん~……たしかにどいつも想像力はありそうだが、いまいちだな。もっと見込みありそうな奴は……ん?」

 

周囲を見渡していると、ドラグロスの目に止まったのは一人下校している少年だった。

 

その少年、悠生を見た瞬間、ドラグロスは自分と引き合わせる何かを感じた。

 

「何の変哲もないどこでにもいるようなごく普通の小学生……だが何故だ?あいつからは他の奴等とは違う何かを感じる……あいつならもしかしたら」

 

見つけた少年に何かを感じたドラグロスはその少年の後を追跡して行った。

 

 

―――――

 

 

ここはとある夕暮れの空港。

 

そこには県外あるいは外国から帰って来た者、これからそこに向かう者で溢れ、室内には流暢な外国人向けのアナウンスが流れている。

 

そんな当たり前の空港で黒い長めの髪をツインテールにし、上半身を十字架のデザインがされた赤い服に黒いミニスカートに黒のニーソックスを穿いた少女が後ろに大きめのキャリーケースを引きずって歩いていた。

 

「ふぅ……まさか一年で帰ってくることになるとは思わなかったわ」

 

「久々の帰郷ですが、気分はどうですか?マスタ~?」

 

キャリーケースの中から調子のいい女の声が聞こえてくる。

 

普通なら絶対ありえないことにも彼女はあたかもそれが普通なように答える。

 

「別に、どうというわけでもないけど……ただ―――」

 

「あ~あ、湿っぽくて雑多な国ですこと」

 

少女の言葉を背後から聞こえてきた気品溢れる声が遮る。

 

その声の主は青いドレスに金髪を縦ロール+青いリボンを着けているいかにもお嬢様を絵に描いたような感じの風貌だった。

 

「このバカと一緒に帰ってきたというのに嫌気を感じるだけよ!」

 

後ろを歩いている青いドレスに金髪を縦ロール+青いリボンを着けている少女のほうに振り向いて黒い長めの髪をツインテールにし、上半身を十字架のデザインがされた赤い服に黒いミニスカートに黒のニーソックスを穿いた少女に不満をぶつける。

 

だがそれは言われた彼女も同じだった。

 

「それはこちらも同じことですわ。それに、元々私が日本へ来ることになったのも全て貴女が原因ですのよ?遠坂凛!」

 

「ふん、自分のことを棚に上げてよく言うわ。ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルトもとい縦ロール!」

 

「何ですって!貴女、私のこの気品溢れる髪型を侮辱する気ですの!?」

 

お互い唸り声を上げながら火花を散らせる。

 

この様子からお察しの通り、二人は超が付くほどの犬猿の仲なのだ。

 

「凛様、マスター。講習の場での喧嘩はおやめ下さい。周りの人のご迷惑になります」

 

さっきの調子のいい声と違って今度は落ち着いた口調の少女の声が二人の喧嘩の仲裁に入る。

 

【何故我々がこの国に来たのかを思い出して下さい】と付け足して。

 

それが効いたのか、凛とルヴィアは【ふんっ!】とおでことおでこをくっつけていがみ合っていた状態から離れる。

 

「まったく……面倒な任務を任されたものだわ。こんな任務さっさと終わらせて帰るわよ!ルビー!」

 

「サファイアも、よろしいですわね?」

 

「了解で~す」

 

「はい、マスター」

 

その声達は空港を行き交う無数の人々の声によってかき消された。

 

 

―――――

 

 

今日も何ら変わらない学校生活が終わり、俺は【ただいま~】という声と共に自宅に帰ってくる。

 

返事はない……今日はお母さんと親父も仕事で遅くなるからいないのだ。

 

「悠生へ……夕飯は冷蔵庫にあるのでチンして食べてね、母より、か……。いつもは夕方までには帰って来てるのに珍しいな」

 

珍しく仕事が遅くなることにそんな感想を漏らしながら俺は置き手紙を机の上に戻して自分の部屋に向かい、制服から部屋着に着替えて勉強机に向かう。

 

今日は藤原先生から漢字ドリルから書き取り問題の宿題を出されている。

 

勉強が嫌いというわけでないが、正直やるのは面倒だ。

 

しかしやらないと分かった時の藤原先生は怖いと言うよりかなり面倒臭くなるのでやらざるをえない。

 

現在の時刻は夕方の4:30。

 

仮面マジーカが放送される時間は夜の7:30だから宿題をしてもかなり時間に余裕がある。

 

むしろ今日くらいの宿題の量ならお釣りが出るくらいだ。

 

「はぁ……やっぱ面倒臭い。いっそのこと魔法とかで全部やっちゃうことができればいいのに……魔法、か」

 

そういえばクラスメートのイリヤは魔法少女マジカル☆ブシドームサシというアニメDVDが今日届くということで急いで帰って行ったことを思い出す。

 

その時の彼女の表情は嬉しそうで、よっぽどそのアニメが好きだということが分かる。

 

「俺がもし魔法が使えるようになれば……宿題を一気に片付けられたり、金持ちになれたり……好きな人と……両想いになれたりとか」

 

両想いという単語を聞いて俺の頭の中で何故かイリヤが脳裏に浮かんだ。

 

俺はその脳裏を【なしなし!これはなし!】と言いながら頭を左右に振って打ち消した。

 

「こんなこと考えてる暇があったら宿題しよう宿題!えっと、今日の宿題は漢字ドリルの10ページから12ページを―――」

 

「よお、そこの兄ちゃん」

 

鞄から取り出した漢字ドリルを机の上で広げ、シャーペンを持ってやろうとすると、どこからともなく男性の声が聞こえてきた。

 

俺はそれに驚きながら周囲に見渡すが、この部屋には俺以外誰もいない。

 

しかしよくよく見渡すと一つだけ今まで俺の部屋にはなかったものがベッドの近くに置かれている。

 

それは赤いドラゴンの姿をしたぬいぐるみで、俺が小さい頃に親父やお母さんに買ってもらったぬいぐるみに紛れていた。

 

俺は椅子から立ち上がってそれが置いてあるベッドの近くまで移動する。

 

「こんなぬいぐるみあったか?俺の記憶上なかった気がするが……」

 

「当然だ、だって俺は今日ここに来てあんたのことをずっと待ってたんだからな」

 

見つめていた赤いドラゴンのぬいぐるみが喋りだしたことに驚いて俺は声を上げて腰を抜かして尻餅をつく。

 

俺がそうなると赤いドラゴンのぬいぐるみは【やれやれ】と言いながら、背中の翼を羽ばたかせて空中を浮遊して俺を見下ろす。

 

「ぬいぐるみが喋ったぐれぇでそのリアクションか。そんなに喋る

ぬいぐるみが珍しいか?」

 

「な……何でぬいぐるみが喋ってるんだ……?それに、空も飛んでるし……」

 

「言っておく、俺はぬいぐるみなんかじゃねぇ。俺はドラグロス、選ばれたあんたを魔法使いにする

ために来た」

 

「は?魔法使い?」

 

「ああ、そうだ。楽しいぜ魔法使い、魔法で悪い奴等をぶっ潰したり、空飛んだり、素敵な彼女を

作ったりとかな」

 

ドラグロスっていう奴の言っていることは妙に胡散臭かった。

 

しかもこいつ自身かなり怪しいし、関わり合いにならないほうがいいな。

 

「あの……話に全然ついていけないので、他を当たってくれないでしょうか?」

 

「おや?いいのか?お前があの女と親密になれるチャンスかもしれねぇぜ?名前は何だったっけな~?

たしか~イリy―――」

 

ドラグロスが言いかけたところで俺はそいつを右手で握り締めた。

 

かなり力を入れて。

 

「おや~?図星を突かれて怒ったか?ということは満更外れちゃいねぇってことだな」

 

「喋るな!口を閉じろ!バカドラゴン!さもないと―――!」

 

「冷静そうだが意表を突かれると動揺するところはまだガキだな。

だが、おかげでチョロかったぜ」

 

「どういうことだ―――?なっ……!?手が、放れない……!?」

 

「無駄だぜ、あんたは俺に触れた。全てはこうするための作戦だったってわけさ。そしてお前はそう言う俺に【てめぇ!騙しやがったな!】と言う!」

 

「てめぇ……騙しやがったな……はっ!」

 

つい言われた通りのことを言ってしまった。

 

本当にこいつは何者なんだ?

 

「さ~て、最後の仕上げだ。お前の名前を教えな!そうすれば俺がお前に魔法使いの力を与えてやるぜ!」

 

「……俺は」

 

そんなつもりはなかったのに口が勝手に開き、俺は自分の名前を告げる。

 

「悠生……相馬……悠生!!!」

 

名前を叫ぶと、俺の身体が赤い光に包まれる。

 

「被契約者の直接接触、名前の認識によるマスター契約を確認。おめでとさん、これであんたは魔法使いだ」

 

光に包まれる中、ドラグニスの陽気な声だけが聞こえた……。

 

 

 

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